the four GAFA  Scott Galloway  2019.6.29.


2019.6.29. the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
the four  2017

著者 Scott Galloway ニューヨーク大スターン経営大学院教授。MBAコースでブランド戦略とデジタルマーケティングを教える。カリフォルニア大卒後、連続起業家(シリアル・アントレプレナー)としてL2Red EnvelopePrphetなど9つの会社を起業。ニューヨーク・タイムズ(アクティヴィストの投資家として参加)やデックス・メディア、ゲートウェイ・コンピュータ、エディ・バウアーなどの役員。12年「世界最高のビジネススクール教授50人」に選出

訳者 渡会圭子 翻訳家。上智大文卒

発行日           2018.8.9. 第1刷発行        18.8.31. 第3刷発行
発行所           東洋経済新報社

GoogleApplefacebookamazon――GAFA
彼らはなぜ、これほどの力を得たのか
彼らは世界をどう支配し、どう創り変えたのか
彼らが創り変えた世界で、僕たちはどう生きるか

ヨハネの黙示録の四騎士 Four Horsemen of Apocalypse
地上の4分の1を支配し、剣、飢饉、悪疫、獣によって「地上の人間を殺す権威」を与えられている

第1章        GAFA――世界を創り変えた四騎士
4強企業が生み出した空前の富は23000億ドル。世界で何百万という株保有者の家計を潤しているのみならず、世界をより豊かな場所にしている
一方で、全く別の顔もある
売上税を払わず、従業員の待遇が悪く、何万という仕事を消滅させながら、事業革新の神と崇められている小売業者
国内のテロリズムについての情報を連邦政府の捜査にも提供せず、その思想に共鳴する宗教じみた熱狂的ファンに支えられるコンピュータ企業
あなたの子どもたちの何千枚もの写真を分析し、携帯電話を盗聴器として活用し、その情報をフォーチュン500企業に売りつけるソーシャル・メディア企業
メディアで最も実入りのいい検索分野で90%のシェアを占めながら、せっせと訴訟とロビー活動に励んで、独占禁止法の適用を逃れている広告配信プラットフォーム
われわれはこれらの企業が決して善良ではないと知りつつ、最もプライベートな領域への侵入を無防備に許している。営利目的で使用されることを知りながら、自らの最新の個人情報を漏らしている
アメリカ政府も、これらの企業に対して反トラスト法、税金、労働法の適用上の特例を認めている
これらの企業は、人類を幸せに導く聖なる四騎士なのか? それともヨハネの黙示録の四騎士なのか? どちらの問いに対する答えもイエス。ここではただ四騎士と呼ぶ
彼らはどうやってこれほどの力を手に入れたのか。その未曾有のスケールと影響力は、将来のビジネスとグローバル経済にどのような意味を持つことになるのか。魅力的なライバルの前に力を失うのか、それとも誰も太刀打ちできないほど強固な存在になっていくのか
l  アマゾン ⇒ ネットショッピング企業。生きるための必需品を手に入れるという退屈な作業の辛さから消費者を解放。消費者に届けるラスト・ワンマイルのインフラにかつてないほど巨額の資金を注入し、「地球上最大の店舗」を築き上げた
l  アップル ⇒ 世界に通用する富や教育、西洋的な価値観の象徴。神に近く感じられることと異性の目に魅力的に映るという2つの本能的欲求を満たす。独特の信念体系を持ち、崇拝の対象になっている。低コストの製品をプレミアム価格で売ることに成功し、歴史上最も利益の大きな企業となる。アマゾンの2倍の利益を上げ、手元資金はデンマークのGDPとほぼ同額
l  facebook ⇒ 普及率と使用率を基準にすれば、facebookは人類史上最も成功している企業。世界の総人口75億のうち12億人が毎日facebookとの関わりを持つ。Facebook、フェイスブック・メッセンジャー、インスタグラムは、アメリカの人気スマホアプリの1位、2位、8位を占める。ユーザーは平均50/日をソーシャル・ネットワーに費やすが、ネット接続の6分に1分、モバイル機器使用の5分に1分はフェイスブックを見ている
l  グーグル ⇒ 現代人にとっての神であり、我々の知識の源。常に身近に存在し、我々がどこにいてどこへ向かう必要があるのかを確信をもって教えてくれる。全知全能の神として信用されている存在であり、他に類例を見ない。アルファベット社の子会社。使うほど価値が上がる。毎日35億の質問からデータをこつこつと集め、消費者行動を分析
201317年の4年間で、四騎士の時価総額は約1.3兆ドル増加(ロシアのGDPと同額)
周囲の目障りな企業は、下々の想像もできない額で買収される
四騎士自身の対抗心の中にこそ安全装置が組み込まれている ⇒ お互いが様々な分野でぶつかり合っている。スマホのOSではアップルとグーグルが、Siriではアップルとアマゾンが競合、ネット広告ではフェイスブックがモバイルにシフトしてグーグルからシェアを奪っているし、クラウドではアマゾンとグーグルが接戦。いずれも消費者の生活のOSとなるべく壮絶な戦いを展開
ビジネススクールで教えるのは、学生に武器を与え、経済的安定を手に入れるようにするためで、本書を書いた目的も、読者が競争で優位に立つための強みと見識を身につけることを願う

第2章        アマゾン――1兆ドルに最も近い巨人
全米世帯の44%に銃があり、52%にアマゾン・プライムがある
ネット業界における2016年の成長の半分、小売業の成長の21%はアマゾンによるもの
隆盛の要因は、私たちの本能に訴える力にあり、シンプルで明確なストーリーが追い風となり、巨額の資本を集めて使うことが可能になった
狩猟と採集は、人類史上最初にして最大の成功を収めた適応能力
小売業は、消費本能を利用して富を築いた最大の業界 ⇒ 世界の長者番付でも小売業界の人間が一番多くを占める
参入も容易で入れ替わりが激しく、92年のベスト10のうち16年に残ったのは2社のみ
小売業最大のウォルマートは、偉大なる平等主義の店だが、消費者の大半は平等であることを望まず、自分が特別であることを望み、そのための出費を厭わない ⇒ その間隙を突いたのが専門店で、GAPやウィリアム・ソノマはその成功例
ベゾスは、94年「本」に目をつけてeコマースに参入。さらに多様な選択肢という本質的価値を強化するためにアマゾン・マーケットプレイスを導入、第3者を参入させることで販売機会の少ない多彩なものを扱えるようになった ⇒ 売り手は世界最大のeコマースのプラットフォームと顧客ベースにアクセスできる一方、アマゾンも余分な在庫なしに商品を大幅に増やすことができた。現在ではアマゾン全体の売上の40%を占め、売り手は膨大な顧客の流れに満足し、アマゾンはデータを入手しあるカテゴリーが有望と思えばすぐにどんな事業にも参入できた
アマゾンが訴えかけるのは、より多くのものをできるだけ楽に集めようとする我々の狩猟採集本能
店舗がない分、ベゾスは倉庫の自動化に投資できた
パートナーを増やし扱い商品を拡大 ⇒ 軍隊用語で「見るObserve」「わかるOrient」「決めるDecide」「動くAct」の頭文字をとってOODAループと呼ばれ、消費者を相手に素早く決断し行動することにより、他業者競争優位を徹底して実践
16年末のホリデーシーズンのネット販売の38%がアマゾンで、次の9社は合計で20
レジのないコンビニ、アマゾン・ゴーの発表で、アマゾンは実店舗を持つビジネスに参入したが、センサーとアプリによって顧客はレジを通さずに買い物ができる ⇒ レジ係340万の雇用を危機に陥れるが、全米の小・中学校の教師の数に匹敵
アマゾン・エコーは、円柱形のスピーカーのようなもので人工知能を備えたアレクサ(アレクサンドリア図書館がその名の由来)と呼ばれ、強力な音声認識機能により商品注文を自動でこなす ⇒ ゼロ・クリック・オーダーへの野心の実現が視野に入り、顧客の私生活や消費者の願望のさらに奥深くを知ることにより、消費者の意思決定や注文という作業なしに、物質的な欲求を自動的に掬い上げ、満たしていく
17年に開始したプライム・ワードローブサービスは、顧客が自宅で試着して、欲しいものだけを手許に留め置くサービス
巧みなストーリーテリングで、安い資本をふんだんに集めたのが成功の契機 ⇒ 世界最大の店というビジョンで、利益の代わりに成長を提供し、大半の小売企業の企業価値は利益の8倍程度だが、アマゾンは40
アマゾン・ウェブ・サービスが、小売り事業を超える急激な伸びを記録している ⇒ ウェブ・ホスティング(顧客のメール・サービスやウェブ・サービスを預かって運用)などで、ツイッターの収益を上回る規模のクラウド企業に成長
空・海・陸運への進出も視野に入れ、他社商品の配送まで請け負う
小売りの次の時代は、マルチチャンネルの時代で、ウェブ、人との交流、実店舗の統合が成功の鍵
アマゾンも食品で躓き、ホールフーズを買収して実店舗の効能の見直しに向かう

第3章        アップル――ジョブズという教祖を崇める宗教
15年カリフォルニアで発生したテロ事件で死亡した首謀者のiPhoneのロック解除をFBIが申請、連邦裁判所から命令が出されたがアップルは無視 ⇒ 若い民主党支持者(一般的には大きな政府拡大を支持)はアップルにつき、年配の共和党支持者(大企業支持派)が政府側につくという意外な結果
我々はiPhoneに熱狂し、その過程で新たな企業過激主義への扉を開いてしまった
1つの企業を法律の外に置き、ノーチェックで放置するというダブルスタンダードで、勝者総取りの環境を作り、更に不平等を助長し兼ねない
アップル成功の陰のヒーローは、ナップスターの創業者ショーン・ファニング ⇒ ナップスターの開始したファイル共有サービスが音楽業界を破壊すると警告、その脅威を利用して音楽業界を手に入れたのがアップル
15年度のアップルは史上最も成功した企業で、利益は534億ドルを記録。17年の税制改革で法人税が引き下げられたのは議会からの忖度ではない
希少性を追求して並外れた利益を得る ⇒ 16年におけるアップルのスマホのシェアは14.5%に過ぎないが、スマホの利益の79%をアップルが独占
一種の超レア感がアップル成功のカギ ⇒ 高級ブランドとして売り込むことに成功
その背景には、アイコン的な創業者、職人気質、垂直統合、世界展開、高価格としての5条件があり、ジョブズはこの大半を高級テクノロジー製品のパイ大ニアであるヒューレット・パッカードから学ぶ。ジョブズが賞賛したHPの特質は2つ、1つは革新的で高品質の製品を作る努力であり、もう1つはそれを欲しがるエンジニアに法外な値段で売りつけていたこと
他社が真似の出来ないことをすることこそ、長期的な成功のカギで、アップルの場合も時間や費用のかかるアナログの堀をより深く周囲に巡らすことで他社を寄せ付けない ⇒ 19か国に展開する492の店舗は強力な免疫システムを備えた重要な資産となっている
ネット販売はいまだ小売全体の1012%に過ぎず、店舗も消滅していない。消滅しかかっているのは店舗ではなく中産階級で、彼らに商品を売っていた店舗であり、中産階級が集まる地域の店舗が苦闘。富裕層が集まる地域の店舗は好調
GAFAの他の3社に比べ、アップルは高級ブランド品としての地位により生き長らえる可能性が高い

第4章        フェイスブック――人類の1/4を繋げた怪物
20億の人々と意義深い関係を持つ。しかもそれを20年たたないうちに達成
最速でユーザー1億人を超えた5つのプラットフォームのうち3つを所有 ⇒ フェイスブック、ワッツアップ、インスタグラム
人は毎日35分をフェイスブックに費やし、インスタグラムとワッツアップを合わせると50
フェイスブックの影響力は、未曽有のスピードで大きくなっている。それは我々が切望するものがフェイスブックにあるから
消費者の購買意欲を高めるという面からみると、フェイスブックが特に大きな影響を及ぼしているのは、マーケティングの漏斗(ファネル)の一番上にある「認知」の段階
インスタグラムなどのソーシャル・ネットワークを通じて物事を知ると、そこからアイディアと欲望が生まれ、欲しくなったり同じ経験をしたくなるとグーグルやアマゾンを検索
これまでのマーケティングでは、規模かターゲティングのいずれかを選ばなければならなかった。どちらも同時に満足させることはできなかった
フェイスブックは、規模とターゲティング能力を併せ持つ唯一のメディア企業
モバイルアプリも備え、今や世界最大のネット広告の売り手であり、グーグルを凌ぐ
フェイスブックは、我々がクリック(投稿)したもの、使っている単語、動き、友人のネットワークから、詳細かつ正確な人物像を描き出す
フェイスブックは気取ってめかしこむためのプラットフォームだが、フェイスブックは真実を見抜くところから、これほどの力を持つようになった。フェイスブックのユーザーは、本当の私たちをさらけ出させるための餌なのだ
人間同士の繋がりは人を幸せにする ⇒ ハーバード大メディカル・スクールの75年と2,000万ドルをかけた調査によって、幸福レベルに最も強く影響するのは人間関係の深さと有意義さであり、”Happiness is Love”が結論
愛は親密さと深さ、そして他者との相互関係から生じる
フェイスブックは、うまく使えば人間関係を築くことと、育むことの両方に役立つ手段
データを利用されることを承知の上で、企業が動かしている機械に、私たちの生活についての大量の情報を流している。その一方で、企業がそれを保護し、無視してくれるだろうと期待している。こうしたプラットフォームは利便性がとても高い。そのために、いまのところ顧客は自分たちのデータやプライバシーが大きなリスクに晒されるのを許容するという態度を示している
過去5年で、毎年インデックスを上回る実績を上げたS&P500の企業はたった13社だけで、現在の勝者総取りの経済をよく表している。これらの企業に共通するのは、ユーザーと情報収集アルゴリズムを組み合わせて、互いの利益になるよう上手く活用していること
物は劣化するが、それを使っていることをフェイスブックに投稿すれば、ネットワークの価値は上がる ⇒ ネットワーク効果、あるいは、アジリティ(敏捷性)”と呼ばれ、ネットワークをより強力にするだけではなく、カーナビのアプリを使うと、サービスが全体的に向上するという効果を発揮する
フェイスブックのアルゴリズムは、ある地域の特定の小さな集団だけをターゲットにできる ⇒ 広告主にとっては、ターゲットをピンポイントで把握できる
「いいね」をつけたものが150件わかれば、そのモデルはあなたのことを配偶者より理解できる。300件になるとあなた自身よりあなたのことを理解できる
『ニューヨーク・タイムズ』は、購読者のことをほとんど知らないし、テレビ局が知っていることはさらに少ない。デジタル企業でもツイッターは、偽名が多い上に15%は機械による自動ツイートで、顧客のことをあまり知らず、個人をターゲットにすることには苦戦しており、市場価値はそれほど高くない。WikipediaPBS(アメリカの公共放送ネットワーク)も同様
グーグルとフェイスブックはメディア地図を描き直している ⇒ いずれこの2社が史上最高額の広告をコントロールするだろう
フェイスブックの持つ人々のデータは、簡単に金になる
右でも左でも、熱狂的な信者は、それなりの餌を撒けばすぐクリックする。一番クリックされやすいのは対立と怒りを煽るもので、クリックされればその投稿のヒット率が上がり、口コミを一気に集め、ときには何億もの人へ広がり、更に社会の断裂が深まる
アメリカ人の44%、そして世界の多くの人がフェイスブックでニュースを見ているが、フェイスブックはメディア企業と見做されるのを嫌う。グーグルも同じ。メディア企業では株価が上がらないうえに、本来のメディア企業は公共に対する自分たちの責任を意識し、そのための労力とコストをかけているためその分利益は減るからで、クリック数と金がすべてのフェイスブックは見識ある態度を装って、強欲さを隠そうとしている
フェイスブックでは、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』の記事も読めるので、フェイクニュースまで同じレベルで出てくると信憑性があると思われてしまう
フェイスブックが何らかの形で編集権限を発揮できるかどうかにかかっている ⇒ フェイクニュースは民主主義の脅威であり、排除しようとすれば、フェイスブックも世界で最も影響力を持つメディア企業としての責任を受け入れざるを得なくなり、真実と嘘を判別する義務を負うが、同時に虚偽の記事を削除することで、何十億というクリック数と多額の収益も犠牲にする
人は自律的で道理がわかった存在なので、真実と虚偽は区別できると思っているが、何をクリックするかは無意識のプロセスだという研究結果もある
私たちは一体感、賛同、安全という、潜在的なニーズに突き動かされている。フェイスブックはそのニーズを利用する。「いいね」を届けてプラットフォーム上でより多くの時間を使うよう仕向ける。記事が激しいほど反応が増える
現在のメディアはフェイスブックとグーグルに独占されているだけに、気がかりなのは彼らの、「メディアではなく、単なるプラットフォームだ」というあたかも社会的責任を回避するスタンスで、権威主義者やヘイト活動家がフェイクニュースを巧みに発信できるようになった

第5章        グーグル――全知全能で無慈悲な神
インターネット利用でアメリカ人の1/4以上が宗教から流れ、信仰が失われている
情報と教育を得たことで、信仰心は逆に減る ⇒ 宗教に頼ることが少なくなる
神は祈りを聞き届けてはくれるが、多くに応えてはくれなかったが、グーグルはすべての疑問に答えてくれる
四騎士にはそれぞれの分野で先行者がいた ⇒ アップルにはパソコンがあり、アマゾンにはオンライン書店が、フェイスブックにもソーシャル・ネットワークがあったように、グーグルにもアスク・ジーブスやオーバーチュアのような検索エンジンがあった
ごく僅かな違いが同業他社との命運を分けた ⇒ アップルではジョブズのデザインとウォズニアックのアーキテクチャ、アマゾンなら評価とレビュー・システム、フェイスブックなら写真
グーグルの一番の特徴は上品でシンプルなホームページと、検索結果が広告の影響を受けないオーガニック検索で、いまでこそ大した特徴ではないが、当時は衝撃的で、信頼を築くのに大きな役割を果たした ⇒ グーグルはホームページを神聖な場にしている。検索窓とグーグルのロゴしか置かず、広告は一切排除。それ以外のページの広告掲載はすべて公平なオークション方式の採用によって公正だという信頼を築いていった
2015年アルファベット社を設立して法人組織化したため、内部の動きを伺いずらくなる
グーグルの最初のモットーである”Don’t be Evil”に従い、白人至上主義者や小売りをむさぼる企業のドメインを排除したり、2011JCPennyが何千万もの偽のリンクを張って検索結果のトップ近くに表示された事件では同社を検索結果の2ページ目へと追放もしたりしている ⇒ 神の逆鱗に触れた
衰退していく『ニューヨーク・タイムズ』との違い ⇒ デジタル革命を狙って投資して役員にもなったが、ザルツバーガー家の意向は変わらなかった

第6章        四騎士は「ペテン師」から成り上がった
盗みは、成長スピードが速いテック企業のコア・コンピタンス
1つは他の会社の知的財産を拝借する行為で、悪質なのはそれを本来とは別の目的に使って利益をあげ、稼いだところでその知的財産を保護する ⇒ 革新的なアイディアを思いつかなくても未来の騎士にはなれる
もう1つは、他の誰かが築いた資産を使ってそれを開発した人にはできないやり方で利益をあげること ⇒ 先行者利益が必ずしも利益にはならない
1793年アメリカは特許法を改変し、特許権保護の対象をアメリカ市民に限定し、特に産業のイノベーションで優位にあった知的財産を守ろうとするイギリス人から、その窃盗行為に対抗するあらゆる法的手段を奪った ⇒ アメリカ人が勝手にイギリスの優れた知的財産を使って工業の芽が吹くのを助けた
アメリカの産業革命発祥の地として知られるマサチューセッツ州ローウェルは、ローウェルの会社とそれに続く多くの企業によって築かれたが、ローウェルは顧客を装ってイギリスの繊維工場を視察し、設計やレイアウトを丸ごと記憶し、アメリカに初の工場を設立
この窃盗行為からは世界屈指と言われるアメリカのコンサルティングという産業も誕生
世界的な大企業を目指す中国も、独自のローウェルを送り込もうとしている
テクノロジー史上最も有名な窃盗は、マウスで動くグラフィカル・ユーザー・インターフェイスGUIを駆使したデスクトップ・コンピュータという構想で、ゼロックスで実現できなかったものをジョブズがマッキントッシュで完成させた
重要なのは、若い企業は盗んで大きくなるだけでなく、他の人には見えない価値を見抜き、他の人には引き出せない価値を引き出すことができるということで、必要ならばどんな手を使ってもそれをやり遂げる
もう1つのずるいやり方は、情報をどこかから借りて、それを相手に返すときにお金をとることで、そのいい例がグーグル
グーグルの創設はウェブの構造と検索の性質についての数学的な見識に基づくが、大きく成長したのは情報を無料で配る一方で大きな利益をあげることができるというアイディア
グーグルとフェイスブックは、以前は情報を他の業務に提供しないと言ってきたが、密かにプライバシー・ポリシーを変更して、本人から停止のリクエストがない限り流用できるようになった ⇒ 流用されているのではないかという気持ち悪さと関連付けは、デジタル・マーケティングの世界では強く結びついている
野心的な騎士たちは常に、古い競争ではありえないようなやり方で市場に打って出る ⇒ ウーバーは多くの市場で法律違反をしているが、それでも投資家がいるのは、法律が先に譲歩することになると感じているから

第7章        脳・心・性器を標的にする四騎士
成功した起業家は一様に、成功を収める秘訣は低コストでの大規模化といい、クラウド・コンピューティング、バーチャル化、そして競争を通じて生産性を10倍に高めるネットワーク効果に注力することで実現できるとしたが、進化心理学の見地からすると、成功するビジネスは、体の3つの部位、脳・心・性器のいずれかに訴えかけるものだ
脳をターゲットにして人間の合理的な部分に訴えかけて成功を収めた企業は、「より多く、より安く」という価値を提案して消費者を取り込んだウォルマートで、世界で最も効率的で他に類のない規模のサプライチェーンを構築。アマゾンや価格で争う中国もこの範疇
心は合理的でないかもしれないが、ターゲットにするのはきわめて合理的な戦略であり、第2次大戦後の消費者マーケティングの多くは、心をターゲットにしていた
心は脳の意思決定を覆せる数少ない力の1
デジタル時代は、心をターゲットにしたビジネスに挑戦し、検索エンジンとユーザーレビューによって、購入の意思決定からかなり感情が排除されるようになった
一般消費財分野は、心をつかんで売ることにより成り立っていたが、15年には90%のブランドがシェアを失い、2/3の会社が減収となった
心に訴えかけるビジネスが次第に難しくなる一方で、性器に訴えるブランドは繁盛。セックスや求愛儀式は脳の発する警告を凌駕する ⇒ 企業は自社の製品が求愛ブランドだと知っていて、そこに高い利鞘と利益が生まれ、それが脳をいらだたせ、心を嫉妬させる
グーグル ⇒ 脳に働きかけ、それを補足し、長期記憶をほぼ無限のレベルにまで増幅させる。さらには私たちの脳の複雑で無二の検索エンジンの代わりをしている。何よりも重要なのは、私たちがグーグル検索の結果を信頼していること
アマゾン ⇒ 脳と物をつかむ指を繋ぐ役割
フェイスブック ⇒ 友人や家族を結びつけ、心に訴えかける
アップル ⇒ 最初は頭に訴えていたが、性的な魅力を手に入れたいという欲求に訴える

第8章        四騎士が共有する「覇権の8遺伝子」
    商品の差別化 ⇒ 小売業では、以前は場所、次に商品、ブランド
    ビジョンへの投資 ⇒ 安い資本を集める力。理解しやすい大胆なビジョンが必要
    世界展開 ⇒ 世界に打って出る能力。国境を超えてアピールするモノ
    好感度 ⇒ 悪い評判から身を守る防護壁となる
    垂直統合 ⇒ 消費者の購買体験すべてを垂直統合でコントロールできること
    AI ⇒ データへのアクセスとその活用能力。データこそ最強の武器
    キャリアの箔付けになる ⇒ トップクラスの人材を集める力
    地の利 ⇒ 過去10年で時価総額が何百億ドルも増加した企業は、ほぼ例外なく世界的な技術系・工学系の大学に自転車で通える距離にある

第9章        NEXT GAFA――第5の騎士は誰なのか
アリババ ⇒ 同社経由の流通総額(4,850億ドル)16年にウォルマートを抜いた。収益は150億ドルのみだが、中国の小売りの63%を占める規模は重要だが、自国内に限定されていて、究極のブランド力が不足、資本も不足、中国政府とのしがらみが不透明
テスラ ⇒ 最後は巨大企業を維持するためのインフラが障碍となる恐れ大。時間も金もかかるアナログな堀をどう埋めるか。さらには個人の行動に関する大規模なデータを持っていないことがネック
ウーバー ⇒ 200万人のドライバー・パートナーがいるが、垂直統合されていないし、箔付けも不足、ゲス野郎が創業した会社ゆえに好感度がキー
ウォルマート ⇒ eコマースが好調を維持するためには店舗を始めとする現実のインフラに根付いている必要があるというのが企業の認識で、28カ国に12,000店舗を持つ同社の力は侮れないが、資本コストが高く、好感度も高くない
マイクロソフト ⇒ ウィンドウズ・フォンでてひどい失敗をしたが、リンクトインなど有望な分野もあり、決定的な強みを見つける必要
エアビーアンドビーAirbnb ⇒ 世界展開をして安い資本を入手できるが、差別化のポイントをどう見つけるかが未知数。垂直統合されていない(アパートを所有していない)ため、顧客経験をコントロールできないのが欠点
IBM ⇒ コンサルティング・サービスの会社として変身したが、資本コストは高く、箔付けにはならないとみられている
ベライゾン/AT&T/コムキャスト/タイム・ワーナー ⇒ ネット回線の所有者で、合法的独占企業、デジタル時代に不可欠な企業だが、それだけの地位をうまく利用できていない

第10章     GAFA「以後」の世界で生きるための武器
心理的成熟 ⇒ デジタル時代の労働者は数多くの関係者に対応し、1日の間に様々な役割をこなさなければならないので、成熟した人間の方が有利だし、自分の熱意をコントロールすることが大切
好奇心 ⇒ 次の変化を恐れるのではなく、新しいアイディアで攻め続けることが必要
当事者意識 ⇒ 仕事、プロジェクト、事業などすべてを自分のものだと考える
ブランド大学の卒業生 ⇒ 学歴というカーストを乗り越え、キャンパスで友人を得る、フェアではない競争をどう乗り越えるか
資格・証明
何かを成し遂げた経験
都市に出よ
自分のキャリアをよく見せる
新しいものを受け入れる
株と計画 ⇒ 報酬の一部に株を組み込む。歳とともにその割合増やす
会社とは「連続的単婚」を心がける ⇒ 結婚している間は誠実に
組織ではなく人に誠実に
好きなことではなく得意なことでキャリアを築く
不満を口にしない
平均に回帰することを覚悟する ⇒ 世の中、平均値への回帰の力が強いことを知れ
あなたのスキルを評価してくれる所へ行く
セクシーな仕事は儲けがない
頑強さ
助けを求める
アルファベットのどの段階にいるか
ボトックス(ボツリヌス菌という細菌が作り出すA型ボツリヌスから抽出した毒素で、筋肉の麻痺を引き起こし、しわ取りに使われる)
ロングテール・ショートテール ⇒ テクノロジーの世界では、ロングテール・ビジネスの多くが衰退したが、消費財の世界で新しい命を得た
バランス神話 ⇒ キャリアを確立しようとしているときにバランスは不要。とにかく熱心に、一生懸命働くしかない。バランスのとれた生活は成功してから
あなたは起業家向きか ⇒ 人前で失敗しても平気でいられるか‽ 売り込みは好きか‽ 大企業で働くスキルに欠けているか‽

第11章     少数の支配者と多数の農奴が生きる世界
デジタル技術の着実な進歩と四騎士の優勢、イノベーター階層は桁違いの生活をするに値するという思い込みから生まれた歪みが実際に起こり、社会にとっては危険だが衰える兆候はない。これが続けば中産階級は空洞化し、街の破綻に繋がる。損をさせられていると感じる人々は政治的な怒りを表明し、デマゴーグが生じやすい環境を作る
かつてないほどの規模の人材と金融資本の集中は、どこに行き着くのか。四騎士の究極の目的は金儲けであり、時価総額ばかり大きくなっても大規模な雇用は生み出していない
このままではアメリカは、300万人の領主と3億人の農奴の国となる
いまほど億万長者になるのは簡単だが、百万長者になるのが難しい時代はかつてなかった
いまのデジタル社会の先行きを予測し、家族のための経済的安定を築くためにより大きな力を得るには、四騎士を理解することは絶対に必要。この本がその助けになることを願う





(売れてる本)『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』 スコット・ギャロウェイ〈著〉
2018.10.13. 朝日
 強い引力、現実主義で描く
 「GAFA」とはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をつないだ表現だ。いまのデジタル社会を生き抜くうえで、この四つの巨大企業を理解することが絶対に必要だ――本書はそう説いている。
 確かに、GAFA抜きの生活を思い出せなくなって、すでに久しい。ときには、巨大企業に自分のプライベートな情報を差し出している不気味さを感じる。書店や出版社の経営難や、雇用の喪失を聞くと、後ろめたくもなる。SNSによる社会の分断も心配だ。だが、圧倒的な便利さを経験すると、もう元に戻れそうにはない。
 このすさまじい引力の正体は何なのか。著者は、あけすけな表現を多用しながら、4社に共通する、まがまがしいまでの「強さ」を描きだしている。
 いわく、グーグルは脳(知識)、アマゾンは脳と指(狩猟採集本能)、フェイスブックは心(感情)、そしてアップルは性器(性欲)を刺激することで人間の心理に奥深く食い込み、破格の成功を収めた。
 成り上がる過程では「盗み」は、成長スピードが速いテック企業のコア・コンピタンス(能力)。「政府をだまして助成金を引き出し」、情報を借りて「相手に返すときにお金を取る」といった手法も珍しくない。
 そして、ひとたび成功すれば、新規参入を寄せ付けないように設備に投資して堀をめぐらす。米政府も反トラスト法などでの例外を認めているという。
 著者自身が講演で「まず何か聴衆の気を引くことを言う」というように、4社の裏の顔をなで切りにする記述は痛快だ。
 ただ、「少数の支配者と多数の農奴が生きる世界」への変容を描きつつも、その現実を変えようと訴えるわけではない。本書の後半では、GAFA後の世界を前提に、企業や個人が成功するための条件が検討される。
 起業家出身のビジネススクール教授としての現実主義ではあるのだろう。とはいえ、どこか荒涼とした読後感も残る。
 石川尚文(本紙論説委員)
     *
 渡会圭子訳、東洋経済新報社・1944円=3刷10万部。8月刊行。「薄々感じていたことの言語化。50~60代にも人気」と編集者。


最強の戦略的読書術 今読むべき3つのキーワード 
ビジネス本大賞2019(下)
2019/3/2 6:30 日本経済新聞
せっかく本を読んだのに、内容をすぐ忘れる。読んだ本を仕事に生かしきれない──。そんな悩みを抱える人は少なくない。読んだ時間と知識を無駄にしない読書のコツはまず、今旬のトレンド本を選ぶことにある。後編では、押さえておくべきトレンドワードと、最強の読書術を指南する。
押さえておくべき 書籍のトレンドワード
話題のベストセラーは周囲も読んでいる可能性が高く、アウトプットの機会に恵まれやすい。他者に話すほど知識が頭の中で整理されやすくなり、書籍に対する理解度や記憶力の向上も期待できる。では、19年のトレンド本は何か。年間1000冊以上のビジネス書を読むという「ビジネス書のプロ」土井英司氏が挙げたキーワードは下記の3つ。
【脅威系】
米国のグーグルやアマゾン、アップルなど、他社にとっては「脅威」と見なされがちな企業を多角的に分析した本は、ビジネス書のトレンドを代表する存在の1つ。最新のテクノロジーを活用し、世界中の人々の日常生活に入り込み、顧客から得たビッグデータを活用しながら巨大化する企業の戦略を知ることは、業界を問わず世の中の趨勢を占ううえで欠かせない。
the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』


エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10
混迷する世界 体系立てる 長年の集大成 力作そろう 回顧2018
2018/12/30付 日本経済新聞
毎年恒例の「エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」の結果がまとまった。混迷する世界経済の現状をどう捉え、対策を打ち出せばよいのか。理論と現実の両面に目を向け、体系立てて論じた著作が多く入選した。研究者や実務家としての長期にわたる経験や所感を詳細に記述した本が目立ったのも今年の特徴だ。
多くの選者の票を集め、1位に輝いたのは『良き社会のための経済学』。藤田康範・慶応大学教授は「経済学に精通し、圧倒的な業績によってノーベル経済学賞を受賞した著者が、経済学ができないことも認めた上で、経済学ができることを明確にしている。これからの経済学の必読書になる」と高く評価する。「知の宝庫。経済学は社会のためにあるという信念が素晴らしい」(川本裕子・早稲田大学教授)との指摘もあった。
視線を現在に転じよう。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)の文字を目にしない日は珍しい。『the four GAFA』は「超優良4社を支配集団として記述した世界的なベストセラー。なぜ4社から目を離してはいけないかという問いに答えてくれる良書」(小川進・神戸大学教授)。


the four GAFA スコット・ギャロウェイ著 IT大手4 脅威と活用法 
2018/10/13付 日本経済新聞
本書のタイトルにあるGAFAとは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字である。著者は強大な力をもった4社を、地上の4分の1を支配し、地上の人間を殺す権威を与えられているとされる黙示録の4騎士に例える。
著者は米ニューヨーク大教授。9つの会社を起業した経験がある。
グーグルは現代人にとっての知識の源であり、神に近い存在となった。確かに我々は家族や親友、医師にさえ尋ねないことを質問し、グーグルはこの結果どんな近親者や専門家も知らない秘密を知り、その記録を残すことで更に信頼を得る。そして、我々がいつどこにいるのかも知っている。
メディアや通信よりはるかに大きな産業である小売業を支配しつつあるアマゾンは、書籍だけでなく様々な分野で敗者を生み出し続けている。今や物流のインフラストラクチャーをも構築し、多くの企業に貸し出している。
著者は、12億人が毎日フェイスブックと関わっていることを挙げ、普及率と利用率を基準にすれば、人類史上、最も成功した企業と評価する。「いいね」をつけるほど、フェイスブックは我々よりも我々のことを深く理解する。
アップルは、低コストの製品を高価格で販売するという、非常に困難なことを成し遂げ、歴史上最も利益率の高い企業となったと著者は評価する。アップル製品を保有することは、社会の歯車の一つではないというイメージを作り上げ、こうした感情を販売することで、宗教に近くなった。ぜいたく品ブランドとしての地位によって4騎士の中で最も長く存在すると著者は予測する。
黙示録の4騎士の例えが示す通り、本書の解説は大げさにも思える。それでも個々の企業が既にもっている力と今後の狙いに関する分析には説得力があり、恐ろしさを感じながらもページをめくることをやめられない面白さがある。
本書は4騎士の脅威を解説すると共に彼らの支配する世界で生きるための方法を提示する。優秀な人材と資本の4騎士への集中は彼らの金もうけにつながるだけだと断じる一方で、4騎士のサービスを活用して、理解することを勧め、知的好奇心をもつことの重要性を説く。これからの時代の自己啓発書としても読めるだろう。
《評》昭和女子大学教授 湯川 抗


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