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東京β―更新され続ける都市の物語  速水健朗  2016.9.24.

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2016.9.24.   東京 β― 更新され続ける都市の物語 著者 速水健朗  1973 年石川県生まれ。ライター、編集者。コンピュータ誌の編集を経て現在フリーランスとして活動中。専門分野はメディア論、都市論、ショッピングモール研究、団地研究など。 TOKYO FM 「速水健朗のクロノス・フライデー」パーソナリティ 発行日            2016.4.25.  初版第 1 刷発行 発行所           筑摩書房 本書は、フリーペーパー『 Scripta 』 ( 紀伊国屋書店出版部 )2009 年 2 月~ 14 年 1 月の連載『トーキョーβ』に、大幅加筆修正したもの 元になった連載は、オリンピック招致に失敗した時代に書かれた東京論で、書籍化する時点では全く逆の形に書き直し はじめに 東京の町は、常にその姿を変化させている 東京ほど、かつての姿を後世に残していない都市は世界にも例がない 本書は東京論。かつての東京の姿が伝わるフィクション ( 映画、ドラマ、小説、マンガ ) を多く取り上げている。 ” 都市の変化 ” を意識的に描いている作品を論じる ソフトウェアやウェブサービスなどにおいて、正式版をリリースする前に発表する「試用版」をβとする習わしがある。永遠に完成しないという意味合いを含めてベータと命名することが IT の世界で流行ったのは少し前のこと。完成せずに更新され続ける街をテーマにした都市論であることを示すのにふさわしい題名としてつけた 東京オリンピック以降の東京は、新宿、渋谷といったターミナルを中心とした西側が発展してきたが、発展の傾向が次の段階へと移行しつつある東京の変化を捉えたつもり。湾岸の埋め立て地をはじめ、水辺の東京が次なる発展の現場である 東京を舞台とした作品群を全体として俯瞰すると、街の変遷のイメージが積み重なった地層をなす堆積物に見えてくる。こうした堆積物としての都市の記録の束を発掘することで、東京の変化を探る。それが本書の目的 第1章         東京湾岸の日常――家族と高層集合住宅のクロニクル 東京中心部の大規模開発は、オリンピック決定以前から進んでおり、五輪開催とは関係なく、発展を迎えているというのが正解 臨海地域は、幾度かの計

ことばあそびの歴史  今野真二  2016.9.23.

2016.9.23.   ことばあそびの歴史 日本語の迷宮への招待 著者 今野真二  1958 年神奈川県生まれ。早大大学院博士課程後期退学。高知大助教授を経て、現在、清泉女子大教授。日本語学専攻 発行日            2016.6.20.  初版印刷           6.30.  初版発行 発行所            河出書房新社 ( 河出ブックス ) 言語は単なるコミュニケーションの道具ではない――― なぞなぞ、縁語、掛詞、折句、沓冠、いろは歌いろいろ 『徒然草』のなぞ、口合・地口、無理問答、判じ絵、回文、考え物、都都逸…… 『万葉集』から、なぞなぞの宝庫というべき中世、言語遊戯百花繚乱たる江戸、幕末・明治まで、おもしろい言葉遊びを紹介しつつ、時代時代の言語生活の息吹を感じながら、日本語という言語のワンダーランドへ読者をいざなう はじめに 過去の日本語のありかたについての説明をきちんとしたうえで、その「ことばあそび」のおもしろさ、仕組みについて理解してほしい 「ことばあそび」も原典に遡ることが大事。古典文学作品に支えられていることが多い 『古事記』撰進の翌 713 年に、郡内の産物について品目のリストを作り、土地の名称の由来やその土地に関わる伝承などの報告を求める官命によって撰進されたのが『風土記』 第1章         ことばあそび事始め 『万葉集』巻 13 は「挽歌」を収めるが、 3330 番の長歌に「くくりつつ」とあるのを、「八十一里喚鶏」と書いているのは、「九九 八十一」の連想 他にも数字がよく使われる  ⇒  「なむ」を「七六」と書いたり、「すべしや」に「八」を当てたりする例がある 『古今和歌集』巻 13 は「恋歌」を収めるが、ある語を軸として、その語と何らかの関係を持っている言語 ( 縁語 ) を使って表現を組み立てた和歌や、掛け詞という技法を用いた歌、あるいは縁語と掛け詞7の両者を使った歌がよく見られる 折句  ⇒  特定の単語を五七五七七の各句の頭に折り込んだ歌のこと を ぐらやま  み ねたちならし  な くしかの  へ にけむあきを  し るひとぞなき ( 紀貫之 ) 1 首の和歌 31 文字を頭にして 31 首詠んだものもある