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大名家の秘密  氏家幹人  2019.3.22.

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2019.3.22. 大名家の秘密 秘史『盛衰記』を読む
著者 氏家幹人 1954年福島県生まれ。東京教育大学文学部卒業。歴史学者(日本近世史)。江戸時代の性、老い、家族を中心テーマに、独自の切り口で研究を続けている。著書に『江戸時代の罪と罰』、『江戸人の性』『武士道とエロス』『江戸人の老い』『江戸の少年』
発行日2018.9.25. 第1刷発行 発行所草思社

高松藩士・小神野(おがの)与兵衛が十八世紀半ばに記した『盛衰記』。そこには、高松松平家やその本家の水戸家の殿様たちの生々して行状や、大名父子の壮絶な確執、大名と家臣たちの濃密すぎる関係性が鮮明に描かれている。武士の忠臣美談など「武士道」のイメージとはまるで異なる、江戸前期の激越な武士世界をつまびらかにする。
家康の子、孫、ひ孫の、奇矯な行状!
宿場の焼き討ち指令──〈水戸藩・初代〉徳川頼房(よりふさ)
屍(しかばね)漂う川を遊泳──〈水戸藩・2代〉徳川光圀(みつくに)
将軍家光とお風呂で指切り──〈高松藩・初代〉松平頼重(よりしげ)
罪人試し斬りと解剖──〈高松藩・2代〉松平頼常(よりつね)

はじめに――高松藩『盛衰記』の世界へ 主な登場人物は高松藩の初代藩主松平頼重と二代頼常だが、2人の評伝でもなければ、高松藩の藩政史でもない 高松藩士小神野与兵衛が晩年記した『盛衰記』には、高松藩松平家とその本家である水戸徳川家の興味深い話が記録されている。小神野は藩の諸記録に漏れた様々な逸話を、古老からの聞き取り(オーラル・ヒストリー)によって採録し、後世に伝えようとした 藩主の心の中まで照らし出すような記述は貴重 頼重は徳川頼房(家康の末子)の長男でありながら、父の命で水にされるところを家臣に救われ、英勝院(頼房の養母)の尽力で家光に拝謁し、高松藩主となる 頼重の弟光圀は、兄が継ぐべき水戸家を継いだことを悔い、自らの子・頼常を水にして兄の子を水戸藩主にしようとしたが、頼重の尽力で無事誕生し、極秘裏に高松に迎えられる 家光もまた長男でありながら父母に嫌われ、祖父家康の力で継嗣となる 『盛衰記』には、頼房と頼重、頼房と光圀、頼重と頼常の父子がしっくりいっていなかった様子が描かれ、堕胎や間引き、更には「子殺し」の伝統という「大きな歴史」と向かい合うが、それは現代の親子が抱える問題にもつながる もう1つのテーマは、大名家の主従関係 ⇒ 江戸前期(元禄以前)の武…