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蔦屋  谷津矢車  2023.5.29.

  2023.5.29.  蔦屋   著者 谷津矢車 第 18 回歴史群像大賞優秀賞受賞。 2013 年『洛中洛外画狂伝』でデビュー。歴史小説を中心に執筆。演劇の原案なども手掛ける   発行日            2014.4.8.  第 1 刷発行 発行所            学研パブリッシング   『 23-05  稀代の本屋 蔦屋重三郎』参照   プロローグ 日本橋通油町に戯作や錦絵を扱う地本問屋 ( じほんどんや ) 豊仙堂の店を開く丸屋小兵衛 天明の頃から家運は少しづつ傾く。小兵衛は 51 歳で隠居を考え、店を売りに出す 買いに来たのが蔦屋重三郎。江戸随一の本屋・鱗形屋の下請けから始まって、今は独自の商いを始めて成功している耕書堂の主人。生涯にわたり年 20 両で共同経営を持ちかける     第1章           重三郎は豊仙堂を買ったが、店を開けようとしない。そこへ北川豊章が転がり込んでくる 小兵衛は絵がうまいと思ったが、重三郎は単に鳥居清長の真似をしているだけといって取り合わないので、小兵衛が自分の金で雇う 重三郎は、狂歌集に挿絵を入れることを考え、大田南畝の狂歌に北川豊章 ( 後の歌麿 ) の虫の絵を組み合わせ、その本を吉原から外に出た日本橋の店で売る   第2章           挿絵を入れた狂歌本は飛ぶように売れ、喜多川歌麿の筆名も一躍有名に   第3章           次に重三郎が目を付けたのは、山東京伝の戯作に絵をつけた草双紙。元々草双紙は子供向け、粗雑な紙で作られた 10 頁ほどの絵を中心にした本だったが、絵と文字両方で物語を追うことができる大人向けの本へと変質。きっかけは恋川春町の『金々先生栄花夢』 重三郎のアイディアは、倹約令を出して華美を取り締まり始めた松平定信の改革を、頼朝の時代設定に変えて揶揄する内容の黄表紙。作者は朋誠堂喜三ニで、世の人々の不満のはけ口となってバカ売れ   第4章           御公儀の締め付けが厳しくなって、春町は自死、朋誠堂喜三ニも筆を折り、南畝も離脱、京伝も断筆、好色物も絶版 寛政 3 年、最後の京伝の戯作を発表したのが奉行所に挙げられ、身代の半分を没収、京伝は手鎖 (