ゼロ・トゥ・ワン  Peter Thiel  2019.4.30.


2019.4.30. ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか
Zero to One ~ Notes on Startups, or How to Build the Future  2014

著者 Peter Thiel シリコンバレーで現在最も注目される起業家、投資家の1人。98年にペイパルを共同創業して会長兼CEOに就任、0215億ドルでeBayに売却。初期のペイパルメンバーはその後ペイパル・マフィアと呼ばれシリコンバレーで現在も絶大な影響力を持つ。情報解析サービスのパランティアを共同創業したほか、ヘッジファンドのクラリアム・キャピタルマネジメントとベンチャーファンドのファウンダーズ・ファンドを設立。Facebook初の外部投資家となったほか、航空宇宙、人工知能、先進コンピュータ、エネルギー、健康、インターネットといった分野で革新的なテクノロジーを持つスタートアップに投資
Blake Masters 本書のもとになったティールの講義を聴講してノートをまとめた聴講生。法律調査と分析のためのツールを作成するテック系スタートアップJudicataの共同創業者

日本語版序文 瀧本哲史 京大産官学連携本部イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門客員准教授。エンジェル投資家。東大法卒。同大学院法学政治学研究科助手を経て、マッキンゼー&カンパニーで主にエレクトロニクス業界のコンサルティングに従事。独立後は、企業再生やエンジェル投資家として活動

訳者 関美和 翻訳家。慶應大文卒。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。モルガン・スタンレーを経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長

発行日           2014.9.25. 第1刷発行      14.10.10. 第2刷発行
発行所           NHK出版

19-03 ピーター・ティール』で言及


新しい何かを作るより、あるものをコピーする方が簡単だ
お馴染みのやり方を繰り返せば、見慣れたものが増える、つまり1がnになる
だけど、僕たちが新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる
人間は、天から与えられた分厚いカタログの中から何を作るかを選ぶわけではない
むしろ、僕たちは新たなテクノロジーを生み出すことで、世界の姿を描き直す
それは幼稚園で学ぶような当たり前のことなのに、過去の成果をコピーするばかりの社会の中で、すっかり忘れられている
本書は、新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるかについて書かれた本

日本語版序文 瀧本哲史
世界最大のオンライン決済システムペイパルの共同創業者であり、現在はエンジェル投資家、ヘッジファンドマネジャーとして、様々なテーマに投資している
ペイパルを創業し、後に電気自動車テスラ・モータースを創業したイーロン・マスクのXドットコムと合併させ、株式公開させた後最終的にイーベイに売却、その後活動の中心を投資業に移す
投資家としてのティールの最も有名な顔は、Facebookの最初の外部投資家として50万ドル融資し、後に7%の株式に転換、最終的に10億ドルになった
ビジネス向けSNSのリンクトインにも投資、IPOで大成功
ペイパル出身者が次々と会社を立ち上げ、あちこちの分野で成功し、その人的、経済的ネットワークが大きな影響力を持っていることから、彼らを俗に「ペイパル・マフィア」と呼ぶが、そのドンだとフォーチュン誌で評されている
スタンフォード大の学生向けに行った「企業論」の講義を基に書いたのが本書
ティールはかなり複雑な人間 ⇒ Facebook公開後まもなくほとんど売却、株価は大幅下落。その背景には空飛ぶ自動車があり、Facebookも含めたSNSの未来があまりにも小さく退屈だったということ
注力しているプロジェクトには荒唐無稽なものも多く、最近物議を醸したのはティール・フェローシップで、20歳以下の若者に対し、学校をやめるほかに特に条件なしに2年で100万ドルを支給するというもので、対象の研究は消費者向けの新サービスの開発から、基礎科学、政治に絡む一種までさまざまで、すでに一定の成果を上げている
志願者への質問で最も重視するのが、「世界に関する命題のうち、多くの人が真でないとしているが、君が真だと考えているものは何か?」というもので、個性を持った個人が、世界でまだ信じられていない新しい真理、知識を発見し、人類をさらに進歩させ、社会を変えていくことを、自らの究極の目的としている
多数派の意見を積極的に覆すことを意義あることと考える ⇒ 逆張り投資家
主張の最もコアの部分は、「リーン・スタートアップ」とは真逆で、「競合とは大きく違うどころか、競合がいないので圧倒的に独占できるような全く違うコンセプトを事前に計画し、それにすべてを賭けろ」というスタンス
競争より独占の重要性を強調。法曹を目指した競争での虚しさ、デリバティブのトレーダーとしても違いを作り出せなかった過去の自身のキャリアと深く関係
まだ多くの人が認めていない「隠れた真実」を、利害とビジョンを共有したマフィアによって発見し、世界中に売り込む

はじめに           
ビジネスに同じ瞬間は二度とない
ビル・ゲイツやラリー・ペイジ、マーク・ザッカーバーグをコピーしているようなら、君は彼らから何も学んでいないことになる。新しいものを作るより、在るものをコピーしているコピーする方が簡単だ。同じやり方を繰り返せば、見馴れたものが増える。つまり1nになる。僕たちが新しい何かを生み出すたびに、ゼロは1になる。何かを創造する行為は、それが生まれる瞬間と同じく一度きりしかないし、その結果、全く新しい、誰も見たことのないものが生まれる
今日の「ベスト・プラクティス」はそのうちに行き詰まる。新しいこと、試されていないことこそ、「ベスト」のやり方
アメリカ企業が成功するには、何千もの奇跡が必要だが、他の生き物と違って、人類には奇跡を起こす力がある。それを「テクノロジー」と呼ぶ
テクノロジーは奇跡を生む。それは人間の根源的な能力を押し上げ、より少ない資源でより多くの成果を可能にしてくれる。新たなテクノロジーを生み出すことで、世界の姿を描き直す
本書は、新しい何かを創造する企業をどう立ち上げるかについて書いた本
成功の方程式はない。1つだけパターンがあるとすれば、成功者は方程式ではなく第1原理からビジネスを捉え、思いがけない場所に価値を見出しているということ

本書は、2012年にスタンフォード大で受け持った起業の授業から生まれた。専門分野によって決まった路線の外にもっと広い未来が広がっていること、その未来を創るのは君たち自身であることを教えたかった

1.    僕たちは未来を創ることができるか
採用面接で必ず聞く質問:賛成する人がほとんどいない。大切な真実は何だろう?
未来について2つだけ確かなことは、未来は今と違う、だけど未来は今の世界がもとになっている
未来は進歩していることを願うが、進歩には2つの形がある、1つは水平的進歩、または拡張的進歩といって、成功例をコピーすること、つまり1からnへと向かうこと。もう1つは垂直的進歩、または集中的進歩で、新しい何かを行うこと、つまりゼロから1を生み出すこと
マクロレベルでの水平的進歩を一言で言い表すとグローバリゼーションであり、垂直的進歩はテクノロジーとなる
最初の質問に対するティールの答えは、ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけど、実はテクノロジーの方が遥かに重要
既存のツールだけに頼ってグローバリゼーションが進めば、生まれるのは富ではなく破壊であり、資源の限られたこの世界で、新たなテクノロジーなきグローバリゼーションは持続不可能
周囲の環境は驚くほど変わっていない。
前世紀の半ばから劇的に進化したのはコンピュータと通信だけ。より良い未来は自動的にやってくるものではなく、21世紀をこれまでより平和な繁栄の時代にしてくれる新たなテクノロジーを思い描き、それを作り出すことが今の僕らに与えられた挑戦なのだ
新しいテクノロジーを生み出すのは、大体ベンチャー企業、つまりスタートアップで、チームで働くことが原則、かつ実際に仕事をやり遂げるにはそれを少人数に留める必要がある

2.    1999年のお祭り騒ぎ
90年代の終わり、当時のニューエコノミー(情報通信などのニュービジネスのこと)の常識では、収益というありふれた経済指標よりも、ページビューのほうが権威ある先行指標とされた
90年代のインターネット・バブルは1929年の大恐慌以来最大規模。その崩壊から学んだ苦い教訓が、今日のテクノロジーについての考え方を、ほとんどすべての面で歪めている
すべてを変えたのがインターネット ⇒ 934月にブラウザのモザイクが正式発表され、誰でもオンラインにアクセス出来るようになる。モザイクはネットスケープと改名、94年末にはナビゲーターを発表、一気に普及し1年もたたずにシェアは8割を超え、95年にはまだ収益を出していないのに上場し、株価は5か月で10倍を超えた
96年にヤフーが上場、848百万ドルの時価総額 ⇒ 「根拠なき熱狂」が資産価格を過度に押し上げていると言われたが、テクノロジー投資家は根拠がないとは言い切れなかった
989月~003月までの僅か18か月間の狂騒が、ドットコム・バブル
99年パームパイロット間の決済サービスとして始めたペイパルは、005億ドルの評価が見積もられ、1億ドルを調達した直後バブル崩壊 ⇒ NASDAQ003月の最高値5048ポイントから0210月には1114の底値に暴落
テクノロジーに代わってグローバリゼーションが未来への希望となったが、それが新たなバブルを引き起こす。それは不動産
ドットコム・バブルの崩壊から学んだ教訓
    少しづつ段階的に前進すること ⇒世界を変えたいなら謙虚に
    無駄なく柔軟であること ⇒ 計画を立てるより、試行錯誤の繰り返し
    ライバルのものを改良すること ⇒ 既存顧客のいる市場から始める
    販売ではなくプロダクトに集中すること ⇒ テクノロジーは製品開発に活かせ。バイラル(viral:「ウィルス性の」が原義、商品やサービスがネット上のSNSなど口コミで急速に拡散していく仕掛け)な成長だけが持続可能
スタートアップ界の戒律となったが、正しいのはその逆
    小さい違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
    出来の悪い計画でも、ないよりはいい
    競争の激しい市場では収益が消失する
    販売はプロダクトと同じくらい大切
ビジネスについて、過去の失敗への間違った反省から生まれた認識はどれか、何よりの逆張りは大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えること

3.    幸福な企業はみなそれぞれに違う
完全競争下では長期的に利益を出す企業は存在しない
独占企業とは、他者とは替えがきかないほど、そのビジネスに優れた企業のこと
永続的な価値を創造してそれを取り込むためには、差別化のないコモディティ・ビジネスをおこなってはならない
非独占企業は、様々な小さな市場が交差する場所を自分たちの市場と位置付けることで、自分の独自性を誇張して、勝手に市場を極端に狭く限定して市場を支配しているかのようによそおうが、他方、独占企業は、自分たちの市場をいくつかの大きな市場の総和と定義づけることで、独占的地位をカモフラージュして、詮索や批判から自分たちを守る
クリエイティブな独占は、全く新しい潤沢な領域を生み出すことで、消費者により多くの選択肢を与えるとともに、よりよい社会をつくる強力な原動力になっている
発明を特許で守るのは、独占の効用を認め、法的保護を与えたもの
独占的利益は、社会に潤沢さをもたらした見返りであって、人為的につくられた稀少性から得られたものではない ⇒ アップルのiOSがマイクロソフトのOS市場の独占を崩したのも、6070年代のIBMのハードウェア独占をマイクロソフトのソフトウェアの独占が切り崩したのも、AT&T20世紀の大半の間の電話市場独占を崩したのも、独占が新たなイノベーションを起こしたもの
進歩の歴史とは、より良い独占企業が既存企業に取って代わってきた歴史
経済理論の当てはまらない現実世界では、他社のできないことをどれだけできるかで、成功の度合いが決まる ⇒ 独占は異変でも例外でもなく、すべての成功企業の条件

4.    イデオロギーとしての競争
競争とはイデオロギーであり、社会に浸透し思考を歪めている ⇒ 必要性を正当化し、その教義を実践すればするほど、競争の中に捕らわれ、得られるものは減っていく
人はなぜ競争するのか?
マルクスは、人は違いがあるから闘うのだという。違いが大きいほど溝も深い
シェークスピアは逆に、競い合う人々の間にあまり違いはないという。そもそも闘う理由などなく、なぜ闘っているのか当事者も分からない。ビジネスの社会はこちらに近い
ライバルを倒せないなら合併した方がいい ⇒ ペイパルを始めるとイーロン・マスクが完コピでXドットコムを立ち上げ追っかけてきた。急激に膨れ上がったハイテクバブルを前に、50/50の合併を交渉してバブル崩壊を乗り切った

5.    終盤を制する Last mover advantage
偉大な企業か否かは、将来のキャッシュフローを創出する能力で決まる ⇒ ニューヨークタイムズとツイッターを比較、どちらも数千人の社員がいて、数百万人にニュースを届けるが、13年ツイッターが上場した際の時価総額は240億ドルでタイムズの12倍を超えた。タイムズは12年に133百万ドルの利益を計上し、ツイッターは赤字にも拘らず、ツイッターはこれからの10年間に独占利益を取り込むことができると予想し、新聞の独占は終わったと考えた
ディスカウント・キャッシュフローを比べれば、低成長企業と高成長スタートアップとの違いは歴然 ⇒ 割引率も10年前より低くなったので、より差が大きく出てくる
ただし、価値ある企業となるためには、成長するとともに存続しなければならない
このビジネスが10年後も存続しているかどうかは重要なポイント ⇒ ビジネスの定性的な特徴を客観的に考えることが必要
長期的に存続しうる独占企業が特徴として持っているのは、プロプライエタリ・テクノロジー、ネットワーク効果、規模の経済、そしてブランドであり、この特徴に従って自分のビジネスを分析することが存続可能な企業を作るのに役立つ
プロプライエタリ・テクノロジーとは、人より少なくとも10倍は優れていること。新しい何かを発明するのが一番だが、既存のソリューションを劇的に改善する方法でもいい
アマゾンは、95年オープンした際他の書店より少なくとも10倍の書籍を備えていた
iPadが成功したのも、タブレットの包括的な優れたデザインによって他社の同様製品を凌駕し、タブレットが「売れない」ものから「役立つ」ものに変わった
利用者数が増えるにつれ、より利便性が高まるのがネットワーク効果だが、ネットワークが小規模な時の初期ユーザーにとっても価値あるものでない限り効果は広がらない
Facebookも当初は、ハーバードの学生だけの間で始まった
ペイパルも、最初のプロダクトはパームパイロット経由の決済サービスで、世界中の数百万のユーザーは地域もバラバラで、共通点もほとんどなかったため誰にも必要とされなかったが、イーベイのオークションに狙いを定め、取引量の多い「パワーセラー」数千人に的を絞って売り込んだ結果、その1/4が利用してくれたためにたちまちのうちに広がった
スタートアップが狙うべき理想の市場は、少数の特定ユーザーが集中していながら、ライバルがほとんど或いは全くいない市場
First mover Advantage先手必勝というが、小さなニッチを支配しそこから大胆な長期目標に向けて規模を拡大し、最後の参入者として大きく発展し、その後何十年にもわたって独占利益を享受する

6.    人生は宝クジじゃない
成功は運か実力かという問題は、未来をコントロールできるかどうかにかかっている
曖昧な悲観主義 ⇒ ユーロ圏全体がこの状態にあり、刹那主義、享楽主義へと向かう
明確な悲観主義 ⇒ 中国のように、将来環境が悪化することを知っていて近代化に走る
明確な楽観主義 ⇒ 未来への大胆で壮大な計画を立て実行しようとする
曖昧な楽観主義 ⇒ 未来になにかいいことがあると期待するだけで、具多的なデザインの必要を感じていない
3者は筋が通っているが、最後の曖昧な楽観主義だけはそれ自体矛盾 ⇒ 誰も計画を持たないのに、どうして未来が良くなると言えるのか
明確な未来に戻る道を見つけなければならない

7.    カネの流れを追え
分散に極端な偏りが出る「べき乗則(ある観測量がパラメータのべき乗に比例すること)」は万物の法則 ⇒ ベンチャーキャピタルは、アーリーステージへの投資によって指数関数的成長から利益を得ることを試み、ほんの数社の価値が他の全ての企業の価値を遥かに超える
ほとんどのスタートアップは失敗し、ファンドは消滅する。正規分布による分散を追いかけるのではなく、圧倒的な価値を生み出すほんの一握りの企業を必死に追いかけなければ、稀少な機会を逃す
05年にティールが結成したファウンダーズ・ファンドの結果を見れば、Facebookが他のすべての案件の合計よりも多くのリターンをもたらしたし、その次に成功したパランティアへの投資は、Facebook以外のすべての案件の合計を超えるリターンを生んだ
ベンチャーキャピタルにとって何よりも大きな隠れた真実は、ファンド中最も成功した投資案件のリターンが、その他全ての案件の合計リターンに匹敵するか、それを超えること
ベンチャーキャピタルの鉄則は、ファンド全体のリターンを1社で叩き出す可能性のある企業だけに投資すること
09年マーク・アンドリーセンとべン・ホロウィッツによって設立され、Facebookやツイッター、スカイプなどに出資。インスタグラムに25万ドル投資して2年後にFacebookがインスタグラムを10億ドルで買収すると、78百万ドルを手にして、この衝撃的なリターンによってアンドリーセンはシリコンバレーで最高のファンドという評判を確実にしたが、ファンド総額が15億ドルであることを考慮すると、トントンにするためにはインスタグラムのような成功案件を19も見つけなければならない勘定。ということは、ファンドは投資に値する企業を見つけると遥かに多額の資金をつぎ込み、あらゆる手立てで彼らを応援する
べき乗則を理解している投資家は、投資案件の数を出来るだけ絞り込む ⇒ 不確実な未来へのヘッジとすべく分散投資こそ力の源泉と考えるポートフォリオ思考では成功は覚束ない。一つのもの、一つのことが他の全てに勝る
学校教育がいい例で、何をしてもかまわないがうまくやれと教えるが、肝心なのは何をやるかだ

8.    隠れた真実
今は当たり前とされているアイディアはどれも、かつては誰も思いつかず考えてもみないようなものだった
難しいことには手が届いても、不可能なことには手が届かない ⇒ この世界に多くの知られざる真実が残されているとしたら、世界を変えるような会社がおそらく数多くこれから生まれるはず。それをどうやって見つけるかが課題
物理的なフロンティアがほぼなくなったという自然の制約に加えて、4つの社会トレンドが隠れた真実への探求心を根っこから摘み取ろうとしている
    漸進主義 ⇒ 1度に1歩づつ、毎日少しづつものごとを進めるのが正しいやり方だと教えられる
    リスク回避 ⇒ 間違いを恐れて孤立を回避する。隠れた真実とは、主流が認めていないこと
    現状への満足 ⇒ 過去の遺産でのうのうと暮らしていける
    フラット化 ⇒ グローバリゼーションの進行により世界が同質的で競争の激しい市場と見做されるようになり、隠れた真実などもうないと諦める
隠れた真実が存在しない世界では、完全な正義が実現している。民主的な社会では、大半の人が不正義だと思わない限り、間違った慣習が続けられる
経済において、隠れた真実が存在しないという思い込みは効率的市場への信仰に繋がる。金融バブルの存在は、市場が驚くほど非効率になり得ることを示すもの
企業が隠れた真実の存在を信じなくなった警告となる事例が、ヒューレット・パッカードの成功と凋落 ⇒ 90年の時価総額は90億ドル。その後の発明の10年で1350億ドルに。プリンターやラップトップで世界初を連発したが、01年に大々的にコンサルティングとサポート業務に乗り出し02年にはコンパックと合併、発明をやめると05年の時価総額は700億に急減。取締役会は2派に分裂して機能不全に。新しいテクノロジーを気にかけていたのはそのうちの片方だけ、金融出身の派閥が支配し始めテクノロジーの開発を軽視した結果、12年末の時価総額は230億ドル、インフレ調整後では90年とほぼ変わらない水準に落ちた
隠れた真実はまだ数多く存在するが、それは飽くなき探求を続ける者の前にだけ姿を現す。ビジネスも同じで、偉大な企業は眼の前にあるのに誰も気づかない世の中の真実を土台に築かれる ⇒ エアビーアンドビーも個人送迎サービスのリフトやウーバーも、隠れた真実の存在を信じ、それを探した結果が大きなビジネスに繋がった。インターネット企業が過小評価されるのは、それがあまりに単純なものだからで、それ自体が隠れた真実の存在を裏付けている
隠れた真実には2種類 ⇒ 自然についての隠れた真実と、人間についての隠れた真実
人間についての隠れた真実はあまり重要だとは思われていない。人が語らない禁忌やタブーは何か?
秘密を探すべき最良の場所は、他の誰も見ていない場所
隠れた真実を見つけたら、伝える必要のある人だけに限定して打ち明ける

9.    ティールの法則
創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップは後で直せない
誰と始めるか ⇒ 創業者同士お互いがよく知っていることが重要
チームの存在。すべての関係者がフルタイムであること。適切な報酬。取締役は3人が理想的
アーリーステージのスタートアップでは、CEOの年収は15万ドルまで。年収30万ドルを超えると政治家のようになり、現状維持のインセンティブにしかならない
自社株という報酬形態は、社員の意識を未来価値の創造へと向ける
価値ある企業は、すべての始まりである発明に対してオープンな姿勢を貫く ⇒ 新しいものを作り出している限り「創業」は続き、それがとまると「創業」も終わる

10. マフィアの力学
理想の企業文化とは? ⇒ 企業そのものが文化で、スタートアップとは使命を共有する人々の集まりであって、良い企業文化とはその姿を反映しているに過ぎない
ペイパルは、単なる取引の場ではなく、固いつながりのある場所、絆が強いほど、居心地がよく仕事も捗るし、ペイパル以降のキャリアもうまくいくと考えた。一緒に働くことを心から楽しんでくれる人、他でもない僕たちと働くことに興奮してくれる人を採用したのが、マフィアの始まり
人を惹きつける会社とは? ⇒ 会社の使命、その会社だけが持つ固有の重要性であり、一緒に働ける素晴らしい仲間がいること
スタートアップは、外から見た時に社員がみな同じように違っていなければならない
スタートアップでは、中の全員がそれぞれ全く違う仕事で際立たなければならない ⇒ アーリーステージでは役割が流動的になりがちだが、役割をはっきりさせることで対立が減った。社内の平和こそスタートアップの生き残りには必要
起業家は究極の献身の文化を真剣に受け止めるべきであり、一種の「カルト」に近いが、その対極にあるのはアクセンチュアのようなコンサルティングファーム
l  イーロン・マスク ⇒ ペイパル売却後、スペースX立ち上げ、テスラの共同創業者に
l  リード・ホフマン ⇒ 67年カリフォルニア生まれ。アップル・富士通を経て、00年ペイパルのCOO02年リンクトインの共同創業者
l  スティーブ・チェン ⇒ 78年台湾出身。イリノイ大の同級生レヴチンの誘いでペイパルにエンジニアリングマネジャーとして参加。05年ユーチューブを共同創業
l  チャド・ハーリー ⇒ 77年ペンシルベニア生まれ。ペイパルにデザイナーとして参加。05年ユーチューブを共同創業、10年までCEO
l  ジョード・カリム ⇒ 79年東独生まれ。イリノイ大からペイパル入社。05年ユーチューブを共同創業。その後スタンフォード大のコンピュータサイエンスの修士号
l  ジェレミー・ストップルマン ⇒ 77年バージニア生まれ。イリノイ大からXドットコムへ。ペイパル合併後はエンジニア担当。イェルプを共同創業
l  ラッセル・シモンズ ⇒ イェルプを共同創業
l  デビッド・サックス ⇒ 72年南ア生まれ。スタンフォード大でティールと新聞編集。マッキンゼー経由ペイパルのCOO。ハリウッドで映画製作後、ヤマー立ち上げ

11. それを作れば、みんなやってくる?
販売の重要性を軽んじている ⇒ シリコンバレーではフィールド・オブ・ドリームス(それを作ればみんなやってくる、といってトウモロコシ畑に野球場を作った)的な発想が一般的で、エンジニアは売ることよりもクールなものを作ることしか考えていない
最高のプロダクトが勝つとは限らない
プロダクト自体に友人を呼び込みたくなるような機能がある場合(Facebookやペイパルなど)、それはバイラルする ⇒ 友達と何かをシェアするたびに、より多くの人がそのプロダクトのユーザーとして自然にそのネットワークに招き入れられる

12. 人間と機械
今日のスマホは、人類を月に送ったコンピュータの数千倍の処理能力を備えている
コンピュータはあくまで人間を補完するものであって、人間に替わるものではない
グローバリゼーションは、世界中の人々に激しい競争をもたらし、需要は限りなく伸びるが、テクノロジーは人を補う ⇒ 人間と機械はそれぞれ根本的に異なる強みを持つ。人間には意思があるが、コンピュータは効果的にデータを処理できる反面、人間にとっては至極簡単な判断さえ下せない
テクノロジーをうまく利用することは、グローバル化する世界で競争を避ける1つの手段となる
人間による情報収集だけでも、コンピュータだけでも市民の安全は確保できない。CIAはスパイで成り立っている。国家安全保障局NSAはコンピュータに頼る。CIAの分析官は大量のノイズから情報を拾い出さねばならず、本当に深刻な脅威を特定できない。NSAのコンピュータは膨大なデータ量を処理できるが、テロ行為を目論んでいるかどうかはっきり特定することはできない。パランティアは人間とコンピュータの協力によるハイブリッドな仕組みでこうした2項対立を超えることを目指す ⇒ 大量のデータから怪しげな情報をふるい出すことまではコンピュータが行い、そのあとは訓練を受けた分析官が精査をすることによって必要情報を特定する
最先端のソフトウェア以上に重要なのは生身の人間で、高度に訓練された彼らが積極的に関わらなければソフトウェアも役に立たない
生身の人間とコンピュータの補完関係をこれほど多くの人が見逃している原因は、学校教育にある ⇒ コンピュータサイエンスで一番注目を集めているのは「機会学習」だが、これこそ人間の代替物を想像させるし、流行語までになった「ビッグデータ」にしても、量が多ければ生み出す価値も大きいとして狂ったようにデータをかき集めているが、たいていのビッグデータはガラクタであり、コンピュータは人間が見逃してしまいそうなパターンでも発見できるが、異なるソースのパターンを比べることもできなければ、複雑な行動を解釈することもできない。行動に繋がるような分析ができるのは人間だけ
最も価値ある未来の企業は、コンピュータだけでどんな問題を解決できるかとは問わないはず、人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどう助けられるだろうかと考える
コンピュータはますます賢くなるが、代替主義の行き着くところは「強いAI」で、テクノロジーは人間が自然をコントロールすることを助け、人生における運命のいたずらを減らすものとされるが、「強いAI」が人間に取って代われば、また人生が運命のいたずらに翻弄されることになるかもしれない
コンピュータが人間にとって代わるかどうかは22世紀の心配事で、いまはっきりとした計画を作るのをやめていい理由にはならない

13. エネルギー2.0
21世紀初頭には、次に来るのはクリーンテクノロジーだと誰もが思っていたので、何千というクリーンテクノロジー企業が生まれ、500億ドルを超える金額が投資されたが、結果はバブルに終わる
最も有名な「幽霊」環境企業となったのは太陽光発電のソリンドラ
7つの課題が等閑にされた結果のバブル崩壊:
    エンジニアリング ⇒ ブレークスルーとなる技術(=プロプライエタリ・テクノロジー)が開発できるか?
    タイミング ⇒ ビジネス開始の適切なタイミングか? 世界初のシリコン太陽電池が開発されたのは1954年であり、動きが遅い市場に参入するのはよほど市場を独占できるような具体的かつ現実的な計画があるときに限られる
    独占 ⇒ 大きなシェアが獲れる小さな市場から始めているか? 独自性を強調しても、対象の市場やそこでも競合状況を的確にみているか。太陽光発電では優れていても、対象の市場は代替エネルギー全般となると、独占は困難
    人材 ⇒ 正しいチーム作りが出来ているか。スーツを着たCEOのいるテクノロジー企業には投資しないのが鉄則
    販売 ⇒ プロダクトを届ける方法があるか? 販売と流通はプロダクトそのものと少なくとも同じくらい大切
    永続性 ⇒ この先10年、20年と生き残れるポジショニングが出来ているか? 自身の市場でラストムーバーとなるような戦略を立てるべき
    隠れた真実 ⇒ 他社の気づいていない独自のチャンスを見つけているか? 誰もが異論のない「常識」を基に明るい未来を描いても落とし穴は回避できず、具体的な成功の理由は周りから見えないところにある
環境バブルは、史上最大の「社会起業」現象であり、最大のどんでん返しだった ⇒ 慈善目的のビジネスというアプローチの根っこには、営利企業と非営利企業は対極にあるという前提が存在。社会的目標と利益目標の板挟みは、成功の妨げ
社会の誰もが「いい」ということはただの常識に過ぎず、非営利組織も揃って同じ課題を追求すれば、営利企業の潰し合いと同じことになる
本当に社会のためになるのは、これまでと「違う」もので、それが新たな市場の独占を可能にし、企業に利益をもたらす
テスラは、7つの質問にすべて答えたスタートアップ ⇒ その成功は、クリーンテクノロジー自体何の問題もないことを証明
代替エネルギー企業の2000年代の株価を、その10年前のナスダック指標と重ねると、ほぼ同じ形となる
90年代には、インターネットはビッグになるという発想があったが、マクロ規模の洞察があっても、起業家がそれを独自の計画に落とし込み、小さな規模から始めない限り、マクロトレンドから恩恵を受けることはできない
ドットコム・バブル崩壊の後に起業したウェブ2.0のスタートアップが成功したように、環境バブル崩壊の後に起業した新たなエネルギー企業が成功するためには、エネルギー2.0を生み出すべく小さく考えることが必要

14. 創業者のパラドックス
ペイパルの創業者6人組のうち、4人は高校時代爆弾を作っていた、5人は23歳以下、4人はアメリカ以外の生まれ、3人は共産圏からの脱出者
l  ユーバン ⇒ 中国出身
l  ルーク・ノゼック ⇒ ポーランド生まれ。未来の医療技術で組成してもらえることを期待して遺体保存契約を結ぶ
l  マックス・レヴチン ⇒ ソ連時代のウクライナ出身、故郷がないことを誇りにする。ソ連崩壊時家族ともどもアメリカへ政治亡命
l  ラス・シモンズ ⇒ トレイラー生活からイリノイ州トップの理系校へと進学
l  ケン・ハウェリー ⇒ 唯一の典型的なアメリカの特権階級育ち
成功した創業者の資質をグラフにすると正規分布の反対になる ⇒ 真逆の資質を併せ持つ
創業者は、個人の栄光と賞賛は常に屈辱や汚名と背中合わせであり、慎重さが求められることを自覚しなければならない、何よりも、自分の力を個人のものだと過信してはならない。偉大な創業者は、彼ら自身の仕事に価値があるから重要なのではなく、社員みんなから最高の力を引き出せるから重要なのだ

終わりに 停滞かシンギュラリティか
遠い未来について具体的なことはわからないが、大まかな輪郭を描くことはできる
衰退が繰り返される未来は考えにくい
最も裕福な国の水準に全世界が追い付き、その後は横ばいとなる未来 ⇒ グローバリゼーションで生活水準の収斂や均一化が起こり得るが、稀少な資源を巡る競争が加わると、その未来が永遠に続くとは考えられず、停滞から衝突に発展し、破滅へと向かう
新たなテクノロジーを生み出し、遥かにいい未来へと向かうシナリオ ⇒ シンギュラリティ(技術的特異点。テクノロジーの進歩により人類を超える知性が生まれる段階)
絶滅か進歩か ⇒ 新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、より良い未来を創らないと絶滅に向かう。進歩の第1歩は自分の頭で考えること。新鮮さと違和感を持って改めて世界を見ることで、世界を創り直し、未来にそれを残すことができる


小林啓倫 20140920 15:14
【書評】『ゼロ・トゥ・ワン君はゼロから何を生み出せるか』

先日テスラモーターズのイーロン・マスクCEOが来日し、メディアでも大きく取り上げられましたが、彼が「ペイパルマフィア」として知られるグループの一人であることをご存じの方も多いでしょう。1998年に立ち上げられたペイパルは、ドットコムバブルを潜り抜けて2002年に150億ドルでイーベイに売却され、創業に関わったメンバーは多くの利益を手にします。それがペイパルマフィアで、彼らは手にした利益を基に、その後様々な道へと進んでいきます。冒頭のイーロン・マスクを初めとして、リンクトインのリード・ホフマン、イェルプのジェレミー・ストップルマン、ユーチューブのチャド・ハーリーやスティーブ・チェン、ジョード・カリムなど、さらなる成功を収めたメンバーも少なくありません。
そんなペイパルマフィアの"ドン"と称されるのがピーター・ティール。ペイパルの共同創業者で、その後ヘッジファンドのクラリアムとベンチャーファンドのファウンダーズ・ファンドを立ち上げた人物です。彼は自ら起業家として活動を続ける一方で、同じペイパルマフィアが立ち上げたリンクトイン、イェルプなどといった企業にも投資を行い、フェイスブック初の外部投資家にもなっています。さらに彼が現在投資しているのは、人工知能や宇宙開発、エネルギーといった注目分野のスタートアップであり、彼の動向が大きな関心を集めるほど。そんな彼がスタンフォード大学で行った、起業に関する授業から生まれたのが、日米で同時に発売される本書 ゼロ・トゥ・ワン君はゼロから何を生み出せるか画像を見る』です。
リンク先を見る ゼロ・トゥ・ワン君はゼロから何を生み出せるか画像を見る
ピーター・ティール ブレイク・マスターズ 瀧本 哲史

売り上げランキング : 88

シリコンバレーの大物起業家兼投資家が行った、起業に関する授業から生まれたと聞けば、「イケてるVCがスタートアップの秘訣を語ったハウツー本か」と思われるかもしれません。確かにそういった要素も含まれているのですが、むしろ本書は、これから先進国でビジネスパーソンとして生きていく人々に向け、単なるテクニックを超えた哲学を説く本であるように感じます。なにしろギリシア神話からシェークスピア、マルクスとエンゲルス、ゲーテ、果てはボブ・ディランやトールキンに至るまで引用されているのですから(ついでにプリンスの"1999"まで!)。
文字通り「0から1」の状態へと至ること、すなわち「まったく新しい何かを生み出すこと」に専念する姿勢が、これからの米国(を初めとした先進国の国々、と置き換えられるでしょう)には欠かせないとティールは訴えます。その考え方は、いわゆる「破壊的イノベーション」という表現を否定するほどの徹底ぶり。破壊的ということは、壊す相手が存在していることが前提となっているわけですから、起業家の意識を競争志向へと歪めてしまうというのがその理由です。破壊や競争を避け、新しい市場を創造することこそ、起業家が目指す方向であるとティールは説いています。
そして何より考えさせられるのが、リーン・スタートアップを初めとした、スタートアップに関する最近の「常識」に対する批判でしょう。彼はこうした常識と対比させる形で、まったく逆の原則の方が有効だと訴えます。
×少しずつ段階的に前進する
小さな違いを追求するより大胆に賭ける
×無駄なく柔軟である
出来の悪い計画でもないよりまし
×ライバルのものを改良する
競争の激しい市場では収益が消失する
×販売ではなくプロダクトに集中する
販売はプロダクトと同じくらい大切
さらにはリーン・スタートアップの中心的概念のひとつであるMVPMinimum Viable Product)も、「ちっぽけな考え」と批判しているほど。リーン・スタートアップ的な考え方とティールの思想、どちらが正しいのか賛否両論あると思いますが、ただティールは最近の「常識」が、ドットコムバブルの反動として生まれてきたものであると指摘しています。つまり冷静な分析に基づいたものではなく、一時的な状況に、機械的に反応したに過ぎないのではないかというわけですね。何も彼は、最近のトレンドへの逆張りをしたいわけではなく、むしろ「何よりの逆張りは、体勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ」と訴えています。
「空飛ぶ車が欲しかったのに、手にしたのは140文字だ(We wanted flying cars, instead we got 140 characters)」――大胆な目標を置かず、漸進的なアプローチからビジネスでの成功を目指すという姿勢に対するティールの失望は、彼のこんな言葉(ファウンダーズ・ファンドのマニフェストとして掲げられているもの)からも読み取れるでしょう。最終的にシンギュラリティにまで言及される本書には、テクノロジーに対する期待感と楽観主義、そしてまったく新しい価値を生み出すことに大胆にチャレンジしようという態度で溢れています。
リーン・スタートアップのように素早く動くこと、そしてそこからフィードバックを得ることを重視する姿勢と、ティールのように不可能とも思えるほどの目標を掲げ、0から1を生み出すことにこだわる姿勢。どちらをいつ選ぶのかは、ティールの言う通り「自分の頭で考える」として、その振り返りの姿勢こそが改めて見落としていたものに気づかせてくれるのではないでしょうか。少なくとも、ティールの言葉から、大きな刺激を受けることは間違いありません。スタートアップに興味がある人々だけでなく、日本の幅広い層に読まれて欲しい一冊だと感じています。


2018.11.11 2018.12.10
【ゼロ・トゥ・ワン 書評】ピーター・ティールの教えから自分なりに戦略を考察してみた
こんにちは。ITブロガーのマサタカです。
ビジネス系のオススメ書籍で必ず目にするピーター・ティール氏の「ゼロ・トゥ・ワン」ですが、いまさらながら読んでいました。これ、4年前に書かれたとは思えないような内容です。
https://i.moshimo.com/af/i/impression?a_id=1076837&p_id=170&pc_id=185&pl_id=4062
さて、この本ではピーターの伝説の投資家として持つ「投資の勘所」を包み隠さず僕たちに与えてくれると同時に、投資されるべく起業家になるための重要な事項について書き綴られています。
この中で、僕が深掘りしたいと感じたこちらの2点について今回は扱います。
企業が成功する7つの質問をAppleについて考える
ドットコムバブルからピータの逆張り教訓から僕のブログ戦略を考える
目次 [開く]
企業が成功する7つの質問をAppleについて考える
ピーター直伝の成功するビジネスプランとは
ピータが本書で語っている成功するビジネスプランではこれらの7つの質問が必ずきちんと答えられるはずだと主張しています。その7つの質問はこちらです。
ピータの7つの質問
エンジニアリング
段階的な改善ではなく、ブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?
タイミング
このビジネスを始めるのに、今が適切なタイミングか?
独占
大きなシェアがとれるような小さな市場から始めているか?
人材
正しいチーム作りができているか?
販売
プロダクトを作るだけでなく、それを届ける方法があるか?
永続性
この先10年、20年と生き残れるポジショニングができているか?
隠れた真実
他者が気づいていない、独自のチャンスを見つけているか? 
よく、成功した起業家は成功の理由として「運が良かった」というようなコメントを耳にします。しかし、ピーターから言わせると、成功している起業家は必ずこれらの質問をほぼ全て(少なくとも5つか6つ)を満たしていると言います。運などではなく、なるべくして成功の道を辿っているのだそう。
Appleは成功するべくして成功したのか
ピーターは本書にて、同じペイパルマフィア(わからない人は本書を読んで)であるイーロン・マスクが企業した「テスラ」はこれら7つの質問を完璧に満たしていると紹介しています。
そこで、ピーター先生に習い、Appleがこの7つを満たしているのかを検討したいと思います。
1つ・エンジニアリングは?
これは問題ないでしょう。1976年にApple I1984年に初代Macintosh、そしてジョブズ復帰後はiMaciPodiPhoneiPadとあなたもご存知の稀代なテクノロジーを世界に発信しています。
そして現在もテクノロジーの最先端を走っている企業となります。
2つ・タイミングは?
タイミングで言うと、最も最高だったのが「2007年」にiPhoneをリリースしているところです。2007年というインターネットのインフラが先進国では整いつつある中、まだその恩恵に預かっていないマジョリティ層を一気にかっさらうタイミングでした。
それと忘れてはいけないのが、「2010年」にiPadをリリースしています。他社がスマートフォン市場に後れを取るまいと焦っている中、AppleはスマホとノートPCの中間であるタブレットという新たな市場を作り上げました。このスピード感は圧巻だったし、後にも先にも2007年〜2010年のテクノロジー進化は歴史的に感じます。
3つ・独占は?
Appleは創業当初は今のように、一般向けの戦略ではありませんでした。当初はまさにマニアックなギークをターゲットにしていました。(というかギークにしか使えないものだった)
しかしそれがあったからこそ、世界中のギークから「Apple製品はイケてる」という認識を広めていきました。そこからはジョブズによるデザイン戦略などで段々とターゲット市場を広げていきました。
今では世界中の子供から老人までiPhoneを使いこなし、まさに独占状態を築いています。
4つ・人材は?
Appleにはデザインそして営業の天才である「スティーブ・ジョブズ」と、IQ 200と言われている天才エンジニアの「スティーブ・ウォズニアック」がいました。
ティールの法則と呼ばれている「創業時のメンバーが最も大事」ということに関しては、Appleほど恵まれたスタートアップはなかったでしょう。
5つ・販売は?
ウォズの作った素晴らしいプロダクトも売れなければ意味がありません。ジョブズはこれを上手く売る術を持っていました。特に優秀な戦略として語られいるのは「AppleStore」の存在です。
あなたの住む街にもあるかもしれませんが、あのオシャレなApple直営店舗のことです。
インターネットの力を存分に駆使して成り上がっている企業がなぜ莫大なコストをかけてリアル店舗なんて作るんだ??と当時の人たちは不思議でしょうがなかったと思います。
しかし結果的にこれが上手くいった要因になりました。「垂直統合型」の仕組みは実際のお客さんに届くまで完璧なアプローチを取ることができます。エンドユーザーのユーザー体験を最も大事にする戦略は世界中の人の満足度を上げて、さらにブランド力を高めました。
6つ・永続性は?
スマホ・タブレット市場を一気にかっさらってからは年に1度以上の製品アップデートを繰り返しています。ジョブズの死という不幸に見舞われましたが(生きてたらどうなっていたのか、、)経営自体は安定して伸ばしています。
いまだに世界で最もクールな企業に位置しているAppleの永続性は優位だと考えます。
7つ・隠れた真実は?
ジョブズは「テクノロジーはギークでオタクっぽいけど、実は誰もが憧れている」という隠れた真実を見事に経営に繋げたと思っています。
実は憧れであるテクノロジーを、誰でもわかりやすいようにデザインし、持っているだけでカッコいいと思わせるようなプロダクトにしました。
あなたのiPhoneの持つ理由は何ですか?異性にモテたい(笑)からではありませんか?

いかがですか?他の企業でも同じように考えてみると、なぜこの企業が成功しているのかがぼんやり見えてきます。

ドットコムバブルからピーターの逆張り教訓から僕のブログ戦略を考える
続いては、僕がこの本から大変学びがある、と感じた「ピーターの逆張り教訓」についてを取り上げます。
ピーターの逆張り投資方とは
ドットコムバブルから多くの起業家や投資家が学んだ4つの教訓についても、ピーターの逆張りの意見を主張しています。
ピーター4つの逆張り投資法
小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
出来の悪い計画でも、ないよりはいい
競争の激しい市場では収益が消失する
販売はプロダクトと同じくらい大切だ
これらはドットコムバブルを通して世の中が教訓にしているまさに逆な考えとなります。
特に起業の流行りのカタチとなっている「リーン・スタートアップ」(事前にあまり計画せずに、少しずつ改善することを重視)については「逆に上手くいきにくい」と批判をしているのが印象的です。
また、ピーターは何も世間の逆をいくこと自体が良いと言うわけでなく、大事なのは「大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えること」と言います。
僕のブログ戦略を考える
ピーター先生は自分の頭で考えろ、ということなのでたまには僕も自分の頭を使ってブログの戦略を考えてみようと思います。
小さな違いを追いかけるより大胆に賭けた方がいい
小さく段階的にではなく、大きなビジョンを持った方がいい。という内容なのですが、ブログでは大胆な賭けというのは難しいですかね。
あえて言うならは、はてなブログやライブドアブログのような無料ブログではなくて、初めからWordPressを使うってことかな。
であれば一応これは達成しています。テーマも有料の「STORK」を買ってますし、先行投資はしているので。
 出来の悪い計画でも、ないよりはいい
確かに、行き当たりばったりでブログやってますね。
とうことで、具体的な計画立てます!
具体的計画
2019年末までに月間5PVを達成する
2019年末までに月売上5万を達成する
記事は週に5本以上書く 
達成については今は全然見えてないですが、1年後はこのくらいはいっとかないとなー。
競争の激しい市場では収益が消失する
今はブログブームなのでどの分野もレッドオーシャン状態ですね。エンタメ、ゲーム、健康、教育、悩み系ではもう市場が激しすぎな感覚があります。
そして僕が中心でやっている「IT&ライフハック系」もそういった市場に近いと思います。
どうすれば良いか?と考えてみましたが、一点突破ではなく、複合でやっていこうかなと思っています。例えば「健康、教育」は僕もかなり関心を持っています。なので、この辺とIT系を組み合わせたコンテンツは需要があるのではないでしょうか。
なので「テクノロジーを使ってあまり解決していないところを攻めていく戦略」をしばらく続けていこうと思う。
販売はプロダクトと同じくらい大切だ
これはもう答えは出ていますかね。
ブログでは「文章の質の良さ」は最重要事項です。これは間違い無いのですが、その他にも大事なことがあって、それはいかに多くの人にリーチするかです。ありきたりですが、僕は実際にできていないので具体的にはこれらを頑張りたいです。
販売拡大に向けてやること
SEO対策
SNSを本格的にやる
アフィリエイト知識の勉強
SEOに関してはGoogleのアルゴ次第だから勉強しても無駄になる可能性がある、というような意見も聞きますが、やはりアクセスを伸ばすために意識はするべききだと感じています。これは知識もそうですが、いろいろ時間と記事をかけて試行錯誤してみます。
アフィリエイトについては現状だと本当にどうやったらいいかさっぱりわかっていません(笑)これは、純粋にマーケティング能力の向上は不可欠なんだと思います。この能力はブログ以外にもビジネスには必須だと思いますので、こちらも時間をかけて勉強していこうと思います。
https://i.moshimo.com/af/i/impression?a_id=1211563&p_id=1728&pc_id=3271&pl_id=24742
まとめ
ピーター・ティールの本を読んで、せっかくならしっかり今の自分のことについて考えてみましたが、いい機会になったかな。これだから本は読むべきだな、と感じました。
本のタイトルから起業しない人はあまり読んでも意味ないと思っているなら、そんなことないです。特に外に何かしら発信している人であれば必ず役に立つ知識はあるはず。
未読の方は是非読んでみてください。







コメント

このブログの人気の投稿

近代数寄者の茶会記  谷晃  2021.5.1.

自由学園物語  羽仁進  2021.5.21.

新 東京いい店やれる店  ホイチョイ・プロダクションズ  2013.5.26.