東京スカイツリー 平塚桂 2012.5.13.
2012.5.13. 東京スカイツリー
著者 平塚桂 1998年京大工学部建築学科卒。2001年同大大学院研究科環境地球工学専攻修了。建築ライター
イラスト たかぎみ江 1998年京大工学部建築学科卒。2001年同大大学院研究科居住環境工学専攻修了。ライター・イラストレーター
写真 小野寺宏友 1982年武蔵野美術短大商業デザイン科卒。同年『ホビージャパン』誌で特撮デビュー。86年フリー。ジオラマ、パノラマ、深夜撮影を得意とする。2007年より「100年後に伝える記録」として東京スカイツリーの定点観測開始
発行日 2011.8.25. 初版第1刷発行
発行所 ソフトバンク クリエイティブ
自立式電波塔(総合電波塔)として世界一高いタワー
重要なのは、21世紀というタイミングで、墨田区という場所に立つということ
難条件のそろった敷地で「世界一」を実現するために注ぎこまれた技術と工夫をまとめて紹介
63年までは高さ約31mまでしか建てられない、通称「百尺規制」の法律があり、58年築の東京タワーは図抜けて高い建物。68年霞が関ビルが出来て以来、超高層が次々出現
東京スカイツリーに使われた技術の大半は、それまでに「普通のビル」で蓄積された技術の粋を集めたものだが、その特殊さを成り立たせている技術の多くは、特殊とは見られていなかったモノを応用して生まれている。その技術はマイナーチェンジされ、これからの普通のビルに使われていくのだろう
第1章 東京スカイツリーってなんだ?
名称 08年公募。110,419票中32,699票を得て決定
建設地 06年3月に決定
広さ 36,900㎡
着工 08.7. (竣工12.2.)
事業主体 東武鉄道と東部タワースカイツリー
総事業費 650億円
建設動機 地デジへの対応として電波を発信
傾いて見える理由 ⇒ 正三角形の底辺が300m辺りで円形になっており、日本刀の「そり」と神社仏閣や数寄屋建築の「むくり」が取り入れられていることと、円と三角形の重心を同じ位置にしているため方向により中心軸がずれて見えるため
第2章 東京スカイツリーができるまで
設置場所選定の理由 ⇒ テレビ局在京6社の新タワー推進プロジェクトに東武鉄道が立候補。決定の理由は不詳だが、観光・まちづくりの可能性や交通の利便性、地域の協力体制など総合的に評価
1908年から東武貨物列車ヤード、93年に貨物の扱い終了
1949年業平橋駅構内に開設された「東京コンクリート工業」は日本初の生コン製造工場(07年閉鎖)
06.10.から1年間、ラジオゾンデという気象観測気球を使って上空の風の状態を調査
基礎に使われた技術 ⇒ 地盤深く杭を打ち込む「杭基礎」を採用。地表から35mの「沖積層」という関東平野の低地特有の軟弱地盤軟らかい地層に対し、三角形の各頂点の部分に「連続地中壁杭」という技術が使われ、地下50mまで打ち込むことにより風や地震の際の「押し込み力」や「引き抜き力」に対抗する効果を得た
さらに、厚さ1.2mの壁には大林が04年に実用化したナックルという40㎝突出した節を設けて強度を増している
三角形の「辺」の部分は、35mの深さの壁状の杭で連続的に結んでいる
地上の鉄骨部分と地下の基礎部分のつながりは、土台部分に底の平面の形に合わせた鋼板壁を内蔵する鉄骨鉄筋コンクリート造りの壁が配置され地上の鉄骨がそのまま地下の杭に連続的に接続し、力がダイレクトに伝達されるようになっている
タワークレーン ⇒ 従来の高さは300mまでだったので、新たに420mまで上げられ、さらに後部旋回半径を8.1mに短縮したものを開発。3基がぶつからないよう配慮
第3章 東京スカイツリーの内部に迫る
「制振構造」の採用 ⇒ 地震の揺れを小さくする技術
一般的な「制振ダンパー」ではなく、「心柱制振」を採用 ⇒ 「質量付加機構」という世界初のオリジナル技術で、構造物本体の揺れとはタイミングの異なる揺れ方をする「おもり」を建物に組み合わせ、全体の揺れを小さくする原理
地上125mまでは、心柱と塔体は鋼材で固定、375mまでは心柱と塔体を一定の間隔で設けられた6基のオイルダンパーで連結する可動式、その上のゲイン塔は従来通り頂部におもりを置いた制振システムを利用
五重塔の技術を応用? ⇒ 五重塔の内部はほとんど吹き抜けで、その中心に心柱が通っていて、相輪と呼ばれる塔の頂部の金属部分を支持しているが、五重塔が倒れない理由の1つと考えられている。心柱には掘り立て式から礎石の上に載るもの、宙に浮いているもの等様々で、そのメカニズムは未だに謎だが、「質量付加機構」を考えたときに五重塔との共通点を持つことから「心柱制振」の名がつけられた
鉄骨 ⇒ 約25,000ピースの丸パイプ使用。同じ形のものが2つとない。大断面(最大は直径2.3m)の高強度円形鋼管を使用。輸送上の制限から30トン以下に分割して製作し現場に搬入。接合部は溶接することで強度を確保
エレベーターは東芝(第1展望台まで600m/分の一般客用4台と464.4mの業務用2台)と日立(両展望台を結ぶ240m/分の2台他)
第4章 夜に見る東京スカイツリー
ライティングデザインを手がけたのは、シリウスライティングオフィスの戸恒浩人。1975年生まれの気鋭のデザイナー。パナソニック電工がパートナー企業となって、すべてLED使用、1995台6種類の器具を開発
第5章 東京スカイツリーの楽しみ方
鉄道と東京スカイツリーの組み合わせ ⇒ 源森橋、押上駅近くの踏切横、東武鉄道隅田川橋梁
船や川と東京スカイツリー ⇒ 北十間川、浅草からの隅田川越し、大横川の猿江橋
四季と東京スカイツリー ⇒ 隅田公園、牛嶋神社、大横川親水公園、向島百花園、隅田川テラス
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