今こそ学びたい 日本のこと  Magical Trip  2023.3.14.

 2023.3.14. 今こそ学びたい 日本のこと

知っているようで知らない、日本人の心、食文化、職文化、信仰、地域の魅力など

 

著者 蜂谷翔音、松本まさ(Magical Trip)

 

発行日           2022.8.2. 初版第1刷発行

発行所           地球の歩き方

 

はじめに

Magical Tripは、訪日外国人向けツアーの企画や販売、ガイド研修・手配、ツアー運営などをし、2021年には、トリップアドバイザー社の「トラベラーズチョイス ベスト・オブ・ザ・ベスト」を受賞

「海外から見た日本の魅力」「日本の魅力の再発見」をコンセプトに、インバウンドツアーのプランナーだからこその視点で、日本を紹介

 

 

第1章        世界で愛されるジャパニーズカルチャー

l  日本の漫画・アニメ

日本の最古の漫画は、平安時代の《鳥獣人物戯画》

日本のアニメの歴史は、海外から初めてアニメーション映画の技術が入ってきた1896年に始まり、1930年代から徐々に「セル(ロイド)画」のアニメスタイルが確立されていく

1963年放送開始の《鉄腕アトム》は日本初の30分連続テレビアニメ

アメコミが子供向けなのとは対照的に、日本では大人も楽しめるよう、社会的・普遍的テーマが扱われ、ストーリー性のある作品が多い

l  日本の映画

1896年、米仏で映画公開。2年後には日本でもスタート

1950年、黒澤明の《羅生門》で世界デビュー

 

第2章        人々に愛される日本食

l  日本食

日本の食文化は江戸時代に最も発展

江戸の4大名物料理――蕎麦、天婦羅、握り寿司、鰻のかば焼き

2013年、和食はユネスコ無形文化遺産に登録

和食の特徴(農水省発表)

   多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重

   健康的な食生活を支える栄養バランス

   自然の美しさや季節の移ろいの表現

   正月などの年中行事と密接な関わり

米と米に合うもの(おかず)――日本人の米との深い繋がり

出汁(うまみ)――味付けの基本

季節感と盛りつけ――盛りつけと、季節の食材を楽しむ御節料理

生食――鎌倉時代に刺身などの生食を食べる文化が発展

和洋折衷文科――和魂漢()才の食文化で、日本風の料理に変える柔軟性

「いただきます」に見る日本の精神――料理人に対してだけでなく食材の命に対しても感謝

l  居酒屋と日本酒

居酒屋と接待文化――おもてなしルールの存在

居酒屋の発祥には参勤交代が関係している?!――五街道の宿場町の料理茶屋が起源。1730年代後半、神田の豆豆腐田楽をつまみとする立飲み屋「豊島屋」が評判となり江戸に広がる

日本神話にも登場する日本酒の歴史――日本最古の日本酒は口噛み酒

好みの日本酒の選び方――甘口、辛口、淡麗、濃醇の4つの味の組み合わせで分類

 

第3章        注目度が高まる日本の職文化

l  日本独自の職業

侍はどうやって生まれたの?――平安時代、貴族の護衛が武術を極め、後に「侍」となる。「御恩と奉公」の関係で成り立つ

武士道って何?――新渡戸稲造の作った言葉で、神道や仏教、儒教が混ざり合った思想をベースにした日本独自の和の精神性をいう。義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義の7つの徳があり、武術だけでなく高い精神性も求められた

侍はどんな生活や仕事をしていたの?――武家諸法度(1615)、質素倹約・質実剛健が理想。番方(軍事)と公事方(公務員)

侍の髪型はなぜ「ちょんまげ」?――兜を被った時の蒸れを防ぐ髪型として誕生

忍者は本当にいたの?――南北朝時代、諜報活動に従事

忍者ってどんな職業?――「忍」は、生きて任務を遂行するための「耐え忍ぶ心」を表す

忍者はどんな忍術を使っていたの・――遁(とん)

相撲はいつからあるの?――1500年以上前からあり、神事の1

相撲のルールと見所は?――82手。力士の重量差や体格差は魅力の1

力士はどんな生活をしているの?――16場所、相撲部屋で共同生活

芸者はいつの時代からいるの?――江戸時代中期、京都の八坂神社の境内で茶や団子を振舞う水茶屋があり、そこの女性が歌や舞を見せるようになったのが芸妓(げいこ)・舞妓の始まり。芸者は三味線や歌・踊りに特化した者を指す古称で、江戸時代の遊女とは区別され、現在は「芸妓」とも呼ぶ

芸妓と舞妓の違いは?――舞妓は1520歳の修業の身

l  日本の職人イズム

「日本のものづくり」のエピソード――1543年ポルトガル人が2丁の火縄銃をもたらすが、うち1丁は使い方を、もう1丁は分解して複製の作り方を学び、1年後には完成させた

職人の成り立ち――日本独自の伝統工芸品が存在。原点は飛鳥時代に聖徳太子が仏教を国教として定め、寺を造るために百済より3人の工匠を招いたことに始まり、16世紀後半から社会的分業に基づく身分制度が成立、農民と職人の分離が促進された結果、職人の専門性が高まった

職人文化の発展――江戸時代、庶民の識字率が上昇、職人の技術や知識が多くの職人と共有され、「化政文化(19世紀初めの町人文化)」へと発展

職人を育てた環境――10歳前後から親元を離れ、住み込みで仕事の見習い・奉公をすることが一般的となり、10年でようやく一人前と認められる

職人の精神性――金銭の欲にとらわれず、質の高いものづくりを行う精神性は、日本特有の職人気質の1つ。物を作り出す力を「産霊・ムスヒ」といった

ものづくりの繊細さとこだわり――江戸時代の色を指す言葉に「四十八茶百鼠」というのがあり、「奢侈禁止令」で着物の素地が麻か綿、色も茶・鼠・藍に限定された中、多彩な色を表現した言葉

 

第4章        世界に称賛される日本の心

250年前と変わらず持ち続けている日本人の文化や精神は、「わびさび」「おもてなし」「粋」「義理人情」など、多くは英語での直訳が困難

l  日本特有の美的観念

「サービス」と「おもてなし」――サービスの語源は「奴隷」であり、主従関係の間で行われる行為であるのに対し、おもてなしは「表裏のない心で気遣いや心配りを行う」態度を意味

茶道におけるおもてなしとは?――「一期一会」の思想のもと、「主客一体」の空間を作り上げる文化で、ホスピタリティとは若干異なる。「利休七則」の教えに完結

道教から繋がる「道」の精神――物事や世界、人生などの本質、または本質に迫ろうとする生き方こそが道教の教えで、結果よりプロセスに価値があるとする。「推しメン」

日本の師弟関係「守・破・離」――弟子が師匠から教わる3段階を指す

わびさびとは何か――ものの不足の中に心の充足と美を求める思想であり、「侘び」とはものの不足や過剰が削ぎ落とされたシンプルな状態を指し、「寂」とは古びることで新しい美が加わるという考え方。不完全なものに美を感じる日本特有の感性で、典型は「金継ぎ」

無常観に美を感じる「もののあはれ」――「諸行無常」の中で、儚く移ろいゆくものに対し、情趣・哀愁を感じるのが「もののあはれ」。「いろは歌」は空海が仏教の無常観を表す歌として作ったものであり、4つの句は仏陀が死ぬ間際に説いた涅槃仏教の諸行無常を表す。日本人は無常観の中にある種の美を見出し、ものづくりや文学作品に投影

l  「江戸」に見る日本人の精神

江戸っ子気質に見る昔の日本人――「粋」という美的観念は江戸っ子が確立した日本独自のセンス。「垢抜けた」「洗練された」「自然な色気や気品がある」といった意味の誉め言葉

江戸の心意気=粋――「粋」は「意気」が転じた言葉で、最後までやり遂げようとする積極的な気持ちや気合を指す

江戸の人間関係「義理人情」――「粋」は「すい」とも読み、世情や人情を理解し、物分かりが良いことを意味し、「義理人情」へと繋がる

違いを楽しむ江戸の通――「粋(すい)」という感性は、「物事によく精通している」との意味も持ち、粋(いき)とは別の「通(つう)」という美意識を生む

モノがなくとも意気の江戸文化――江戸っ子気質には「見栄っ張り」「意地っ張り」「こだわり」「やせ我慢」という側面もある。「襤褸は来てても…」「武士は食わねど…」

l  日本語からひもとく日本の心

日本語の多彩な表現力――文字の種類が多く、繊細な表現力の源泉となっている

日本語と人間関係――日本人は呼称や発音の微妙な違いで、発言者の立場や感情、敬意、愛憎を感じ取ることに長けているのは、「御恩と奉公」という価値観から生まれたもの

 

第5章        地理と文化で見る日本

大陸と島国、東洋と西洋という2つの視点を意識する必要

l  地理で見る島国・日本

島国である利点とは?――外から攻められにくく、攻めて出にくい

島国の貿易の特徴とは?――必要な食料や資源は自給が理想であり、江戸時代は実現できた

ハイコンテクストな日本人?――人口の97.75%は日本人。世界一ハイコンテクスト(=言葉以外の表現に頼るコミュニケーション方法)な文化を持つ国

日本人の「真面目さ」を生んだもの――稲作文化の定着と集団主義の基盤がある

島国独自の戦いのルールと国民性――国内での戦には共通の作法やルールがあった

日本が植民地化されなかった理由――極東の島国、高い自給率、軍事力・技術力、外国が欲しがる資源が少ないなど

l  地理で見る大陸

地続きの国境を持つ大陸の領土問題――地続きの国境は曖昧な場合が多く紛争の原因

グローバル思考が根付く大陸の貿易文化――大陸では経済や貿易をグローバルに捉える思考が浸透しやすい

大陸には多民族国家が多い?――ローコンテクストになりがち

個人主義が育まれる大陸のライフスタイル――狩猟文化が中心、個人主義・実力主義

異国や異民族と争う大陸の歴史――自国の領土や貿易拡大のため、島国より密接に他国と関わり合う必要があった

l  文化で見る東洋

自然と共存する東洋文明――定住型が多く、自然との共存という考え方が基本

東洋の宗教と神秘主義の共通点――自然()との一体化を目指す神秘主義思想が共通

すべてが繋がっていると捉える東洋医学――病気の根本から治癒することを理想とする

自然が神格化される森の宗教――豊かな自然そのものを神と捉え、自然との共存を目指す「森の宗教」の思想が根付く

東洋思想の死生観――最も分かり易いのがバラモン教の「輪廻転生」。山岳信仰や密教思想

l  文化で見る西洋

自然をコントロールする西洋文明――人間を暮らしの中心とし、快適な生活を求める。自然をコントロールする思想が、自然を技術により使いこなす「科学」へと発展

砂漠の思考と物質主義――よりよい環境を求めて生活するスタイルが主流に

病気を部位ごとに捉える西洋医学――対症療法が主流

砂漠の宗教から生まれる唯一神――砂漠では、自然または神は「与える者」よりも「ルールを守らないと奪う者、罰を与える者」といった意味合いで捉えられる

西洋思想の死生観――「天国と地獄」。生前の罪を償うため教会による懺悔や免罪符がある

l  日本と西洋の価値観・文化の違い

恥の文化と罪の文化――キリスト教文化では戒律がありそれに反することで罪の意識が芽生えるが、日本固有の神道では戒律自体が存在せず、「集団や世間体と自分」をもとに行動

日本と西洋の美意識の違い――茶室のデザインの11つに理由があるのは、ハイコンテクストな日本のデザインの特徴。無駄を省き余白を生かした質素かつ洗練されたデザイン

日本と西洋の庭園の違い――西洋はシンメトリーが基調で、自然をコントロールした人工的な美しさを求めるのに対し、日本は非対称が基調でより自然に近い立体的な造りが特徴

日本と西洋の建築の違い――地震の有無が建築思想の基盤を分ける。木材が基本で「木組」技術が発達、気候の違いが茅葺屋根をもたらす。自然との調和vs人工美

 

第6章        独自の発展を遂げた日本の信仰・宗教

日本では宗教の存在に気付かないほど深く文化として浸透

l  古来、日本に根付く「神道」

自然と神道の関わり――「自然」を神的存在と崇め、自然や神との共存・調和を目指すようになったのが神道

「古神道」から「国家神道」へ――時代とともに儒教や道教、仏教と混ざり合い現在の形へ

神社の特徴とは?――鳥居が立ち、本殿には神を具現化した祈りの対象はない

日本に息づく神道の思想や概念――万物には神が宿る、穢れ(気が枯れる=悪)、産霊(ムスヒ)=心霊の神秘的な働き

東洋の穢れ、西洋の善悪――「穢れ」は、身を清めることで浄化でき、心身を「美しい(=あるがままの)状態」に戻すことができる。仏教では「悉有仏性(しつうぶっしょう)

世界のアニミズム(精霊信仰)と神道の歴史的共通点――アニミズムは「自然に宿る霊的な存在を精霊として畏れ敬う信仰」で、人も自然界の一部と捉え共存や調和を重要視する

l  神社の作法と楽しみ方

明治の神仏分離令により、寺では手を合わせ、神社では二礼二拍手一礼。鳥居は結界

神社の参拝方法――祈りは「意宣()り」とも書き、意思を宣言し神の力添えを願う

神社の基本構造と意味――鳥居は女性の脚、参道(産道)を通って本殿(子宮)に戻ることで、生まれる前の純粋無垢な状態に戻るという意味がある

神社の種類と御利益を知ろう――御祭神には①記紀に登場する神、②記紀に登場しない神、③歴史上の偉人の3種あり、広く浸透する信仰には①伊勢、②出雲、③稲荷、④八幡(はちまん)がある。御利益には勝負事、受験、出産、出世など様々

l  神道と天皇の歴史

日本と天皇信仰――天皇の家系は神の血を受け継ぐ子孫で、明治以降は国家神道が国教に

天皇の成り立ち――「大化の改新」により中央集権国家が始まり、天皇が誕生=天武天皇

天皇制の歴史――日本の天皇制は世襲制、現天皇は第126

古事記とは大和民族の歴史――第40代の天武天皇が「壬申の乱」後、自らの正統性を高めるために編纂されたのが『古事記』で、天地開闢、天孫降臨、神武東征(初代神武天皇)、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)の話からなる天皇家の物語

l  大陸より伝来した仏教

生活に深く根付く仏教――2500年前のインドで、ゴータマ・シッダールタ(釈迦・仏陀)を開祖として説かれた教え。修行によって苦悩から解放され悟りの境地に至るのが解脱

仏教の基本概念・四法印――①一切皆苦(かいく)=煩悩、四苦八苦、②諸行無常=執着からの解放、③諸法無我=空(くう)、④涅槃寂静(じゃくじょう)=悟りの境地

仏陀の生涯――過度な苦行や堕落ではなく、バランスの取れた「中道/中庸」こそ重要

日本仏教の始まり――604年「17条の憲法」で、「篤く三法(仏法僧)を敬い」とある

日本仏教の歴史――最澄と空海によって平安仏教として体系化

日本人と仏教――中国経由で大乗仏教が伝来、現在1356

l  禅とZEN

禅とは何か――「禅定(ぜんじょう)」「禅那(ぜんな)」の略で、「1つのことに心を注ぐ」「精神統一を指す言葉」。1点に心を集中する修行=今行っていることに集中する行為が禅

禅の歴史――創始者は6世紀の達磨大師

不立文字(ふりゅうもんじ)の教え――「悟りは文字や言葉で表すことができない」とし、水墨画や茶道、彫刻など言葉を用いずに表現する文化が発展

座禅・瞑想の方法――座禅では、体(姿勢)、呼吸、心の順に整える

l  日本独自の信仰や宗教

山岳信仰と修験道――三十三回忌には神となり山から子孫を見守る。神聖な山で「修」行し特別な「験」力を得て民衆を救済するというのが修験道(明治初期に廃止令)

陰陽師(おんみょうじ)の仕事――日本の神道と仏教、中国思想の道教が交わったのが平安時代に安倍清明で有名になった思想

龍神信仰――日本に古くからある蛇神信仰と、中国から来た龍神信仰が混交

 

第7章        日本のルーツや歴史

日本人のルーツは、大和民族、アイヌ民族、琉球民族

l  日本のルーツ

そもそも日本人は何民族?――大半は大和民族で、250年頃から近畿地方で勢力を伸ばした豪族の集合体・大和政権/朝廷に属する民族

日本はいつ「日本」になったの?――3世紀後半の『魏志倭人伝』では「倭()」と表記、「やまと」とも読み、「和」と変化して「大和(やまと)」政権の由来にもなった。海外の歴史書に初めて「日本」と表記されたのは中国の唐の歴史が記載された『旧唐書(くとうじょ)』で、大化の改新の頃日本に変わったと思われる

大和民族のルーツは?――12000年前から日本にいた縄文の人々と、その後2300年前頃に北九州を経由して朝鮮半島から移り住んだ弥生人の混血(二重構造説)

あなたは縄文人より?弥生人より?――縄文人のDNAは、本土で12%、沖縄で20%、北海道で50%以上に受け継がれているとされ、毛が黒く剛毛、二重瞼、唇が厚く彫が深い

l  縄文人の末裔

アイヌ民族の特徴――北海道、樺太、千島を中心に独自の文化を築いた先住民

アイヌ民族の歴史――住み始めたのは3万年前。1457年本州から和人侵入

琉球民族の特徴――琉球王国(14291879)

琉球民族の歴史――縄文時代中期~後期に沖縄周辺に住み始めた

l  ルーツと歴史ロマン

父系からの遺伝を調べるY染色体ハブロ遺伝子解析では、日本人の約40%がYAP遺伝子を持つとされ、縄文人のルーツを持つもので、世界ではほかにチベットやユダヤ人が保有。BC722年北イスラエル王国滅亡の際10支族に分かれて行方不明となったユダヤ民族の1つが日本にたどり着いたという説があり、「日ユ同祖論」と呼ばれている

 

第8章        現役ガイドおすすめのゴールデンルート

訪日外国人が初めて日本を訪れる際に参考にする最も定番の周遊ルート

l  ゴールデンルート

東京、京都、大阪、広島

l  東京――皇居、丸の内、増上寺、新宿

l  京都――伏見稲荷、木屋町/高瀬川

l  大阪――難波、裏なんば、法善寺

l  広島――平和記念公園、大久野島

l  よく聞かれる質問

 

 

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