大望遠鏡「すばる」誕生物語 小平桂一 2021.7.3.
2021.7.3. 大望遠鏡「すばる」誕生物語 星空にかけた夢
著者 小平桂一 1937年生まれ。59年東大理学部物理学科卒後、ドイツ・キール大留学。カリフォルニア工科大客員研究員や、東大理学部助教授、ハイデルベルク大学客員教授等を経て、82年東大天文台教授。「すばる」計画の総括責任者を務め。94年国立天文台長に就任、現在に至る。専門は銀河物理学。趣味は日本泳法、スキー、旅行、スケッチ
発行日 1999.12. 初版発行
発行所 金の星社 ノンフィクション「知られざる世界」
「すばる」については、『21-06 宇宙の果てまで』参照
世界一の性能を誇るすばる望遠鏡が、宇宙の果てをさぐる
人類が畏敬の思いを込め、みあげつづけてきた宇宙
銀河を生み、地球を生み、生命を育んできた宇宙
先端技術の結晶「すばる」が、その未知の世界にのぞむ
構想段階より「すばる」計画の総括責任者をつとめてきた著者がつづる、大プロジェクトの記録
1.
大空の下で
1999.9.17. すばる望遠鏡完成式
紀宮様と、トーマス・フォーリー駐日アメリカ大使、ヒロノハワイ州副知事が参列
2.
少年の夢
小学校4年で月を観測
青山学院中等部では、口径8㎝の望遠鏡を手作り
日比谷高校時代には、パロマ―山の5mの望遠鏡で撮った『天体写真集』と建設に携わったヘール博士の『パロマ―の巨人望遠鏡』に魅せられた
1961年、東大大学院2年でドイツ政府の留学生試験を受け、キール大の有名な天文学者ウンゼルト教授の門を叩く
1965年、東京天文台助手
1966年、カリフォルニア工科大学研究員となり、ウィルソン山の2.5m望遠鏡やパロマ―山の5m望遠鏡で観測
1970年、東大理学部助教授
3.
発見の時代
日本の天文台では、1960年岡山天体物理観測所の1.9m反射望遠鏡が設置され活躍
肉眼では見えない特殊な光を出す特異星の研究のため、日本の1.9mでは画像撮影に苦労が多く、もっと天気の良い場所で、大きな望遠鏡を使って観測したかった
1970年ごろから、世界中で口径3~4mの望遠鏡建設が始まる ⇒ アメリカはアリゾナやハワイ、チリに、ヨーロッパは共同でカナリー諸島やアンデス高地に建設を計画
1975年ごろ、東京天文台でも次期望遠鏡建設計画始動 ⇒ 口径と設置場所が鍵
1980年、セロ・トロロ天文台訪問。アメリカが2300mの山頂に4mと1.5m望遠鏡を設置。3晩の観測。ヨーロッパ南天天文台も訪問
4.
むずかしい決断
1982年決断の時。3択で、1つは国内望遠鏡で根気よく研究を続ける、2つは大気圏外観測のみちで宇宙科学研究所の小田稔博士が始めた気球や人工衛星を使っての観測、3つが大望遠鏡の海外設置
文化や習慣、考え方の違いを乗り越え、人類共通の願いのために働く。それを通じて世界の人々が仲良くなる
1983年、ハワイ大学の2.2m望遠鏡で観測調査。新しい赤外線星を発見し国際天文学連合に報告。観測を見学に来たハワイ大学長に支援を直訴
5.
新技術に挑戦
1984年、初めて文部省に計画の概要を説明。国際天文学連合も日本の計画を支持
最大の問題は鏡の製作。当時の最新型は7.5mで、コーニングが研究中。直径1mほどの六角形の薄い板44枚を熱で溶かして貼り合わせ1枚板にした後、凸型の炉に乗せて熱をかけ凹型に湾曲させる。薄い鏡を261のロボットアームで支えるとともに撓みを修正する
6.
国境の壁
立地は、マウナケアが最適となり、87年に実地調査開始
海外の法律が適用される地に日本の国有財産を持つことを禁じる法律はない
7.
何の役に立つか
計画では総予算400億、工期6年
天文学が人類の役に立っていることは歴史が物語るが、なかなか理解されない
国を守るのに役立たないが、私たちの国をもっと「守るのに値する国」にするのには大いに役立つ
8.
人類の眼
1988年、東京天文台などの施設を統合して国立天文台創設。大望遠鏡の海外設置を国家事業に昇格させる
1988年、第1回科学版サミットが主要7か国で開催。21世紀初めごろまでに国際共同で全世界に10台の8m級大望遠鏡建設を合意。「すばる」もその中の1つに織り込み
9.
ついにスタート
1990年、建設準備のための予算承認
電波望遠鏡研究者の協力を得るとともに、大望遠鏡の愛称を「すばる」とする
1991年、建設全体の契約を三菱電機と締結
10. 建設はすすむ
1994年、天文台長就任。シューメーカー・レビ第九彗星が木星に衝突
1996.1. 建屋内で火災、3人死去
11. ハワイ観測所
1997年、7種類の観測装置を据え付けるための観測所をヒロに設置
12. ファーストライト
1998.12.24. 工学的なファーストライト ⇒ 最初の星の光が反射すること
1999.1.4. 天文学的なファーストライト ⇒ 本格的な試験観測
1月10日、星像直径0.3秒角というチャンピオンレコード達成 (秒角とは角度の単位。1度の1/60を1分角、1/3600を1秒角と呼ぶ。月の直径は32分角)
1990年NASAが宇宙に打ち上げた2.4mハッブル宇宙望遠鏡を凌ぐ性能
13. 希望にもえて
6月には0.2秒角を切り、冥王星とその衛星カロンを分離して観測することに成功
宇宙に漂うチリやガスが集まり、収縮して太陽のような星が誕生する時に、その周りに地球や火星や木星のような天体を含む、惑星系が生まれる
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