ふしぎ現象事典  ココロ社  2023.1.19.

 2023.1.19. 大人も知らない? ふしぎ現象事典

 

編者 「ふしぎ現象」研究会 子安喜美子

 

発行日           2021.7.15. 初版発行          2021.8.5. 第2刷発行

発行所           マイクロマガジン

 

: ココロ社 大阪生まれ。東大文卒後、平凡な窓際サラリーマンとなり、仕事の傍ら珍妙なブログ及び書籍の執筆をし、著書に『マイナス思考法講座』など。好きな犬はヨークシャーテリア

 

イラスト: ヨシタケシンスケ 1973年神奈川県生まれ。絵本作家・イラストレーター。筑波大大学院芸術研究科総合造形コース修了。書籍の挿画、装画、イラストエッセイなど、様々な分野で活躍。著作に『りんごかもしれない』など

 

はじめに

私たちのみの周りには、「よくある」けど、名前を知らない現象がたくさんある

 

1章       学校・勉強でのふしぎ編

1. カリギュラ効果――「見ちゃダメ!」と言われると余計に見たくなる

禁止されるとやりたくなる現象

映画《カリギュラ》から、内容が過激で一部で公開禁止になり、それが逆に評判を呼んでヒットしたことに因んだ現象名

「まんじゅうこわい」も同じ

 

2. アンダーマイニング効果――早起きしたらお小遣いくれたのに、1回きりだったのでどうでもよくなった

「自分で頑張ろう」と思っていた気持ちが、「誰かにやらされている」という気持ちにすり替わって、やる気が出なくなってしまうこと

「アンダーマイニング」とは「傷つけ壊す」の意

逆に、ご褒美や感謝の言葉への期待でやる気が起きる現象を「エンハンシング効果」

 

3. TOT現象――テストで、いつもは書けていた漢字をうっかり忘れることがある

Tip of the Tongue舌の先まで出ている」の略

日本語では「喉まで出かかる」

 

4. ラバーペンシルイリュージョン――ペンの先をもって振ると、ペンがふにゃふにゃに見える

手から遠い所ではペンの動くスピードが違うところから起きる目の錯覚

 

5. 天使が通る――教室ががやがやしてたのに、一瞬、誰もしゃべらずシーンとなった

フランスのことわざからきた言葉。修道女経営の寄宿女学校の女の子たちの間で生まれた言い回し

 

6. 燃え尽き症候群――運動会が終わったら何もする気がなくなった

練習熱心で、我慢強い性格、完璧主義、責任感がある、そんな人がなりやすい

 

7. ブーメラン効果――勉強する気になった時に、親から「勉強しなさい」と言われ、やる気がなくなる

心理学用語。自分が考えていたのと同じことを主張されると逆の方向に意見を変えてしまう心の働き

 

8. ゲシュタルト崩壊――同じ漢字を書き続けていると、途中から正しい形がわからなくなる

ゲシュタルトは「形態」のこと。原因は、同じ字を見続けているうちに脳がその字の形を認識できなくなるからで、一時的なもの

 

9. 観察者効果――いつもはおとなしい子が、授業参観だと積極的に手を挙げる

注目されることで、やる気や力がアップすること

自習時間に先生がいるかいないかでさぼり出すのも同じ効果

 

10. ピグマリオン効果――先生に「勉強できるようになるよ!」と言われたら成績が上がる

ギリシャ神話に登場する王様が、神様に本気で祈ったら彫刻の女性が人間になった、という物語に由来

反対は「ゴーレム(自分で動くどろ人形)効果」

 

11. 心理的安全性――シーンとしてた学級会で、誰かが急にギャグを言ったらみんなが話し始めた

関係ないことをしゃべっても怒られないという安心感から発言しやすい雰囲気になるという心理学用語で、組織行動学者が提唱した概念

 

12. セルフ・ハンディキャッピング――テストの前の日になると部屋の掃除がしたくなる

自分自身で不利な状況を作っていることで、テストの点が悪い時の言い訳が出来るようにしている

 

13. リンゲルマン効果――みこしを担ぐときに、明らかに腕に力を入れていない人がいる

みんなで協力する時に手を抜く人がいること

 

14. クロノスタシス――ふと時計を見ると秒針が止まっているように見える

見たものを能が認識するのに時差があるため

 

2章       友だちのふしぎ編

15.    確証バイアス――嫌いな人の嫌なところばかりが目についちゃう

都合のいいことばかりを見てしまい、都合の悪いことは無視してしまう傾向

好きな人に言われたら納得するが、嫌いな人に言われると反発するのも同じ現象

 

16.    カタルシス効果――嫌なことがあった時、それを友達に話すと気分がすっきりする

話しただけで気分が楽になる。心を「話す」ことで、喧嘩をすることではない

ギリシャ語で「精神の浄化」の意

 

17.    遠慮のかたまり――最後の1つに誰も手を出さなくて残ってしまう

関西地方の言葉。同じ意味で「関東の1つ残し」というのもある

 

18. フォールス・コンセンサス効果

自分が好きなものは、みんなが好きだと思い込むこと――偽りの意見の一致

仲良しの友達だと起きやすい

反対は、「フォールス・ユニークネス(偽りの差異)効果」で、自分を少数派と思い込む

 

19. アロンソンの不貞の法則――古くからの友達より、最近できた友だちから褒められた方が嬉しい

社会心理学者の見つけた心の動き

 

20. 類似性効果――同じアニメが好きな人とは、すぐに仲良くなれる

心理学用語で、共通点が多いほど強い効果を発揮

似ている点が多い相手を通して、自分自身も正しいと安心でいる

逆に、「非類似性」を相手に求めるのは、相手と違うことでプライドが満たされるから

 

21. 行為の返報(へんぽう)性――別に興味がなかった人に、何度も「好き」と言われて段々好きになった

与えられた好意を相手に返したくなる心の現象

もともと人間の心には、人から何かをしてもらったら「返報」といって次は自分が何かを返したくなるという法則がある

「アロンソンの不貞の法則」と組み合わせると効果的に使える

 

22. ゲインロス効果――いつもは怖い先生が、優しい顔で小犬と散歩しているのを見かけてキュンとなる

ゲイン効果とロス効果を合わせたもの。「良い面」と「悪い面」の変化が大きいほど人の気持ちに与える影響も大きい

 

23. ラムスデン現象――暖めてしばらくしたら牛乳に膜が出来る

表面の水分が蒸発してタンパク質などの成分が凝縮して膜になる

40℃以上で温めないと膜は出来ない

 

24. 眼前暗黒感――目の前が真っ暗になる眩暈

急に立ち上がる時に、一瞬脳が血液不足になってしまうために起こる現象

 

3章       家でのふしぎ編

25. 安心毛布――小さい頃から大切にしているぬいぐるみを持っていると落ち着く

心理学用語。物によって環境の変化に対する不安を和らげている

アメリカでは、スヌーピーの主人公に因んで「ライナスの毛布」と呼ばれる

 

26. バーナム効果――星座占いで、間違って別の星座の所を読んだのに、当たっている気がした

心理学用語、占いなどで、誰にでも当てはまる性格を、自分に対してだけ言われているように感じてしまうこと。19世紀のアメリカでサーカスを大成功させた興行師バ-ナムが「我々は誰にでも当てはまる何かを持っている」といったことから名付けた

 

27. ファントム・バイブレーション・シンドローム(幻想振動症候群)――ケータイが着信してブルブルしてると思ったら気のせいだった

日頃から携帯の着信を気にしている人ほど振動に対して敏感に反応

カナダのWeb開発者が初めて言及

 

28. シンクロニシティ――会いたいと思ってた友だちと、約束もしてないのに駅で会った

不思議な偶然。心理学用語で、関係ないはずのことが同時に起きること

偶然の中に意味を見つけることで、見つけられなければ「単なる偶然」

 

29. ナチュラルハイ――大晦日に夜更かししても眠くならず、かえって元気になってきた

和製英語。身体の疲れを紛らわせるために、脳が興奮物質の「ドーパミン」や「アドレナリン」をたくさん放出する

 

30. アンダードッグ効果――野球の試合を見てると、負けてる方を応援したくなる

「判官贔屓」とも言い、日本人にその傾向が特に強い

 

31. 権威主義的パーソナリティ――先生やテレビに出ている有名人の話してることは正しいと思う

偉い人の言うことは常に正しいと思ってしまう性格で、自分で考えることをしない

同時にこの性格は、立場の弱い人を攻撃することが多いといわれる

 

32. フレーメン反応――うちの猫が、くつ下の臭いを嗅いだ後に変な顔をしていた

同じ種類の動物同士で情報を伝え合う臭い物質「フェロモン」を嗅ぎ分けるヤコブソン器官という部分が反応して起こる。人間の汗にはフェロモンに似た成分が含まれているので、猫が反応した。人間はヤコブソン器官が退化したので、変な顔をしないで済む

 

33. エメットの法則――後でやろうとともっていた部屋の片づけだけど、時間が経って面倒になった

経営コンサルタントの説で、やることを先延ばしにすると、すぐやる時の倍の時間とエネルギーがかかること

 

34. シミュラクラ現象――おばあちゃんの家の和室の天井の木目が人の顔に見えて怖い

シミュラクラとは類像のこと。黒い点が3つ逆三角形に並ぶと顔であると認識する。他人や動物の顔を見て敵か味方かすぐ判断できる方が生き残る可能性が高かった

人面魚もこの現象だし、心霊写真にも同じ理由でそう見えてしまうものが多い

 

35. ジャネーの法則――久しぶりに親戚の大人が会うと、みんなが「あっという間の1年だった」という

哲学者のジャネが発案し、甥が紹介した「感じられる時間の長さは、年齢と反比例の関係にある」という法則――体感時間としては80歳の人の人生の真ん中は10

 

36. 火事場の馬鹿力――走るのが苦手なお姉ちゃんがゴキブリを見つけた時は素早く逃げる

科学的にも立証――人間の体は普段23割しか出せないようセーブされている。いつも100%出していたら筋肉が壊れてしまう

 

37. ゆでガエル現象――ゆっくり進むと環境の変化についていけないこと

俗説。実際はカエルはすぐに飛び出す

 

38. ハロー(後光)効果――目立つ特徴に引っ張られてその人のほかの評価が歪められること

 

4章       お出かけでのふしぎ編

39. 希少性の原理――「期間限定」と書いてあるお菓子をつい買っちゃう

心理学用語で、「手に入らないものほど欲しくなる」という心理

 

40. エスカレーター効果――止まっているエスカレーターを歩く時、変な感じがする

心理学用語、見た目にはとまっていても、脳の一部が動いているものだと思ってしまうために起こる現象

 

41. バンドワゴン効果――みんなが持っているゲームは、自分も欲しくなる

経済学用語。大勢の人が持っていることでさらに人気を集めてしまう現象

バンドワゴンは、行列の先頭で音楽を鳴らす車のこと

反対語は、「アンダードッグ効果」で、この2つを利用して人々の心に影響を与え、行動に変化を起させることを「アナウンスメント効果」という

 

42. イヤーワーム――音楽のある部分だけが頭の中でぐるぐる再生されて止まらない

原因はよくわからない。原産はドイツ語

 

43. 青木まりこ現象――本屋にいるとなぜかトイレに行きたくなる

1985年『本の雑誌』に青木まりこが「本屋でトイレに行きたくなる現象」について投稿、大反響を呼んで、翌月同誌にて命名。原因は不明、病気かどうかについても意見が分かれる

 

44. カクテルパーティー効果――迷子になりかけたとき、周りは騒がしいのに親から呼ばれた自分の名前が聞こえた

心理学用語。人は、意識して聞いていない会話でも、無意識には聞いていて、自分に関係ある話だと分かると、そこに意識を集中させることが出来る

 

45. (おか)酔い――船を降りた後もしばらく船に乗っているようにゆらゆらしている

揺れる環境に慣れた後で揺れがない場所に戻った時に、身体がうまく適応できないために起きる現象

「地震酔い」は、地震が起きていないのに揺れたと感じる現象で、地震の強い揺れを脳が記憶していて感覚情報をまとめる機能が低下するのと、ストレスが原因

 

46. 連続回避本能――向こうから来た人を避()けるのに、何度もぶつかりそうになる

人間の本能として「前と同じ行動はしたくない」と体が勝手に動いてしまい、今度は互いに逆の側に避けようとしてしまう。その結果何度もぶつかりそうになって、気まずくなる

 

47. ウィンターノーズ――冬になると、飼っている犬の鼻の色が薄くなる

毛色の薄い犬によくみられる現象で、冬に太陽の光が当たる時間が短くなるための紫外線不足と、その犬のメラニン色素不足などが重なって起きる。別名「スノーノーズ」

 

48. シバリング――寒い日のプールは歯がガタガタしてしまう

Shivering=震え。寒い所にいると、身体が勝手に小刻みに震え、歯もガタガタする現象

 

49. チンダル現象――キャンプで、森の木の隙間から光が差し込んで、光の筋が見えた

物理学の現象。小さな粒子が漂っているところに光を当てると、光は粒子によって光路とは異なる方向に散乱し、結果光の筋が見える

雲の切れ間から太陽光が漏れて地上まで光の柱がさして見えるのも同じ現象で、「天使のはしご」とも呼ばれる

 

50. 決定麻痺――トレーディングカードを買いに行ったとき、種類があり過ぎて、結局買わずに帰る

行動経済学の用語。数が多すぎると人は却て選べなくなる。ちょうどいい数は37辺り

 

51. 道化恐怖症――遊園地やショッピングモールにいるピエロがなんだか怖い

顔に涙マークのある道化師をピエロと呼び、元々は大人がおどけて見せることによって子供たちを楽しませる存在だが、最近映画などで「恐怖」の対象になりつつある

涙には、「観客を笑わせてはいるけど、心には悲しみを持っている」という意味がある

 

52. 心理会計――お手伝いでもらったお金は大事にするけど、お年玉でもらったお金はすぐ使っちゃう

行動経済学の用語。心の中でお金の価値を区別する。区別して考えた方が、脳が情報を処理しやすいから

 

53. ウォーターハンマー現象――水道の蛇口を閉める時に「ごん!」と鳴る現象

限界まで開けていた水道の蛇口を一気に閉める時に音が鳴る現象

 

54. エンメルトの法則――「かげおくり」のこと

良く晴れた日に自分の影をじっと見た後空を見上げると、大きな影の残像が見える現象

水漏れや水道管破裂の原因になるので、蛇口はゆっくり閉めること

 

5章       体のふしぎ編

55. プラシーボ現象――風邪をひいた時に野菜ジュースを飲むと治るような気がする

実際に病気が治る成分が入っていなくても「治る」といわれて飲んだ薬で良い効果が表れる現象で、信じることによって、本来ないはずの効果が得られる可能性がある

「逆プラシーボ効果」もある

 

56. 速筋(そっきん)線維が多い――短距離走は速いのに持久走だと遅くなる

筋肉は「速筋線維」と「遅筋線維」に分けられる。割合は生まれたときから決まっていて比率を大きく変えることはできないが、鍛えることは出来る

速筋線維は見た目が白いので「白筋」と呼ばれ、糖を燃やす力が強く、遅筋線維は赤く見えるので「赤筋」と呼ばれ、ミトコンドリアによって脂肪を燃やす。両方の性質を持つのが「桃色筋肉」で、糖と脂肪の両方をエネルギーとして消費できる

 

57. ダンス細胞の音――眠れない夜、部屋で「シーン」という音が聞こえる

耳の中にある音を受け取る細胞(ダンス細胞)が動いている音

プレスチンという超高速で動くタンパク質のお陰で、1秒間に2万回も動くことが出来る

 

58. ストループ効果――赤ペンで「青」と書いてあると、実際に何色で書いてあるか一瞬分からない

心理学用語。書いてある字の意味をほぼ自動的に受け取るので、それを無視して色だけに注意を向けるのは難しく、ストレスを感じる

青ペンで書かれた「赤」の字を読むのも時間がかかるが、これを「逆ストループ効果」という

 

59. アイスクリーム頭痛――かき氷を一気に食べると頭がキーンとなる

医学の正式名称。原因については2説――1つは一気に冷えた喉の奥を温めようと頭の血管が広がり一時的に炎症が起きる、もう1つは三叉神経が急に冷やされたため混乱して冷たさを痛みとして錯覚する

 

60. ピントフリーズ現象――ゲーム機の画面を長く見た後に遠くを見ると、よく見えないことがある

目の筋肉が凝ってしまって、急な目の動きに対応できなくなる現象

目の筋肉は、近くを見る時によく使われるので、一定時間ごとに休憩をとるのが目の健康に良い

 

61. ファニーボーン――肘を棚にぶつけた時に、ビリビリする

肘の骨の内側に、ちょっとだけ飛び出ている骨がある。その骨の近くの皮膚の下には尺骨神経という大きな神経があって、骨や筋肉に守られていない場所を走っているため、ぶつけた際の刺激が直接神経に伝わる。正座した時にしびれるのも同じ神経の麻痺から来る

 

62. スリープスターツ(寝ピク)/ジャーキング――眠くてうとうとしていると、突然ビクッと体が動いて目が覚めてしまう

自分の意思とは関係なく体が勝手に動いてしまう現象で、脳が夢と現実の違いをわからなくなり、体に間違った命令を出してしまって起きる

 

63. ガルバニー電流――アルミホイルを噛んだら歯がキーンとなった

虫歯で歯に金属を詰めている人がアルミホイルを噛むと、唾を介して素材の違う2つの金属が接触して微弱な電流が流れるが、それを歯が痛みとして感じるのでキーンとなる

錆びやすい金属が、電解質溶液の唾を介して、錆びにくい金属と触れた時に、両電極となってガルバニー電流が発生する

 

64. ネーザルサイクル――左の鼻詰まりが治ったら、右の鼻詰まりが始まる

鼻は正常な場合、数時間ごとに左右交互に鼻の中の粘膜が膨張と収縮を繰り返し、働いたり休んだりしている。これをネーザルサイクル=交代制鼻閉(びへい)という

魚の鼻の穴は4つ。人間も水中で暮らしていた時には鼻の穴が4つあり、その名残が涙の出る「涙点」で、泣くと鼻水が出るのは、涙点と鼻の穴が繋がっているから

 

 

 

 

コメント

このブログの人気の投稿

近代数寄者の茶会記  谷晃  2021.5.1.

新 東京いい店やれる店  ホイチョイ・プロダクションズ  2013.5.26.

自由学園物語  羽仁進  2021.5.21.