東大理三の悪魔  幸村百理男  2025.6.15.

 2025.6.15.  東大理三の悪魔

 

著者 幸村百理男(こうむらもりお) 東大医学部卒。二本松眼科病院、虎の門病院を経て、沖縄・宮古島でこうむら眼科を開業。年間1000件以上の眼科手術をこなす傍ら、YouTubeチャンネルで「ぴーす」として、自身の考えを発信している

 

発行日           2025.2.11. 第1刷発行

発行所           宝島社

 

本件は、Amazon Kindle版として20244月に発表された『東大理三の悪魔』と、8月発売の続編『東大病院の天使』を合冊・加筆修正したもの

 

 

第1部        東大理三の悪魔

1. 教養学部図書館

1997年冬、東大駒場図書館で21時の閉館まで勉強。18カ月前理Iに合格、仮面浪人として過ごした後、1年経って理IIIに合格

閉館30分前に来て物理の専門書を速読する女に出会う

 

2. 秀才達との会話

一旦社会に出て理IIIに戻って来た5年上の蔵野と、同期同年の岡田と僕(田村ノボル)3人がつるんで、図書館の謎の女を追う

 

3. 消しゴム作戦

図書館の閲覧室で丸い消しゴムを謎の女の方に転がして気を惹こうとしたが不発

 

4. 回想(1/3)小中時代

IIIに共通するのは、神道と呼ばれる少年時代を送ったことだが、僕は例外で、問題児

中学では野球をやったが挫折。3年の塾から面白くなり、私立の進学校巣鴨高校へ進学

 

5. 名曲喫茶での会話

6. 天才との会話

謎の女と図書館で再び会うと、彼女の方から「僕は間宮(惣一)」だと名乗る。理IIIの同級生で、高校時代の模試では伝説の秀才。なぜか馬が合って付き合い始める

 

7. 回想(2/3)高校時代

高校にはトップの成績で入学しいきなり級長に。途中同性愛に目覚めたが、無事理I合格

 

8. 天才の条件

歴史上も天才と言われる人は、不思議に同時期に似たような場所で輩出している

 

9. 旧約聖書

間宮は、アメリカ人の祖父の養子となったことから、資産家の息子ジョン=ウィリスの兄となる

 

10. 回想(3/3)仮面浪人時代

11. 間宮の家

12. ジョン=ウィリス

13. 間宮と創世記

14. テレパシー

間宮と暮らすようになって、聖書の創世記の話をするが、友人たちには支離滅裂にしか聞こえず、2人だけの間にテレパシーが通っているのではと疑う

 

15. ウラ三次元

16. シモーネ=ウィリス

間宮が幻覚と幻聴の治療を受けてまったく目が見えなくなり退学したが、ほどなくジョン=ウィリスに代わってシモーネ=ウィリスという間宮の成り代わりがウィリス家の跡継ぎとして登場

 

第2部        東大病院の天使

1. 東大病院

2003年秋、東大病院で実習

 

2. シモーネとの再会

シモーネの祖父の生肝体移植手術に立ち会いを頼まれる

 

3. 回想(1/2‐禁煙)

1998年冬、間宮と別れて3カ月後、喪失感もあって精神的に異常を来し、環境を変えようと思いついたのが禁煙

 

4. ソフィア=ウィリス

ソフィアもウィリス家の人間だが、現在試用期間中

 

5. ジャネの法則

人生の体感時間は年齢に反比例する。0歳の1年が、1歳になると6カ月に感じる

普通の人の何倍か濃密な人生を送れば、短命でも十分長く生きたことになる

 

6. 回想(2/2‐断薬)

1999年夏、禁煙失敗から半年。片頭痛に襲われる。病状が進行し、心療内科に通う

試験も落第

 

7. シモーネと間宮

2003年秋

 

8. 神月(かみづき)教授

教授の執刀で行われる肝臓手術に、祖父チャールズの指示で僕が立ち会う

 

9. 竹下通り

初めてシモーネと結ばれる

 

10. チャールズ=ウィリス

チャールズに呼ばれて病室に行くと、創世記の話をされる

 

11. 微笑

チャールズの肝移植のドナーはシモーネ。術後はアメリカの病院に転院

 

12. 論理球爆縮

論理球に内在する理念を人間が感知した結果生まれたのが物理や数学。法律学や倫理学も同じ普遍性を有している

 

 

あとがき

私は令和3年から『ぴーす』として、YouTubeで自分の考える宇宙観や、医学生・研修医時代の経験を話してきた。この小説には、その内容が盛り込まれている

「実話をもとに描いたSFファンタジー」と紹介されたが、そのイメージは以下の通り

https:/www.youtube.com/@piece0385

悪魔について――高校時代までの話は実話。イマジナリーフレンドの[]は、小学生から大学2年くらいまで存在し、一体化する自分自身をイメージして集中力を高めた。若い人が好む自己洗脳の一種

キーワードの1つ「論理球」とは、「とんでもない角度から切り込む」と言われた自分の経験から造語。主人公のノボルは、自分の理想とする人物像

なぜそこから聖書の展開に帰着したのか。科学の世界では長年「無駄な知識」と考えられていた理論体系が後世で見直されるのはよくあること。特殊相対性理論を学ぶうちに、「光の速さが一定」という絶対原理が、聖書に言う創世記の「光あれ」という、「まず光ありき」という点で共通していると考え、「聖書を書いた人間は、世界の本質を論理球を通じて知っていた」という前提で考察を進めた。ゼロからスタートして、少しずつ基本構成要素を積み重ねていく聖書の創世記の過程は、数学や物理の論理構築のプロセスと似ている

天使について―――大学5年から病院実習が始まり、死や病気を前にしても生き生きとしている医者に対して、畏怖の念を覚え、その生き様は私にとって刺激となり、厳しい現実の中でも思考を止めない重要性を教えてくれた

 

 

 

 

 

 

 

 

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Kindleで人気沸騰! 東大理三出身の医師が描く話題作が待望の書籍化!

「既存の文学賞がキャッチできなかった異形の小説」――海猫沢めろん(作家)

「東京大学を舞台に論理と意識が交錯する世界をめぐる壮大な物語」――野村泰紀(物理学者)

東京大学理科三類に通うノボルは、東大模試で異次元の点数を叩き出し、その後理三に合格した天才・間宮と出会う。彼は間宮と交流を深めていくうちに、天才の圧倒的な世界観に魅了され……

天才とは何か、この世界に隠された秘密とは? リアリティとフィクションが交錯しながら、旧約聖書について大胆な仮説が展開される異色のSF青春譚。

 

 

 

こうむら眼科

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2024/05/11 — 当院院長による書き下ろし小説『東大理三の悪魔』がAmazonにてkindleおよびペーパーバックで販売開始されています。 学生時代、角川日本ホラー小説 ...

 

 

 

 

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さて本の感想です。

 

これはどう表現していいのか。

いろんな要素がギュギュッと押し込まれたような本でした。数学、医学、科学、哲学、宗教・・・かろうじてSFと言ったらいいのか。まるきり創作と思いきや、筆者の方の体験や思想が色濃く現れているそうで。

この方はYouTubeで自分の考えを発表しているそうで、この人なりの宗教とも言えるのかも知れないです。わたしはフィクションとして楽しみたいので、YouTubeの方は見てないのですが

 

物語はすごくすごく面白かったです!

素粒子とか、世界が七次元あるとか途方もない話なのですが、その理論で旧約聖書を説明するというくだりは「おおすごい」と思いました。なんだかしっくりくるのです。

 

ついでにそれでヒトが持っている第六感や心霊現象をも証明してしまうのがすごい と思いました。

そういうのを「非科学的だ」という理由で否定することはできないのね。なぜなら、科学で証明できる範疇のものじゃないから。(あくまでこの本の設定です)

 

これによると、過去も未来も思念も世の理も、作っていくものではなくてすでに「在る」ものらしい。

世界の歴史の中でごく少数、それを「見る者」が存在してきたらしい。そして「知る者」が言語化して万人に伝えたらしい。「知る者」というのが世界の中で天才と言われてきた人たち、例えばレオナルド・ダ・ヴィンチとかモーツァルトとかニュートンとか。

 

こうやってメモ書きとしてまとめていても「ン?」とわからなくなるのですが、本で語られる説明を読んでいると「なるほど納得」となるのでした。不思議。というかわたし洗脳されてる?

 

我々が普通に生きているこの社会でも「見る者」は存在していて、「見る者」を手元に置いている人間が繁栄と富を築きあげているんだろうな。そういう人間は、だいたい親しい者たちだけで富を独り占めしている。

 

ところで、タイトルの東大理三についてです。

 

わたしなど凡人だと、東大理三に入ればさぞかし映えある未来が開けるのだろう、人生の成功者になる切符を手に入れたのだろうと思ってしまいますが、どうもそうではないらしい。

東大を出た人間は超優秀な労働者になるだけであって、この世を統べる者になるわけではない。この世を統べる資本家は他にいて、彼らが支配者であり成功者なのだそうです。超優秀な労働者は資本家に利用されるだけ。

そう言われればそんな気もしてくる。

 

 

ここまで書いて、おそらくこの感想文はわけのわからない内容になっているだろうと思います・・・

 

遅ればせながら本のあらすじです。

 

東大理三の学生である主人公のタムラノボル。

彼は意外なことに、中学の途中までは全然勉強ができないいじめられっ子でした。

しかしある日の数学の授業で

「論理は一次元的、理解は二次元的、実感は三次元的」

という言葉を聞いてからは彼の中で革命的変化が起きたように物事の見え方が変わり、メキメキと成績を伸ばしてそのまま東大に合格。

 

東大の図書館で、彼は外見が女性なのに中身が男性である間宮惣一と出会います。

 

真の天才である間宮の口から次々とこぼれ落ちる、この世の理。

しかし常人の能域を遥かに超えた間宮は不安定さを持ち、オモテとウラの世界を行き来するたび精神的に苛まれ・・・

 

 

一人の人間に存在する別人格・間宮とシモーネが危うくて、読んでいてとても不安になります。彼らに惹きつけられたタムラも精神を病んで、家から出られない状態になったし。

精神科の薬に依存していく様子とか、依存症から脱却する苦しみが生々しく、痛ましい箇所でした。

 

それと、東大病院に勤める外科医たちの過酷さ・・・よく言われますが、本当にこんななの?

他者に対して攻撃的になるのを抑えるために、たまに手術室で吠える医者とか、コワー!!

 

こんな過酷な生き方をしているのなら、医者にホスピタリティなんて求めなくてもいいやと思ってしまいました・・・その代わりしっかり正気で手術してくれればいいんじゃないか・・・?

 

 

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