地面師たち 新庄耕 2025.6.6.
2025.6.6. 地面師たち
著者 新庄耕 1983年京都市生まれ。神奈川県在住。慶應義塾大学環境情報学部卒業。2012年、第36回すばる文学賞を受賞した『狭小邸宅』にてデビュー。24年、『地面師たち』がNetflixにて実写ドラマ化され、話題となる。同年、続編『地面師たち ファイナル・ベッツ』と、前日譚を描く『地面師たち アノニマス』を刊行
発行日 2019.12.10. 第1刷発行 2019.12.30. 第2刷発行
発行所 集英社
初出 『小説すばる』2019年1~6月号、8~10月号
土地の所有者のなりすまし役がササキ。所有者は島崎健一。1940年生まれの辰年。報酬は300万円。3Dプリンターで作った実印とICチップ内蔵の運転免許証を渡される
売り主の代理人を務めるのは拓海。37歳。表向きはスパークリング・プラニングという不動産コンサルタント業で、偽名は井上秀夫。ハリソンとは4年の付き合い
以前はまっとうな司法書士だった強面の後藤。拓海とは2度目の顔合わせ
佐々木を採用したのが地面師のハリソン山中。前科2犯
なりすまし役を手配するのは元デートクラブのマネージャー麗子の役割
土地の情報を集める図面師が竹下
取引の場所は弁護士事務所
買い主側の不動産業者はマイクホーム
立会人は、この弁護士事務所に間借りしている弁護士
物件は、恵比寿駅にほど近い343㎡の土地。売却代金は約7億円。実勢価格1000万円/坪に比べ割安。古びた民家に独居老人が住み、権利関係に複雑な事情は見られず、抵当権も設定されていない、地域の不動産業者間では知られた物件
島崎が老人ホームに入ったという情報を拓海たちが入手したのが半年前
マイクホームは、創業7年目ながら成長著しい。仲介からスタートし、販売代理、専有卸を経て、今回が初めての自社開発で、一部上場を目指す足掛かりのプロジェクト
取引がうまくいって、地面師グループはほとぼりが覚めるまで海外に逃亡。拓海は会津の丸山岳の縦走へ
知能犯を扱う捜査2課で、来年度末に定年を迎える班長の辰が一人地面師詐欺事件を追う
追うのは山中ハリソン。元暴力団員で破門された後、地上げのノウハウを活かして地面師に。以前詐欺事件で捕まえながら、嫌疑不十分で不起訴になったことを思い出す
拓海は、6年前に横浜の生家が全焼。母と妻子を亡くす。その半年前に親族で経営する専門商社が倒産。連帯保証人として大きな借財を背負い、その返済に四苦八苦していた唯一生き残った父が、自暴自棄になって放火したと供述し収監
すべてを失って自堕落な生活をしているところに山中から声がかかり、パシリから始まって山中の仕事を手伝うようになり、詐欺の手段を教え込まれ、一人前の地面師となる
3か月半後に次のヤマとして目を付けたのが泉岳寺近辺の国道に面した2600㎡の土地
辰は、7月の恵比寿の地面師による詐欺事件で代理人を務めた井上秀夫を追う。重要参考人として事情聴取を試みたが、住所はもぬけの殻。なりすましの老人も同様だったが自死しており、事件解決の見通しは立っていない。旧住所を張り込んで、服役中の父が秀夫に送った手紙をゴミ箱の中から見つけ、父親に会いに行く
辰は定年退職するが、ハリソンのことだけは心残り
泉岳寺の物件の所有者はお寺の住職の尼さん。旦那が浮気で家出、尼さんも不倫が発覚。100億で偽の売り情報を出すが、大きすぎて買い手が見つからないところに引っ掛かってきたのが、都心の大プロジェクトの用地確保に齟齬があって代替地を必死に探し回っていた大手の不動産開発業者・石洋ハウス
辰は父親に会い、父親の会社が倒産したのはハリソンが仕掛けた詐欺に巻き込まれたことを突き止め、一家の墓に毎年拓海が来ることを知って待ち伏せし、拓海に真実を教える
石洋ハウスはまんまと騙され、拓海はすべてを清算すべく、ハリソンを殺して自首しようとしたが、ハリソンに返り討ちに会い一命をとりとめ、辰に自白を告げる
ハリソンは、シンガポールに逃亡。次の新しいカモを探す
集英社 ホームページ
100億円という前代未聞の不動産詐欺を成し遂げた彼らが地面師になるまでを描く、それぞれの前日譚――。司法書士歴20年の後藤は、一人娘の塾代に困るほど、薄給に喘いでいた。そんな中、山中と名乗る実業家から300万円で不正への加担を依頼される。喉から手が出るほど欲しい金額だが、事務所の所長を裏切れないと拒否。だが、事態は一変し!?(「ランチビール」)など、スピンオフ短編、全7編収録。
ある事件で妻子を亡くした拓海は、大物地面師・ハリソン山中のもとで不動産詐欺を行っていた。次に狙うのは市場価値100億円という前代未聞の物件。一方、定年間近の刑事・辰は、彼らを追ううちにハリソンが拓海の過去に関わっていたことを知る。一か八かの詐欺取引、難航する捜査。双方の思惑が交錯した時、衝撃的な結末が明らかに──。圧倒的なリアリティーで描く、新時代のクライムノベル。
「地面師たち」著者・新庄耕さんインタビュー
著者は語る
2020/03/01
他人の土地を勝手に転売し、莫大なカネを騙し取る「地面師」。五反田の土地取引を巡って、大手住宅メーカーの積水ハウスが約55億円の被害に遭った事件も記憶に新しい。ブラック企業の不動産営業マンを描いたデビュー作『狭小邸宅』、マルチ商法の裏側を取り上げた『ニューカルマ』など、現代社会の暗部を書き続けてきた新庄耕さんが、今回題材に選んだのは、その地面師たちだ。
「この情報化社会の中で、積水のような大企業が、“なりすまし”という、非常にアナログなやり方で一杯食わされた事実は、とても印象的でした。ただ、報道を見ていくうちに、地面師たちの素性やその手口にも興味を覚えたんです。なぜ彼らはここまでして人を騙すのか。逆に騙されてしまった被害者の心理にも同じくらい思うところがあった。そこを掘り下げていくことで、騙す側と騙される側の人物造形が見えてきた気がします」
『地面師たち』の主人公は、ある事件で母と妻子を亡くした辻本拓海。大物地面師・ハリソン山中と出会い、元司法書士の後藤、土地の情報を集める図面師の竹下、所有者のなりすまし役を手配する麗子らと不動産詐欺に手を染めていく。ひと仕事を終えた彼らが次に狙いを定めたのが、市場価格100億円という一等地だ。一方、定年を控えた刑事の辰は、以前に逮捕したものの不起訴に終わったハリソン山中を独自に追っていた。地面師たちの素顔、薄氷を踏む取引現場、難航する辰の捜査……圧倒的なリアリティとダークな疾走感で物語は展開されていく。
「最初に編集者とA4用紙に『こんな感じで』と書いた大きな流れはほぼ踏襲していますが、難しかったのは、設定も含めて、どれだけ臨場感を出せるか。不動産関係者や行政書士など様々な方に取材を重ね、裁判資料もずいぶん読み込みました。地面師対策セミナーにも参加しましたね。とはいえ、法律用語ばかり出てきても面白くない。積水事件で逮捕された大物地面師と接点があった方からは、彼に小指がないことを教えてもらいましたが、こうしたリアルな情報が結構役に立ちました。所有者が本人かどうか確認する場面でハリソン一味が盲点を突かれて内心慌てるというエピソードなども、実際の事件からヒントを得ています」
結末には少し含みを持たせている。
「他の作品もそうなのですが、単純な勧善懲悪の話にはしたくなかった。彼らの行く末は是非、読者の皆さんの想像力で膨らませて頂きたいと思っています」
『地面師たち』をさらに楽しむための5本 原作者と監督による“秘話”満載!
2024/10/24
大根 どこに行っても観てくれた人がいるんです。自信はあったのですが、ここまでとは想像していませんでした。
新庄 本当にどこに行っても観た人がいますね。後藤(演・ピエール瀧)の「もうええでしょう」とか、ハリソン山中(演・豊川悦司)の決め文句「最もプリミティブで……」を皆が真似しています(笑)。
「地面師たち」日本発の大勝負
特集 ネットフリックス
vs アマゾン
大根 仁 演出家・映画監督
新庄 耕 作家
2024/10/09 文藝春秋 2024年11月号
なぜネットフリックスで大ヒットしたのか
大根 どこに行っても観てくれた人がいるんです。自信はあったのですが、ここまでとは想像していませんでした。
新庄 本当にどこに行っても観た人がいますね。後藤(演・ピエール瀧)の「もうええでしょう」とか、ハリソン山中(演・豊川悦司)の決め文句「最もプリミティブで……」を皆が真似しています(笑)。原作の『地面師たち』を出した時はそれなりに手応えがあって、そこそこ売れたのですが、そこまでは知られずに終わっていました。それが大根監督にドラマにしていただいたことで、景色が一変してしまった感じです。
Netflixシリーズ「地面師たち」 Netflixにて世界独占配信中 Ⓒ新庄耕/集英社
大根 ヒットのお祝いとして刑事・辰(たつ)役のリリー・フランキーさんに銀座のクラブに連れて行ってもらった時も、交代で席についてくれた10人くらいのホステスさんが全員観ている。ということは店のお客さんも観ているはずで、「これはもう大ヒットだ!」と確信しました。
新庄 私も知人の経営者に連れて行ってもらって4軒ハシゴしたのですが、本当に全員が観ていました。
大根 ははは(笑)。ちょっと驚くくらいチヤホヤされますよね。
新庄 普段はドラマや映画を観ない人までが観ている気がします。
大根 先日も五反田のサウナに行ったら、常連のお爺さんたちが、「なあ観たか、『地面師たち』。豊川悦司がすごいんだよ。人を踏みつぶして殺しちゃうんだよ」って(笑)。
新庄 五反田は、積水ハウス地面師詐欺事件のまさに現場ですね。
大根 そのお爺さんも「積水も俺のところに来てれば、助言してやったのになあ」と(笑)。話題になっていれば女性は観るものですが、映画やドラマを一番観ないのは、一般の中年男性なんです。
新庄 今回はそこまで動いた感じですね。
大根 だから僕にとっても、これは全く新しい経験でした。
Netflixで配信中のドラマシリーズ「地面師たち」。7月、世界同時配信が開始されると、6週にわたって日本のNetflix週間TOP10(シリーズ)で首位を独走。グローバルTOP10(非英語作品、シリーズ)でも2位に浮上するなど、世界的大ヒットとなっている。
2018年から2019年にかけて、10人以上もの逮捕者を出した「積水ハウス地面師詐欺事件」に着想を得た新庄氏による原作小説は、辻本拓海(綾野剛)、ハリソン山中(豊川悦司)ら、地面師詐欺グループの犯罪劇を描いている。
勝負を賭けた「地面師たち」
新庄 大根監督は私の小説が出る前から、地面師詐欺事件に興味を持たれていたんですよね。
大根 世田谷の自宅から高輪の職場まで自転車で通勤していて、途中に事件の現場となった旅館「海喜館」があったんです。自分の生活圏なので取り壊されるまでの約10年間ほぼ毎日見ていました。五反田は急速に再開発が進んでオフィスビルが建ち並んでいますが、かつては花街でした。「海喜館」にはその頃の雰囲気がかすかに残っていて、その妖気に惹かれ、時折、スマホで写真を撮っていたんです。
新庄 「なんでなくならないんだろう?」という都会の中の「エアポケット」みたいな場所ですね。『狭小邸宅』というデビュー作を出した時に不動産業を取材したのですが、仕入部隊は土地を常に探している。だから都会のド真ん中に海喜館みたいな大きな土地がまだ残っていることは、普通あり得ない。
大根 その海喜館が、ある日テレビを点けたらニュースの画面に映っていて、思わず「マジか!?」と声が出ていました。それで「この事件を映像化したらめちゃくちゃ面白い」と、時系列に並べたチャートを作り始めたんです。作業をしていくと、ドキュメンタリーとしては面白そうでも、フィクションとしてはどうも弱い。でもこの企画は絶対に自分でやりたいから、「いっそ誰かこの事件を元に小説でも書いてくれないかなあ」と思っていました。
新庄 私は純文学畑の出身で、2012年のデビュー後は、低空飛行を続けていました。そんな折、編集者から地面師事件をテーマに勝負しないかと提案されたんです。これでダメだったら筆を折る覚悟で書いた最初のエンタメ作品でした。ただ、「『オーシャンズ11』みたいなポップな感じですかね」という提案に対しては、もう少し人間ドラマとして描きたいという思いがありました。
大根 「地面師たち」は僕にとっても勝負を賭けた作品でした。
30代の頃から深夜ドラマを手がけてきて、「モテキ」のように映画化されるものも出てきて、40代は自分のやりたい企画も実現できるようになりました。ただ50代に差しかかる頃、自己模倣というか、過去の自分の作品に囚われて縮小再生産的になっていると感じて、自分から発信する作品は「1回休もう」と、ここ数年は、大河ドラマ「いだてん」や映画「クレヨンしんちゃん」、ドラマ「エルピス」といった受注仕事を中心にしていました。次に自分の企画でやるなら、これまでやってこなかった作品をつくろう、と思っていたところで出会ったのが、新庄先生の『地面師たち』だった。こんなことは滅多になく、何かに呼ばれている気がしました。
原作との運命的な出会い
新庄 監督が私の小説を見つけてくれたのは、海喜館のすぐ近くだったんですよね。
大根 これも不思議な縁で、事件発覚から約1年後、海喜館の向かいにあった書店に何気なく立ち寄ったら、平積みコーナーに、まるで「ご当地犯罪小説」(笑)のように本が置いてあったんです。もう中身も確認せずにその場で買いました。ノンフィクションと違って、登場人物がユニークで、ハリソン山中と辻本拓海の師弟関係などはこれまであまり見たことがない歪(いびつ)さ。一気に魅了されて無我夢中で読み終えました。
「映像化は絶対に俺がするぞ」という思いでしたから、読みながら頭の中にはもう映像やキャストが自ずと浮かび上がってくる。その日の深夜には企画書を書き上げました。それで、その勢いのまま、版元の集英社に電話をかけたんです。
新庄 本の奥付にある代表番号にかけてくださったそうですね。こんな電話は滅多にないから、電話を受けた編集者が「オオネ……?」と戸惑ったと聞きました。上司に報告したら、「映画『バクマン。』の大根監督だよ!」って(笑)。
「地面師たち」はいくつか映像化の話が来ていたのでコンペになったのですが、満場一致で大根監督の企画に決まりました。
映像化の企画書というのは、大概パワーポイントでビジュアル的には綺麗に作られているものがほとんどのようですが、大根監督の企画書だけは、A4の紙13枚に活字がびっしり。この作品をやりたいということに加えて、監督としてこれまでどんな道筋をたどってきたか、どんな問題意識を持っているか、だから自分が撮らなきゃいけないんだ、ということが理路整然と書かれていて、圧倒されました。
最初は意見することも考えた
大根 僕にとって企画書は原作者へのラブレターで、「あなたのことを一番好きなのは僕です! ぜひ付き合ってください!」という熱意を嘘偽りなく書きました。
新庄 初めてお会いした時も、映像化への意欲を熱く語ってくれました。その時には監督なりの世界観がもう出来上がっていて、原作から改変したいポイントも決まっていて、なぜ改変するのか、丁寧に説明してくれたことをよく覚えています。
大根 原作者を前にこんなことを言っては失礼かもしれませんが、僕は原作ものを手がける時は「原作を殺す」ことを心がけています。いったん「殺す」ことで「生まれ変わらせる」。ある時点からは作品を「自分のもの」にしないと、かえって原作に失礼だと思うんです。
新庄 監督がよくおっしゃる、映画「羅生門」で有名な脚本家・橋本忍の原作に対する姿勢ですね。
大根 橋本さんは「原作の姿形はどうでもいい。欲しいのは生き血だけ」という言葉を残しています。この「血だけ抜く」という考え方が僕にはしっくりくるんです。僕はもう少し、骨や肉も欲しがりますけど、生まれ変わらせるのは一緒です。
新庄 正直に言えば、脚本を読んで、リリーさん演じる辰を取り巻くドラマオリジナルの展開など、原作とトーンが変わっているなと戸惑ったこともありました。だから最初は意見することも考えたんです。ただ一部でも原作に引き寄せた途端、大根監督が築かれた世界観が壊れてしまう。だから「全部お任せします」と。そもそも最初にお会いした時から、「ここは譲りません」という強い意志がひしひしと伝わってきましたから(笑)。
完成した「地面師たち」を観れば、もう監督にお任せして本当に良かったと思うしかありません。
完璧すぎるキャスティング
大根 制作関係者は配信前に自宅のテレビやパソコンで見られるのに、先生は試写会までご覧にならなかったんですよね。
新庄 大きなスクリーンの試写室の最前列で、朝から夕方まで全7話をまさに“一気見”したのですが、もう圧倒され続けでした。時間を忘れ、終始口を開けながら。
大根 いや〜。嬉しいですね。
新庄 どのシーンも思い入れがありますけど、一番は主人公の拓海が、アントニーさん演じる半グレのオロチに「(地面師は)あんまりお勧めできないかな」と言った後、ボスであるハリソン山中の元に向かって街を歩いていくところ。拓海の揺れ動く葛藤がにじみ出ていて、一番好きなシーンです。
大根 あのシーン、実は最初は脚本になかったんです。
新庄 え、そうなんですか?
大根 撮りながら、地面師の拓海が普通の拓海に戻っていく描写が必要だなと思ったんです。綾野君にもその話をしたら「その描写、たしかに必要ですね」ということで撮りました。あの場面で、だんだん降ってくる雨に濡れることによって、拓海は「地面師」を身体から抜いていく。
新庄 原作で最も描きたかったのは、根っからの悪党ではない、暗い過去を背負ってしまった拓海の葛藤だったので、涙が出そうになりました。拓海の光と闇を完璧に表現された綾野さんの演技が素晴らしかった。
詐欺の発覚後、現場に集まっていた野次馬が一度はけたところに、ハリソンが1人佇んでいるシーン。あの感じも大好きです。
大根 ハリソンがどーんと映し出されるところですね。
新庄 めちゃくちゃかっこいいですよね。ハリソン山中というキャラクターを、それ以上何も語る必要がないくらいにあの映像が体現している。演出とともに豊川さんの存在感が抜群でした。
大根 原作を最初に読んだ時から、キャスティングはだいたい決めていたんです。物語の冒頭、喫茶店で地面師グループの交渉役・後藤と、なりすまし役の老人が話しているシーンから、「後藤はピエール瀧さんだな。うん、この老人は五頭岳夫さんしかいない」と(笑)。拓海もハリソンも、それから麗子も、これは綾野君、豊川さん、小池栄子さんしかいないと思いました。
新庄 他にも石洋ハウスの役員・青柳役の山本耕史さんなど、どのキャストの方も、「この人以外にあり得ない」というくらいハマりすぎていますね。それで私は困っているんです(笑)。今、『地面師たち』のスピンオフを連載しているんですが、登場人物のセリフがキャストの皆さんの声で脳内に再生されるんですよ。後藤の「もうええでしょう」も、すべて瀧さんの声になってしまって。「やりづらいなあ」って、唸りながら書いています。キャストの皆さんの演技がそれだけ完璧だからで、今となってはもう「当て書きだ」と割り切っていますが。
大根 自分が生み出した作品にキャストが侵食してくるって、不思議な感覚でしょうね(笑)。
“細部”へのこだわり
新庄 監督の脚本に出てきた「ハリソンルーム」についての文章を読んで私がイメージしていたのは、ちょっとした仕切りのある狭いワンルームで、当初違和感があったのですが、東宝のスタジオに作られた「ハリソンルーム」は衝撃的でした。「文字だけでイメージする自分と映像のプロのイメージは、これほど落差があるのか」と一目で見せつけられてショックを受けたというか、大変勉強になりました。
大根 先生はその時、一度だけ撮影現場をご覧になったんですね。
新庄 壁一面にヴィンテージウイスキーが並ぶ超豪華な部屋で、竹下役の北村一輝さんが「ルイ・ヴィトン」と脈絡もなく叫ぶシーンはあまりに恐ろしくて震え上がりました(笑)。
大根 原作を読んで、ハリソンがこだわりの強い男だということは分かっていたので、そこをより映像的に表現するために、「ヴィンテージウイスキーマニア」という設定にしたんです。「こうすれば台詞にもいろいろ反映できるし、ハリソンのキャラクターの魅力がさらに膨らんでいくのかな」と。
新庄 原作者として違和感がないどころか、「まさにハリソンだ!」と感激しました。
大根 原作を映像化するにあたっては、登場人物の“細部”を膨らませていくものなのですが、やや膨らませすぎた部分もあるかもしれません(笑)。ハリソンは、原作ではあそこまで人を殺さないですね。
新庄 あはは(笑)。
とにかく“細部”への妥協のないこだわりには圧倒されます。あの高級ウイスキーも、すべて本物なんですね。
大根 世界的にも有名な目白の酒屋「田中屋」さんと、六本木のバー「水楢佳寿久」さんに協力してもらいました。
新庄 実は私も原作を書く時、行きつけのバーのマスターにヒアリングしたのですが、そのマスターからも、「あのウイスキー棚のセットには驚いた」と連絡が来ました。
大根 僕自身は正直、拓海と一緒で「ポートエレンは美味しいとは思うけど、これで数万円と言われてもな」という感じなのですが(笑)。
東京が嘘っぽく映るのが嫌
新庄 キャストの方だけでなく、背景も映像的に素晴らしいですね。
大根 「ロケーションも含めた美術だ」という考えで、撮影場所にはこだわりました。
新庄 どのシーンも1枚の絵画のようで、「東京感」というか、東京という街の魅力が描かれている。おそらく海外の視聴者もこの作品を通じて触れた「東京」に惹かれるのではないか。「世界同時配信」ということで、そこも意識されたのでしょうか。
大根 特に意識したというよりも、自分たちの半径10キロ以内のことを描いて、それが結果として世界に届くのが一番の理想でした。とにかく東京が嘘っぽく映ってしまうのが嫌で、「ここじゃない! ここでもない!」と撮影場所を探すセクションにはかなりの無理をお願いしました。
新庄 電気グルーヴの石野卓球さんが手がけられた音楽も素晴らしかったです。音楽を革新的なものにしたい、ということは、企画書の段階から書かれていましたね。
大根 この作品は音楽が肝になると最初から思っていて、卓球さんには、脚本ができた時点ですでにイメージに合う曲を数曲、その後も撮影を進めながら作っていただきました。ただ、観た方なら分かっていただけると思いますが、あの音楽は一筋縄ではいかないんですよ。
新庄 こういう使われ方は普通はしない四つ打ち系のリズムが見事にハマっていて、かっこよすぎ。
大根 この作品は、かなりの部分が、卓球さんの音楽が持つ不思議な魔力に助けられています。
新庄 映像化していただくにしても、映画やテレビドラマなど、いろんな可能性や選択肢があったはずですが、最初にNetflixで決まったと聞いた時、直感的に「いいな」と思ったんです。私自身は、当時まだ契約していなかったのですが、周囲の人たちがNetflixを観始めていて、ちょうど「全裸監督」が話題になっていて、その勢いを肌で感じていたからです。
大根 最初は、知り合いの映画会社に持ち込んだのですが、映画会社はシネコンの経営など不動産事業にも関わっている。だから、地面師がテーマの話は難しい、ビジネスパートナーである不動産会社を貶めるようなことはできない、と。おそらく他の映画会社も事情は同じでしょうとのことでした。それでテレビドラマを考えたのですが、テレビ局にとっても不動産会社は大切なスポンサーで、もっと厳しいはずだとすぐに気づきました。
Netflix作品と映画・ドラマ
新庄 どうやっても具体的な企業名を想起させる話ですからね。
大根 しかもセクシュアルな表現や過激な暴力描写もあるので、通常の映画やテレビドラマではどうしても規制がかかってしまう。そう考えたところで、Netflixというアイディアが出てきたんです。それで企画と脚本を持っていったら、ほとんど即決でした。「これはもう、完全にうち向きです。やります」と。
「配信ドラマ」を作るのは初めてでしたが、ここ数年は僕自身も配信で海外ドラマを熱心に観ていて、巧みなストーリーテリングで、情け容赦なく緊張感が持続する海外作品に刺激を受けていました。ただ、もし自分がやるなら、日本ならではの題材と作品で挑戦したい、と漠然と思っていた。だから「地面師たち」はまさに打ってつけだったんです。
新庄 映画やテレビドラマと配信ドラマには、制作側から見て、やはり違いはあるのでしょうか。
大根 それぞれに違った良さがあります。映画には映画の興行というギャンブル性の楽しみがあり、テレビドラマには、また独特のエクスタシーがある。同じ時間に何百万人が同じものを観るというのは、テレビにしかありえない特性だからです。
テレビドラマなら、家の大きなテレビで複数で“生活音”の中で観ることを想定しますが、Netflixの場合は、個人視聴度が強いというか、より意識的に観ている人が多い。いわば映画とテレビドラマの中間みたいな存在です。飲食店に喩えれば、テレビドラマがファミレス的だとしたら、Netflixは、お金をしっかり払って食べたいものを食べる高級な専門店のようなもの。
そうした配信ドラマでは、「継続視聴」してもらえるかどうかが重要になるんです。
新庄 「一気見」させなくてはいけないということですね。
大根 まさにそうです。プロデューサーにも、再生回数というよりもむしろ、全7話、最後まで観てもらうことが大切だと言われていました。そのためには各話から次の話に移る時のフックというかクリフハンガーを仕掛けて、次をどんどん観たくなる展開にしなければならない。
新庄 そこで原作を改変する必要が出てくるんですね。
大根 もし今回、映画で制作していたら、改変ポイントはもっと少なかったかもしれません。
90%以上は捨てた
新庄 小説があまり読まれなくなった時代に、私も1行でも多く読んでもらおうとスピード感にこだわって書いているつもりですが、監督の改変の仕方は勉強になりました。
大根 先が気になるような仕掛けを打つという意味では、配信ドラマという形式は、話数がフレキシブルなので、やりやすかったです。テレビドラマはだいたい1クールが3か月と決まっていて、全10〜12話で完結します。配信にはそういった決まりはなく、「地面師たち」も全7話。さらに、テレビドラマだと放送の枠やCMに合わせて尺を調整する必要がありますが、Netflixは1話ごとの尺も自由に変えられる。今回も、短い話で約37分、長い話は約66分で作っています。ベストの話数と尺で作れるということです。
新庄 その自由度を最大限に活かして、観ている人を作品世界に没入させるわけですね。話の続きが気になるだけでなく、「このキャラクターをずっと観ていたい」とか「この映像と音楽の世界にもっと浸っていたい」という気持ちにさせられました。それは、脚本から、キャスティング、ロケーション、音楽、スタジオのセット、小物の演出まで、「一気見」させるために監督が徹底的に作り上げられたからですね。
大根 それが可能だったのは、やはり潤沢かつ適正な予算と、比較的余裕のあったスケジュールのおかげです。通常のテレビドラマでは滅多にないような制作費をかけることができましたし、撮影期間も約半年間と、テレビドラマの2〜3倍の時間を費やすことができました。
新庄 なるほど。たしかに見学に行った時も、同じシーンをカメラを替えて何度も撮影していました。驚いたのは、それでも実際には使っていないシーンが山ほどあって、こんな贅沢な使い方というか、素材を大胆に捨てることは、普通はなかなかできないでしょう。
大根 おそらく90%以上は捨ててるでしょうね。
新庄 それだけ妥協せずに作られたわけですね。
Netflixという国際舞台
大根 Netflixでのドラマ制作を経験して面白かったのは、作品のクオリティチェックの厳しさです。テスト映像をNetflix社内の専門チームが見て、映像、音声、CGなどのクオリティが基準に達しているかを全部チェックするんです。
新庄 監督の作品にも、何かチェックが入ったんですか。
大根 入りました。CG映像を送ったら、「ここはもっとレベルをあげて」と言われて、「こっちだって頑張ってるんだ!」と思ったこともありましたが、ここまで「品質管理」をしているのか、と。これがNetflixの強みなんだと実感しました。映像について言えば、スマホからタブレット、大画面までどれで観ても遜色のないクオリティを求められます。
新庄 そうやって、いろんな国の質の高い作品を日常的に視聴できるのは、今までにない経験ですね。
大根 高級なセレクトショップみたいな存在で、普段目にしたこともないタイやベルギーなどのNetflixオリジナルドラマを観ると、物凄いクオリティでめちゃくちゃ面白い。
新庄 「地面師たち」も世界で同時配信されて、いろんな国で観られているようですね。
大根 グローバルチャートでも2位に入りました。南米とか東南アジアで多く見られているみたいです。正直、日本でのヒットはある程度想定していたのですが、世界でもここまで観ていただけるとは思っていませんでした。
Netflixでは、外国語の吹き替え版も観られるので、言語を色々と変えて楽しんでいます。「英語やフランス語だと音楽がより引き立つんだな」といった新鮮な気づきがあって、なかなか学びになるんです。
新庄 面白いですね。ちなみにオススメは何語の吹き替えですか。
大根 ドイツ語です! 迫力が他とは違って圧倒的でした。
大根氏はNetflixと5年独占契約を結び、新作のシリーズ・映画を複数制作することが9月30日に発表された Ⓒ文藝春秋
――観た人の誰もが、ドラマ「地面師たち」続篇を期待していると思うのですが、ご予定はありますか。
大根 やっぱりそれを聞きますか(笑)。そこはノーコメントというか、先生次第です!
【フル動画】大根仁×新谷学「辰さんはなぜ死んだ? 『地面師たち』超マニアック解説決定版 前編」
新谷学が聞く!第9回
大根 仁 演出家・映画監督
新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
2024/10/08
「文藝春秋 電子版」は10月9日(水) 21時より、演出家・映画監督の大根仁さんと文藝春秋総局長の新谷学によるオンライン番組「辰さんはなぜ死んだ? 『地面師たち』超マニアック解説決定版 前編」を配信しました。
『地面師たち』と大根流“創作術”
文藝春秋・総局長の新谷が話題の人物、渦中のゲストをお招きして話を伺う「新谷学が聞く!」。第9回のゲストは現在大ヒット配信中のドラマ『地面師たち』監督の大根仁さん。
『地面師たち』は7月に世界同時配信が開始されると、6週にわたって日本のNetflix週間TOP10で (シリーズ)首位を独走。グローバルTOP10 (非英語作品、シリーズ)でも2位に浮上するなど、世界的大ヒットとなっています。
原作小説は15人もの逮捕者を出した実在の事件に着想を得ており、ドラマでも辻本拓海(綾野剛)、ハリソン山中(豊川悦司)ら、地面師詐欺グループの犯罪劇が描かれています。
前編はハリソン山中(豊川悦司)や青柳(山本耕史)らの存在感、辰(リリー・フランキー)の衝撃的なシーンの舞台ウラなどをとことんマニアックに語っています。
【フル動画】大根仁×新谷学「麗子は生きている⁉︎『地面師たち』超マニアック解説決定版 後編」
新谷学が聞く!第9回
大根 仁 演出家・映画監督
新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
2024/10/08
「文藝春秋 電子版」は10月10日(木) 21時より、演出家・映画監督の大根仁さんと文藝春秋総局長の新谷学によるオンライン番組「麗子は生きている⁉︎ 『地面師たち』超マニアック解説決定版 後編」を配信しました。
『地面師たち』、気になる続編は?
文藝春秋・総局長の新谷が話題の人物、渦中のゲストをお招きして話を伺う「新谷学が聞く!」。第9回のゲストは現在大ヒット配信中のドラマ『地面師たち』監督の大根仁さん。
『地面師たち』は7月に世界同時配信が開始されると、6週にわたって日本のNetflix週間TOP10で (シリーズ)首位を独走。グローバルTOP10 (非英語作品、シリーズ)でも2位に浮上するなど、世界的大ヒットとなっています。
原作小説は15人もの逮捕者を出した「積水ハウス地面師詐欺事件」に着想を得ており、ドラマでも辻本拓海(綾野剛)、ハリソン山中(豊川悦司)ら、地面師詐欺グループの犯罪劇が描かれています。
後編は『地面師たち』脚本の圧倒的スピード感、リアリティを求めたディテールへの徹底的なこだわりについても話題がおよびました。大根さんが『地面師たち』関連の取材で「一番喋りました!」という、まさに“もうええでしょ“な秘話満載。ぜひご覧ください。
「地面師たち」著者・新庄耕さんインタビュー
著者は語る
2020/03/01
他人の土地を勝手に転売し、莫大なカネを騙し取る「地面師」。五反田の土地取引を巡って、大手住宅メーカーの積水ハウスが約55億円の被害に遭った事件も記憶に新しい。ブラック企業の不動産営業マンを描いたデビュー作『狭小邸宅』、マルチ商法の裏側を取り上げた『ニューカルマ』など、現代社会の暗部を書き続けてきた新庄耕さんが、今回題材に選んだのは、その地面師たちだ。
「この情報化社会の中で、積水のような大企業が、“なりすまし”という、非常にアナログなやり方で一杯食わされた事実は、とても印象的でした。ただ、報道を見ていくうちに、地面師たちの素性やその手口にも興味を覚えたんです。なぜ彼らはここまでして人を騙すのか。逆に騙されてしまった被害者の心理にも同じくらい思うところがあった。そこを掘り下げていくことで、騙す側と騙される側の人物造形が見えてきた気がします」
『地面師たち』の主人公は、ある事件で母と妻子を亡くした辻本拓海。大物地面師・ハリソン山中と出会い、元司法書士の後藤、土地の情報を集める図面師の竹下、所有者のなりすまし役を手配する麗子らと不動産詐欺に手を染めていく。ひと仕事を終えた彼らが次に狙いを定めたのが、市場価格100億円という一等地だ。一方、定年を控えた刑事の辰は、以前に逮捕したものの不起訴に終わったハリソン山中を独自に追っていた。地面師たちの素顔、薄氷を踏む取引現場、難航する辰の捜査……圧倒的なリアリティとダークな疾走感で物語は展開されていく。
「最初に編集者とA4用紙に『こんな感じで』と書いた大きな流れはほぼ踏襲していますが、難しかったのは、設定も含めて、どれだけ臨場感を出せるか。不動産関係者や行政書士など様々な方に取材を重ね、裁判資料もずいぶん読み込みました。地面師対策セミナーにも参加しましたね。とはいえ、法律用語ばかり出てきても面白くない。積水事件で逮捕された大物地面師と接点があった方からは、彼に小指がないことを教えてもらいましたが、こうしたリアルな情報が結構役に立ちました。所有者が本人かどうか確認する場面でハリソン一味が盲点を突かれて内心慌てるというエピソードなども、実際の事件からヒントを得ています」
結末には少し含みを持たせている。
「他の作品もそうなのですが、単純な勧善懲悪の話にはしたくなかった。彼らの行く末は是非、読者の皆さんの想像力で膨らませて頂きたいと思っています」
配信ドラマは戦場だ!
特集 ネットフリックス
vs アマゾン
早川 敬之 前アマゾンプライムビデオ 日本オリジナルコンテンツ製作責任者
2024/10/09 文藝春秋 2024年11月号
“予算は数十倍” 外資系動画配信サービスの全貌と「国産エンタメ」が生き残る道
私は今年の3月までアマゾンジャパンに2年半在籍し、日本における映像コンテンツの製作責任者という立場にありました。アマゾンプライムで配信するオリジナル作品のクリエイティブを統括していたのです。
例えば、かわぐちかいじさんの原作漫画を実写化したドラマ『沈黙の艦隊』や、参加者たちの恋愛模様を追うリアリティショー『バチェラー・ジャパン』、かつての人気バラエティをTBSとともに復活させた『風雲!たけし城』などがあります。
4月に独立し、自らの会社を立ち上げ、アマゾンプライムなどで配信する作品の制作を幅広く手掛けるようになりました。現在は、北野武監督の最新作『Broken Rage』の制作が終わったばかりです。
本作は第81回ベネチア国際映画祭の特別招待作品に選出され、9月6日、現地で世界初上映されました。上映後はスタンディング・オベーションが止まりませんでした。アマゾンプライムビデオで2025年に世界配信される予定ですが、きっと多くの人に面白く観て頂けるだろうと確信し、ホッと胸を撫で下ろしたところです。
インターネットを通じて動画コンテンツを配信するネットフリックスやアマゾンプライムは、それぞれ全世界で2億人を超える契約者数を誇る。2社に続いて2019年に動画配信サービスを開始した「ディズニープラス」が契約者数1.5億人と先行組を猛追中だ(日本でのサービス開始は2020年6月)。この3社がいわば「動画配信メジャー」であり、その規模をさらに拡大させている。
配信業界の真っただ中にいる早川敬之氏が“配信戦国時代”における“日本の勝ち筋”を語る。
配信普及率は30%を突破
もともとはテレビマンでした。NHKとフジテレビの局員として、計二十数年働き、バラエティからドキュメンタリーまで様々な番組制作に携わってきました。その私がテレビ業界を飛び出し、配信業界から世界に打って出ようと思ったのは、日本の映像作品が確実に世界に通用するという手応えを感じているからです。テレビ局で働き始めたのは、1994年。日本経済はバブル崩壊直後でしたが、テレビ業界はまだまだ華やかでした。当時、NHKの朝ドラの視聴率は25〜30%ほど、98年大晦日の「紅白歌合戦」の視聴率は57%を超えていました。人気番組であれば数千万人が見ていた時代です。学校や職場での共通の話題はテレビ番組であり、テレビは流行発信の中心だったと思います。
あれから30年が経ち、業界はガラリと変わりました。寂しい話ですが、私のような「テレビっ子」はもう生まれないでしょう。子供も若者も、皆が配信動画を観ています。詳しく説明するまでもありません。
2010年代の半ばにネットフリックスが日本に上陸し、AbemaTV(現ABEMA)が誕生して以降、この「動画配信市場」は右肩上がりで拡大し続けています。2019年には17%ほどだった動画配信サービスの普及率はコロナ禍を経て、昨年には30%台まで飛躍的に伸びました。このトレンドは今後さらに加速することはあっても、逆戻りすることはないでしょう。
今、動画配信業界は巨大な影響力を持っていたかつてのテレビに匹敵する存在となりつつある。そんな新時代の覇権を巡り、ネットフリックスやアマゾンのような外資系企業、日本のテレビ局やディズニーといったコンテンツホルダーたちが入り乱れて争っています。この“配信戦国時代”は全世界を股にかけて繰り広げられており、私たちの住む日本もまたその陣取り合戦の戦場となっています。
テレビの時代であれば、戦うことが許されたプレイヤーは電波法で認可されたごく一握りの放送事業者、つまりテレビ局だけでした。一方、動画配信は法律による参入障壁が存在しません。優れたヒト・モノ・カネを揃えたチームが競合サービスを打ち負かし、インターネットの特性ゆえ国境に制限されることなく、視聴者を獲得することができます。
オリジナルコンテンツは一部だけ
ネットフリックスはもともと、日本におけるツタヤのサービスに似た、郵便を使ったDVD貸出の会社でした。動画配信に転じたのは2007年のことです。アマゾンも最初は書籍を中心としたネット通販会社でした。ディズニーは言うまでもなく、アニメーション制作スタジオでした。このようにプレイヤーの出自はバラバラ。各社の競争戦略もそれぞれ独自のカラーがあります。
じつは各配信サービスで楽しめるコンテンツの大半は他のサービスでも鑑賞可能なものが大半で、およそ9割ほどが重複しています。差別化のために一部の作品をそれぞれのサービスでしか見ることができない「オリジナルコンテンツ」として大々的に制作・宣伝しているわけです。
しかし、そのオリジナルコンテンツこそが重要なのです。
私のようにキャリアの大半を放送局で過ごした人間には、ネットフリックスやアマゾンの番組作りは“常識外れ”に映ります。それほど配信メジャーの映像制作は従来のテレビ局とは作法が違う。
日本における民放テレビのビジネスモデルは、スポンサーが番組制作費を出し、代わりにCMを差しはさむ広告モデル。それに対して、動画配信は直接視聴者から料金を払ってもらうサブスクリプションモデルです。そのため、番組制作の過程でスポンサーの意向に左右されることがありません。
テレビは開始5分で視聴者を惹きつけてCMに入るなど、視聴率が下がらないように工夫するのが一般的ですが、動画配信にはそもそもCMがない。テレビドラマは毎週決まった時間に最新回が放送されていくスタイルですが、動画配信では例えば、全10話が一気に公開されます。全話が「ビンジウォッチング(一気見)」されることを前提に、作品が作られているため、構成や演出がテレビドラマとはまったく違うのです。韓国ではこの「配信の時代」に最適化した若いプロデューサーがすでに頭角を現しています。
配信業界のプレイヤーたちが押しなべて重視しているのは、「その作品を何人が見たか」「そのうち何人が最後まで見たか」という二つの指標です。制作予算もこの指標の予測に基づいて決められます。
予算は数十倍に上る
大手調査会社の調べによるとネットフリックスは、いまや全世界のおよそ200カ国に2.7億人、アマゾンプライムも2億人ものユーザーを抱えていると言われています。テレビ局は国内で数百万人単位に見られることを想定して番組作りをしていますから、規模がまったく違う。
そこで動いているお金の額は、日本のキー局が制作している予算の数倍、多いときは5倍〜数十倍にまで上ります。予算が多ければ多いほど良い作品ができるわけではありませんが、制作面でさまざまな挑戦ができることは言うまでもありません。
たとえば、私が手掛けた『沈黙の艦隊』は、アマゾンジャパンがこれまで制作した中で過去最大級の予算を投じた作品です。海上自衛隊協力のもと、本物の潜水艦を撮影に使用し、潜水艦内部を再現した巨大セットを組み、戦闘シーンではVFX(CGを活用し実際の映像と組み合わせた映像技術)を惜しみなく使用しています。ネットフリックスで国内有数のヒットとなったドラマ『今際の国のアリス』は渋谷のスクランブル交差点を再現した巨大セットと潤沢なVFXを用いることで、従来のドラマではありえない、素晴らしい映像が実現していました。
米テレビ界の最高峰エミー賞で史上最多18冠という快挙を成し遂げた、真田広之さん主演・プロデュースの『SHOGUN 将軍』などは1話あたりの制作費が10億円を超えると言われています。ディズニープラスで配信中ですが、NHK大河ドラマの何十倍もの投資のもとで作られているのです。
一昔前であれば「映画にするか、ドラマにするか」の判断を制作サイドが考える際には、予算も出演する俳優も大きな違いがありました。けれど、配信ではあらゆる面で映画とドラマの差がなくなっており、その境界線は溶解しています。
自由なのは予算だけではありません。スポンサーが介在しないことで、コンプライアンス遵守が徹底されるようになったテレビ業界に失われつつある表現の自由もあります。そのため、地上波で戦うことにフラストレーションを感じた日本のテレビプロデューサーたちも続々とこの戦いに参入しています。
かく言う私もその1人です。『沈黙の艦隊』は予算額だけでなく、そもそも作品のテーマが「日本の核武装」です。自衛隊の是非をめぐる議論や安全保障のあり方を本格的に扱うドラマは地上波ではやりにくい。テレビではできなかった作品だと思います。大ヒットした『地面師たち』の反社会的とも言えるアンチヒーローたちの描写や暴力的なシーンも、配信だからこそ実現できています。
じつは配信メジャーから出てくる話題作の多くには、もともとテレビ局にいた人材が数多く関わっています。今後はもっと多くの才能が参戦し、より傑出したコンテンツが生まれる可能性が高いのです。
「ピュアプレイヤー」か、否か
ここまで、映像コンテンツを取り巻く世界で今何が起こっているのかを見てきました。ではこれから先、この勢力図はどのように変化していくのでしょうか。
今後この戦いの行方を左右する一つのポイントとなるのは「ピュアプレイヤーであるか、否か」だと見ています。「ピュアプレイヤー」とは動画配信サービスのみを中核事業としている会社のことで、代表例はネットフリックスです。彼らは動画配信サービスに自らの持てるすべてのリソースを注ぎ、その当たり外れが直接、企業の明日を左右します。
一方でピュアプレイヤーとは異なり、別の事業を持ちながら参戦している企業も多い。私が半年前まで在籍したアマゾンが格好の例です。ECサイトやAWSというクラウドサービスなどの大きな事業があり、その他のサービスの一つにアマゾンプライム内の動画配信があるわけです。ディズニープラスも映画制作スタジオやテーマパーク、放送局などさまざまなビジネスを展開するディズニーが手掛けるサービスですし、ABEMAも、インターネット広告事業を主軸に持つサイバーエージェントとテレビ事業を行うテレビ朝日による出資で運営されています。
ピュアプレイヤーかそうでないかは、いわば“兵站”の違いにあたります。この点が各社のコンテンツ制作における方針の違いにも影響しているのです。
配信メジャーはコロナ禍での「お家時間」の増加によって、飛躍しました。しかしアフターコロナの時代になると、それまでの急成長がやや鈍化した。2022年にネットフリックスが全従業員の4%を解雇することが報道されましたが、配信事業のみのピュアプレイヤーはそうした世相の影響をダイレクトに受けてしまうわけです。大ヒット作品が出なければ人員を整理して、新作への投資額を抑えるしかなくなります。
一方で配信以外の事業があれば、仮に配信サービスが不調であっても、その他の事業の稼ぎで持ち堪えることができます。だから、動画配信の市況があまりよくないときには無理して投資する必要がありません。ピュアプレイヤーはどんな状況であっても会員数を増やすために、投資額を抑えたとしても「新作を作り続ける」必要があるのです。
ディズニーは生き残れるか
『SHOGUN 将軍』が大ヒット中のディズニーですが、多くの業界関係者が、「ディズニーはそもそも動画配信サービスを自社で展開すべきだったのか」という疑問を口にしています。彼らはディズニー作品という素晴らしい財産をたくさん持っていて、優秀なスタジオであることは疑いようがありません。けれど、動画配信サービスを展開するには、ディズニー以外の多くの作品を「店の棚」に並べなくてはならない。先ほど述べたように配信メジャーの多くの作品は他のサービスでも観ることができます。御多分に洩れず、ディズニープラスもディズニーブランドではない作品も買って配信サービスを展開しなくてはなりませんでした。ひょっとしたら、自社で動画配信サービスを運営せずに、優れたコンテンツを配信メジャーに提供するだけの方が大きな利益を上げられたのではないか。その可能性を指摘する関係者は多いのです。
それでは今後、どのように映像コンテンツの覇権は移り変わっていくのでしょうか。大きなヒントになるのはネットフリックスだと私は思っています。ピュアプレイヤーゆえの不安定さはあるものの、制作における創意工夫では、他のプレイヤーよりも一歩先んじているからです。
象徴的なのは日本でもよく楽しまれているネットフリックス発の韓国ドラマです。これまでネットフリックスは『イカゲーム』だけでなく、『愛の不時着』『梨泰院クラス』などのヒットドラマを配信してきました。今年でいえば『涙の女王』が新たなヒット作ですが、世界で韓国ドラマが楽しまれるトレンドは、ネットフリックスが火付け役でした。
韓国政府の援助もありますが、今や世界全体の動画コンテンツの言語比率でも韓国語作品は3%を占めるようになり、英語(約50%)、フランス語(9%)、スペイン語(5%)に次いで多いのです。翻って日本語は1%にも満たない。今は韓国発の作品に巨額のお金が流れ込んでいる。ネットフリックスも以前から日本よりも韓国に投資しています。
悔しいですが、現時点では韓国のエンターテインメント業界の方が日本より先に進んでいます。では一体、韓国の何が日本と違うのか? 一言でいえば、韓国では「資本の論理で動く下部構造と、それを駆動するものづくりの工夫がいち早く実装されたこと」が大きな違いです。
日本の先を行く韓国エンタメ
下部構造とはエンタメ業界のエコシステムです。かつてドラマの制作会社はどこの国でも放送局より力が弱く、制作費を定額で受託する請負会社の意味合いが強かった。
しかし、2010年ごろから風向きが変わりました。国境をまたぐ配信事業者の出現で、ゼロからイチを生み出す優良プロダクションが力を持ち出したのです。世界中の制作会社が自ら知的所有権を保有し、成功報酬で作品作りをするように様変わりしました。放送局は垂直統合していた制作機能を維持できなくなり、そこから続々と独立する制作会社が増えたのです。
代表的なところでは、エリザベス女王を描いた大ヒットドラマ『ザ・クラウン』を制作した英国のレフト・バンク・ピクチャーズ。そして韓国で『愛の不時着』や『涙の女王』など大ヒットを連発するスタジオ・ドラゴンがあります。
いずれも創業から数年で、放送局以上の時価総額を持つ大企業に急成長。こうした会社は数倍もの給料を提示して、プロデューサーを引き抜いていったのです。その結果、高品質な作品作りに挑む制作会社が群雄割拠するハリウッド型の国内市場が形成されました。現在、日本国内では配信向けドラマを制作する会社は10社程度、一方ソウルには、150社以上がひしめいていることが象徴的です。
さらに、こうした産業構造の変化を後押しする工夫が制作現場で広まります。例えば、「ショーランナー」の存在です。日本の多くの方には、まだ聞き馴染みがないでしょう。「ショーランナー」とは、プロデューサーと監督のあいだに立ち、作品制作の全体を指揮する人物を指します。職能としては脚本家に近いのですが、従来の脚本家と違うのは、その下にさらに複数の脚本家たちがチームとして組織されており、脚本以外にも演出や予算回りのことなど、すべてをショーランナーがワントップで指揮するのです。
日本で脚本家というと、1人の先生が脚本のすべてを書くイメージが根強いと思います。けれど、今のハリウッドでは複数の脚本家が一つの作品の脚本を書くのが当たり前の仕組みになっているのです。
有名なショーランナーとしては『ザ・クラウン』の脚本家であるピーター・モーガンがいます。韓国もこの仕組みを取り入れており、ショーランナーのもとに複数の脚本家が「コメディ担当」「ラブストーリー担当」のように集まって脚本の質を上げていく。ショーランナーは、ドラマ全体の構造を把握しつつ、1話ごとに盛り上げたり、どん底に陥れたりして、数十話(数十時間)続くドラマ全体を指揮するのです。
逆に、監督の存在感は相対的に小さくなります。最近は1人の監督が第1話から第3話までしか担当しておらず、その後は別の監督が担当することがよくあります。クレジットをみても、複数の監督が並んでいることも多い。配信では、ヒットドラマの続編が「シーズン2」として制作されることも多いですが、全話をチェックするのは監督ではなく、ショーランナーなのです。それこそワンカット、ワンカットを細かく見ています。『ザ・クラウン』はシーズン6まで作られて60話もありますが、ピーター・モーガンが物語全体を構成しています。
「ショーランナーの時代」へ
これは今までの監督やプロデューサーにはできない仕事で、まさに「配信の時代」に生まれた新しい職業です。脚本家として経験を積んできた人々が多く、韓国にも、凄腕のショーランナーがいます。脚本家だけでなく、人気俳優もショーランナーのもとに集まる状況です。
日本のドラマの歴史を振り返ると、1950年代から1970年代までは「監督の時代」でした。和田勉さんのような個性豊かな監督が作家性を発揮して作品づくりを牽引していました。1980年代になると、今度は「放送作家の時代」がやってきます。『北の国から』の倉本聰さん、『ふぞろいの林檎たち』を手掛けた山田太一さんなど多士済々な作家たちが目立っていました。
やがて1980年代の後半からトレンディドラマが増え、“配信戦国時代”の前夜までは「プロデューサーの時代」が続いていたと思います。そして、動画配信が当たり前となった今は「ショーランナーの時代」へと突入しつつあるわけです。
韓国の後塵を拝する日本には、残念ながらこのショーランナーはまだわずかしかおらず、配信ドラマの世界標準から遅れをとっています。現代日本の女子高生が日本のドラマではなく、韓国ドラマにハマっているのは、至極当然のことなのです。
日本は“物語大国”
「日本はもうダメだ」と思われた読者もいるかもしれません。
しかし、私の考えは真逆です。むしろ、これからはようやく日本エンターテインメントの逆襲が始まると思っています。日本が今後、“配信戦国時代”で勝ち抜いていける理由を最後にお話ししたいと思います。
象徴的なデータがあります。日本のコンテンツ産業の輸出額は、2022年時点で4.7兆円ほどにまで膨れ上がっています。これは鉄鋼産業の約5兆円に匹敵する額です。鉄鋼産業といえば、かつての日本経済の柱。政府は日本発コンテンツの海外市場規模を2033年には20兆円にまで増やす目標を掲げているほどで、まだまだ大きな成長が見込まれているのです。
すでに「日本が買い」であることには海外の投資家たちも気づいています。今年は一時、日経平均株価が4万円台に到達しました。日経平均を最も押し上げたのは半導体企業、その次がエンターテインメント企業です。東宝やサンリオ、任天堂などが持っている知的財産(IP)の価値が評価されて、日本のエンタメ企業の株が高値で売買されている。
今年7月には、世界有数の投資ファンドであるブラックストーンがオンライン漫画配信サイト「めちゃコミック」の運営会社を買収しました。ブラックストーンにとってはこれまでで最大の日本企業の買収です。オンラインコミック市場は今、年間8%ほどの速度で伸びており、今後も市場の拡大に応じてさまざまな作品が生み出されていくと思います。
なぜ、これほどまで日本のコンテンツ産業に注目が集まっているのでしょうか。それはこの国があふれんばかりの知的財産の源泉だからです。私たちはあまり気づいていませんが、日本は“物語大国”です。外国の業界人を連れて書店の漫画コーナーや小説の本棚に行き、「すべて日本で生まれた物語なんだよ」と伝えると、ほとんどの人間は腰を抜かします。それほど豊かな物語を生み出す環境が日本にはあるのです。
物語をゼロから生み出す漫画家や作家がこれほどたくさんいて、彼らのカウンターパートになる出版社の数も多い。それをアニメや実写の映像にしたり、キャラクターグッズに展開することもすべて国内でできるのがこの国です。こんな国は他にはありません。
加えて、その日本産コンテンツには今、莫大な需要が世界で生まれつつあるのです。日本の作品が待ち望まれているのには、二つの理由があります。
字幕を受け入れ始めた北米市場
まず一つは、コロナ禍で世界の視聴動向が変わったことです。パンデミックのあいだに動画配信が爆発的に普及したことはすでに述べました。ただし、増えたのは視聴者の数だけではありません。
最も大きかったのは北米の変化です。ついこの間まで、北米の視聴者は、他言語の作品は字幕ではなく吹き替えでしか観ないと言われていました。それが近年、字幕付きの作品を鑑賞するようになったのです。『イカゲーム』の全世界的なヒットがその証左ですが、コストの高い吹き替えでなく、字幕付きのかたちでも英語以外の作品が受け入れられるようになった。
しかも面白いのは、英語圏の好みに合わせたものではなく、ローカル向けに作られた作品の方がグローバルで人気になるという“転倒”が起きていることです。『イカゲーム』には韓国人しか出てこず、描かれるのは韓国社会の格差問題でした。また、日本国内でも人気になった『サンクチュアリ―聖域―』は大相撲という日本固有の文化を描いた物語です。ローカル色が強ければ強いほどユニバーサルになるという逆転現象が起きています。
さらに、Z世代を中心にアメリカの若い世代が字幕付きで日本のアニメ作品を楽しむようになったことも見逃せません。
この変化を牽引したのが、ソニーが2021年に買収した「クランチロール」の存在です。もともと日本のアニメを中心に配信していたカリフォルニアの動画配信サービスで、立ち上げから最初の10年間では有料会員が100万人程度というスケールでした。
しかし、コロナ禍で世界の都市がロックダウンされた期間に、日本アニメの大ブームが起こった。今年8月にはクランチロールの有料会員は1500万人を突破しています。日本のアニメの存在感は、北米で大化けしたのです。
ゴジラとジブリ
正直に打ち明ければ、私もつい数年前まで、日本は韓国や中国に追いつくことは難しいのかもしれないと思っていました。これまでは日本のコンテンツといっても、「いい作品なんだろうけど、知名度がないから北米でやるのは無理だよ」と言われるのが一般的でした。
それがこの2、3年で一気に風向きが変わったのです。それほどまでに日本のIPに世界の耳目が集まっている。
格好の例がゴジラです。ゴジラは東宝を象徴する知的財産の一つですが、北米のスーパーマーケットのおもちゃ売り場に足を運べば、ゴジラのフィギュアが売られています。北米における日本発コンテンツの認知度がトレンドの変化も相まって、どんどん上がってきているのです。
スタジオジブリの作品も、日本のネットフリックスでは見ることができませんが、北米では視聴できるようになりました。
だからこそ、今年のアカデミー賞で『ゴジラ-1.0』『君たちはどう生きるか』『PERFECT DAYS』という三つの日本作品が同時にノミネートされるという大快挙につながったのです。日本作品が身近になり、認知度が上がったからこそ、配信メジャーで見ることのできるゴジラやジブリについても、「新作がやってきた!」と海の向こうで受け入れられた。仕事柄、世界各地の映画祭に足を運んでいますが、昔とは比較にならないほど「次に来る日本作品は何だ?」と関係者から聞かれるようになりました。その広がりは肌感覚でわかります。
「外資独占」は終わる
課題としては、今の日本は国内市場があまりに大きかったために、それを産業として国外に売り出していく戦略がさほど整備されていないことです。出版社、映画会社、レコード会社、テレビ局がばらばらに動いてしまっており、関係者全員で動きを揃えて世界に打って出る態勢を整えなくてはならない時期が来ていると思います。
日本作品が待ち望まれている、もう一つの理由は、アジアの中間層が近い将来、さらに増加していくからです。もともと、アジアでは日本のコンテンツは人気でした。インバウンドで日本に来た観光客が秋葉原で買い物をしているのを見ればわかります。日本人が韓国のコンテンツを見るよりも、韓国人は日本のコンテンツを見ているというデータもあります。
特に東南アジアがそうですが、アジアの経済はこれから成長していく余地が大きい。これまで動画配信サービスに触れてこなかった人々が新たな中間層となって、日本のアニメや映画を楽しんでくれることは間違いありません。
こうした需要を加速させ、日本から一層優れた作品を世界に届けるために、私の会社ではコンテンツに特化した投資をするファンドを作りました。『SHОGUN』に続く、日本のクリエーターが世界に届けるエンターテインメントを作ることを、技術的にも財務的にも徹底的にサポートしてゆく予定です。
日本は“物語大国”で、ゼロイチで作品を生み出すことも、それを二次展開することもできる。ただ、唯一惜しいのは作品を多くの視聴者に届けるという「ラストワンマイル」をネットフリックスやアマゾンといった外資系企業に奪われていることなのです。
現在の“配信戦国時代”は、言うなれば過渡期の状態に過ぎません。これほど上質な日本のコンテンツを、もっと上手に、世界中に、届ける方法はきっとあります。動画配信のテクノロジーの日進月歩の中で、それは遠くない将来にきっと確立される。そう私は見ています。
Wikipedia
積水ハウス地面師詐欺事件は、2017年6月1日に、積水ハウスが地面師グループに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた事件。逮捕者15人を出したが不起訴になる容疑者も多数いた。その後も真相は謎に包まれており、公判でもすべてが明らかになったわけではない。
概要
事件の舞台は、東京都品川区西五反田2-22-6、山手線五反田駅から徒歩3分の立地にある旅館「海喜館(うみきかん)」である。不動産業界ではかねて注目の案件だった。積水ハウスは所有者を名乗る女と、約600坪の旅館敷地を70億円で購入する売買契約を締結。6月1日に売買の窓口となった「IKUTA HOLDINGS株式会社」(千代田区永田町)に所有権移転の仮登記、さらに同日、積水ハウスに移転請求権の仮登記がなされ、同日、売買代金70億円のうち63億円を支払い、直ちに所有権移転登記を申請した。 しかし、売買は成立しなかった。6月24日、「相続」を原因に都内大田区の2人の男性(所有者の実弟とされる)が所有権を移転。7月4日に登記。所有者は死亡していた。
登記所が積水ハウスの売買予約に基づく仮登記を認めず、2人の実弟とされる男性に所有権の移転を認めた。この時点で、63億円を支払った積水ハウスは、所有者の成りすまし女とそのグループに騙されたことになる。積水ハウスが騙されたことを認めたのは、8月2日だった。なお、同時期に旭化成グループが正式な所有者から土地を取得しており、跡地に高層マンションを建設した。
経緯
旅館「海喜館」の所有者の元にはリーマンショック前あたりからデベロッパーなどの不動産会社の社員が頻繁に接触していたが、所有者は断固として土地の売却を拒んでおり、客を装って接客時に旅館売却を迫る不動産関係者に嫌気が差して常連以外を宿泊させなくなった。「海喜館」は2015年3月に廃業となったが、所有者はなおも売却せずに旅館に居住し続けた。
こうした事情に目を付けた地面師グループは「海喜館」の土地を狙った。
2017年4月3日、地面師グループは転売目的で海喜館の土地を購入しようとする中間買主を見つけ、この中間買主から申込証拠金として2000万円を受け取った。4月4日、積水ハウスでマンション事業を行う事業部の営業次長に、地面師グループから元旅館「海喜館」の土地を売却するという話が持ち込まれる。土地所有者はパスポートと印鑑証明で本人確認ができる状況であった。
4月13日、地面師グループと中間買主、積水ハウスの次長・課長は条件面を打ち合わせた。その際、地面師は「所有者はマンション購入資金として3億円の調達を急いでいる。申込証拠金だけだと翻意するかもしれない。他にも購入希望者は沢山いるので急いだ方が良い」と積水ハウス側に対して取引を急かした。
積水ハウスは稟議決裁を行った後、4月24日に売買契約を締結し、手付金14億円を支払った。この契約は海喜館を一旦中間買主が買取り、それを積水ハウスが買うという契約で、中間業者の買取価額60億円、積水ハウスの買取価額は70億円であった。この後、所有権移転の仮登記が完了する。
6月1日に残金の支払いが行なわれ、建物取り壊し後に支払う留保金7億円を除いた残金49億円が支払われた。6月6日、法務局から不動産の本登記却下の連絡が入る。ここで偽の所有者から土地を購入していたことが判明する。
6月9日、積水ハウスは新宿警察署に被害届を提出するが受理されず、9月15日警察庁で刑事告訴が受理された。この間、6月24日に海喜館の本来の所有者が死亡したと見られ、「相続」を原因に都内大田区の2人の男性が所有権を移転し、7月4日に登記された。
その後、2020年6月22日の記事によると、旭化成不動産レジデンスが真正の所有者から土地を取得。30階建の超高層マンション・アトラスタワー五反田を建設した。
海喜館の成り立ち
海喜館は、戦前から花街として栄えてきた五反田にある。今もその名残があり、夜にはピンクサロンや個室マッサージなど、風俗店のネオンサインが目立つ。事件に巻き込まれた所有者S子は1944年、五反田のこの地で生まれた。当時、すでに両親が海喜館を経営しており、彼女は旅館で育った。海喜館は宴会などもおこなえる大きな旅館だった。旅館は所有者の父が始めたもので、場所がよく繁盛していた。旅館をよく知る町内会の役員の話では、父親は羽振りがよく、妻以外にも愛人を作り、夫婦が揉めた。あげく父親が家を出て行き、外腹の男の子を作った。以来、母娘の二人暮らしとなり、旅館はS子の母が切り盛りするようになった。母親時代も旅館はずっと賑わった。
1975年12月23日、夫に代わり旅館を経営してきた母親が他界し、S子がこの不動産を相続した。S子は、相続後もしばらく板前や仲居を使い海喜館を経営し、町内会の行事にも積極的に参加した。バブル時代はもとより、バブル崩壊後も出張サラリーマンの宿泊客を中心に営業を続け、それなりに経営は好調だった。しかし、施設の老朽化が目立つようになると、近隣に建設されたビジネスホテルに押されがちになり、経営は次第に傾いた。経営が成り立っていたのは、2010年代までだった。不動産会社の営業マンをはじめ、マンションデベロッパーの社員や、ヤクザ風の不動産ブローカーにいたるまで、さまざまな人物がマンション経営やスポーツジム経営を持ち掛け、接近するようになった。彼らは客を装って旅館に泊まり、彼女が接客に出ると、「旅館を売ってほしい」とうるさく迫るようになる。そのうち、S子は常連客しか泊めなくなる。旅館は絶対に売らない、と周囲には頑なに言い続けてきた。そんな状態が何年も続いたが、経営がうまくいくはずもなく、2015年3月、ついに旅館を廃業した。その後もしばらく板前らとともに旅館に住み続けたが、古希を過ぎたS子はやがて体調を崩した。
二人の地面師
地元でS子の姿が見られたのは、廃業届を出してから2年ほど経った2017年の2月ごろで、それ以降姿を見せなくなった。S子は入院しており、主が入院中の旅館は、人の出入りが途絶えると瞬く間に廃墟のように荒れ果てていった。地面師たちは、そんな高齢の地主の変化を見逃さなかった。この計画に加わったグループが、この旅館に姿を見せ始めたのは、彼女が入院する少し前のことであった。地面師グループは、それまでの不動産ブローカーたちに交じりながら、海喜館の周囲に出没するようになっていた。この事件の計画を最初に立案したのが、名の知れ渡った二人の大物地面師UとKであり、警視庁も当初から彼らが絡んでいると睨んで捜査を進めた。
地面師Kは、同年12月に世田谷の5億円詐取事件で逮捕されている。東京地検立川支部の検事を前に、「どこで生まれ、どのように育ったのか。生い立ちが今の私に影響を及ぼしているわけではないし、興味のないことなので、話したくない」などと語った。Kは国士舘大学中退後、広告業を始めたが、このとき不動産会社を客にとったのをきっかけに興味を覚え、30歳ごろから不動産業を始めた。売りに出ている物件を探し、売り主と買い主とのあいだに入って交渉を行って手数料を得たり、自分で物件を購入しては転売し、その差額で稼いだりするようになった。
Kは1959年(昭和34年)12月11日、長崎県生まれで、地面師のなかでも、五指に入る大物といわれる。年齢や学歴以外の詳しい素性については、検事の取り調べにおいてもほとんど明かさず、それでいて事件と直接関係のない雑談には応じている。曰く、年収は2000万円前後で、ゴルフはひと月に10回、ほかの趣味といえば銀座の高級クラブで飲み歩くことくらいで、クレジットカードを10枚ほど所有し、目的に応じて使い分けていた。ハワイのコンドミニアムも所有しているというが、自身の自由が利く資産ではなかった。取材したノンフィクション作家森功によれば、事件屋と呼ばれる詐欺師やその情報を得ようとする不動産ブローカーらは、一杯飲み屋やスナックのほか喫茶店も多い昭和の風情を残した新橋駅界隈のようなレトロな空気を好むという。
Kと並び称される斯界の大物が、Uであった。年齢はKよりやや上で、K以上に不動産詐欺に顔を出し、その世界でUの名を知らぬ者のないほどであった。「マイク」という名前は本名だが日系アメリカ人などではなく、改名してそう名乗るようになったと思われ、純粋な日本人である。かつては別名を名乗り、「池袋グループ」と呼ばれる地面師集団を率いてきた。一般に地面師らは、10人前後で構成されていることが多く、計画を立案する主犯格のボスを頂点にして、なりすましの演技指導を行う「教育係」、なりすまし役を発掘する「手配師」、免許証やパスポートなどの文書を偽造する「印刷屋」あるいは「工場」、「道具屋」、振込口座を準備する「銀行屋」や「口座屋」、法的手続きを担当する弁護士や司法書士の「法律屋」など、細かく役割を分担して犯行を実行する。UやKは常に計画の中心におり、主犯として指揮を行ってきた。二人は東京都内の地面師事件の多くに関わっているとされる。
捜査
2人が計画を立てたのは2016年11月から12月にかけてだと言われている。この時期は所有者S子が入院する2か月前になる。UはS子に接近するため、旅館横の月極め駐車場を借りたいと持ち掛け、彼女と駐車場の賃貸契約書を交わした。所有者に会うことで所有者本人の人相風体はもちろん、一人暮らしかどうか、同居人がいるのか、生年月日や連絡先の電話番号をはじめ、印鑑証明や住民票から生年月日など個人情報を得ることができる。これらが地面師らの下準備となる。
積水ハウスの地面師事件の捜査は、2018年初頭から開始された。被害総額55億5000万円という大事件だけに、警視庁の捜査は慎重であった。この事件の前には、「東京音楽アカデミー」という専門学校の所有地をめぐる、手付金詐欺事件を捜査2課の手掛けていたが、警視庁はその捜査対象にSを据えた。のちにカミンスカスSとして国際手配されたSは、国税当局に太いパイプをもつと自称し、2000年代初頭にマンションデベロッパーとして名を馳せたABCホームの財務部長を務めた男であった。東京音楽アカデミー事件では、KがSに扱いを任せたという。KとSは東京音楽アカデミーの代表者のなりすましを仕立て、買い手を探し、彼らに乗せられた不動産会社に手付金を振り込ませることに成功した。Kは、知り合いの不動産業者仲間から名古屋の休眠会社を買い取ると代表に就任した。それを『東京音楽アカデミー』と社名変更し、都内に音楽アカデミー名義の銀行口座を作る。銀行は学校のある富ヶ谷に近い渋谷駅前支店を選び、いかにもそれらしく見せかけ、買い手の不動産会社になりすましを紹介し、その口座に売買代金の手付金を振り込ませるという手口だった。積水ハウス事件を手掛ける前であったため、手持ち資金に窮していたためともいわれる。しかし手付金が振り込まれた直後、Kが渋谷駅前支店のATMから現金300万円を引き出した映像が銀行の防犯カメラに残され、動かぬ証拠となった。
警視庁捜査2課は東京音楽アカデミーと積水ハウスの二段構えで事件捜査を進めた。10月には、積水ハウス事件における主犯として、元ABCホームのSの逮捕状を東京地裁に請求した。
詐欺が成功した要因
不動産会社が地面師対策として通常実施する「知人による確認」を実施しなかった。取引をしようとする「所有者」の写真を近隣住民や知人に見せる方法で行われる本人確認手法の一種である。真の所有者は当旅館で生まれ育っているため、近隣で知らない者はいないほどであったのにもかかわらず、これを怠った。
土地購入の承認を得るための稟議書承認の際、4名の回議者が飛び越され、予め現地視察をしていた社長が先に承認した。回議者全員が押印したのは手付金支払後だったとも報道された。当時不動産部長だったKは、「この取引はおかしい」と言い続けたが、阿部俊則社長や東京マンション事業本部長の常務らは、取引相手のネガティブ情報を伏せ、最終的にKに捺印させた。Kの証言では、取引前の2017年5月10日に積水ハウス本社法務部宛に送られてきた内容証明郵便についても、怪文書の類とみなし不動産部には伝えなかった。
積水ハウスが手付金支払いと仮登記を行った後に、真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」などと記載された内容証明郵便4通が届けられ、さらにその一通には印鑑登録カードの番号が記載されていたにもかかわらず、積水ハウスはこれらを土地売買を知った者による妨害行為と思いこんで、偽の所有者から内容証明郵便を送っていない旨を記載した確約書を入手する程度の対応しか取らなかった。当時本当の所有者が長期入院中で面会謝絶となっており「なぜ登記を確認し、内容証明書類を作成できたのか」と不審視される点があったのが、積水ハウス側が真正の通知書と信じられなかった要因とされる。
妨害行為と思いこんだ積水ハウス側はこれに対応するため、残代金の決済日を約2か月早めて6月1日にした。残代金支払日の6月1日には、真の所有者の通報により現地に来た警察官は、積水ハウス社員に対して警察署への任意同行を求めた。残金支払手続中のことで、この連絡を受けた積水ハウス担当者は妨害行為だと思い、そのまま支払手続を完了した。
地面師は、これ以前に複数の不動産会社に声を掛けていたが、所有者の本人確認ができないという理由で断られていた。
積水ハウスは、都心でのマンション用地買収は得意分野ではなかったが、マンション事業部はこの案件を是非とも進めたい一心で、稟議承認の前に社長に現地を見せ、その後、社長による飛び越し承認があった。社内では「社長案件」と呼ばれるようになっていた。マンション建設用地を確保したいという社内の勢いが強く、その承認体制が機能しなかったといわれる。
事件発覚前から指摘されていた不審点
最終打ち合わせの際にパスポートの表記が正式なものと異なる部分があったという指摘があり、さらに地面師が「取りに行った際に仲間と所有者が喧嘩になって揉め事が起こるといけないので」と土地の権利書なしで本人確認情報で登記申請をしようと申し出るなどしていた。他にも偽の所有者は、自分の誕生日を忘れる、自分の干支を間違えるなどしていた。
偽の所有者に現住所の記載を求めた際、番地が書き間違えられていた。
支払いには銀行振込ではなく、換金が容易で引き出しなどの記録が残らない預金小切手が決済方法として利用された。
取引相手が中間業者の会社で、途中で前株から後株になり、代表者も別のペーパーカンパニーとなっていた。
事件後の内紛
同社は2008年4月以来、「和田会長-阿部社長」の体制を続けてきた。この事件により、事態は急変。和田と阿部が対立し、和田が解任に追い込まれるなど「お家騒動」に発展。2018年1月24日の取締役会では、和田が「詐欺事件について責任を明確化する」として、阿部の社長解任動議を出したものの否決。その後、阿部が「新しいガバナンス体制を構築する」として、和田を解任する動議を出したところ、和田が辞任を表明。事実上の解任とみられた。和田は阿部の責任を追及したはずが、返り討ちにあったといわれる。「内紛劇」が表面化して以降、同社株は下落が続いた。2018年1月期決算を発表した3月8日、同社は企業統治の強化策を公表。代表取締役の70歳定年制、女性社外役員の登用による役員構成の多様化を打ち出した。阿部は6項目の改善策について「全社的に取締役会の大改革に不退転の決意で取り組む」ことを強調した。4月26日付の役員人事では社外取締役、社外監査役を各1人増員し、それぞれ女性を起用。
2020年4月23日、阿部俊則会長ら取締役選任議案が可決され、和田前会長らによる経営陣刷新の株主提案が否決される。
2021年3月4日、同社は会長を務めていた阿部俊則が退社すると発表。退任後に積水ハウスの特別顧問に就き、会長職は空席となる。
訴訟
刑事訴訟
詐欺グループ10人は、詐欺などの罪で有罪判決を受け、2021年現在一部は確定。
民事訴訟
2021年1月27日 - 積水ハウスが、詐欺グループ10人に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(鈴木昭洋裁判長)は、争わなかった5人に計10億円を支払うよう命じた。
2022年5月20日 - 株主が当時社長だった阿部俊則と当時の副社長に賠償を求めた株主代表訴訟の判決で、大阪地裁(谷村武則裁判長)は、「経営判断の裁量範囲にとどまる」として請求を棄却した。12月8日、大阪高裁は株主側の控訴を棄却した。
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