QRコードの奇跡  小川進  2020.6.10.


2020.6.10.  QRコードの奇跡 ~ モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ

著者 小川進 1964年兵庫県生まれ。87年神戸大学経営学部卒業、98年マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院にてPh.D.取得。2003年より現職。研究領域は、イノベーション、経営戦略、マーケティング。
主な著作に『イノベーションの発生論理』『はじめてのマーケティング』(ともに千倉書房)、『競争的共創論』(白桃書房)、『ユーザーイノベーション』(東洋経済新報社)がある。
英語論文では、フランク・ピラーとの共著“Reducing the Risks of New Product Development”やエリック・フォン・ヒッペルらとの共著“The Age of the Consumer-Innovator”(ともにMIT Sloan Management Review掲載)などがあり、ユーザーイノベーション研究では世界的な評価を得ている。組織学会高宮晋賞(2001年)、吉田秀雄賞(2011年、準賞)、高橋亀吉記念賞(2012年、優秀作)などを受賞

発行日           2020.2.27. 発行
発行所           東洋経済新報社

はじめに
デンソーウェーブは、QRコードを開発し、事業展開しているデンソーの産業機器事業部門が、システム機器とデンソーシステムズを統合して2001年設立
トヨタ生産方式向けのバーコードとバーコードリーダーの開発を源流とする
QRコードの3つの特性
1.     自動認識技術の1つ ⇒ データ処理システムを伴った読み取り機を介して識別
2.     読み取り機とセットで機能を実現する
3.     情報を担うもの=情報担体の1つ ⇒ 2次元シンボルの1

第1章      源流――アナログかんばんから電子かんばんへ 
デンソーは、1949年トヨタの電装部が分離独立したもの
QRコード誕生の歴史は、バーコード開発がスタート ⇒ 75年独自のNDコードを開発
トヨタ生産方式の核要素である「かんばん」に載せる情報を格納するために開発
世界初のバーコードは、1949年米ドレクセル大の院生バーナード・シルバーとノーマン・ジョセフ・ウッドランドが発明、52年に特許取得
NDコードの開発者は、デンソープロパーの野村政弘(42年生、名古屋工大卒) ⇒ 71年のトヨタ「かんばん」方式のデンソーへの導入に当たり、デンソー側の責任者として対応
「かんばん」の問題は、部品の多回納品(多頻度納品)と、製品出荷の際の伝票起票
コンピュータ入力として候補に挙がったのは、パンチカード、OCR、磁気カード、バーコードの4つ。長期安定の耐久性や汚れに強いことなどからバーコードを選択
独自のNDコードとして、76年特許申請
バーコードの印刷の問題は神崎製紙が解決
「かんばん」の作成は、東海銀行系のセントラルシステムズ
バーコードリーダーは既存の物を参考に内製。据置型
導入に際しては、「かんばん」が情報の全てで、生産量を決めるのも個々の生産指示もすべて「かんばん」1枚で済ませるところから、コンピュータに置き換える必要が全くない発想が壁となって、1年以上説得に時間がかかる ⇒ 75年末一部工場で導入開始、83年までに関連会社を含め、全工場に導入完了
システム・メンテナンスのために立ち上げた子会社SKKが、新製品の売込みまで手を広げ、アメリカのスーパーで商品に印字されたバーコードがスキャンされて精算に使われているのを見て、バーコードリーダーの新しい市場を発見
セブン・イレブン・ジャパンがPOSレジを導入したが、バーコードの読み取りに苦労しているという話を聞き込み、全店導入に成功 ⇒ 82年に取り扱い全商品にバーコードを印刷することで一気に普及していた

第2章      開発――思索から実践へ
1992年、読み取り機の改善要望に応えたのが電子応用機器事業部にいた原昌宏(1980年法大工卒) ⇒ ハンディタイプの読み取り機の誤読が多いという苦情に対し、原が開発したのは機械送りの定置式OCRリーダーだったが、大容量のデータを高速かつ正確に読める二次元コードの必要性を痛感
NDコードも、63桁では多様化する車種・部品の管理に限界が見え、短時間で複数のバーコードを読み取る負荷の大きさが問題視されていた
バーコードが水平方向の一次元に情報を格納するのに対し、2次元コードは垂直方向にも情報を格納できるため、情報密度を一気に上げることができる当時アメリカを中心に開発された二次元コードは、いずれも長短あり、用途によって使い分けられていたが、原は総てを1つのコードに集約しようと考える
差別化の最大のポイントは、コードの「読み取りやすさ」 ⇒ 二次元は構造が複雑
誤り訂正機能 ⇒ 二次元コードが汚れたり破損したりした場合、その部分にどんな情報が格納されていたかを割り出す機能。復元率を730%の4段階に設定
印刷物の膨大なデータから浮かび上がったのは、黒::::黒=1:1:3:1:1という黄金比で、1辺が5の正方形の幅1の黒枠の中に同じ幅1の白枠があり真中に1辺が3の黒の正方形があると、正方形のどこからでも、内から外、外から内の切り口の黒白の並びの比率は黄金比となるという独特の形をした切り出しのシンボルとなるものを発見
名前を付ける段になって、コードの特徴を表象するQuick Responseから、QRコードに
QRコードの特徴:
ファインダパターン、アラインメントパターン、タイミングパターンをコードに埋め込む

第3章      標準化――国内単一業界から国際多業界へ
1994年、QRコードを新聞発表
シンボル(コード)の標準化 ⇒ シンボルそのもの(仕様)の標準化、シンボルに関連する読取性能と印刷性能についての標準化、シンボルを使用したアプリケーションの業界標準化、シンボルを使用したアプリケーションの国際標準化の4側面がある
一次元シンボルについては、IBMが保有する特許の権利行使はしないとのパブリックドメイン宣言をしたこともあって、二次元コードの普及が停滞しないよう、各開発者は方針を転換し、IBMと同様のスタンスを取って、多くの企業やユーザーが参加し、多様な周辺技術や用途が生まれ、市場そのものが拡大するのではないかと期待
NDコードが特許権を行使する立場をとったことでトヨタグループ外に普及しなかったことに加え、コードの普及には国際標準化も重要な役割を演じることに気づく。86年設立のケンタッキー工場でもNDコードはうまく作動せず、全米自動車産業協会で使用していたラベルを採用せざるを得なかった苦い経験がある
QRコードに対する反応が良かったことで読取機の開発に着手 ⇒ 読取時間の目標を0.03秒とし、96年ハンドスキャナー完成
二次元コードの売り先を、一次元シンボルの導入で業務の効率化を図っていた電子データ交換(EDI=Electronic Data Interchange)に積極的な、自動車業界、電子機械業界、流通業界に絞る
トヨタに導入する際の壁は、「かんばん」の総本山である生産管理関連の部署。紙ベースの「かんばん」こそトヨタ生産方式の中心要素との信念があったが、物流管理の担当部署では情報管理の強化を歓迎。特に取引伝票にはOCRで読み取れないものが少なくなく、破損等もあって事務方の負担を大きくしていたため、デジタル情報化が不可欠
タイミングよく95年に日本自動車工業会が標準EDIとそれに付随する帳票類の標準化の検討を始めたところで、96年には国内でのQRコードの採択が決まる ⇒ 00年の北米での承認を始め01年には国際標準EDIガイドラインが制定され標準二次元シンボルとして採用が決まり世界標準を達成
96年、ISOIECは、共同で「自動認識およびデータ取得技術委員会(SC31)」を設立し、一次元と二次元シンボルの国際的標準化を行うこととしたため、先行ライバル企業はISO/IECでの標準化も目指していた。96年、デンソーはQRコードのパブリックドメイン宣言を行い、国際自動認識工業会に標準化提案するための作業に着手
重点を置いたのは、①QRコードをプリンターで印刷しやすい環境を整備、②業界での標準化に加え国際的ニーズの存在をアピール、③分かり易いQRコード読本を作成しPR
最終承認は00年、QRコードの規格はISO/IEC18004として発行。日本企業が開発した技術が国際標準として認められた数少ない事例

第4章      進化――企業ユーザーだけでなく消費者も
自動車関連業界以外でQRコードを最初に導入したのはぺんてるで、発注用の商品カタログの圧縮に効果を発揮
次いで三菱電機が、プリント基板を製造ラインで管理するために導入
いずれも、情報量がバーコードでは不十分だったことが導入の背景にある
消費者の生活場面で利用するきっかけとなったのは携帯電話業界で、日本テレコムとシャープが、携帯カメラでQRコードを読み取り、ネット上のサイトに直接接続するサービスを02年に開始 ⇒ 特許権を行使しないことを宣言したことが、用途拡大による価値創造に役立つ
06年にはANAが電子チケット(SKiPサービス) に応用 ⇒ 97年ネット予約とマイレージサービス開始に伴い、マイレージ会員はICカードで、一般はQRコードを使用、両方読み取れるリーダーを開発して、同じタッチアクションで搭乗可能に。同時に発券のコストと印刷の手間を省く。利用率は全体の6割を超える
QRコードのさらなる進化 ⇒ 小型化、セキュリティの強化、デザイン性の加味など、いずれもユーザーが用途開発の途上で実現
小型化 ⇒ 98年のマイクロQRが第1歩で、電子部品や医薬品、貴金属など小さな商品や部品の管理用に開発。01年の多言語対応も小型化の流れに沿ったもの
セキュリティの強化 ⇒ 社外秘の情報をあわせて搭載したいという希望に応えたもので、07年にSQRCコードとして開発。余白に非公開のデータ領域を作り、固有暗号キーを搭載した読取機でしか読み取れないようにした。11年の複製防止QRコードの開発も同趣旨
デザイン性の加味 ⇒ フレームQRは、「誤り訂正機能」を活用して発想。30%迄の汚れや破損なら格納されている情報を読み取ることができるので、その30%部分に提供者のロゴなどを入れることで利用者がどの企業のどのようなサービスを利用しているのかを視認することが可能となる。それをさらにホログラムの入った(フレーム)QRコードに格納することで、セキュリティも強化される
最新の応用例1 ⇒ 都交通局とデンソーウェーブで都営浅草線用に共同開発した駅ホームドアの開閉制御の仕組み(tQR=toughness)。車両ドアのガラス面に貼り付けたQRコードをホームのカメラで、コードの内容とコード自体の横の動きを読み取り、どの事業会社の車両か、何両編成で、ドアがいくつあるかなどを確認した上で、列車のドアが開くのを確認し、該当するホームドアを開閉する
最新の応用例2 ⇒ 中国でのQRコード決済が最も普及しているのがタクシーと自販機だが、もともと自販機と相性の良い少額決済に適した決済用カードが存在せず、13年にウィーチャットがQRコード決済を導入してから急激に拡散、18年にはほぼ100%がQRコード対応自販機となる。供給元は富士電機でシェア70

結章 QRコードを通じて経営を考える――革新の神の宿るところ
QRコードの必要性の誕生、標準化、普及といった各段階で、異なる人物が中心となって活躍
それぞれの段階で個性豊かな技術者が目の前の技術的課題を解決しようとする、モノづくりにかける思いに突き動かされ、仕事にのめり込んでいった結果実現したもの
デンソーの活動の起点がユーザーの現場だったことは注目に値する ⇒ 自社工場の生産管理者からの要請に応じる形で開発が始まった
既存技術の新しい用途を見つけたり、既存技術の新しい変化方向を見出す方法として、特許の権利行使をせず、利用者に無料開放し、利用者を開発源泉とする選択肢があることをQRコードの事例は気づかせてくれる
QRコードの世界的普及の過程を見ていくと、QRコードを特定の業界や国単位で、あるいは業界横断的、国際的に標準化することがいかに重要であったかがわかる
革新の神は局所に宿る ⇒ 車本体のトヨタではなく部品供給企業で「かんばん」の電子化が起こり、コードや読取機はIT企業ではなく自動車部品企業で誕生。読取機の起点は製品開発部ではなく工場だったし、新用途の開発はメーカーではなくユーザーによって行われた





発行所 ホームページ
QRコードの奇跡 ~ モノづくり集団の発想転換が革新を生んだ
小川 進著
2020214 発売
誕生25周年。トヨタの工場から世界中のスマートフォンへ。
日本発で国際標準になった稀有なイノベーション、50年の記録。

QRコードは1970年代初頭、トヨタの生産現場での「かんばん」の電子化をめざしてデンソーで研究・開発がスタートした。さまざまな技術的障壁や現場からの反発を乗り越え、1994年に完成する。その後の周辺技術、国際標準化への取り組み、オープンソース化、利用現場の開拓など、次々に主導する人物が交代しては進めていった。その後、セブン-イレブンや携帯電話、全日空、銀行ATM、駅のホームドアでの導入など、2000年代に入って利用者が用途を開発し、爆発的に普及していく。圧倒的な情報量(バーコードの350倍)、読み取り速度(Quick Response)とエラー回避、セキュリティ、小さい面積とデザインの自由度などもあって、他のコードを凌駕している。今や中国をはじめ、世界中の主要な電子決済手段にもなっている。2014年には、欧州特許庁が主催する「欧州発明家賞」を日本で初めて受賞した。本書は、関係者への取材を丹念なもとにQRコードの今日に至るストーリーと読み解きながら、トヨタ生産方式、スクラム型開発、両利きの経営、ユーザーイノベーションなどを同時に行った、日本発のイノベーションの稀有な事例として描き出すものである。

概要
トヨタの製造現場から、世界中のスマートフォンへ。日本発で誕生25年になるQRコードのイノベーションの軌跡。
目次
第1章 源流――アナログかんばんから電子かんばんへ 
第2章 開発――思索から実践へ
第3章 標準化――国内単一業界から国際多業界へ
第4章 進化――企業ユーザーだけでなく消費者も
結章 QRコードを通じて経営を考える――革新の神の宿るところ


QRコードの奇跡 小川進著 ユーザー起点の開発 功奏す
2020/4/18 日本経済新聞
イノベーションの成否を分けるものは何だろう。どんなに高い機能・性能を持っていても、ユーザーの支持がなければ成功はおぼつかない。その成否はイノベーション開発を「ユーザーを起点」にするかどうか、ユーザーを巻き込めるかどうかにあるのではないか。
(東洋経済新報社・1800円)
おがわ・すすむ 64年兵庫県生まれ。神戸大教授、米マサチューセッツ工科大(MIT)リサーチ・アフィリエイト。神大経営卒、MITで博士号。著書に『ユーザーイノベーション』など。(東洋経済新報社・1800円)
おがわ・すすむ 64年兵庫県生まれ。神戸大教授、米マサチューセッツ工科大(MIT)リサーチ・アフィリエイト。神大経営卒、MITで博士号。著書に『ユーザーイノベーション』など。
QRコードは、まさにユーザーを起点とする「ユーザーイノベーション」。日本では情報伝達の手段にとどまらず、スマホによるQRコード決済がキャッシュレス、デジタル化のツールとなりつつある。先行する中国では既にQRコード決済が標準であり、いずれも開発メーカーの手を離れ、ユーザーの手の内で進化している。
本書は、自動車部品メーカー、デンソーの開発部門(現在は分社化)によるQRコード開発の歴史から、セブンイレブン・ジャパン、携帯電話メーカーといったユーザーとの共同開発のステップをたどり、成功要因を明らかにしている。
1に、QRコード開発の基礎には、強い現場がある。QRコードは、工場の現場で発生する問題点を克服する中で生まれてきた。その源流にある、トヨタかんばん方式の電子化、高速読み取りスキャナーによる効率的な単品管理を目指したセブンイレブンとの共同作業など、現場のエンジニアたちの地道な努力がある。
2QRコード自身に連鎖的にイノベーションを呼ぶ力がある。QRコード決済は、販売店の生産性、利用者の利便性の向上、金融では決済コストの低下、デジタルベース化による新市場へのアクセスなど、次のデジタルイノベーションの舞台を用意してくれる。
3QRコードは既存の技術を一気に駆逐する破壊的なイノベーションである。大容量・高速読み取り・柔軟な環境適応と、低コストで導入可能で操作も簡単。国際的な標準化と共に、特許権を行使せず、オープンソース化でユーザーによる新用途の開発も可能にし、進化を後押ししている。
読者、特にイノベーションに関わる経営者、技術者には、日本の強みである「強い現場」にイノベーションのシーズが隠れていることを、ぜひ再認識してもらいたい。久しぶりに見る、日本企業によるイノベーションの痛快なサクセスストーリーである。
《評》開志専門職大学教授 徳田 賢二
 

日本発の世界標準 QRコードの起源は「かんばん方式」『QRコードの奇跡』
2020/4/20 日本経済新聞 「ひらめきブックレビュー
扉のガラス部分に、大きめのQRコードが貼り付けてある地下鉄車両を見たことがある人はいるだろうか? 現在のところ、都営地下鉄浅草線や神戸市営地下鉄西神・山手線で見ることができるのだが、これは、駅のホームドアと車両の扉の開閉を連動させるためのものだ。駅に備え付けられたセンサーで、車両扉のQRコード(tQRという改良型のQRコード)を読み取り、開閉のタイミングを制御する。
ホームドアの開閉は乗客の安全を守るために、車両扉の開閉に合わせて正確に制御されなくてはならない。そのためには本来、車両の大がかりな改造が必要なのだそうだ。しかし、QRコードならばシールを貼るだけなので、大幅にコストと手間を省ける。この画期的なシステムは、トヨタグループ、デンソーの子会社デンソーウエーブ(愛知県阿久比町)と、東京都交通局が共同開発したものだ。
本書『QRコードの奇跡』は、スマホでのサイトへのアクセスやキャッシュレス決済のみならず、このような思いがけない使い方の可能性も秘めるQRコードの開発経緯をたどるノンフィクションだ。著者はイノベーション、経営戦略、マーケティングを研究領域とする神戸大学大学院経営学研究科教授の小川進氏だ。

「細かい配慮」の集積
世界中のキャッシュレス決済などに採用されているため、意外に思う人がいるかもしれないが、QRコードは日本発のイノベーションだ。前出のデンソーが1994年に開発した。もとは、これも世界に誇る日本発の生産方式であるトヨタの「かんばん方式(ジャストインタイム)」を効率化するために作られた。
QRコードのような縦横2方向にデータを読み取れるコードは「2次元コード」と呼ばれる。2次元コード自体は日本で発明されたのではなく、QRコード以前に米国で3種がすでに実用化されていた。だが、それらのうち「大容量の情報格納」「サイズ設定の柔軟性」「高速読み取り」のいずれの長所も兼ね備えるものはなかった。
QRコードは、これら三つをすべて満たす優れた2次元コードとして登場し、世界標準となった。そのために、新聞、雑誌、書籍、書類など国内外の数千点の文字情報をコツコツと解析し、どこにも使われていない切り出しシンボル(周囲の文字や模様などとコードを区別するための図形)の形(黒と白の比率など)を決めるといった、たいへんな努力があった。
本書には他にも、電車の窓から見えた建物から特徴的な「かたち」を思いつくなど、興味深いエピソードが満載されている。既存の技術の改良、コード読み取りの細かい配慮など、日本人らしさを象徴する技術ともいえるQRコード。その開発エピソードから、ものづくりのヒントをもらってみてはどうか。
今回の評者 吉川清史
情報工場SERENDIP編集部チーフエディター。8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」の選書、コンテンツ制作・編集に携わる。大学受験雑誌・書籍の編集者、高等教育専門誌編集長などを経て2007年から現職。東京都出身。早大卒。


Wikipedia
QRコード(キューアールコード)は、1994平成6年)に自動車部品メーカーであるデンソー愛知県)の開発部門(現在は分離しデンソーウェーブ)が発明したマトリックス二次元コードである。
QR」は Quick Response 頭字語であり、高速読み取りを目的の1つとしている名称である。「QRコード」はデンソーウェーブの登録商標(第4075066[1])である[ 1]
l  概要[編集]
トヨタ生産方カンバン」(ジャストインタイム生産システム)において、自動車部品工場や配送センター等での利用を念頭に開発された。しかし、誤り検出訂正の能力が高く、また、オープンソーとされたことから、トヨタサプライチェーンの範囲から飛び出して独り歩きを始め、現在では日本に限らず世界に広く普及している。例えば、発明時には民間においてインターネットおよびスマートフォンが普及していなかったが、それらを用いる「QR決済」が現在、国によっては主要な電子決済の地位を占めるようになっており、発明から四半世紀経ってフィンテックを支える技術の1つとなっている。日本国内では、テレビ局が放送画面上にQRコードを提示して、自らのメディアであるテレビ放送とは異なるメディアのインターネットに誘う手法、あるいは、雑誌などの紙媒体にQRコードを提示してインターネットに誘う手法もしばしば見られ、旧来のメディアと新しいメディアのインターネットとの融合に用いられる例も多い。
l  沿革[編集]
QRコード概念図
QRコードがない時代、デンソーの製造工場の現場では部品をバーコードで管理していた。だが、部品管理のためにバーコードを10個ほど並べて読ませていたことから、非常に作業効率が悪かったのと、現場の作業員から「疲れる」と不平不満が挙がり、併せて「バーコードより多くの情報を盛り込めるコードを作って欲しい」という要望が出た。それに応えるため、デンソーウェーブ(開発当時はデンソー)開発部門に所属していた原昌宏により1992年から新たなコードの開発がスタートした[2]
原が昼休憩の時間中に社内で打っていた囲碁をヒント[2]に、開発目標としてコードの情報量を増やすだけでなく「正確に速く読み取れること」、また、油などの汚れがつく自動車関連工場で使われることを想定し汚れや破損への強さにもこだわり、2年の開発期間を経て1994年に完成した[3]
バーコードは横方向にしか情報を持たないのに対し、QRコードは縦横に情報を持つ。そのため、格納できる情報量が多く、数字だけでなく英字や漢字など多言語のデータも格納できる。また、推奨はされていないが、濃淡の判別が可能な色あいであれば、を付けた状態でも読み込むことが可能である。
QRコードには、最初に作られたモデル1と、大型化に対応したモデル2がある。大きさはバージョン121×21セルからバージョン40177×177セルまで、4セル刻みで決められている。
3隅の四角い切り出しシンボル(位置検出パターン、ファインダパターン)が特徴的である。加えて、7列目と7行目などのタイミングパターン、随所に入れられた小さい四角のアラインメントパターン(モデル2のみ)が固定で、それ以外の部分に符号が記録される。
JIS X 0510ではQRコードの白黒を反転させることも認められているが[4]ISO/IEC 18004では白黒を反転させる行為は許されていない。
現在、日本で販売されているカメラ付き携帯電話・スマートフォンのほとんどがQRコードの読み取りに対応している。また、Googleの携帯電話用OSであるAndroidでも、一次元・二次元バーコード処理ライブラリ「zxing[5]オープンソースとして提供されている。zxingは、AndroidQRコード読み取りアプリはもちろんのこと、他OSのアプリや業務用機器のQRコード読み取り機能でも使用されている。 また、iOS11からはAVFoundationにバーコード・二次元コードの読み取り機能が追加され、iPhoneiPadでも標準でQRコードの読み取りに対応した。
l  容量[]
QRコードの容量
数字のみ
最大7,089文字
英数 (US-ASCII)
最大4,296文字
バイナリ(8ビット)
最大2,953バイト
漢字・かな (Shift_JIS)
最大1,817文字
最大容量は、バージョンを最大 (40)、誤り訂正レベルを最低 (L) にした場合の値。
l  規格[編集]
QRコードの使用例。広告にQRコードが配されており、詳細な情報の載った携帯電話サイトにアクセスすることができる。
199710月、AIM International規格になり、19983月にはJEIDA規格、19991月にはJISJIS X 0510、さらに20006月にはISO規格のISO/IEC 18004となった。普及状況は近年まで日本国内にとどまってきたが、イギリスなど海外でもQRペディアが使用されるようになるなどその範囲は広まっている。またデンソーウェーブはシンガポールを拠点に東南アジアへの展開を進めている[6]
l  特許権[編集]
特許権者のデンソーウェーブは、まずはQRコードが普及するよう敢えて特許をオープンにすることとし[2]、規格化された技術に対して特許権を行使しないと宣言している[7]。なお、近年QRコードの中に文字や画像を組み込んだものが一部で使われるようになっているが、これらの多くはQRコードの上に単に文字や画像を載せたものに過ぎず厳密にはQRコードの規格に準拠していないため、QRコードのエラー訂正のレベルや読み取り機器の性能によってはコードが正常に読み取れない場合がある。このためデンソーウェーブでは、規格に準拠していないコードについて「QRコード」と呼ぶことはできないとしているほか[8]、規格外のコードの使用に対しては特許権を行使することもあり得るとしている[9]
QRコードの開発チームは2014に、欧州特許庁が付与する欧州発明家賞英語版)を日本で初めて受賞している[10]
l  関連特許
特許第2938338号「二次元コード」(出願人:日本電装豊田中央研究所 存続期間満了により権利消滅)[11]
米国特許第5726435号「Opticaly readable two-dimensional code and method and apparatus using the same」(アメリカ版 存続期間満了により権利消滅)[12]
特許第2867904号「2次元コード読取装置」(存続期間満了により権利消滅)[13]
米国特許第5691527号「Two dimensional code reading apparatus」(アメリカ版 存続期間満了により権利消滅)[14]
特許第3716527号「2次元コードの読取方法」(存続期間満了により権利消滅)[15]
特許第3726395号「2次元コードおよび2次元コードの読取方法」(存続期間満了により権利消滅)[16]
特許第3996520号「光学的情報印刷媒体、光学的情報読取装置及び情報処理装置」(存続期間満了により権利消滅)[17]
米国特許第7032823号「Two-dimensional code, methods and apparatuses for generating, displaying and reading the same」(アメリカ版 存続期間満了により権利消滅)[18]
ほか
l  主な用途[編集]
QRコードの読み取りに支障が出ないように工夫された広告。
乗車券での使用例。中国の中国鉄路瀋陽局集団公司[19]
長良川鵜飼、船着場の長良川岸壁に取付けられた鵜舟のネームプレート。観光客のために携帯電話で情報が表示出来るようQRコードが付いている。
プーシキンの小説「エヴゲーニイ・オネーギン」をQRコードで読む豆本
自動車部品生産
開発当初は、自動車部品生産の現場で使われ、その後は様々な商品の生産・運送・保管・販売などに広く使われるようになった。
携帯電話
携帯電話で初めてQRコードに対応したのは、J-PHONE(現・ソフトバンクモバイル)のJ-SH09である。現在ではカメラ付き携帯電話端末の多くがQRコード対応になっており、内蔵カメラでコードを撮影し、QRコードの情報内容を認識させることができる。
具体的な用途としては、広告地図などの印刷媒体やウェブ画面に、詳細情報のあるウェブサイト携帯端末向けウェブサイトのURLを記録したQRコードを表示し、これらサイトへのアクセスを容易にすることや、個人データを格納したQRコードを名刺に印刷し、携帯電話機のアドレス帳登録を容易にすることなどである。また、ネットショッピング等の決済等でも使われ始めている。
航空券
航空会社ANAとそのグループ航空会社では、20071220よりSKiPサービスと称して磁気式航空券を全廃して、日本の航空会社では初となる、情報の入力されたQRコードを用いて従来の航空券のかわりとする方式に完全に移行した。2019年現在ではApple社のスマートフォンであるiPhoneのアプリケーション、Walletで搭乗券を追加すると搭乗券として使用することが出来る。一方で、世界的には航空業界のバーコード搭乗券規格(BCBP)であるPDF417が広く使われている。
競馬
2018年現在、日本中央競馬会 (JRA) や主要の地方競馬(南関東、名古屋、兵庫など)、一部の競艇、競輪の発売所で発売される最新モデルの投票券(富士通フロンテック製および日本ベンダーネット製)はQRコードを使用したものになっている(JRAでは2001年秋から関西地区で導入)。一部地方競馬では磁気式と併用している。
従来の磁気式投票券に比べると、投票券に磁性体を使用する必要が無くなるため、紙の製造コストが削減され、紙のリサイクルも容易になっている(使用済みの磁気乗車券は産業廃棄物として廃棄しなければならない)。また発行機も印字用ヘッドで機械読取用情報を印刷でき、磁気記録用ヘッドの部品を省略できる。なお、JRAI-PAT方式電話投票で実際に購入した馬券の写しをプリントアウトしたものに入っているQRコードは、発売窓口で発券したものとは違い、JRAのサイトのURLが入っているだけの「飾り」である。
現在はI-PATと同一の操作でマークカード不要で馬券が買える「スマッピー投票」でもQRコードが使われている。
入場券
北海道日本ハムファイターズ東北楽天ゴールデンイーグルス北海道コンサドーレ札幌札幌ドームのみ)のホームスタジアムの試合、東京ディズニーリゾート東京国際映画祭で、QRコードを用いてチケットレスで入場できるシステムを導入している。球団の公式サイトにてインターネットで予約すれば、携帯電話にQRコードが送信される仕組みである。
乗車券
鉄道では、沖縄都市モノレール北九州高速鉄道が、自動改札機の更新に合わせて、従来の磁気式乗車券を廃止し、普通乗車券をQRコード化した。バスでは、ジェイアールバス関東や同社と共同運行している高速バスの一部路線でQRコードによる改札を実施し、乗車券の回収を省略している。訪日者のインバウンド需要を狙うため国内のみならず海外の決済方法を利用できる[20]ことがある(例はタクシーだが広義で乗車券とする)。自動改札機の経費削減(ICカード普及後専用改札が出来、専用改札しかない出入り口もある。そのICカードもスマートフォン以外のカード型はデポジットを取っているが商品自体が高い[21]。過去の利用データの維持もかかる。)、磁気乗車券自体が高い[21][22]ため実証実験を開始している会社もある[22]JR東日本では対応改札機がすでに設置・運用(現在はIC専用改札)している。[23]
世界では、韓国鉄道公社KLIAエクスプレス台湾鉄路管理局台湾高速鉄道中国鉄路総公司香港MTR城際直通車)等で乗車券にQRコードを採用している。また、上記JRバス関東と同様、韓国の高速バスでも、QRコードによる改札が導入されている。
プリペイドカード
20166月より通用を開始した図書カードNEXTに導入された。
QRコード自体は複製が容易なので、投票券や乗車券、プリペイドカードでの利用では、QRコードを端末や販売機のみで認識できる特殊なライン上に印字している。
決済サービス
詳細はQR・バーコード決済を参照。
Alipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)といった、QRコード決済サービスが中国市場を中心に普及している。決済手数料や導入コストが低く入金も早いことから、既存のクレジットカード電子マネー決済が普及する以前に、中国での決済サービスのデファクトスタンダードになった。
QRコード決済には大きく二つの手法、消費者が店側が提示するQRコードをスキャンして支払う「静的コード」、消費者が提示するQRコードを店側がスキャンして支払う「動的コード」に大別される。前者は、商品数が少ない店舗や屋台などで利用されており、QRコードの中身は決済サービスのURLに任意のIDを付加したもの[24]であることが多い。201841日からは1日当たりの上限額が設定された[25]
日本でも、AlipayWeChat Payおよび銀聯QRコード決済の日本参入を始め、Origami PayLINE Pay楽天ペイd払いAmazon PayPayPayなどがあり、また個人間決済(割り勘やフリーマーケットでの売買など)で利用するサービスも登場している。
人口管理
中国の新疆ウイグル自治区では、2017から人口の統制を名目に全ての家にQRコードが設置されており、QRコードでウイグル族は管理されているとして人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチなどから批判されている[26]
手書き解消ツール
もともと工場の生産性向上ツールとして開発されたQRコードだが、近年、手書き作業や打刻記録のパソコンへの再入力作業の解消などのための省力化ツールとして、事務分野の生産性向上にも貢献している。たとえば、ヒトに対応させたQRコードが勤怠表や受付記録に、モノに対応させたQRコードが貸出物品管理に用いられている。その背景には、リーダーで読取ったQRコードの情報と読取時刻が表計算ソフトに取込可能なこと、QRコードのバリアブル印刷がラベル作成ソフトで容易であることなど、パソコン周辺環境が近年整ってきたことがある。
l  よく使われている形式[編集]
次のものがよく使われている。なお値の中でコロン・セミコロン・カンマ・バックスラッシュ・二重引用符を使用する場合は、バックスラッシュでエスケープするよう定められている[27]
URL - 形式はURL。エスケープは行わない。
ブックマークに登録 - iモード用。形式は次の通り。
MEBKM:TITLE:<サイト名>;URL:<URL>;;[28]
連絡先情報 - 形式はvCard
iモード用はMECARD形式。
MECARD:N:<>,<>;SOUND:<姓カナ>,<名カナ>;NICKNAME:<ニックネーム>;TEL:<電話番号1>;TEL:<電話番号2>;TEL-AV:<テレビ電話(FOMA)の電話番号>;EMAIL:<メールアドレス1>;EMAIL:<メールアドレス2>;URL:<URL>;ADR:<私書箱>,<部屋番号>,<番地>,<市町村>,<都道府県>,<郵便番号>,<国名>;BDAY:<誕生日 西暦で8>;NOTE:<メモ>;;(カンマで区切ってある項目は、カンマで区切らずひとまとめに記述してもよい)[29]
au[30]・ソフトバンク用はMEMORY形式。
MEMORY:<メモ><CR/LF>NAME1:<名前><CR/LF>NAME2:<名前カナ><CR/LF>MAIL1:<メールアドレス1><CR/LF>MAIL2:<メールアドレス2><CR/LF>MAIL3:<メールアドレス3><CR/LF>TEL1:<電話番号1><CR/LF>TEL2:<電話番号2><CR/LF>TEL3:<電話番号3><CR/LF>ADD:<住所><CR/LF>(電話番号では、* # - P(ポーズ機能)も使用できる)
カレンダーイベント - 形式はiCalendar
SMS - 形式は次の通り。
SMSTO:<電話番号>:<本文>
メール - メールアドレスを直接書くほかにも、次のような形式がある。
MAILTO:<メールアドレス>
SMTP:<メールアドレス>:<タイトル>:<本文>
iモード用はMATMSG形式。
MATMSG:TO:<メールアドレス>;SUB:<タイトル>;BODY:<本文>;[31]
au・ボーダフォン(現ソフトバンク)用は次の通り。
MAILTO:<メールアドレス><CR/LF>SUBJECT:<本文><CR/LF>TITLE:<タイトル><CR/LF>[32][33]
電話番号 - 形式は次の通り。
TEL:<電話番号>[34]
座標 - 形式は次の通り。なお南緯・東経を指定する場合はマイナス値にする。
geo:<緯度>,<経度>,<標高>
Wi-Fi接続設定 - 形式は次の通り。
WIFI:S:<SSID>;T:<WEP|WPA|無記入>;P:<パスワード>;H:<true|false|無記入>;
l  マイクロQRコード[編集]
マイクロQRコード(内容はExample
11×11セル - 17×17セルの、QRコードの小型版である。切り出しシンボルは1つしかない。データ量は数字の場合5 - 35桁と、従来のバーコードと同程度だが、同じ桁数で比べて10 - 100分の1の面積に印字できる。
マイクロQRコードは、200411月、JIS X 0510として規格化された。
l  iQRコード[編集]
iQRコードは、デンソーが開発した、QRコードの新規格であり、QRコードと同じスペースに更に多くの情報を表現することが可能になっている。視覚的にわかるQRコードとの大きな違いは、正方形ではなく長方形のコードが生成できるようになった点である。
l  情報量
長方形で作ることができる他、情報量が増え、それに伴ってセル数も増えている。従来のQRコードでは、数字モードと仮定すると、最大サイズのもの(177×177セル)でも、約7000文字の情報しか記録できなかったが、iQRコード(422×422セル)では、約40000文字まで記録できる。また、従来のQRコードと同じサイズであれば、多くの情報を格納することができ、同じ情報量であれば、サイズを縮小することができる。既存の1次元バーコードと差し替えたり、印字が難しいとされていた円筒形のものへの印字も簡単になった。
l  誤り訂正
QRコードではL (7%), M (15%), Q (25%), H (30%) 4段階だった誤り訂正レベルに、新たにレベルS (50%) が追加されて、最大50%まで復元が可能になっている。
l  フレームQR[編集]
QRコードの中心部に、絵や文字などを入れるためのキャンバス領域を設けたQRコード。 バンダイナムコゲームスが特許を所有している[35]
l  QRコードの用語[編集]
最新(20041120日改定)のJIS規格書 (JIS X 0510) の「適合条件」の中では、新規用途またはオープンシステム用途にあってはQRコードシンボルのモデル1は推奨されないシンボル形式となっている。よってここではQRコードシンボルのモデル2について記述する。
l  モジュール (Module)
QRコードのシンボを構成する最小の単位セル。モジュールの大きさは型番により決定され、データ1ビットが1モジュールに相当する。
l  型番 (Version)
1から40の番号で表されるシンボルの大きさ。最小は「型番1」の21×21モジュールで、最大は「型番40」の177×177モジュール。
Version 1 (21×21)

Version 4 (33×33)

Version 10 (57×57)

Version 40 (177×177)
このような状態でも、http://en.WIKIPEDIA.ORGと読み取ることができる。
l  誤り訂正レベル (Error Correction Level)
QRコードに汚れなどがあっても正確に読み取れるように、読み取り不能や読み取り間違いのモジュールを修正するために付けられる誤り訂正語のデータ語に対する割合。下記の5レベルがある。
レベルL - コード語の約7%が復元可能
レベルM - コード語の約15%が復元可能
レベルQ - コード語の約25%が復元可能
レベルH - コード語の約30%が復元可能
レベルS - コード語の約50%が復元可能
l  モード (Mode)
QRコードの中に定義される文字列の表示方法を表す。一般的にはよく使われるモードは、数字データモード、英数字データモード、8ビットバイトデータモード、漢字データモードの4つと、その4つを組み合わせた混合モードである。
l  モード指示子 (Mode Indicator)
次のデータ文字列がどのモードで符引化されるかを示す4ビットの識別子
文字数指示子 (Character Count Indicator)
モードの中でデータ文字列の長さを定義するビット列
マスクパターン参照子 (Mask Pattern Reference)
シンボルに適用されるマスク処理パターンのために使用するビットの識別子。
l  マスク処理 (Masking)
QRコードを読み取り易くするために行う処理。マスク処理パターンは8種類用意されており、その中で最も、明モジュールと暗のモジュール数を均一化し、画像の高速処理の障害となるパターンの発生が抑えられるマスクを採用する。マスク処理は、符号化領域のビットパターンとマスク処理パターンをXOR(排他的論理和)する。
l  コード語 (Code Word)
実際QRコードで読み取りたいデータが書き込まれたデータ。
誤り訂正語 (Error Correction Word)
QRコードに汚れなどがあってもデータ語を正確に読み取れるように、読み取り不能や読み取り間違いのモジュールを修正するために余分に付けられるビット。誤り訂正語はデータ語から計算して作成される。
l  埋め草コード語 (Pad Code Word)
空のコード語位置を埋める目的で使用するデータを示さない仮のコード語。コード語の数がシンボルの容量に満たない場合に使用される。
l  埋め草ビット (Padding Bit)
データビッ列の終端パターンの後にある最終コード語の空の位置を埋める目的で使用するデータではないゼロのビット。
l  残余ビット (Remainder Bit)
符号化領域が8ビットのシンボル文字で割り切れない場合に、最終シンボル文字の後にあるシンボル符号化領域の空の位置を埋める目的で使用されるデータではないゼロのビット。
l  残余コード語 (Remainder Code Word)
データ及び誤り訂正コード語の総数が、シンボルの容量を満たさない場合に、シンボルを完成させるために空のコード語位置を埋めるために使用する埋め草コード語。
l  終端パターン (Terminator)
データの終りを表すビット列。データの最後に使用し、0000のビット列になる。



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