地下鉄道  Colson Whitehead  2018.2.27.


2018.2.27. 地下鉄道
The Underground Railroad 2016

著者 Colson Whitehead 1969年生まれ。ハーバード大卒後、ヴィレッジ・ヴォイス紙で働く。99年第1長篇The Intuitionistを発表。16年刊行された第6長篇に当たる本書は、ピュリッツァー賞、全米図書賞など7の文学賞を受賞し、ニューヨーク・タイムズ紙やワシントン・ポスト紙など多数の有力紙誌の年間ベスト・ブックに選出。現在40原語で刊行される予定がある他、バリー・ジェンキンス監督による映画化が決定している。ニューヨーク在住

訳者    谷崎由依 京大文学研究科修士課程修了。作家、翻訳家、近畿大講師

発行日           2017.12.10. 初版印刷        12.15. 初版発行     
発行所           早川書房

ピュリッツァー賞/全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞受賞
コーラはランドル農園の奴隷だ。身寄りはなく、仲間たちからは孤立し、主人は残虐極まりない。ある日、新入りの奴隷に誘われ、彼女は逃亡しようと決意する。農園を抜け出し、暗い沼地を渡り、地下を疾走する列車に乗って、自由な北部へ・・・・・・・・。しかし、そのあとを悪名高い奴隷狩り人リッジウェイが追っていた!
歴史的事実を類まれな想像力で再構成し練り上げられた長篇小説
世界を圧倒した奴隷少女の逃亡譚、登場





(書評)『地下鉄道』コルソン・ホワイトヘッド〈著〉 『ネバーホーム』レアード・ハント〈著〉
20181280500分 朝日
 差別を体感させる言葉と語り
 アメリカ合衆国は1776年の建国時から自由州と奴隷州に分かれていた。リンカーンが奴隷解放を宣言するのが1863年のことであり、日本でいえば江戸中期から幕末あたりの時代ということになる。
 1861年にはじまる南北戦争と現在との時間的なへだたりは、日本の歴史における戊辰戦争との距離感に近い。
 「地下鉄道」の語はもともと、奴隷州から自由州やカナダへ逃れようとする人々を支援した組織やその逃亡路を示した。「地下」の語は奴隷自身の移動が非合法であることを、鉄道は自由への道を意味しており、実際の地下鉄を指すわけではない。
 だがしかし、本当に地下に鉄道が走っていたとしたならばという奇想を発端として書かれたのがホワイトヘッドの『地下鉄道』であり、奴隷の少女コーラの逃亡劇が描かれる。
 発想からして虚構性の高い作品だが、扱われるテーマは重く、息苦しさに満ちている。
 人間が人間を差別するとき、当人は自分が人間を差別しているとは考えない。差別ではなく人間とは違うものとの区別だと信じて疑わない。
 他者の痛みを感じることは想像以上に難しい。作中、白人が黒人のかっこうをして演じる黒人劇の場面がある。奴隷制からの逃亡、その幇助(ほうじょ)が死罪を意味する町で、自分の過ちを認め許しを乞いながら処刑される奴隷の役を、顔を黒塗りにした白人が演じるという行為のおそろしさは本を閉じたところで消えるようなものではない。小説によってはじめて可能となる種類の力といってよいと思う。
 レアード・ハントの『ネバーホーム』は『地下鉄道』の時期からほぼ30年が経過した南北戦争期が舞台であり、こちらの主人公は、夫のかわりに兵士として戦場にでることにした女性である。
 特徴的な一人語りは背景をはっきりと示さないまますすむが、男性の兵士であるという偽りによって彼女は人間扱いされ、偽りが破れ本来の姿があらわれた時点でそれは終わる。
 奴隷であることも性の選択も自分で自由にできるものではない。自由にできないのは当然なのだという理屈を言うのは常に自由である側の人々である。
 言葉は誰が発しても同じ内容を伝えるというものではない。人間とは異なるとされた者が発する言葉は、言葉とみなされないからだ。
 だからそこでは様々な言葉や語りが工夫される。事実を目にし、耳にするだけで他人の苦しみを理解し、あらゆることは自らにも起こりうるのだと理解するだけのかしこさを、人間は備えていないのだ。
 評・円城塔(作家)
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 『地下鉄道』 コルソン・ホワイトヘッド〈著〉 谷崎由依訳 早川書房 2484円
 『ネバーホーム』 レアード・ハント〈著〉 柴田元幸訳 朝日新聞出版 1944円
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 Colson Whitehead 69年生まれ。アメリカの作家。この本でピュリツァー賞、全米図書賞など受賞Laird Hunt 68年生まれ。アメリカの作家。『インディアナ、インディアナ』『優しい鬼』など。


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