石つぶて 清武英利 2018.3.28.
2018.3.28. 石つぶて――警視庁 二課刑事(でか)の残したもの
著者 清武英利 1950年宮崎県生まれ。立命館大経卒。75年讀賣新聞入社。青森支局を振り出しに、社会部記者として警視庁、国税庁などを担当。中部本社社会部長、東京本社編集委員、運動部長を経て、04年巨人軍球団代表兼編成本部長。11年専務球団代表兼オーナー代行を解任され係争に。現在はノンフィクション作家。『しんがり 山一証券 最後の12人』で14年講談社ノンフィクション賞
発行日 2017.7.25. 第1刷発行
発行所 講談社
二課の先輩は「涜職(とくしょく)刑事」と自分たちを評していた。職を涜(けが)す公務員は社会の敵であり、汚職や公務員犯罪こそが国を亡ぼす。国が衰退しないために、俺たち「涜職刑事」がいる
序章 半太郎
長野の田舎の「坊」こと廣瀬が上京して研数専門学校を卒業した途端に召集令状が届き、予備士官学校に入学すると半年で終戦、知人の紹介で大蔵省に入って、外務省事務官となったが5年足らずで辞めている
外務省の頃、吉田首相の秘書を務めたが、秘書といっても目黒公邸詰めの第七公設秘書官で、実質「お犬係」 ⇒ 講和会議から持ち帰ったテリア2匹の世話
バカヤロー解散で辞職を宣言、大蔵省や外務省のコネを生かして事業を始める ⇒ 最初の貸しオムツ業は失敗したが、外務省内の公用品梱包運送業は急伸。古巣外務省の秘密を暴くことになるのは外務省ビジネスを初めて48年後
第1章
捜査二課の魂
橋本行革の事務局長を務めた元自民党総務会長の水野清が事務局長を辞めた後も持っていた事務所に廣瀬が来て九州・沖縄サミットの物品納入に疑惑があるとこぼすのを出入の刑事が耳にした
外務省の裏方を仕切っているのはノンキャリで、他省庁の汚職事件をよそに、機密事項の多い外務省は秘密の壁に守られかなり自由に予算を使っていた
第2章
浮かび上がる標的
外務省課長補佐による物品購入にまつわる汚職情報として、調達にまつわり賄賂を要求する外務省ノンキャリの3悪人があがってきて、そのうちの1人が大臣官房総務課機能強化対策室長の松尾で、九州・沖縄サミット準備局次長を兼務、その前は6年近くにわたって大臣官房総務課要人外国訪問支援室長という要職にあって「外遊時に総理の一番近いところで世話をする男」と言われていた
第3章
地を這う
外務省は比較的女性関係に寛大で、不倫が咎められない役所
松尾も女性関係にはルーズで今の妻は3度目、3度目も実質破綻、公務員宿舎に愛人を囲い、近くに高額のマンションを持ち、預金口座から女たちに巨額の金が支払われていたことを突き止める。さらに競馬馬の口座も発見、巨額のカネが動いている
松尾が数年前にノンキャリの研修用に作成した「翌檜(あすなろ)」という資料があるが、そこには記述のあちこちにノンキャリの強い自尊心と本音がちりばめられていて、外務省を支えてきたのはエリートではないとあった
第4章
情報係とナンバー
競馬馬の口座にはマルサも目をつけたが、役所の金のことで手を付けかねていた
松尾が警察の手が伸び始めたことを察知して、外務省も在外公館に移動させようとし、本人も金を子ども名義に移し始める
第5章
パンドラの箱
警察庁の上に上がった報告が鈴木宗男のところに流れ、鈴木から外務省に松尾の処分を示唆したが、外務省内では身銭を切って汚れ仕事を引き受ける男という評判で通っていた松尾は、仲人の斉藤元次官駐米大使も庇うほどだったため、捜査二課が出動して松尾を任意取調べに連行、1日がかりで白状させた内容は官邸の金を一部着服したというもので、捜査二課長宛に上申書を書かせる ⇒ まだパンドラの箱は開いたばかり
第6章
聖域の中へ
外務省は松尾から警視庁の取り調べを受けた報告を聞いても事態を甘く見ていて特段の動きはない
着服した金が、官邸の機密費であることに驚くが、同時に外務省機密費というのもあって、さらに外務省から官邸に機密費が上納されている
正月に新聞にすっぱ抜かれ、外務省内に対応チームが設けられたが、最終は松尾に被せれば済むと高を括っていた節がある
第7章
涜職刑事の誇り
外務省は内部調査の結果松尾を業務上横領で告発、松尾は懲戒免職となったが、その金額は上申書の1/4程度で、官邸からの被害届を基に捜査二課で取り調べ
松尾に自発的にすべての経緯を書かせる
毎月麻雀で給料以上を稼いでいたが、その相手が川島や野上、谷内
第8章
束の間の勝利
詐欺容疑で逮捕 ⇒ 宿泊費差額表を偽造して水増し請求しているのが詐欺に当たる
松尾ら4人を逮捕して終結 ⇒ 外務省では7人を懲戒免職、387人を懲戒減給
公判で松尾が否認ということも予想できたが、「完落ち」で素直に白状した
捜査員総勢162名動員、未曽有の捜査体制で、松尾が官邸機密費から受けとった機密費は合計で1,157百万円、うち987百万を着服したが、実際起訴されたのは566百万、残りは使途不明だったり、時効だったり、裏付けの手間がかかったりして立件対象から除外
都道府県の1つに過ぎない警視庁が、政官界を相手に知能犯事件を扱うのは並大抵のことではなく、多くは小粒の事件で、彼らのような石つぶてのように力のない集団でも、情報と指揮する者次第で、蟻のような人海戦術を発揮、無名の石ころの力を結集することで霞が関の底知れぬ腐敗に光を当てることができる
担当の刑事は警視総監表彰、警視庁刑事部長賞、警察庁刑事局長賞 ⇒ 総監表彰には1級から3級まであり、今回は1級で賞金は5,000円と破格、通常は100円玉1個
事件以後変わったのは、竪穴に籠ったような仕事をしている捜査二課の中で情報係長が星を摘発する実行部隊であるナンバーのうるさ型の係長と腹を割って話すようになった
もともと刑事が追ったのは外務省に絡む贈収賄事件であり、ナンバー係もキャリア官僚の腐敗を追っていたが、外交族議員を巡る汚職疑惑も囁かれながら、松尾の金額の大きさとその解明の手間暇の前に突っ込み切れなかったことに、解放された心の底に敗北感が沈んでいた ⇒ 97年松尾のタイ大使館への移動が取り消されたのは、自ら上層部に掛け合って白紙に戻したと言われ、ノンキャリの松尾が斉藤邦彦らの人脈に連なることで人事に強い発言権を持っていたことは省内でよく知られていたことからも、捜査二課としては上層部に相当の金品が贈られていたと睨んでいたが、松尾は自分一人で責任を被った
6か月後にやって来たのは、事件を中心になって追った名コンビの情報係係長と担当刑事の間を割く、同課内の他部署への左遷人事 ⇒ 係内の軋轢や課長の好き嫌いのとばっちり
その後、担当刑事は警部試験に合格して渋谷署に赴任中、防衛事務次官守屋の収賄事件の情報を入手、左遷時代仕込んだ後輩の女性刑事に伝えたが、捜査中に上からストップの指示が来てほぞを噛んだにもかかわらず、07年には地検が取り上げて収賄容疑で逮捕、国会の偽証罪も含め実刑判決を受けた
担当係長は、07年自らの意に反して取り調べの可視化を進める役割を担い、法案成立もあって取調室の一部に録音・録画装置を導入、強引な取り調べをなくす指導に当たる
同じ頃、ナンバーで担当した係長も、捜査二課内の他部署に移動後、中央省庁の局長クラスが関与する贈収賄事件のしっぽを掴むが上からストップがかかり辞職
事件の後で
担当刑事は、60の定年の後、嘱託職員として5年いたが、その間に妻上がんに侵される
捜査二課は、年間10件を超える贈収賄事件を摘発していたが、徐々に減って05年以降は5件に減り、14年には30年ぶりにゼロに落ちる ⇒ 全国ベースでも72年の164件から13年には25件に激減
16年、担当刑事の仕込んだ女性刑事が鶴ヶ島市の浄水場工事入札に絡む汚職事件を摘発、起訴に持ち込む ⇒ 女性刑事がサンズイの情報を掴んで来たのは警視庁歴史の中で初
石つぶて―警視庁 二課刑事の残したもの [著]清武英利
2017年09月12日 朝日書評
外務省の役人が機密費を着服、私的流用していた事件を覚えているだろうか。供述によると、詐取した額は5億円以上。競走馬やマンションの購入、愛人へのプレゼント代などに消えた。
2001年に起きた大事件。捜査二課の4人の刑事を中心に、どうやってこの使い込みの事実をつかみ、証拠を拾い集め、取り調べで供述させ、立件したのか。それを追ったのが本書である。
著者の『しんがり』や『プライベートバンカー』と同じように、本書も丹念な取材を重ねているため、会話の再現性が高く、小説を読んでいる気分になる。特に証拠固めの捜査や、取り調べの過程は臨場感たっぷりで一気に読み進んでしまう。
国へも警察へも不信感がぬぐえぬ昨今だが、人知れず泥臭く仕事をしている人は必ずいるのだ。 (大川恵実)
2001年に起きた大事件。捜査二課の4人の刑事を中心に、どうやってこの使い込みの事実をつかみ、証拠を拾い集め、取り調べで供述させ、立件したのか。それを追ったのが本書である。
著者の『しんがり』や『プライベートバンカー』と同じように、本書も丹念な取材を重ねているため、会話の再現性が高く、小説を読んでいる気分になる。特に証拠固めの捜査や、取り調べの過程は臨場感たっぷりで一気に読み進んでしまう。
国へも警察へも不信感がぬぐえぬ昨今だが、人知れず泥臭く仕事をしている人は必ずいるのだ。 (大川恵実)
佐藤浩市×江口洋介 SP対談「あいつら失敗しねえかなぁ…」ひそかに抱く仲間への“本音”
2017年10月31日 朝日
2001年に発覚し、政官界を揺るがした汚職事件「外務省機密費詐取事件」。“機密費”という国家のタブーに挑んだのは、警視庁捜査二課の名もなき刑事たち。その奮闘を描いた清武英利氏のノンフィクション作品が11月からWOWOWでドラマ化、放送される。
タッグを組むのは佐藤浩市さんと江口洋介さん。旧知の仲の二人だが、本格共演は初だという。単なる“刑事もの”という枠組みではくくれない異色の物語を舞台に、江口さん演じる「斎見晃明」が上司、佐藤さん演じる「木崎睦人」が部下という関係性をどう表現していくのか。二人の話は本作への意気込みに始まり、俳優としての仕事論や同業者に対する本音にまで及んだ。
今の若い人は驚く? 上司に偉そうな態度を取る部下
――今回、佐藤さんが捜査二課に所属する偏屈な刑事の木崎役、江口さんが新たに配属された年下の上司である斎見役を演じます。ドラマの鍵を握るのは、お二人が演じる役柄の関係性だと思います。どのようなコンビにしていきたいと思いますか?
佐藤 今回のドラマは二課という非常に特殊な部署が舞台でして、いろいろな仕事に特化している人間たちの集まりなんです。利己的な部分も含めて、個性のぶつかり合いになるので、普通のバディものよりはお客さんが馴染みにくい生臭さがあると思うんですよ。そういう部分が出せたらいいと思っています。
江口 バディものというよりか、おのおのに信念があって事件を解決するために協力している感じですね。男たちが、一つの大きな事件を前に近づいたり離れたりを繰り返す。でも、一人では事件は解決しない。木崎と斎見という、まったく感性も違えば、事件の捉え方さえ違う男たちが組んだからこそ、真相にたどり着くことができる。そのあたり、今までにはあまりないドラマになると思います。いわゆる“刑事もの”という言葉にもあてはまらない作品になるんじゃないかな。
――率直に、佐藤さんという大先輩の上司役を演じるのはどういうお気持ちですか?
江口 とてもやりがいがありますよね。佐藤さんの「圧」に対して「圧」をかける思いでやらせてもらっています。そうすることで、新たなエネルギーが加わり、芝居が変わっていくんですよ。
――佐藤さんは、江口さんの部下役というのはどういう心境なんでしょうか?
佐藤 僕がどうのというのはないけど……木崎という人間には「役職はそっちのほうが上だろうけど、先に生まれたのは俺のほうだぞ」という一種の割り切りがあったでしょうね。
――呉越同舟と言ってもいいような折り合いの悪い男たちが共通の目的に向かって進んでいく。警察だけでなく、会社などでも同じようなことがあり得ると思います。今回は江口さんが、佐藤さんの上司となりますが、もし江口さんが似たような状況に置かれたら、どのようにして木崎のような部下と一緒に目的を果たそうとしますか?
江口 「粘り」ですよね。このドラマで言うなら、事件を解決するための粘りがどこまでのものか、自分も相手もその体力を持っているのかどうか。サラリーマン社会でも、そういう部分がお互いの魅力になるだろうし、それがなければ一緒に仕事をすることはできないんじゃないかな。ケンカをする場合も、相手の粘りの部分を感じながら押し引きする感じですよね。
佐藤 ただ、係長の江口(斎見)とか、二課長の萩原聖人に対する俺(木崎)の口のきき方を、今の若い子たちは信じられないんじゃないかな。昔は儒教的に年長者が敬われていて、そういう部分がこのドラマや、僕たちが演じている世界の中には残っているので成立しているけど、今の若い子たちにはすごく不思議に見えると思いますよ。
――「なんであのおじさんは自分より上の立場の人に偉そうな口きいているんだろう?」って(笑)。
佐藤 ただの警部補だろ? って(笑)。
――俳優は若い頃から主演として、座長として年長の人たちを引っ張っていかなければいけない場合が多々あると思います。佐藤さんの初主演は20歳のとき、江口さんの初主演も20歳でした。やっぱり周囲への気遣いや苦労はありましたか?
佐藤 その頃はそれどころじゃなかったよ(笑)。
江口 右も左もわかりませんでしたから。逆に、周囲に気遣いができる若い俳優が来たら、「俺はぜんぜんできてなかったな……」と思い出しますね。
――今の世の中は実力主義なので、若い人は実力次第で存分に活躍できますし、それは良い部分でもあるのですが、先人たちが積み重ねてきたことにも目を向けたほうがいいということですね。
江口 現代の企業はデジタル化が進んでいると思うけど、僕たちがやっている撮影は本当にアナログの世界。現場では押したり退いたりするような駆け引きが多いんですよ。そういう部分が生々しく映る世界でもあるし、それも一つの表現。「優しさ」とか「調和」なんて言葉で一緒にされると、すごく難しくなってしまう。世の中のデジタル化が進めば進むほど、僕たちがやっているようなアナログ感というものが、もっともっと必要になってくると思っています。
仲間に対して「失敗しねえかなぁ…」刑事も俳優も抱く本音とは
――原作の木崎は、自分が取ってきた情報は上司にも与えなかったりします。信頼関係はあっても、「俺は俺」なんですね。
佐藤 セリフにもあるんですけど、「情報は知る者が増えれば増えるほど、漏洩する可能性が高くなる」。これは理屈であって、信頼関係があればそうではないんだけど、信頼関係を構築する前に、この理屈を建前にして生きる男たちの話なんです。それが二課であり、その部分が視聴者に伝わってくれれば面白いと思います。
――犯罪を解き明かすという共通の大義はあっても、仲間でさえやすやすと信用しない。その生臭さが面白いんですね。
佐藤 実際に刑事同士でも「あいつ、取り調べに失敗してくれないか」と思うことはあるらしいですからね。目的がすり替わっているのかもしれないけど、それが「性(さが)」なんですよ。それも生臭さですよね。俺たちだって、「誰それがこういう映画の撮影に入るらしい」と聞いたら、「いいなあ」と思うし、「………失敗しねえかなぁ」と思う部分もある(笑)。「いい作品になればいいな」と思いつつ、「面白かったら悔しいな」というのが本音かもしれない。それが人間ですよね。建前じゃないところで生きているということなんですよ。
――そういう嫉妬があるからこそ、より良いものが生まれるんでしょうね。
佐藤 そうですよ! 「『石つぶて』を江口と浩市がやるらしい」と聞いたとき、「面白かったら悔しい」と思う人たちが、いっぱいいてくれないと困る。俺たちもやる意味がない。俺が年端もいかない小僧だった頃、『犬死にせしもの』という映画を真田(広之)と一緒に大映京都で撮影していたら、緒形拳さんがやってきて「クソッ、面白そうなのやってんな、お前」って声をかけてくれたんですよ。そのときは「えっ」と思ったけど、今はガタさんの言葉がよくわかる。それは俺に対して悔しいんじゃなくて、「こういう面白いことに俺も参加したいよ」ということなんです。そう思うことが、我々の性(さが)なんだよね。
(文・ライター 大山くまお、撮影・逢坂聡)
〈衣装〉
江口洋介さん:ジャケット ¥58,000(ビームスF)、シャツ ¥23,000(ジャンネット)、パンツ ¥37,000(PT01)、靴 ¥99,000(エンツォ ボナフェ) *こちら全て税抜きの金額です。
江口洋介さん:ジャケット ¥58,000(ビームスF)、シャツ ¥23,000(ジャンネット)、パンツ ¥37,000(PT01)、靴 ¥99,000(エンツォ ボナフェ) *こちら全て税抜きの金額です。
〈番組情報〉
2017年11月5日から毎週日曜夜10:00~ WOWOWで放送
※第1話無料放送
監督:若松節朗
脚本:戸田山雅司
原作:清武英利『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(講談社)
音楽:住友紀人
出演:佐藤浩市、江口洋介、北村一輝、萩原聖人、飯豊まり ほか
監督:若松節朗
脚本:戸田山雅司
原作:清武英利『石つぶて 警視庁 二課刑事の残したもの』(講談社)
音楽:住友紀人
出演:佐藤浩市、江口洋介、北村一輝、萩原聖人、飯豊まり ほか
Wikipedia
松尾克俊は1993年10月10日から1999年8月16日まで外務省の要人外国訪問支援室長に在任し、46回の首相外遊を担当。9億8800万円にのぼる官房機密費を受領していた。このうち約7億円が詐取。そこから競走馬(大井所属)14頭、サンデーサイレンスの種付け権、ゴルフ会員権、高級マンション、女性への現金に浪費していた。
2001年に機密費流用問題が発覚し、松尾は懲戒免職された。また加藤利男内閣府大臣官房会計課長名により、警視庁刑事部捜査二課に被害届が出され、詐欺罪で松尾が逮捕された。立件されたのは5億円以上にものぼった。
小泉純一郎総理大臣の意向で、横領時の事務次官である、斎藤邦彦国際協力事業団総裁、林貞行駐英大使、柳井俊二駐米大使、川島裕事務次官の4人及び、飯村豊官房長が更迭された。また外務省の再発防止策の一環として、要人外国訪問支援室の廃止がなされた。
刑事裁判の確定後、松尾は自宅マンションを売却するなどして所有財産の殆ど全てにあたる計約2億7000万円を国に返還した。
外務省では以下の処分が行われた。
1964年、山村新治郎・寺島隆太郎の相次ぐ死去に伴う衆議院旧千葉2区補欠選挙に保守系無所属で出馬したが、次点で落選した。1967年、第31回衆議院議員総選挙に自民党公認で旧千葉2区から出馬し、初当選した(当選同期に山下元利・増岡博之・加藤六月・塩川正十郎・河野洋平・中尾栄一・藤波孝生・武藤嘉文・坂本三十次・塩谷一夫・山口敏夫らがいる)。以後、当選9回。当選後は交友クラブを経て、宏池会に入会する。
1983年、第2次中曽根内閣で建設大臣に任命され、初入閣した。1989年、宇野宗佑総裁の下で自由民主党総務会長に起用されるが、宇野は同年の第15回参議院議員通常選挙での大敗を受け、わずか69日で退陣。宇野の退陣を受けて発足した第1次海部内閣では総務庁長官に任命された。
1996年の第41回衆議院議員総選挙には出馬せず、政界を引退。水野に代わり、養子で中尾栄一の実子である水野賢一が千葉9区から自民党公認で出馬したが、賢一は新進党の実川幸夫に敗れ、落選した(1999年に繰上当選)。同年11月、橋本龍太郎首相により行政改革を担当する内閣総理大臣補佐官及び行政改革会議事務局長に起用され、橋本首相の掲げた六大改革の推進を補佐した。金融ビッグバンの端緒をつけた海外への金の流出、ひいては税金の徴収が目減りする事態が想定された外為法改正(1998年4月施行)は水野、および当時の大蔵省財務官だった榊原英資の主導により推し進められた。首相補佐官は、1998年の橋本の退陣まで務める。同年、勲一等旭日大綬章受章。その後は「日本再建のため行革を推進する700人委員会」の代表世話人を務め、郵政民営化の一層の推進や、特殊法人の民営化を提言した。
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