解任  Michael Woodford  2012.12.28.


2012.12.28. 解任
Terminated  2012

著者 Michael Woodford 元オリンパスCEO1960年リバプール生まれ。81年同社医療事業の英国代理店キーメッドにセールスマンとして入社。90年キーメッド社長。04年グループの中核企業・オリンパス・メディカル・システムズの取締役。05年同社欧州法人社長。アメリカの事業も統括。08年ヨーロッパ統括会社の社長兼本社執行役員就任。11年オリンパス・グループの社長に就任、6か月後CEOに昇格するも2週間後に過去の不正の責任を追及したために解任

発行日           2012.4.15. 初版発行         4.16. 再版発行
発行所           早川書房

2012.6.28. サムライと愚か者 暗闘 オリンパス事件』と併せて読む

「この記事は真実なのですか?
「部分的にはイエスだ」会長の菊川は答えた
バブル期の損失を隠蔽するため、「飛ばし」や「不明朗な企業買収」を繰り返し、粉飾決算を行っていたオリンパス。同社の生え抜きで、CEOに就任したばかりだった本書の著者ウッドフォードは、不正の責任を追及したがために解任され、その後事実を告発するに至った
オリンパス事件の舞台裏ではいったい何が起きていたのか?
CEOは、不正発覚までの経緯、後に逮捕される菊川会長、森副社長との壮絶な駆け引き、緊迫した取締役会の様子、プロキシ―ファイト(委任状争奪戦)の真実をここに激白
日本の企業文化、資本主義、ジャーナリズムへの貴重な提言となるノンフィクション

2011.10.14. 臨時取締役会開催 議題は「M&Aに関するガバナンス上の課題について」
菊川会長から2つの動議が出され、①社長、CEO、代表取締役からの解任、②米欧を含むすべてのオリンパスの海外法人のCEO、会長職からの解任、後任は森久志副社長
12人の取締役全員の一致で成立
翌朝のFinancial Times 1面に、著者の提供した資料を基にした独占スクープ掲載
FACTA(会員制ビジネス誌、発行人:阿部重夫)20118月号の暴露記事が発端 ⇒ 過去のM&Aに関する不明朗な損失についての内部告発を取り上げたもの
6月の総会前に、『FACTA』から質問状が来ていたが、社内で箝口令が敷かれていた
11.8. 菊川と森に『FACTA』の記事の真偽を確かめた時のやりとりが冒頭の会話 ⇒ 買収の目的・効果について質問するも満足する回答は得られず
最も親しく、信頼もしていたオリンパス・メディカル・システムズの元社長でオリンパスの専務でもあった宮田耕治(父子2代で90年近く会社に貢献)に相談
FACTA10月号(9.20.発売)で、「反社会的勢力との関係が疑われる」投資会社Jブリッジとの関連が指摘
11.9.22. 「当社のM&A活動に関する深刻なガバナンス上の問題」と題した手紙をコンプライアンス担当の森宛に出状 ⇒ 国内3社の買収の詳細を明らかにするよう求める
9.30. 情報公開の埒が明かないことに業を煮やして、CEOの地位と取締役の任命権を要求し、認められる ⇒ 英語のリリースのみで日本のメディアには通知されていない
社外取締役で日本経済新聞出身の来間紘が、手紙をアーンスト・ヤングに送ったことを強く非難
10.14. 解任 ⇒ 株価は前日の2,482円から2,045円に急落
欧米の有力メディアで騒ぎが大きくなり、日本のメディアもようやく記事にし始める
イギリスの重大不正監視局(SFO)に資料を提供して、正式調査を求める
日本の証券取引等監視委員会にも、早期の捜査開始を要請
アメリカのFBIも捜査を開始
10.26. 菊川辞任
10.30. 野田首相が、Financial Timesのインタビューで、市場の信認を貶める恐れがあるとして真実の解明と適切な処置を取るよう異例のコメントを発表
11.1. 第三者委員会立ち上げ ⇒ 元最高裁判事の甲斐中辰夫が委員長に就任
11.8. 会社が不正の存在を認める発表 ⇒ 財テク失敗による損失隠蔽が目的。マイケルの解任理由については、あくまで独断専行と資質によるもので、不正とは無関係と明言
11.12. 宮田が中心となってウェブサイト「オリンパス・グラスルーツ」を立ち上げ、マイケルを復職させ会社の健全な再建に向かって正しい情報と希望を与えようとした
11.30. 責任を取ろうとしない取締役による経営刷新などありえず、内部からの改革が難しいこと知って、取締役を辞任しプロキシ-・ファイトをすることを決意 ⇒ 高山以下の新経営陣は直接の話し合いを拒否、メインの住友他大株主も敵対的態度
12.21. 地検他の強制捜査開始
12.1.10. 会社が菊川等を相手に損害賠償請求
12.2.16. 菊川、森、山田に加え、関与した元野村のコンサルタント等4人が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕
イギリスの全国紙4紙が、マイケルを「今年の人」[今年のビジネスパーソン]に選出 ⇒ 4紙がすべて同じ人を選ぶのは史上初
結局会社は大株主の意向に従って、住友から会長が、新社長には内部から執行役員の笹が、社外取締役には菊川体制を支持し続けた林田康男と来間が残るという茶番
著者も、社長への復帰は断念、損害賠償だけを残して幕を引く
事件には区切りがついたとしても、問題の「病巣」がすべて取り除かれたわけではない。オリンパスの傷ついた評判も、日本企業のガバナンスへの疑念も変わらず残ったまま
技術は一流ながら、企業のもたれ合いやジャーナリズムの未熟さのせいで、低級なガバナンスや二流の経営がはびこり、世界で戦うための力が失われている。そこさえ改善でき、日本の企業が復活を遂げれば、この国は再び活力を取り戻すはず
オリンパスに起きていたことは、もしかすると日本全体に起きていることかもしれない、と危惧する。優秀な国民がいるにもかかわらず、組織のどこかが腐っているかもしれないし、代々受け継がれてきた根深い問題が未解決のまま見過ごされているかもしれない
残念ながらオリンパスには正しい変化は訪れなかったが、日本は変わらなければならない
私はオリンパスを変えられなかったが、みなさんにはまだ日本を変えるチャンスがある
方法は簡単、目をそらし、口をつぐむのではなく、勇気を持って立ち上がるのだ。間違っていることは間違っていると声を上げるのです。それだけで日本の未来は拓ける

マイケルのこと                 オリンパス元専務 宮田耕治
キーメッドの創業社長からは、機会あるごとに会社経営の話を聞いていた
彼から、「世の中には、掃いて捨てるほどのgood No.2と、ごく一握りのgood No.1がいる。No.2No.1になれる確率は驚くほど小さい。だから経営トップの後継者探しは、No.1を探し出して必要な教育を施すことが不可欠」、と教えられて紹介されたのがウッドフォード氏。同氏は、経営の根幹にdiscipline(規律)attention to details(細部へのこだわり)を掲げ、彼の編み出した内視鏡製品の販売管理方式は、今でもオリンパスの標準である
14歳で交通事故を目撃して以来、交通安全運動に携わっており、激務の合間を縫って、日本でも信号機の設置について改善を提起している
No.2による「誤った道へ踏み込んだ」オリンパスの再生する道は、マイケル抜きで本当にあるのか





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