戦争と音楽 京極高鋭 古川隆久 2025.6.26.
  2025.6.26.    戦争と音楽 京極高鋭 ( たかとし ) 、動員と和解の昭和史       著者  古川隆久  日本大学文理学部教授。 1962 年東京都生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。広島大学総合科学部専任講師、横浜市立大学国際文化学部講師、助教授等を経て、 2006 年より現職。主な著書に『昭和天皇』(中公新書、 2011 年。サントリー学芸賞受賞)など       発行日            2025.3.25.  初版発行   発行所            中央公論新社  ( 中公選書 )       表紙袖   西洋音楽には、近代日本における動員と和解の 2 面がある。これを一身で体現したのが本書の主人公、京極高鋭。華族の家に生まれた京極は、後の昭和天皇の「御相手」を務め、長じては音楽ジャーナリストとなり、メニューインらと親交を深めた。戦時下には「愛国行進曲」のプロデュースを手掛け、戦後は東京オリンピックの開催に関った。この「華麗なる縁の下の力持ち」の遍歴に、近代日本が抱えた矛盾と音楽の持つ力を探る           はじめに   戦争と音楽は切っても切れない繋がりがある   国家が人々を動員する手段としての一面が音楽、なかでも洋楽にはある   一方で、言語の壁を超えて通用する記譜法を持つ西洋音楽は、国や立場の違いを超えて人々を和解させる一面もある   本書の主人公、京極高鋭 (1900 ~ 74) は、平和と戦争が入り乱れた激動の昭和期に、音楽やスポーツのこうした動員と和解の 2 面性を一身で体現した人物の 1 人   洋学者で帝大総長・枢密顧問官の加藤弘之を祖父に、明治天皇の侍医・加藤照麿を父に持つという上流家庭に生まれ、幼少時は迪宮の遊び相手の 1 人。弟郁郎は後の古川ロッパ。学習院在学中にクラシック音楽に興味を持ち音楽部の創設に関わり、東京帝大経済卒後は新聞記者。のち京極子爵家に婿入りし、京極姓を名乗る。 1930 ~ 32 年欧米に滞在、有名クラシック音楽家...