ドレスコード  Richard Thompson Ford  2022.8.13.

 

2022.8.13. ドレスコード ファッションに隠されたメッセージ

貴族、公民権運動家、IT起業家、ラッパー、YouTuber――私たちの思考と行動は「服装」で決まっていた。

Dress Codes How the Laws of Fashion Made History  2021

 

著者 Richard Thompson Ford スタンフォード大学ロースクール教授。法律、社会問題、文化的テーマ、人種関係についての記事を、ニューヨーク・タイムズ紙、ワシントン・ポスト紙、サンフランシスコ・クロニクル紙、CNN、スレート誌に寄稿してきた。ニューヨーク・タイムズの「今年の注目図書」に選ばれた『The Race Card(人種のカード)』『Rights Gone Wrong(堕落した権利)』の著者。テレビ番組コルベア・レポー、レイチェル・マドー・ショー、ディラン・ラティガンに出演。アメリカ法律協会会員。全米作家協会理事。本人も驚いたことに、2009年のエスクァイア誌ベスト・ドレスド・リアル・マン・コンテストの25名の準決勝進出者のひとりに選ばれた。妻マーリーンとふたりの子ども、コールとエラとともに、サンフランシスコに暮らす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

 

訳者 服部由美 翻訳家

 

発行日           2022.4.3. 初版第1刷発行

発行所          パン・ローリング

 

カバー裏

私たちがドレスコードに縛られるのはなぜだろう?

歴史をひもとけば人は服につくられてきた。それなら服装は本当に個人が選択しているのか? 時代の流れに知らぬ間に同調し、周囲に好印象を与える――あるいは人の気を引くためにその服を着ているのだろうか?

 

17世紀、ルイ14世は自分と廷臣以外の赤いソールの靴着用を禁止し、21世紀、クリスチャン・ルブタンは赤いソールの商標を独占した。彼らは赤い靴底ではなく「権力と特別感」を守ろうとしていた。なぜなら「服装」にはそれだけの効き目があると知っていたからだ。

 

宮廷と修道院、革命と公民権運動、娼婦と淑女、ギャングとセレブ。「階級・性差・貧富」を表し、固定するものとしてドレスコードは機能していた。そしてフランス革命後の「国家と個人の誕生」とともに、服装は自由と平等を実現し、一人ひとりの個性を表し、格差を破壊するものになる――はずだった。

 

それにもかかわらず、アメリカの高校は現在も服装規定を増やし、レストランは髪型を理由に従業員を解雇する。「流行なんてどうでもいい」とTシャツを好むIT起業家たちは、「ファッションに無関心という最新の流行」に夢中になっている。ドレスコードに隠されたメッセージは形を変え、今なお生きているのだ。

 

 

歴史的出来事と重要なドレスコード

1300    ファッションの誕生

               ペストによるヨーロッパの荒廃

1500        高価な衣服の着用禁止令

1700        特権階級の男性による華麗な装飾の放棄

1900        ズートスーツ暴動

2000        フランス「スカーフ事件」

 

 

目次

1797年ロンドンでは、シルクハットをかぶって公道で人を驚かせたとして、治安妨害・騒動扇動の疑いで紳士用服飾品店主が召喚され、保釈金の支払いを求められた・30年後には満足げな金持ちたちを体現するものとなり、オルセー、ウェリントン、リージェントといった名前で売られている

1922年悪名高い麦わら帽子暴動――ニューヨーク市の無法者たちが、915日以降は麦わら帽子禁止というルールを押しつけ、通行人の頭から帽子を叩き落し、ダウンタウンでは帽子を守ろうとする者たちとの間で暴動に発展

ドレスコードは時代遅れのように見えながら、実はどんどん一般的になりつつある

19992000年に米国公立学校の46.7%が「厳格なドレスコード」を実施し、'13’14年には58.5%になっている。米国のコーヒーショップという寛いだ雰囲気の自由な領域でさえ、ドレスコードに支配され、スターバックスのバリスタにも厳しいドレスコードがある

ドレスコードの中には特定の衣服を指定したり、禁止したりするだけでなく、服装の些細な部分まで執拗に指示するものがある――スイルユニオン銀行では擦り減った靴を禁止、ネクタイはベルトのバックルの上にちょうど触れる長さなど、44ページにわたる冊子で細かく指示

男性の正装、半正装のルール:

タキシードのアンサンブルは黒あるいは濃紺のジャケットに、サテンかグログラン(シルクまたはレーヨン製の厚地うね織り)のピークドラペル(剣襟)またはショールカラー(へちま襟)をつける。スラックスの縫い目は外に出し、シルクまたはグログランの側章1本で覆う。ジャケットがダブルブレストならピークドラペルでなければならない。シングルならショールカラーでもいいが、ノッチドラペル(下襟の先が下がった襟)は不可。カマーバンドはプリーツを上向きにして(男性がチケットを差し込んだ時代があった)ウェストを覆わなければならないが、ダブルブレストの場合はつけない。スラックスはベルトではなくサスペンダーで吊るので、ベルト通しがあってはならない

それ以外にもシャツやカフスなど細かく規定されている

タキシードを着る行事では、時間を気にする仕草はご法度で、カフスと調和していても不適切とされるなど多岐にわたるルールがあるが、アスコット競馬場のロイヤルエンクロージャー(王室席に近い特設スタンド)の規則に比べれば、普段着のようなもの

あらゆるルールを破ることを誇りとする反抗的なサブカルチャーですら、ドレスコードに従っている――ある集団に帰属していることを示すサインになっていて、破ったルールと同じくらい妥協を許さないルールになっている

シリコンバレー風のカジュアルウェアですら、一種のドレスコードになっている

人の第一印象はおよそ3秒で決まる――服装はその初対面のイメージを決める重要な要素の1つ。社会階級や性差、人種、信仰などを表すとともに、心の奥底に秘めた関心、願望、自己意識を映し出す

本書は、歴史を通したファッションの法則を探り、服装――自己表現の最も私的かつ公的な媒体――が持つ個人的、社会的、政治的な意味を明らかにしていく

l  服装を解読する――コミュニケーションと自己成型

衣服というものは、自分がどんな人間なのかを表すと同時に、コミュニケーションの手段にもなり得ること。服装から、相手に対する敬意の有無、目指すものの有無、真剣さの有無が伝わる

l  古代から「世紀単位」でトレンドを分析

服装が社会的交流や世界観に及ぼす影響はすでに習性となり、あまりに反射的で心に深く根付いたものであるため、自分では気づかない

広く長く生き残ってきた流行のトレンドが社会の秩序を生み、人々のものの見方を決めていく。それがしばしば明白なルール=ドレスコードの主題となり、服装が意味するものと、いつ、誰がそれを身につけてよいのかを決定する

こうした大きなトレンドを調べるには、世紀単位の長さでファッションの変化を見ていく必要がある。歴史上の出来事に沿って、変化を取り入れたルールを見ていくことは、それぞれの時代にファッションが意味したものと、今日、私たちにとって意味するものを理解するのに役立った。ファッションとはただの衣服以上のものであることを教えられた

l  白衣を着ただけで抽象思考能力が上がる?

ファッションとは、衣服を通して、考え方、価値観、願望を伝える手段である以上に重要なのは、ファッションとは、自己意識と、社会における自分の居場所の感じ方を変える手段であること(「自己成型」と呼ぶ)

ドレスコードは、服装にはコミュニケーションと自己成型という社会的機能がどちらも備わっているという重要な証拠であり、ドレスコードとはどんな服装をするかを規制するルールであり、服装の意味を管理するルールでもある

l  ファッションとは独自の表現方法

何世紀もの間、ドレスコードは法律の形をとっていた。中世及びルネサンス時代の奢侈禁止令は社会階層によって衣服を指定し、米国の奴隷制度があった州の法律は黒人が「分不相応」な服装をすることを禁じ、公序良俗法は男女に性別に相応しいと認められた服装をするように求めた

ところが現在では、表現の自由に対する法的権利、差別を禁ずる法律が徐々に様々なドレスコードと激しく衝突している

l  地位、性別、権力、個性

ファッションが始まったのは14世紀。ルネサンスが姿を現し始め、新しい社会的感性が出現、それは個人を中心に据えたもの

 

本書では人々がなぜ、どのようにファッションを管理しようとして来たのかを見ていく

1部では、ファッションと現代的な感性が生まれた中世後期とルネサンスにおいて、ステータスシンボルを作る目的でドレスコードが利用されたことを考える――現代ファッションと現代のドレスコードの歴史が始まったのは1300年代で、衣服が自分を表現する手段となり、ファッションはエリート層の特権

2部では、ファッションが贅沢さから上品さに向かった変化を探る――啓蒙思想の理想がドレスコードにも同様の変化をもたらした

3部では、自分の成功や有能さを顕示するための服装であるパワー・ファッションを見る――アフリカ系アメリカ人が服装が持つ感情に訴える力を利用する動きを追う

4部と5部では、20世紀後半と21世紀初頭のドレスコードを調べる

4部では性別に基づいた服装を規制し、定めるドレスコードの変化について考える――男性の特権を手に入れた女性を対象としたドレスコードがもたらした感情面の問題は、政治と個人の両方に係るものとなる

5部では、現在の入り乱れる服装の象徴について探る―― 一貫性のあるドレスコードの欠如と、この変化が生んだ新しい期待によって起こった

本書は、人が着るものと、それを着る理由を考察し、ファッションがどのように歴史を変えてきたのかを明らかにしていく

 

第1部       ステータスシンボル

第1章        地位の記号化――トランクホーズ、王冠、ひだ襟、ベルベット、深紅の絹織物の過剰な誇示について

16世紀半ばのチューダー朝では、身なりを地位と特権の指標とする社会の政治的秩序を乱す奇抜な服装は処罰の対象――大きく膨らんだ半ズボンのトランクホーズを着ているだけで処罰

ドレスコードが服装をステータスシンボルとし、服装の伝えるメッセージを確立

スパルタ人の質実剛健が評価されたのは、最古の贅沢な服装を禁じる法律を備えていたからで、そのライバルだったアテナイ人も6世紀には豪華な服装を制限する法律を成立させ、その法律を「奢侈禁止令」と表現したローマ人も豪華な服装だけでなく、飽食や贅沢な家具、贅沢な贈り物を禁ずる多くの法律を成立させている――1157年のジェノバを皮切りに、中世後期まで贅沢を規制するドレスコードはヨーロッパ全体に広まる

1300年代初頭、奢侈禁止令は徐々に服装に関するものになっていった。宗教界の権威者にとっても好都合であり、贅沢な服装が法と秩序を損なうとして規制された

為政者にとっても、上流階級のステータスシンボルを残そうとする大きな目的があった

ルネサンス期の奢侈禁止令は、暗黒時代から抜け出したヨーロッパの経済発展に伴う新しい社会的流動性と社会不安に対する対応

贅沢な服装が社会的優位を見せつける方法だったとするなら、贅沢禁止法は生意気な成り上がり者に身の程をわきまえさせる方法

14世紀になると仕立て技術が広まり、衣服は贅沢な織物、鮮やかな色、表面の装飾だけでなく、外観や形状によってもメッセージを伝えるようになる

エリザベス1世は、服装の華麗さを巧みに利用――服装規制が活発で、ベルベットやサテンという贅沢な布地を上流階級のために確保

 

第2章        自己成型――トーガ、ガウン、ローブ、注文仕立ての衣服について

ルネサンス時代になると、服装は自己創造や自己成型の手段にもなる

古代世界から中世前期には、価値の高い衣服は血統、伝統、継承した地位を映し出すもので、スタイルはゆっくりと変化し、常に見慣れたものと共通する部分を残しながら変わっていったが、ルネサンス期になるとこの伝統的な服装による象徴化はファッションの急速な変化によって駆逐される

現代的なファッションが生まれたのは、経済による人の流動性がより多くの人に服装によって自分自身を表現する余裕と野心を与え、新しい技術が衣服のデザインの劇的な進歩を可能にした時だった――重要な技術革新は、14世紀に発達した現代的な仕立て技術

それまでの身体に垂らしてまとうタイプの衣服から、仕立て技術の革新により、衣服は体に合ったもの、その下にある人の体系をうかがわせるものになった

ファッションによって服装の意味が新しく出現し、人間の意識における重大な変化をもたらし、現代的な個人が誕生――着ている人の富を見せつけるだけでなく、その人の感性を見せつけるものとなり、伝統的な階層制度を変革し、新しい社会的な力を主張し始める

ドレスコードは、人間の感性に生じたこの重大な変化に対する反応

 

第3章        信仰の印――気ままに長々と裾を引きずるドレスやピアスといった虚栄心の問題と、女性信者の修道衣について、クリスチャン・ディオールから得たヒント

教会も貴族と同様、ファッションの破壊的な影響を糾弾――宗教指導者が求めたのは、服装、性別、信仰の関係を安定させることであり、1215年には宗教的布告により異教徒に識別記章着用を義務付けた

修道衣は簡素で地味。初めは男女共通の要素もあったが、尼僧の修道衣は複雑で矛盾も含む服装の象徴

1917年カトリック教会法典が新しいドレスコードを定め、全ての「修道女」に常に修道衣の着用を命じ、新しい非宗教集団が既存のカトリックの修道衣を採用してはならないと規定することで、時代錯誤のデザインを見事に差別化

20世紀後半には、ディオールの作品にヒントを得たおしゃれな箱ひだの衣服にスカーフタイプのヴェールを加えた新しいデザインの修道衣が登場

 

第4章        性的象徴――板金鎧、鎧用下着、仮面、コスチュームについて

性別に基づく衣服は人間の体の作りが生んだ当然の結果だが、習性となった社会的役割と、それに沿った行動によって決められているだけとも言える

1429年神の啓示を受けたジャンヌ・ダルクによってランスの街と大聖堂が奪還され、王太子シャルル7世の戴冠式が行われるが、翌年には捕虜となり、言葉によって異端の供述を引き出すことができなかった裁判所は、彼女が鎧の下に男性と同じ服装をしていたことに目をつけ、「女は男の着物を着てはならない」とする申命記の神による禁止を引用して火刑に処した。1456年教会は再審を行い、聖トマス・アクィナスによりやむを得ない場合の例外を認め、彼女の有罪判決を覆し、1909年福者に、1920年聖人に列せられた

あらゆる種類の異性装から連想される性的な刺激や不道徳な性行為を防ぐために、ルネサンス時代の奢侈禁止令は様々な仮装を禁止

 

第2部       豪華から上品へ

第5章        男性による華麗な衣装の放棄――フロックコート(現在のモーニング)、タータンとキルト、民間人の制服、髪粉を振りかけたかつら、尊大かつ謙虚であることについて

18世紀後半に上流階級では、男性による華麗な衣装の放棄が始まり、敬虔な清教徒が好んだ地味で自制的な服装になる。宮廷衣装の簡素化も進む

新しい国民国家の誕生と共に、新たなドレスコードが国民として、民族としての自覚を求める数々の奮闘の重要な部分となる

1746年英国議会の禁止令は、タータン禁止令を含み、スコットランドでの英国軍士官以外によるハイランド衣装の着用を禁止――服装による植民地化の1

一般市民に制服を義務付ける法律は、何度も試みられたが失敗に終わる

ルイ14世が広めた髪粉を振りかけたかつらは、旧体制の最後のシンボルの1

 

第6章     表現方法と地位――身なりの良い男性のベーシックなブラックスーツと、上品な女性の7回の着替えの重要性。絹とベルベットのヴェストの普及と、完璧に結ばれたクラヴァットという芸術

啓蒙思想の時代、地位は表現方法によって決まるものとなった

 

第7章        性別と簡素――注文仕立てのコート、鯨ひげ入りコルセット、フルスカートとペチコート、新古典主義的なドレスが持つ利点

男性は華麗な衣装を放棄し、ファッションのその領域を女性にまかせ、贅沢が表す古く堕落した象徴的意味の代わりに、新しく現代的な服装による表現を取り入れ、それを独占

ファッションを女性の特権にしたのは、男性社会での成功を目指す働く女性の集団で、フランスの婦人服裁縫師の同盟が男性による仕立屋の独占に異議を唱え、衣服の仕立て方を変え、紳士服と婦人服が異なる方向へ進んでいくのを後押し

19世紀初期のファッションには男女を問わず、新古典主義の影響がみられたが、影響の受け方は正反対――女性のファッションは昔ながらの衣服の模倣で、かつて男女共通だった体に垂らしてまとうという基本的な様式を受け継ぐ一方、紳士服は無駄のない現代的な衣装の下にある理想的な男性の裸体を想起させるもので、飾り立てることと格式ばった直解主義から、20世紀初頭に高い現代主義へと成熟していく無駄のない美的価値観へと向かう

 

第8章     合理服運動――ブルーマー、紐できつく締め付けるコルセット、糊の効いた襟付きシャツ、半ズボンのスーツの不自由

従来の性別に基づく服装に対する初期の抵抗の1つは、アメリア・ブルーマーが行った運動で、19世紀後半に新たに考案された衣服は彼女の名前で呼ばれた女性用のズボンで、当時としては比較的短いスカートの下に着用するようデザインされ、嵩張るアンダースカートを何枚も重ねた長いドレスに代わって動きやすくなっていた

衣服を改良すれば女性も働きやすくなるとして、衣装改革の団体が生まれ、1世紀前に紳士服を変えた利便性、フィット感、着心地の良さという原則に基づいた、独自の新しい婦人服を提言――合理服改革を助けたのは、紐できつく締め付けるコルセットに対する危機感で、改革運動の先駆者が詩人で劇作家のオスカー・ワイルド

20世紀初期までに45以上の米国の都市が、性別に基づいた服装を強制し、異性装を明確に禁止。非合法な目的の変装を禁ずる法律も存在

合理服改革は、一部で支持されながらも、失敗に終わり、ブルーマーも流行も短命に終わる――代わって登場したのが籠状に広がったクリノリンと呼ばれるフレアなスカート

 

第9章     フラッパーのフェミニズム――ローウェスト、ボブヘア、キューピッドの弓の唇、踊れるフラットシューズ、ベークライトのピアス、サイミントン社のサイドレーサーといったスキャンダル

20世紀初期になって流行に敏感なフェミニストの新しい世代が婦人服を永久に変えた

体に合った軽い衣服で、若々しく溌溂としたシルエットを取り入れた

理想像が若さとしなやかさになり、女性はようやくコルセットの締め付けから抜け出し、脚が解放され性的関心の焦点だった胸にとって代わる。重く厄介な結い上げる髪は切られて洒落たボブヘアに変わり、上品なハイヒールは踊れるようなフラットシューズに変わる

性別によるドレスコードの改革をやってのけたのは、ジャズ時代のセクシーなフラッパーだった――フィッツジェラルドが描いたわがままで無神経な主人公とは違って、ずっと興味深く、思慮深く、従来の女性の理想像に対しあからさまに挑戦している

シースドレス(ベルとなしのワンピース)は、男性のスーツと同様体にぴったり合うもので、ここに来て初めて婦人服が体の形に沿ったものになった

フラッパールックは性の解放であり、性別に基づく象徴的意味に関する不協和音を大きくしただけでなく、古代以来、体を覆う布で隠してきた腕ばかりか、さらに恥ずべきことに脚まで人目に曝すことで性的な刺激を際立たせた

 

第3部       パワー・ファッション

第10章 流行の奴隷――銀のバックル付きパンプス、マカロニ風につばを曲げた帽子、あるいはジャック・ジョンソンの格子柄のスーツが備えた、分不相応は服装の魅力と危険

18世紀の米国には、贅沢を規制する文化があり、奴隷の身分を過度に超えた服装は社会秩序を脅かすとして規制

逃亡奴隷や自由な黒人がファッションを政治的な主張として利用――アフリカ風でもアングロサクソン風でもない、アフロアメリカン風の「クレオール文化」を創造、白人の権威を覆す手段として折衷的な服装をした

 

第11章 ボロ服から抵抗へ――事件現場で目撃されたもの:ズートスーツ、コティヨンドレス(社交界デビューする女性のドレス)、ストレートヘア、日曜日の晴れ着。アフロとオーバーオール、ダシーキ(アフリカ起源の鮮やかな色の男性半袖シャツ)、黒いタートルネック、黒い革のコート

ズートスーツは、つばの広い帽子に、肩幅が広く、丈の長いゆったりした上着、それに合わせたハイウェストのズボンは太ももの辺りはかなりゆったりしているが足首で急激に細くなったもの、ルネサンス時代の詰め込み過ぎたトランクホーズが20世紀中期に甦ったもので、南カリフォルニアの自らをパチューコと呼ぶラテンアメリカ系住民の事実上の制服となっていたが、1943年ロサンゼルスに駐留していた水平の集団が彼らを迫害し始めると、軍人や白人市民までが暴行に加担、警察も出動する暴動に発展

米国の人種による序列がほころび始めた時代に起きた、自己決定と個人の自尊心を表す主張だった

ズートスーツは、革新的な服装とタブー破りで名高いプリンス・オブ・ウェールズのエドワード8世に始まり、マルコムXや人気のビッグバンドのリーダーだったキャブ・キャロウェイなどが来て拡散し、米国の本流から疎外されているという共通点が結びつけたブラザーフッドであり、自己主張から生まれた挑発的な新しいファッションと同時に、反体制文化的な感性であり、後に続くビートニク、ヒップスター(流行に敏感で奇抜なファッションをする若者)、ヒッピーの世代の特徴を形作ることになった

ズートスーツのアンサンブルを着た若い女性はパチューカと呼ばれ、同様に米国の社会が従順で目立たないでいることを期待した者たちからの大胆な挑発行為となった

19世紀のダンディたちの魂の末裔だったともいえる――ダンディズムの最も一般的な特徴は、予想もしないものを常に生み出す能力、既成の秩序に対する個人の反乱、規制を弄びつつ同時にそれに相応の敬意を払う。ダンディの存在そのものが、資本家階級の道徳的秩序に対する非難。その秩序はプロテスタントの労働倫理に従う。ダンディは宗教心の低下が残した空虚さを、服装に執着することで急いで埋めたともいわれた

19世紀のダンディは民主主義と平等を目指す運動の敵であるところからたいていは貴族で、裕福だったが、20世紀に入ると、疎外された者の新しいダンディズムが生まれた

ズートスーツ暴動が起きたのは加州だけではなく、デトロイトやハーレムでも起こり、マスコミは暴動がある種の人種的迫害であることを否定したが、黒人紙は人種問題と糾弾

公民権運動ではきちんとした身なりは必須条件――根底には、服装が政治の世界では深い意味を持つとの共通認識がある。1963年のワシントン大行進でも皆スーツにネクタイ

1966年のブラックパワー運動は、アフリカ系アメリカ人にとって重要な平等と解放とは、米国の文化、経済、政治の根本的改革によってのみ実現できるとし、形式だけの対等な立場だけでは不十分で、白人が黒人を搾取する暗黙の規範と慣行に挑み、黒人に適した理想と価値観によって統制された、黒人が管理する経済的に独立した組織の確立を目指した。ファッションと美学は彼等の課題の重要な一部であり、「黒人は美しい」とのスローガンに映し出された優先事項

1980年アメリカン航空で黒人女性のコーンロウヘア(編み込みにより頭皮が畑の畝の様に平行線状に見えるヘアスタイル)を禁じたことに対する訴訟で、原告女性は人種差別と性差別を訴えたが、全員に勤務時間だけ同じ様に要求しているとして却下

ディズニーの施設の従業員に要求される「ディズニールック」の厳しい規定や、リッツ・カールトンの厳格なドレスコードもすべての従業員に厳格に適用されている

公民権法により、ルールが全員に平等に適用される限り、学校や雇用者が「きちんとした」服装と身だしなみを求めることが認められている――2019年ニューヨーク市人権委員会は、人種・民族・文化的アイデンティティに強く結びついた生まれつきの髪とヘアスタイルを維持できる権利を保護すると声明を出し、加州でも新法の成立によって歴史的に人種に結び付く特徴に基づいた差別を禁じる州の公民権法が修正

人種間の平等を求める運動は、既存の秩序に従って「身なりをきちんとする作戦」派と、急進派のおしゃれとに分かれ、人種平等運動の支持者をも二分してしまった

 

第12章 腰パンと服従――人種の代表であれ! 腰パン、ギャングのシンボルカラー、フード付きのスウェットシャツ、装飾的な歯列矯正器具(グリルズ)をやめろ

2004年、全米黒人地位向上協会開催の「ブラウン事件判決」50周年記念式典でのコメディアンのブラウン・コスビーのスピーチは、「身なりをきちんとする作戦」として知られるようになったものの恥ずべき1例となる――「うちの芝生から出ていけ」的な暴言を吐き、貧しいアフリカ系アメリカ人たちの態度、立ち居振る舞い、行動、名前、服装を攻撃

低所得者層が義務を果たしていないと攻撃。外にも同様に、「一部黒人の顰蹙を買う振る舞いが、前の世代の黒人が平等を求める苦闘の中で払った犠牲を無駄にしてしまった」と批判したり、ミシガンでは警察署長が「腰パン」は市の治安紊乱行為及び公然猥褻条例に違反していると発表したのを契機に各地で「腰パン」禁止条例が出来、訴訟手続き中に腰パン姿だったことが「法廷で尻を見せたことが法廷侮辱罪にあたる」とされた

米国自由人権協会ACLUはこういったドレスコードに一貫して反対、腰パン禁止条例は憲法修正第14(黒人の市民権を認めた)で保障された自由権の侵害だと主張。特に服装を口実に罪もない人たちを攻撃し、犯罪の証拠を探す糸口とされることを恐れた

カリフォルニアではギャングの乱闘が死者を出した場合、双方のギャング全員が殺人罪で起訴される可能性があるが、誰がギャングかの判断はその服装によるとされる

フーディ(フード付きスウェット)は犯罪行為の象徴とみられ、自警団による監視の対象に

名門国人男子大学のモアハウス大のドレスコードは厳しく、違反者は会合への出席やサービスを受けられない――1960年代の反体制文化が起こした大変動以降多くの大学では伝統的なルールを廃止することで応じ、ドレスコードも新しい形式ばらない服装に道を譲ったが、モアハウスは全米で4つだけ残った男子大学であり2009年の新たなドレスコードでトランスジェンダーに厳しく対処しようとしたのが賛否両論を巻き起こす

モアハウスは、かつては高等教育では当たり前のものだった、ある種の人格教育を続けてきただけ。1965年のエール大学には20条項からなるドレスコードがあったが、今日米国の一流で排他的な高等教育機関(アイヴィーリーグなど)の大半にそのようなものはない

学生の過半が「生来その風習に慣らされている」ので不要となったものだが、中にははみ出し者もいる。公民権運動の決定的な理念は、人間は肌の色ではなく人格によって評価されるべきというものだが、人格は肌の色ほど直ぐに分かる者ではないが、服装の規範を理解しそれに従う意思があることは誰にでも伝えられる。それこそが服装とドレスコードが人種間の平等を求める苦闘の驚くほど重要な一部となってきた理由だ

2020年に起こったブラックライブズマターのデモでは、世界中が立ち上がって、行進する大衆の装いにはまとまりはないが、心の深い部分で響き合っているのがわかる。ところが数週間後になると被害者への敬意を込めてスーツにネクタイをつけてデモ行進する姿が目立ち、あるグループが人種間の平等を求めて行進を組織すると抗議者たちは「着飾った日曜の晴れ着姿」で到着した。服装が纏まっていないことは活動の幅の広さを象徴する一方、そこから中央集権的な組織化の不足が分かるため、長期的な影響力を弱める可能性があった。ソーシャルメディアを介した行動は拡散しやすいが、組織化はされず永続性に欠ける

1963年のワシントン行進に辿り着くまでには10年かかり、その組織化にはさらに半年かかったのに対し、ソーシャルメディアを使えば素早く結集されるが、権力者に同じことは伝えていない

1920世紀において、最も意味深く、影響力のあった政治運動の一部は、人種間の平等を求める苦闘によって生命を吹き込まれた。そういった運動では服装とドレスコードを工夫して利用することで、古いステータスシンボルを作り変え、服装が示す権力の印を一変させ、個性を築き、表現する新しい様式を生み出した。疎外された集団は、ファッションの刺激的な力を利用することで、社会的階級に挑み、平等と正義の新しい理想を前進させた

 

第4部       政治と個性

個性を創り出す1960年~現在――1960年代の反体制文化が主流へと移った結果、衣服を着た人の個性がより受け入れられやすくなっただけでなく、そこからその人の信頼性と誠実さが伝わると期待されたが、ドレスコードは成分不文に関係なく生き残り、服装を地位、性別、権力を示すために利用しようというお馴染みの試みと、広く浸透しつつも用心深く保護された、人の個性を表現する権利との間の衝突を表している

 

第13章     女らしい装い方

パーソナルベスト:梳かした髪、カールあるいはセットした髪、口紅、ファウンデーション、アイライナー、頬紅、ウサギの耳とサテンのタイツ、ハイヒール

やりすぎ:露出させた鎖骨、ヨガパンツ、ミニスカート、スリムジーンズ

法曹界の女性たちについて:スカート、ストッキング、メイク、襟ぐりを深くしない、女性用モーニングスーツ

20世紀を通して、性別に基づく規範が変化したことが、20世紀全体のファッションにおける重要な発展の一部、およびドレスコードの攻撃的な使い方の一部に繋がった

女性解放運動に刺激され、女性たちの服装の解放は、第2波フェミニズム運動とも相俟って、多種多様な矛盾を孕み、法律、職場の規則、社会の慣例が、そうした矛盾を成文化していく一方、ファッションの創造的なエネルギーは、服装の性別に基づく意味を動く標的にした

1967年伝説的な映画衣装デザイナーのエディス・ヘッドは、雇用市場と結婚市場はどちらも男女間の戦場だとし、そこでは適切な服装こそ女性の鎧であり、秘密兵器だとし、女性たちに「衣服の選び方――自分の姿を引き立て、配偶者の好みと調和し、自信を感じさせても上司より目立たず、自分の肌の色と髪の色に合うものを選ぶ」をアドバイス

堕落した女性から貞淑な女性を区別する昔からの規範が、今なお今日のドレスコードを決め、多くがそれを利用することで、女性の体に対する異常なまでの支配を正当化している

慎み深さは一見、性的対象やお飾りになることの逆、あるいはその対策とさえ思えるかもしれないが、実はどちらのドレスコードも、女性に男性の願望を満足させることを求めている。お飾りと慎み深さを求めるのは家父長制度という1つのコインの裏表

19世紀には脚が、21世紀に入ると鎖骨がエロチックな関心と社会的タブーの対象となる

公立高校では厳格なドレスコードが、どんどん一般的になっている

法律家は女性の服装のこととなると、最も夫寛容な部類に入る――女性弁護士たちは頑固なギルドの伝統的な服装が要求される

 

第14章 異性装と性の境界線――自分の性別のものではない衣服:プロム(卒業記念ダンスパーティ)ナイトのタキシード、男の子は青(それともピンク)、女の子はピンク(それとも青)、ミニスカート、チュチュ、男仕立てのスーツ

古代、服装とドレスコードの目的は、社会的地位を人の体に繋げることで、性別はその基本だったが、女性たちが解放された今日、新しいドレスコードは、そうした男女間の役割の変化を反映しつつ、同時にそれを妨害している

多くの学校は、男女に特定したドレスコードの実施に苦労――トランスジェンダーやノンバイナリージェンダー(男女の二者択一に収まらないジェンダー)からの抗議が増嵩

20世紀中期、多くの米国の都市が異性装を禁止したり、一般的な禁止条項を利用して公然猥褻と見做して禁じていたが、強要したのは性別に基づいた象徴というしきたり

性別に基づいた規範の「悪意のない」違反と異性装の間の境界線がどこにあるかは曖昧

 

第15章     宗教とドレスコード――猥褻として禁止される、あるいは冒瀆行為として非難されるもの:ヘッドスカーフ、ブルカ、ブルキニ、セクシーなシェイテル(ラビ教義に基づくウィッグ)、ヒップヒジャブ、カバーガール社のメイク

今日の宗教的な服装は、伝統的な宗派のドレスコードの単なる延長ではない

2004年のスカーフ事件は、フランス議会が公立学校で人目につく宗教的な服装を禁止する法律を承認したことから起こったもの――法律はイスラム教徒の少女たちの被るヘッドスカーフ(ヒジャブ)が標的

2010年にはフランスで公共の場で顔全体を覆うヴェール(ブルカ)の着用禁止令通過――共存するための基本的な必要条件に抵触、友愛の理想に反するとされた

ブルキニと呼ばれる全身を覆う水着を禁止している国もある――ブルキニは有名ブランドが追随し、ファッション性の高いものは肌の露出を抑えたい女性に人気

1907年ボストンでオーストラリアの水泳選手が体にぴったりのワンピースの水着を着用して公然猥褻罪で告発された

ビキニがはじめて公開されたのは1946年のフランス。魅力的な女性を「爆弾」と呼び、極端な衝撃のことを「アトミック」と呼び、その2つのスラングに、米国のビキニ環礁での原水爆実験に対する承認を示しつつ、小さすぎるツーピースの水着を「ビキニ」と名付けた

当初は各国で非難・禁止されたが、1953年ブリジット・バルドーの写真から徐々に拡散、ハリウッドでも’60年代初期までには道徳的な怒りは消し飛んだ

今や海辺で衣服を身に着けすぎるのは礼儀違反となり、慎み深さという宗教的な美徳が、市民の悪徳となった

宗教的なドレスコードが現代ファッションに出会うと、従来の宗教的な服装を、現代的でファッショナブルな感覚に合ったものにして販売しようとする人たちが大勢いる

 

第5部       仕立て直された期待

第16章     ブランドとマーク

職場に相応しいもの:赤いソールのルブタン、21クラブのネクタイ、紺のブレザー、プレッピールック、赤いスニーカー、パタゴニアのベスト、グレーまたは黒のTシャツ

職場に相応しくないもの:デザイナーズブランドのドレス、ハイヒール、スーツ

今日のドレスコードは、古い伝統の要素を含んでいる――貴族の特権を伝える豪華さは特に婦人服に残り上流階級の地位の印としているし、男性による華麗な衣装の放棄の理念は簡素な仕立服に反映されている。贅沢の放棄という理念は地味な服装という美学に受け継がれ、流行に対する無頓着を装いつつもそれを道徳的に重要なことと見做している

クリスチャン・ルブタンの赤いソール――2007年に商標登録。ラルフ・ローレンのマークやルイ・ヴィトンの様式化したイニシャル、シャネルの重ねたCの文字、ティファニーのパッケージの独自のブルーなどと同様、排他性とステータスのシンボルとして認められたのは、ブランドが陳列する衣服の数を制限することを法律が許しているから

大半の贅沢品は、品質よりも希少性ゆえに求められ、価格で競い合うのではなく排他性で競い合う――ヴェブレン財/効果(顕示効果)といって、価格が高いほど需要が増加する現象

レストラン自体を洗練された場所と見做す公式のドレスコードは、客を区別するし、伝統的な裁断による細部にわたる入念な作りは、それだけでステータスとなる

最初の濃紺のブレザーは18世紀の英国海軍士官の軍服。幅広の襟のボタンをかければ冷たい海風を防ぐ。色も地味で控え目。その後ブレザーの着用が上流階級に制限されステータスシンボルとなり、ファッションとして受け継がれ、非番の時ジャケットで出かけることが士官の間で流行すると民間人も着るようになり、さまざまなバリエーションで拡散

白人のアングロサクソン系プロテスタントの理想の姿であるプレッピーのハンドブックには、事細かにやっていいこと、いけないことの一覧から、必ず守るべきこと(腕時計のバンドはベルトと靴に合わせること)と非常に具体的な違反例(調和しない鮮やかな色を合わせて着ること)を併せて忠告している

スプレッツァトゥーラとは、「技巧を隠して、自分がしていることをあたかも労せずに無意識にできたかのように見せる、ある種の無造作さ」という定義から、「努力の跡を感じさせない、無頓着の良さ」とされ、イタリア人の粋なスタイルの象徴で、ネクタイなども無造作に結んで小剣が長すぎて覗いたとしても結び直さない。さりげなく見せるスタイルという昔からある技だが、ステータスシンボルでもあり、決まりきった服装を個性を表現できる形に変える方法でもある。それが意味するのは、慎重さと気楽さの絶妙のバランス。古いドレスコードに対する敬意と不敬である。ルールはあっても、正しいやり方で破られる限り、ルールは破られるために存在し、それが示すのは、無知や反抗的な態度の対極にある熟練と何気ない無関心

この対極にあるのがトランプ大統領の不自然でぎごちない服装――長くし過ぎたネクタイの大剣をウェストの下までぶら下げるため小剣が大剣裏のループに届かず両者がばらばらに前に出てしまうのを防ぐため大剣の裏で小剣をスコッチテープで止めている。重要な違いは、イタリア人の無頓着な態度とは異なり、トランプのネクタイは頓着し過ぎたせいで予想外の礼儀作法違反に繋がっている。見栄をよくしようとする必死の努力が失敗に終わったもので、良識のなさを感じさせるから恰好が悪く、ごまかしでもある

上品さのルールを逸脱(反俗物主義)するのがある種の能力の印ともなった――大学教授と車の関係に当てはまる。知的な生活には虚栄心のために割く時間などないとしながら、フォルクスワーゲンではなく、不格好だが高価なサーブやボルボを選ぶ傾向がある

反俗物主義を「赤いスニーカー効果」と呼ぶ――赤いスニーカーを灰辺り、むさくるしい髭にTシャツを着た大学教授は、きちんとしたスーツにネクタイで髭を剃った教授より地位が高いと学生から思われることで、優位性を示すためにとてもおかしな格好をすることだが、ファッションに対する無頓着さが高い地位を意味するのは、それが普段から外見など気にしないと本気で考えていることを示し、他者の意見に無頓着であることを示すからで、従来の服装の象徴的意味を覆すことで自分は高い地位にあるのだと伝えている

ミッドタウンに突然ビジネスマンのユニフォームとして現れたのが、白か青のオックスフォード地のシャツにカーキ色か紺のズボン、高価なローファー、グレーか紺または黒のパタゴニアのフリースベスト姿で、古いドレスコードの崩壊によって生じた穴を急いで埋めた、不文律のドレスコードを映し出した。解釈し直されたビジネススーツといえる

シリコンバレーでは、「動きの速いテクノロジーの世界で大切なのは、自分がファッションの様な価値のないものに貴重な時間を無駄にしていないことを示すこと」が重要で、ヤフーのCEOマリッサ・メイヤーがファッショナブルなアンサンブルで登場した時は、「みんなが仕事をしている時に寛いでいた」と批判が集中。フーディのスウェットかTシャツにビーチサンダルのザッカーバーグも、面白みのないワードローブに満足していたのではなく、服装がモラルとして重視されることに我慢できなかっただけ。生活をすっきりさせることで、判断すべきことを極力減らし、自らのコミュニティに専念しようとした――ファッションへの無関心が人気トレンドになっている

そのザッカーバーグも、2018年の議会の公聴会で自社の商法を擁護した時にはスーツにネクタイ姿で登場

赤いスニーカー効果が役立つのは、人種や性別といった地位を示す明らかな印が別にあり、それを認めてもらえる人たちだけで、特に女性や有色人種の場合上手くできることは稀

平等主義を声高に求め、地位という飾りに合理的な無関心を示したところで、今日の服装は社会階層における地位の印を、ヨーロッパの旧体制のそれとほとんど変わらないほど複雑に階層化したまま残している。ブランド名と商標は、目立つ服装によって表すステータスシンボルをそのまま本質まで純化したもの。一方で反俗物主義は控え目さというエリート主義を極論にまで高め、禁欲主義の非常に様式化された形を市民道徳の印にしている

今日のドレスコードは、過去の奢侈禁止令と社交辞令を明確に定めた階級の序列を放棄してはいない。むしろそれを純化しこれまで以上に巧妙なものにしてきた

 

第17章     偽物と文化の盗用

カルチャー・ツーリズムの衣装

ブリーチしたブロンドの髪、ドレッドヘア、フープピアス、チャイナドレス、ピンクのポロシャツ、アバコスト(ザイールでモブツが強要した国民服)、ヨーロッパの高級オーダーメイド

中世後期以来、ファッションは過去の象徴を繰り返し利用し、新しい社会運動、政策、自己表現の形として役立ててきたが、20世紀に入りファッションを作る仕組みが急速に進むと、古い服装の象徴的意味の創造的再利用と破壊も急速に進み、あらゆる階層にとってチャンスでもあり脅威でもあった。昔からの世襲特権を混乱させるが、結局は新しい形のエリート主義を生むだけ

今日のドレスコードの多くは、服装の要素を流用(場合によっては盗用)することと、その本来の意味を守ろうとすることのせめぎ合い

ストレートの髪形をドレスコードとするフーターズが、ブロンドの髪をした黒人ウェイトレスを解雇。ブロンドは長い間米国人の性的な理想の中で独自の地位を占めてきたが、大半は作られたものと考えると、人種差別であることは明らか

タキシードもチャイナドレスも文化のハイブリッドの産物――タキシードは伝統的な正式のディナースーツの要素と、スポーティでカジュアルなショートジャケットを組み合わせたものに、インド駐留の英国軍人がつけた南アジアの装身具だったカマーバンドを取り込んだものであり、チーパオは西洋のドレスと伝統的な満洲服の要素を組み合わせたもの

文化の盗用には2種類――1つは上流階級と支配する個の集団が、社会から取り残された者たちのスタイルを流行のトレンドにするものであり、もう1つは取り残された集団による仕返しで、上流階級の慣習を作り変え、その排他性を覆し、新たな反逆としてその象徴性を活用する。ラルフ・ローレンの才能は、プレッピールックを模倣しながらも真にアメリカ的な庶民の野心を名門階級に向けさせ、それを彼自身の美的感覚に加えたこと

ヒップホップは常に金銭的な野心をはっきりと表に出し、高級ブランドを取り入れる時には皮肉と批判という強い要素を含んでいることが多い

「おしゃれで優雅な紳士協会」(略称サップ)は、厳しい基準に沿った服装をすることに身を捧げた非凡な紳士たちの同盟で、サプールたちは厳しいドレスコード(サポロジーコード)に従う。この21世紀の伊達男たちの出身地はコンゴの首都プラザヴィルとコンゴ民主共和国(旧ザイール)の首都キンシャサ周辺で、ヨーロッパの伝統を取り入れたが、入植者たちの模倣ではなく、現状に対する先住民の対応策だった

服装による象徴は、社会的階級、地位、所属を示すだけに留まらず、物語、伝説、人格、生き方、理想といったものまで伝える。ファッションは、伝統的な服装と、それが持つ比較的安定し、簡単に読み取れる象徴的意味を取り込み、再利用し、組み合わせ、強烈な刺激を与えながらも、まだ漠然とした象徴をつくり出す

フープピアスは黒人やラテンアメリカ系女性の民族の誇りの象徴だったが白人女性の最先端のファッションにされ、ドレッドヘアは曖昧なアフリカ中心主義として大衆化された

ドレスコードの歴史は、古い服装の創造的な再利用の物語

ファッションは、信頼性の対極にあるものと呼ばれることが多い。一般的に人が信頼性に対する不安から、ドレスコードを義務付けたり、それに反抗したりするとき、彼らが選んだ服は、信頼できないとして拒絶した衣服に劣らず、不自然な所がある

 

終章 ドレスコードを解読する

ファッションは体で感じられる体験。服装が人の動きと存在にどう影響を与えるかは、服装が伝えるものと同じくらい重要。ファッションによる体験は、人の世界観を映し出し、それを生み出す

多くのドレスコードは、集団的表現及び集団的自己成型の手段として服装を利用しようとする単なる集団的方法

 

おわりに 裸にされたドレスコード

人は衣服を放棄しても、ドレスコードが規定する力から逃れることはできない

 

 

 

紀伊国屋書店 ホームページ

概容

宮廷と修道院、革命と公民権運動、娼婦と淑女、ギャングとセレブ。「階級・性差・貧富」を表し、固定するものとしてドレスコードは機能していた。そしてフランス革命後の「国家と個人の誕生」とともに、服装は自由と平等を実現し、一人ひとりの個性を表し、格差を破壊するものになるはずだった。それにもかかわらず、アメリカの高校は現在も服装規定を増やし、レストランは髪型を理由に従業員を解雇する。「流行なんてどうでもいい」とTシャツを好むIT起業家たちは「ファッションに無関心という最新の流行」に夢中になっている。ドレスコードに隠されたメッセージは形を変え、今なお生きているのだ。スタンフォード・ロースクール教授が、階級、性差を表す「暗号」だった歴史的なドレスコードを読み解くとともに、人種、ジェンダーの平等をめぐる戦いの粛で、服装がどのような役割を果たしてきたのかを考察する。過去と現在を探り、未来を捉える意欲作。

 

 

Rakuten Books

内容紹介

14世紀の宮廷、フランス革命、公民権運動、ジェンダー、人種、宗教問題まで、

姿を変えながら人びとに影響を与えてきた「ドレスコード」とは何か?

 

法律家にして文化評論家、スタンフォード・ロースクール教授の意欲作

 

ジャンヌ・ダルクは異性装でパワーを手にするもタブーに倒され、おしゃれをした黒人は「身のほど知らず」だとリンチにあい、現代の女性はメイクをしてもしなくても批判される。イタリア人の無造作なネクタイは絶賛され、スコッチテープでネクタイを固定したトランプは馬鹿にされる。服装は女性の趣味ではない。人類がパワーゲームのために用いてきた暗号であり、今でも社会と個人に密接に関わる重要な要素だ。

 

私たちがドレスコードに縛られるのはなぜだろう? 服装が取り決め、ルールや法、裁判所命令の対象になるほど絶対的になるのはどんなときか? ドレスコードが、平等や個人の自由に関する社会規範の変化と衝突したら何が起きるのか? ドレスコードが役立つのはどんなときで、必要以上に抑圧的になったり、不当なものになったりするのはどんなときか? 

 

本書は、歴史を通したファッションの法則を探り、服装――自己表現の最も私的かつ公的な媒体――が持つ個人的、社会的、政治的な意味を明らかにしていく。階級、性差を表す「暗号」だった歴史的なドレスコードを読み解くとともに、人種、ジェンダーの平等をめぐる戦いの中で、服装がどのような役割を果たしてきたのかを考察する。そしてこのテレワークの時代、消えない分断の世界で、「これからのドレスコード」を問う。

 

 

 

 

Wikipedia

ドレスコードとは?意味・種類~大人の男性・女性なら知っておきたいTPO別の服装

高級レストランでの食事のときや、パーティに招待されたときなどに見聞きする「ドレスコード」。日常生活ではあまり身近ではないものの、少しかしこまったシチュエーションで設定されたドレスコードに戸惑った経験のある人もいるのでは?

ここではドレスコードの意味や、「フォーマル」や「セミフォーマル」、「インフォーマル」、「スマートカジュアル」などのドレスコードの種類を紹介。さらに、それぞれでふさわしい服装の選び方について、男性・女性それぞれ解説します。結婚式やパーティをはじめ、ビジネスシーンでも役立つ情報満載です。

目次

1.    ドレスコード(dress code)とは

2.    ドレスコードの種類と着用するシーン

3.    セミフォーマル(semi-formal/準礼装)の服装例

4.    インフォーマル(informal/略礼装)の服装例

5.    スマートエレガンス(smart elegance)の服装例

6.    カジュアルエレガンス(casual elegance)の服装例

7.    ビジネスアタイア(business attire)の服装例

8.    スマートカジュアル(smart casual)の服装例

9.    着用シーン別ドレスコード:結婚式のお呼ばれ

10. 着用シーン別ドレスコード:レストラン

 

l  ドレスコード(dress code)とは

ドレスコード(dress code/服装規定)とは、時間帯や場所、場面などにふさわしいとされる服装のこと。ドレスコードと並んで〝TPOに応じて~〟などの表現を見聞きしたことがある人も多いかもしれませんが、このTtime(時間帯)、P=place(場所)、O=occasion(場合)に応じた服装をすることが、ドレスコードに則った装いといっても過言ではありません。

たとえば、同じホテルやレストラン、料亭でも、単に食事を楽しむ場合と、結婚式・披露宴に列席する場合とでは、ドレスコードも異なります。さらに厳密に言えば、その時間帯が昼か夜かでもドレスコードは異なります。

なぜドレスコードは必要?

ホテルやレストラン、バー、職場などの場所、結婚式やパーティといった行事・催しなど、フォーマルな意味合いが強い場所や行事に設けられていることが多いドレスコード。そこに居る参加者の服装がバラバラだと、その場の雰囲気が乱れてしまうそんな事態を避けるための配慮・マナーとしてドレスコードは設けられるようになったと言われています。TPOにふさわしい服装は、大人の一般常識のようなもの。その場の雰囲気を悪くしないためにもドレスコードは理解しておきましょう。

l  ドレスコードの種類と着用するシーン

ドレスコードは、冠婚葬祭やパーティなどのフォーマルなものを含め、全部で7種類あります。同じ場所で開催されるパーティでも時間帯によってドレスコードは異なります。ここでは、一番格式の高い「フォーマル」から順に「スマートカジュアル」まで、ドレスコードの種類と意味、代表的な服装やふさわしい場面について解説します。ドレスコードの種類とふさわしいシーンを知っておけば、オシャレして出かけたつもりがマナー違反だったというようなことも防ぐことができます。

本記事で紹介している「昼」は18時まで、「夜」は18時以降を指します。

l  フォーマル(formal/正礼装・正装)

フォーマルはもっとも高い格式のドレスコードを指します。日本語では「正礼装」「正装」と言います。結婚式なら、新郎新婦とその親、媒酌人の服装がフォーマルで、ゲストの場合は主催者側よりも格式をひとつ下げるのがマナーです。

<着用シーン>
結婚式(新郎新婦、親、媒酌人)、国家式典

<服装例> 

(男性)

・結婚式の新郎が着る「五つ紋付き羽織袴」「モーニング<昼>」「テールコート/燕尾服<夜>」 昼:18時まで、夜:18時以降

・結婚式での両家の父、媒酌人が着る「紋付き羽織袴」

(女性)

・花嫁が着る「ウエディングドレス」「白無垢」「色打掛」「黒引き振袖」

・「アフタヌーンドレス<昼>」「イブニングドレス<夜>」

・結婚式の新郎新婦の母、媒酌人が着る「黒留袖」

・未婚女性が着る「振袖」、既婚女性が着る「留袖」

l  セミフォーマル(semi-formal/準礼装)

結婚式・披露宴に招待されたゲストの服装で、もっともかしこまったスタイルが「セミフォーマル(準礼装)」です。昼と夜で着用する服装が異なります。格式のある会場などにふさわしい服装ですが、一般ゲストはあまり着用する機会はないかもしれません。

<着用シーン>

結婚式・披露宴(ゲスト)

<服装例> 

(男性)ディレクターズスーツ<昼>、タキシード<夜>

(女性)セミアフタヌーンドレス<昼>、セミイブニングドレス<夜>

l  インフォーマル(informal/略礼装)

もっともポピュラーな礼装が、「インフォーマル(略礼装)」です。昼・夜通して着用することができ、結婚式・披露宴に一般ゲストとして列席する際はインフォーマルの装いをしましょう。なお、招待状に記載されることが多い「平服」はインフォーマルに該当します。

<着用シーン>

結婚式・披露宴(ゲスト)

<服装例>

(男性)ブラックスーツ、ダークスーツ

(女性)ドレッシーなワンピースやスーツ

l  スマートエレガンス(smart elegance

フォーマル・セミフォーマル・インフォーマルまでが「礼装」のカテゴリーに入りますが、「スマートエレガンス」は、フォーマルに近いドレスコードを意味します。そのため厳密なスタイルの定義はありませんが、パーティなどでドレスアップした装いを意識する際のドレスコードです。

<着用シーン>

結婚式二次会、お披露目パーティなど(ゲスト)

<服装例>

(男性)ダークスーツ

(女性)ドレッシーで華やかなワンピース、上品なスーツなど

l  カジュアルエレガンス(casual elegance

「カジュアルエレガンス」はスマートエレガンスよりも少しだけカジュアルなドレスコード。ただし、カジュアルと言われていても、本当にカジュアルなアイテム(デニムやスニーカーなど)のコーディネートという意味ではないため、迷ったらスマートエレガンスを意識すれば失敗することはありません。

<着用シーン>

結婚式二次会、お披露目パーティなど(ゲスト)

<服装例>

(男性)ダークスーツ

(女性)華やかなワンピース、上品なブラウスなどのトップスとスカートの組み合わせ

l  ビジネスアタイア(business attire

企業主催のパーティやレセプションなどでのドレスコードを指す「ビジネスアタイア」。仕事色の強いパーティでの服装と理解しましょう。そのためきちんとしたスーツスタイルが基本ですが、男性も女性も華やかさを意識するのが大切です。

<着用シーン>

企業主催のレセプション、株主総会など

<服装例>

(男性)上下揃いのスーツ

(女性)ドレッシーな雰囲気のスーツ

l  スマートカジュアル(smart casual

ドレスコードのはっきりした定義がないスマートカジュアルは、フォーマルとデイリーカジュアルの中間のようなスタイル、と理解しましょう。堅苦しくは見えないけれど、きちんとした印象に見える服装で、パーティにはそぐわないけれど、レストランでの食事なら対応できるスタイルです。

<着用シーン>

レストランでの食事、ホテルや結婚式場のブライダルフェア

<服装例>

(男性)ジャケット+パンツ

(女性)ワンピース、トップス+スカート

 

セミアフタヌーンドレスとは、以下のようなドレスを指します。

・袖あり、肩や胸元・背中などの露出が少ない

・スカート丈はひざ下~ふくらはぎ丈

・光沢を抑えた生地で上品かつ控えめデザイン

なお、靴はシルクなどの布製のパンプスが基本です。

女性のセミフォーマルの服装例<夜>

夜なら「セミイブニングドレス」や「カクテルドレス」を選びましょう。

セミイブニングドレスとは、以下のドレスを指します。

・袖なし、胸元や肩の露出が多い

・スカート丈はひざ下~ふくらはぎ丈

・シルクなど光沢のある素材を使い、華やかな印象

カクテルドレスとは、以下のドレスを指します。

・ノースリーブ

・タイトなシルエット

・スカート丈はひざ丈が一般的。

・シルクなど光沢のある素材を使い、華やかな印象

なお、靴はシルクなどの布製のパンプスが基本です。

男性のセミフォーマルの服装例<昼>

昼なら、「ディレクターズスーツ」を着用します。

ディレクターズスーツとは、

・黒やダークグレーなどのモーニング用のジャケット、グレーのベスト

・白シャツとシルバーグレーのネクタイ

・黒とグレーのストライプのズボンをサスペンダーでつるしたスタイル

・靴は黒の革靴が基本

男性のセミフォーマルの服装例<夜>

夜なら、男性は「タキシード」を着用します。

タキシードとは、以下でのコーディネートを指します。

・黒のひとつボタンのジャケット

・白シャツ、黒の蝶ネクタイ

・側章1本つきのズボン、カマーバンド

インフォーマル(informal/略礼装)の服装例

女性のインフォーマルの服装例

女性の服装は、全体的に上品かつ清楚な雰囲気で、着用シーンに合わせてドレッシーなイメージが特徴。胸元や背中、肩の露出を抑えたワンピースなどがおすすめです。靴はシルクなどの布製のパンプスが基本です。

男性のインフォーマルの服装例

男性用のインフォーマルな服装もっともポピュラーなのが、ジャケット・パンツが黒のブラックスーツや、ダークグレーやネイビーなどのダークカラーのスーツです。白いシャツにシルバーグレーや白のネクタイ、ポケットチーフなどで華やかさを演出しましょう。靴は黒の革靴が基本です。

スマートエレガンス(smart elegance)の服装例

フォーマルに近いドレスコードを意味するスマートエレガンス。結婚式の二次会や、リゾート挙式後のお披露目パーティ、会費制のレストランウエディングなど、格式ばっていないパーティにおすすめのスタイルです。

女性のスマートエレガンスの服装例

女性の服装は、上品なテイストのワンピースで、露出が気になる時はショールやボレロを羽織るのもおすすめです。フォーマルスタイルではないものの、全身黒のコーディネートや花嫁のウエディングドレスとかぶる白はNGです。靴はシルクなどの布製のパンプスがおすすめ。

男性のスマートエレガンスの服装例

男性のスマートエレガンスは、インフォーマルでも着用できるダークスーツが基本です。ダークグレーやネイビーなどのセットアップに、白のワイシャツ、ネクタイはパープルやイエローなど光沢があり華やかな色合いでもOK。靴は革靴が基本です。

女性のスマートカジュアル服特集

カジュアルエレガンス(casual elegance)の服装例

明確なドレスコードの線引きがないカジュアルエレガンス。スマートエレガンスよるも少しだけカジュアルなイメージですが、きちんとしたスタイルの中に遊び心をプラスするとオシャレにまとめられます。結婚式の二次会やお披露目パーティなど、友人ゲストがメインのパーティにおすすめのスタイル。

女性のカジュアルエレガンスの服装例

肩回りや背中、腕の露出が少ないパンツドレスがおすすめ。上質な素材や体のラインを強調しないシルエットのデザインを選ぶと品のあるコーディネートがかないます。靴はレザーや布製のパンプスが基本です。

男性のカジュアルエレガンスの服装例

ダークグレーやネイビーなどのスーツに、淡いピンクやブルーのシャツ、色のネクタイや蝶ネクタイなど、キチンとしつつ華やかなコーディネートを心掛けて。靴は革靴が基本です。

ビジネスアタイア(business attire)の服装例

ビジネスアタイアは、仕事色の強いパーティでの服装のこと。企業主催のレセプションなどで着ることが中心となるので、きちんとしたスーツスタイル+華やかさを意識しましょう。

女性のビジネスアタイアの服装例

ビジネススーツ、ビジネスウエアを意味するドレスコードのビジネスアタイアですが、パーティという場を踏まえて、スーツでもドレッシーなテイストのものを選びましょう。靴はレザーなどのパンプスが基本です。

男性のビジネスアタイアの服装例

仕事で着ているビジネススーツ、白いワイシャツ、華やかな印象のネクタイやポケットチーフでドレッシーな雰囲気を演出しましょう。靴は革靴が基本です。

スマートカジュアル(smart casual)の服装例

はっきりした定義がないものの、レストランやホテルのドレスコードとして明記されることが多い「スマートカジュアル」。同じホテルやレストランでも、結婚式・披露宴にはふさわしくありませんが、食事に出かけるときや、カップルでブライダルフェアなどに参加する際におすすめのスタイルです。

スマートカジュアルでNGなアイテムとは?

カジュアルだからといって、露出の多いタンクトップやキャミソール、ダメージデニム、短パン、ビーチサンダル、スニーカーなどはNGです。

女性のスマートカジュアルの服装例

ワンピースでもスカートスタイルでも、パンツスタイルでも、きちんとしたアイテムを少しだけカジュアルダウンさせたコーディネートがポイント。ノースリーブのワンピースやらジャケットやカーディガンを羽織ったり、フェミニンなブラウスにタイトスカートなどもおすすめです。靴はヒール有りでも無しでもOK

男性のスマートカジュアルの服装例

男性のスマートカジュアルは、ブレザーやテーラードジャケット+パンツスタイルが基本です。シャツは襟が付いていればワイシャツである必要はありません。ストライプシャツやボタンダウンシャツ、ポロシャツ、ノーネクタイでOK。パンツはウールやコットンのスラックスやチノパン、靴はローファーやスリッポンがおすすめです。Tシャツやデニム、スニーカーについては施設によって異なるため確認を。

着用シーン別ドレスコード:結婚式のお呼ばれ

ここからは、ドレスコードが必要になる着用シーンごとに、迷いやすいポイントをピックアップし、解説します。代表的なのが結婚式のお呼ばれです。

結婚式にお呼ばれしたときのNGなドレスコード

結婚式では花嫁の色である白や、喪の色となる全身黒のコーディネートは避けましょう。また、Tシャツやタンクトップ、ニット、デニム、スニーカー、つま先のないサンダル、ブーツ、殺生をイメージさせる毛皮やアニマルプリントもNGとされています。

ただし、テーマ性をもったウエディングにおいて、ドレスコードが「白」「デニム」「スニーカー」などに指定されていたら、それぞれを使ったコーディネートでOK。服装を考える際は会場の雰囲気などを踏まえると、より良いでしょう。

詳細は以下で事前に確認しておきましょう。

結婚式の服装お呼ばれマナー【女性ゲスト編】年代別おすすめワンピース&ドレスも紹介

【男性編】結婚式・二次会のお呼ばれ服装マナーは?スーツ・シャツ・ネクタイの選び方

結婚式の招待状に書いてある「平服」とは?

平服とはインフォーマル(略礼装)のこと。

結婚式の招待状に「平服」と書かれていても、普段着でOKという意味ではありません。平服とは正式な礼服でなくてもいい、ということなので「インフォーマル(略礼装)」を選択します。男性ならブラックスーツやダークスーツ、女性ならドレッシーなワンピースやスーツが該当します。

平服でと招待された時の服装は?知っておきたい女性・男性のシーン別の装いとマナー

着用シーン別ドレスコード:レストラン

高級レストラン・ホテルディナーのドレスコードは?

高級レストランやホテルディナー時のドレスコードは「スマートエレガンス」「カジュアルエレガンス」が無難です。女性ならワンピースやスーツスタイル、男性もスーツやジャケット+パンツ、ネクタイがおすすめ。

なお、同じ高級レストランやホテルでも、ランチタイムなら「スマートカジュアル」もOK。男性はノーネクタイでも問題ありませんが、Tシャツやスニーカーは施設に確認するといいでしょう。

海外リゾートのレストランでも、Tシャツと短パン&ビーチサンダルはNG

ハワイなどのリゾートへ出かけると、普段はTシャツと短パン、ビーチサンダルで過ごすことが多いかもしれません。ただし、海外のレストランやホテルなどにおいては日本よりも格式を重んじる傾向にあります。たとえば、街中のファストフード・フードコートや、ビーチやプールに直結したレストランなら、Tシャツ&短パンでもOK。一方で、ホテル内でも街中でもレストランの場合は「スマートカジュアル」に沿った服装がマナーになっています。

男性ならジャケットにTシャツやポロシャツ、ノーネクタイ、チノパン、ローファーやスリッポンなど。アロハシャツでもOKです。女性ならワンピースにカーディガン、サンダルがおすすめです。

Tシャツ・短パン・ビーチサンダルは日本国内のレストランやダイニングバーなどでもNGであることが多いので注意しましょう。

 

 

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