故事成語で読み解く中国経済  李智雄  2017.3.12.

2017.3.12.  故事成語で読み解く中国経済

著者 李智雄(リ・チウン) 韓国生まれ。延世大中退。東大経済卒。ボストン大大学院修士課程修了。03年韓国陸軍士官学校専任講師。06年ゴールドマン・ザックス東京・ソウルで日本経済、韓国経済担当エコノミスト兼韓国ストラテジスト。11年度東大大学院総合文化研究科客員准教授。13年から新潟国際大講師。14年から三菱モルガンスタンレー証券シニアエコノミスト

発行日           2016.11.28. 第1版第1刷発行
発行所           日経BPマーケティング

統計を多面的に分析する姿勢
中国経済は破綻する? それとも米国超え?
気鋭のエコノミストが挑んだ世界No.2経済の将来

21世紀の主役、中国経済を知るための必読書。一筋縄ではいかない中国の統計についても詳しく解説」 吉川洋(立正大学教授)


はじめに ~ 中国経済は「奇貨」でありつづけるか
改革開放以降の中国経済は、まさに世界の「奇貨」だった。鄧小平以降の共産党政権の巧みな舵取りもあり、2ケタ成長を続けた。08年のリーマン・ショック後の世界経済危機では、中国の思い切った財政支出が救世主となったと評価。10年代に入ると、一気に日本を抜き、アメリカに次ぐGDP世界2位に。その中国経済がここにきて急速に鈍化
今後、中国は「奇貨」であり続けるか、それともごく普通の経済大国になってしまうのか。筆者は、まだ近代市場経済の歴史は浅く、データも決して充実しているとは言い難いが、中国経済を「奇貨」として投資(研究)しておくべき価値はあると考える
本書の特色は、豊富なデータに基づき「需要重視」で経済成長論を論じていること。日本の辿った道と同様、中国も需要の飽和から、高度成長の終焉を迎えている。問題はその先
需要の飽和は、消費だけでなく、企業側にも構造調整を促す。倒産も増え、国営企業といえ、淘汰・整理されていく
金融面でも、高度成長を支えてきた金融の膨張が一気に逆回転し始める恐れ、いわゆる「シャドー・バンキング」の膨張問題で、不良債権の大幅な増大にあって、中国経済がそのような急激な下方リスクに耐えられるのか
1部では、需要飽和による経済成長の鈍化という現状をデータを中心に確認した上で、減速がもたらしている中国経済のシャドー・バンキングや不良債権の問題を論じる
16年の7%弱の成長率~20年頃には4%前後まで鈍化し、ハードランディングなど中国経済が大きく崩壊する可能性は少ない、ということを論じている
中国のマクロ政策運営を見れば、多少の振れはあっても、過剰生産に陥った国有企業の改革、シャドー・バンキングの債務借り換え、不良債権の処理など、必要とされる政策が着実にこなされている
2部では、中国経済を分析するにあたっての基本的な知識と、経済指標を簡潔に説明
世界に「保護主義」が蔓延する中、世界の貿易は低下、減速する中国はますます難しい舵取りを強いられるだろう。武器の輸出入ばかりが増加していることも強い懸念材料の1




第1部        需要から見た成長率鈍化
第1章        先ず隗より始めよ――分析の物差し
第2章        五十歩百歩――投資から消費主導型へ
第3章        衣食足りて栄辱を知る――消費の変化
第4章        臥薪嘗胆――倒産と不良債権
第5章        換骨奪胎――ロボットと高品質化
第6章        捲土重来――国有企業改革
第7章        耳を掩いて鐘を盗む――シャドーバンキング
第8章        青は藍より出でて藍より青し――技術進歩
第9章        羊を亡いて牢を補う――人口減少
第10章     食指が動く――世界との関わり
第11章     画竜点睛を欠く――成長の源泉



第2部        どの経済指標を見るか
第12章     三人成虎――「重要」な指標の基準
第13章     人を射んと欲すれば、まず馬を射よ――政治
第14章     苦肉の計――日本語で追う中国
第15章     磨斧作針(まふさくしん)――経済指標の調整
第16章     蛍雪の功――データの入手先
第17章     騏驥の跼躅(きょくちょく)は駑()馬の安歩に如かず――指標の解説




故事成語で読み解く中国経済 李智雄著 統計を多面的に分析する姿勢
2017/2/5 2:30 日本経済新聞 朝刊
 中国の経済統計の信ぴょう性を疑う声がやまない。とくに最近、景気低迷が深刻な地方で税収の水増しが明らかになったことで、疑いの目はますます強まった。だが、これほど巨大になった経済を「分からない」ですますことはできない。本書は内外の膨大なデータをもとに、中国の現状と未来を読み解く手がかりを与えてくれる好著だ。
 力点の一つがステレオタイプな見方の排除だ。例えば消費の伸びが鈍ると、とかく「消費は力不足」といった解説がなされる。これに対し本書は中国は消費も投資も減速しているが、消費の減速が緩やかなために消費主導型の経済に移行するという見方を提示する。統計が整備途上の中国だからこそ、数字を多面的にみる姿勢が必要だ。
 韓国出身の著者の原点は「日本は豊かなのに韓国はなぜ貧しいのか」という少年時代の思いにある。追究するのは「何が経済成長を生むのか」というテーマであり、その目には中国の中間層の拡大は確実と映る。だから日本企業はチャイナ・リスクという「流言」にまどわされず、構造変化が生む商機に積極的に関わるべきだと訴える。
 統計全般の紹介やチェック方法の解説も充実しており、中国経済の入門書にもなる。各章に故事成語を掲げ、理解を助ける工夫をしている。(日経BP社・2800円)


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