中国の歴史認識はどう作られたのか  Zheng Wang汪錚  2015.2.2.

2015.2.2. 中国の歴史認識はどう作られたのか
Never Forget National Humiliation
Historical Memory in Chinese Politics and Foreign Relations  2012

著者 ワン・ジョンZheng Wang汪錚 中国雲南省昆明出身。アメリカのシートンホール大学ジョン・C・ホワイトヘッド外交国際関係大学院准教授。北京大大学院修了後、アメリカのジョージ・メイソン大学にて博士号を取得。専門は国際関係論。大学で教鞭を取ると同時に、全米米中関係委員会委員などとして米中関係、東アジアの国際関係などを幅広く研究し、論じる。90年代には中国の政府系シンクタンクで国際関係論、平和論、安全保障問題などを研究したこともある
本書で、国際関係学会ISAのイェール・ファーガソン賞受賞

訳者 伊藤真 時事問題、海外事情、現代史などのノンフィクションを中心に翻訳に従事。

発行日           2014.5.29. 第1刷発行                2014.9.26. 第2刷発行
発行所           東洋経済新報社

金井君が先輩から勧められた本を推薦してきてくれたもの


なぜ中国の若者にこれほどまで愛国主義が根付いているのか?
なぜ天安門事件以降、中国共産党政権は国民の支持を回復したのか?
なぜ中国はアメリカと日本に対して、これまでより強気の主張をするようになったのか?
本書では、天安門事件と冷戦終結を経た今日の中国の政治的変遷、大衆心理、外交政策を説明する上で、「歴史的記憶」が現代中国の国民的アイデンティティの形成にどのような役割を果たしているか。また政治的にどのように利用されてきたのかを解き明かす。中国の公文書、スピーチ、インタビュー、歴史教科書、歌などを幅広い資料から分析した気鋭の研究

訳者はしがき
嫌中憎韓の動きが加速しているが、様々な原因となった出来事の底流に常に流れている要素の1つが歴史認識の問題であることは間違いない
本書は、19世紀前半からの約100年――中国にとっての「国恥の一世紀」――に対する中国の人々の捉え方を浮き彫りにし、分析したもの。コロンビア大学出版会の「世界の中の現代アジア――Contemporary Asia in the World」というシリーズ中の1
中国の人々によって記憶された歴史が近年の中国の対外関係にどのように影響しているか
記憶され、語り継がれてきた「歴史」は、必ずしも「史実」とは限らず、むしろ政治的あるいは文化的に作り上げられた「物語」という側面が強い

日本語版へのまえがきー親愛なる日本の読者の皆さんへ
本書では、中国人が自分たちの国民的体験をどのように記憶しているか、そしてその歴史認識が如何に中国人の思考や振る舞いを左右しているかを述べている
歴史認識こそは、中国の国民的アイデンティティを構成する最大の「原材料」であり、中国人の内面の世界という謎に迫るうえで最適な鍵となる
歴史的な問題に対して両国の人たちが理解を深める一助になればというのが本書の狙い
1.   本書のテーマは、歴史そのものではなく、歴史的記憶 ⇒ エリート層がいかに「歴史」を作り上げてきたかを論じる
2.   中国のナショナリズムは複雑な社会的現象で、単に教育や政府による大衆操作などで簡単に説明しきれない ⇒ 単純化や一般化は危険であり、中国では歴史的記憶が国民の「深層文化」のなかで確固とした社会規範の1つとなって、人々の思考や行動に根本的な影響を与えている
3.   本書が契機となって、歴史教育と歴史の語り方の重要性に対する関心が高まればと思う


原著まえがき
中国が西欧にとっていつまでも謎の存在であり続けるのは、中国人の内面の世界に対する理解の欠如が原因
中国を巡る議論の肝心要の問題は、中国の国力を見極めることではなく、中国の狙いをいかに理解するかにある
本書で目指すのは、中国人とその内面の世界、中国人を突き動かす動機、そして中国の人々の意図をより理解しやすくすることであり、そのための最も有益な鍵が歴史的記憶
中国人の政治的な発言を支配しているものは、中国人の歴史意識と、「神話」と「トラウマ」からなる心理構造

序章 「戦車男」から愛国主義者へ
1989年 天安門広場で、民主化を求める抗議運動を暴力的に抑圧しようとした共産党の戦車の前に立ちはだかった中国人青年の姿は印象的
その後僅か20年の間に、若年エリート層を中心に愛国心が強く、特に反欧米的な愛国主義者の新たな世代が誕生したが、その急転回の背景には歴史的記憶が重要な要素として関わる
「勿忘国恥」(国恥を忘れることなかれ)が、国民的スローガンになって、若年層までが強い愛着を抱く
1991年 愛国主義教育運動開始 ⇒ 中核的要素として全国に1万件以上の記念史跡を建造・修造するとともに、国家の祝日や記念日を利用して歴史を繰り返し思い起こさせる
2009年 建国60周年記念式典で、軍旗衛兵隊が天安門広場の中央から国旗掲揚台まで169歩の密集行進をして国旗を掲げたのも、その11歩がアヘン戦争から169年の歩みを表す象徴的な演出だった
祝日に劣らず示唆に富むのが「黒き記念日」 ⇒ 1959年のチベット動乱、1979年の北京西壁新聞の禁止、1989年の天安門事件など、中国政府にとって公式上無視されてきた
国家の歴史とは、国民や国家が何を記憶し、何を忘れようとしているかによって決まり、政府が歴史をどう規定するかは政治的問題
現代の中国における歴史意識には、1800年代半ば~1900年代半ばの「恥辱の1世紀」が重くのしかかる
疑問1. 時は傷を癒すか?
教育制度を通じて、国恥の体験のない若者達がナショナリズムに傾倒している
疑問2. 繁栄が傷を癒すか?
中国人の自信が、却って過去に関する神話とトラウマの心理構造を強化している
疑問3. 「歴史的トラウマ」によって中国の反欧米的なナショナリズムを説明できるか
中国のナショナリズム、国家としての意志、文化的、歴史的な礎を、歴史的記憶から説明する
本書の構成 ⇒ 以下の2つの側面に注目
1.   国民的トラウマとなってきた様々な経験に対する中国国民の集合的な意識
2.   トラウマとなってきた過去を国家が如何に政治的に利用してきたか
2つの疑問点に注目
1.   共産党の指導者たちは、歴史とその記憶をどのように利用して、国民的アイデンティティを構築し直し、冷戦後も中国を支配し続けるための正当性を確保しようとしてきたか
2.   そうした国民的アイデンティティの再構築は、中国の政治的な変容と対外的な振る舞いにどのような影響を与えて来たか
本書のポイントは、歴史意識の形成とその戦略的な利用にまつわる問題
本書のテーマは、あくまで特定の集団によって共有された、過去の歴史的出来事の思い出や説明である「歴史的記憶」であって、「歴史」そのものではない
実際の史実は何かという議論にあまりに目を奪われていると、集合的な記憶の形成や、国家建設に果たしてきた役割といった全体像を見逃す恐れがある

第1章        選び取られた栄光、選び取られたトラウマ
~ 中国の恥辱の1世紀を概観
選民意識が強く、ことのほか誇り高い民族性
栄光にまつわる神話 ⇒ 北京五輪の開会式でも披露。世界最古の文明であり、4大発明(紙、羅針盤、火薬、印刷術)は世界の発展に貢献
鄭和の航海とシルクロードの文化こそ、中国にとって外界との最も重要な遭遇であり、交流だった ⇒ 重要なのは、中国の高度な文化と徳性を示したこと
140533年鄭和の航海は、中国の歴史教科書で「平和と友好の航海」として賛美されているが、実際の航海では行く先々で現地住民に対する暴力的行為を伴っていた
歴代王朝の支配者たちは、領土を拡張し世界に冠たる大陸帝国を築くために無数の軍事行動を起こしてきたにも拘らず、「中国が平和を愛する国家だ」というイメージは神話として語り継がれ、中国の公文書や学校の教科書に頻繁に登場、03年には温家宝首相もハーバード大での講演で、「平和を愛することは中国の国民古来の資質であり」、「中国は世界で最も平和を愛する国家だ」とまで言っている
恥辱の1世紀に味わった国恥は、次の3つの慣用句で表現される ⇒ 選び取られたトラウマ
屡戦屡敗(度重なる戦いと敗北) ⇒ 外国による侵略戦争
割地賠款(領土の割譲と賠償の支払い) ⇒ 不平等条約
喪権辱国(国権の喪失と国を辱めること)
1840年 アヘン戦争 ⇒ 1985年 林則徐がイギリスのアヘンを没収した場所に「アヘン戦争博物館」を建立、96年には国指定の「愛国主義教育基地」の1つとなる。56年の第2次アヘン戦争の際英仏軍が北京を占領、皇帝の離宮の1つ「円明園」を占拠・破壊したが、廃墟はそのまま保存され唯一残った遠瀛観(えんえいかん)とともに「国殤」として、「愛国主義教育基地」に指定され、西洋による暴虐と中国の「凌辱」という中国人の歴史的記憶を物理的に表す記念碑となった
最大の屈辱が、かつての朝貢国であり従属国だった日本に対する敗戦
1931.9.18.は祖国の現代史の中で最も暗い時代の幕開けとなった日として、中国の集合的記憶のなかで重要。日本では柳条湖事件、中国では9.18事件または奉天事件と呼ばれる。瀋陽に「9.18歴史博物館」建立
1937.12.13.南京陥落の日も重要 ⇒ 1985年に「南京大虐殺記念館」建立、30万人という犠牲者数が11か国語で掲げられている
中国の後任歴史教科書は、抗日戦争における中国側の死傷者を35百万人としている
不平等条約の典型 ⇒ 南京条約(1842年、アヘン戦争終結時)、下関条約(1895年、日清戦争終結時)、北京議定書(1901年、義和団の乱後)。公認歴史教科書では、不平等条約体制が独立した農業国から半植民地国へと徐々に「沈む」ことを中国に強いたと強調

第2章        歴史的記憶、アイデンティティ、政治
~ 内政や対外関係における歴史的記憶の役割を検討するための理論的、分析的な枠組みを説明
どの社会でも、集合的な記憶と歴史の政治的な利用は、極めて重要な働きをしている
観念的なものがどのように国際関係に影響するかは難問であり、人間の意思決定についての実証的研究の中に、世界や過去に対する認識という要素をどう組み込むかに関する研究は進んでいない
ある集団のアイデンティティの形成に歴史的記憶がどのような機能を果たしているか
過去に対する社会的に共有されたイメージは、その社会の結束を育む。そして個人が社会と自己同一化することを促し、守り、目下の社会的な態度やニーズを正当化する
過去の出来事に対する集合的な記憶は、指導者たちに大衆の支持を醸成するための土台を提供する ⇒ 政治的に国民を動員するために、指導者たちは歴史や記憶を道具としてきたし、歴史的記憶は政治的正当性とも密接に繋がる
観念的思考(=個人が抱く信念)が、政治的な出来事を解き明かす上で果たす役割に注目
歴史的記憶が集合的なアイデンティティを形成し、その集団のメンバーや敵に関する観念を強化するのは明らか
ある集団にとって、原理原則を体現していたり因果関係に裏付けられたりしている観念がある場合、それはメンバーにとって目標や手段を明確にする「道しるべ」となって、政策に影響を与える

第3章        「中華帝国」から国民国家へ――国恥と国家建設
~ 国恥が国民的アイデンティティの形成と国家建設に如何に不可欠の要素となってきたかを考える
中国の伝統的な思想に、近代的な「国民国家」という概念は存在しない。あるのは「王朝」と「天下」のみであり、文化的に規定された唯一の共同体(=天下)を王朝が統治する
中国で勃興したナショナリズムは、草の根からではなく、中間のインテリ層からで、リーダーの1人が魯迅(1881)であり孫文だった
1919年 ヴェルサイユ条約で領土の一部が日本に割譲されたことに抗議して、「五四運動」と呼ばれる、中国の学生達による初めてのナショナリズム運動発生
中華帝国の旧来の秩序が崩壊、伝統文化や儒教主義も危機に瀕した際、文化的、精神的な穴を埋めるものとして、国民党も共産党もナショナリズムを選び、帝国主義と不平等条約をやり玉に挙げた
帝国主義と軍閥を批判の的として、一時期両者のプロパガンダ担当者達は同じ屋根の下で一緒に仕事をしていた ⇒ 1925-26年 毛沢東が国民党の中央宣伝部のトップを務めていた
1928年 済南事件(別名53日の惨事) ⇒ 日本と国民党の武力衝突、蒋介石は日記に「雪恥」と記し、後に国民党の政治方針、そして課題とした
国民の意識と国民的アイデンティティにとって「国恥」が大きな役割を担ってきたのは1915年以降
1949年 中華人民共和国誕生の歴史的使命を明確にしたのも「国恥」だったが、間もなく支配の正当性を恥辱の過去からではなく、革命の勝利に求めるようになっていく
毛沢東の時代は、そのカリスマ性がものを言い、共産主義の未来についての毛のビジョンが党にとって支配の正当性を裏付ける盤石な拠り所となったため、抗日戦争の記憶を含む国恥に関する「物語」を活用することはなかった
毛自身も、72年の田中角栄との会談の際には、持ち前の皮肉な表現で、「日本による侵略のお陰で、共産党が勝利した」と言った
76年の毛沢東の死去と共に、毛は専制君主と見做され、共産党による政治的支配の正当性の基盤は一夜にして瓦解
76年の文革で党は危機に直面、続く15年間でイデオロギー的なツールとしてナショナリズム的な愛国主義を導入し始める
ソ連の崩壊によって、中国は世界に残された共産主義国の中で最大の国となり、西側からの批判の的に押し出された

第4章        勝者から敗者へ――愛国主義教育キャンペーン
~ 屈辱的な近現代史を政府が如何に利用し、91年以降の「愛国主義教育キャンペーン「を通じてイデオロギー教育を指揮してきたかを見る
集合的な記憶と歴史の間には深い関連性があるが、それは特に教育制度の上にはっきりと表れる。中でも、歴史的教科書の果たす役割は大きい
1991年に始まった愛国主義キャンペーンは、イデオロギー的な再教育の新たな大々的な試み
結果として、今や歴史的記憶が中国の教育制度、大衆文化、そしてマスコミの中に構造的に深く根を下ろすことになった
天安門事件の根本的な原因を、党のイデオロギー教育軽視にありと結論付け、愛国主義教育キャンペーンへと発展するが、それは歴史教育そのものであり、西欧列強や日本の侵害によって蒙った屈辱的な体験について教育し、共産党による革命こそが、中国の運命を変え、国家独立を勝ち得たのだと教えた ⇒ いまや中国共産党は、共産主義イデオロギーを基盤としておらず、国家独立のための歴史的な闘争を体現しているところに支配の正当性を見つけ、党の権威を強化しようとした
今日、中国の人々は林立する記念碑に囲まれて暮らしている。過去の記憶の記念碑を建設しそれをイデオロギー的な再教育に利用しようとする力の入れようは前代未聞
「紅色観光」 ⇒ 政府が愛国主義教育基地への観光旅行を奨励
「国恥」の意識が組織、社会制度、社会一般などに特定の価値観や規範として根付き「制度化」された
党による都合の良い歴史解釈に基づく教育に批判の声もあったが、徹底的に抹殺された

第5章        「革命の前衛組織」から愛国主義の政党へ――中国共産党の再構築
~ 共産党がどのようにして歴史や記憶の内容を使って政権政党としてのルールや基準を形作ってきたかを探る
1996年 江沢民が党の新たなアイデンティティとして、「最も断固たる最も徹底した愛国主義者」を導入
2001年 江沢民が、共産党の支配を正当化する新たな包括的な「物語」を提示 ⇒ 西欧列強との不平等条約と彼らの中国における帝国主義的特権を廃止、近代以来の屈辱的な外交の歴史を終息させ、国家の主権と民族の尊厳を守った
「復興」がキーワード ⇒ 世界の中心たる大国としての中国という、人々の心の中にある記憶を呼び覚まし、かつての地位と栄光へと復活させることこそ共産党の使命と強調し、党是とした

第6章        震災からオリンピックへ――新たなトラウマ、新たな栄光
~ 08年の北京五輪と四川大地震における救援活動について、歴史的記憶と国恥の観点から解き明かす
2008年 北京オリンピック ⇒ 人権問題を中心に」聖火リレーを妨害する激しい反対運動が発生すると同時に、一方で、中国人留学生たちが政府支持のデモを繰り広げた
中国では、スポーツを政治的なツールとして利用し、共産党政権の正当性と社会的な結束を強化しようとした ⇒ 59年の卓球、80年代の女子バレーボール、男子110m障碍の劉翔
特に劉翔は、西欧の侵略やアヘン中毒などによって劣化した「東亜の病夫」(=中国人が自ら「想像した恥辱」)の象徴とされ、国恥を払拭することが期待された ⇒ 04年のアテネでは金だったが、北京では脚の故障で棄権
中国にとって、スポーツは単なる個人的な楽しみではなく、国民の名誉や恥や、政治的な正当性、ひいては世界の中の中国の位置づけにまでかかわるものだけに、金メダルでなくては意味がない
中国の政治や国民的なアイデンティティの形成に決定的な役割を演じてきたのは、集団主義が持つ文化的な価値観と、中国独特の「災難の文化」 ⇒ 中国の強烈な歴史意識は、中国の集団主義的な文化の価値観を通してみれば理解できる
国民が共有する歴史と集合的な記憶は、そのアイデンティティを構築する重要な要素
もう1つの重要な文化的な要素が、体面や面子を保つことに関係
全世界の大陸型地震の33%と、地震による死傷者の55%は中国で発生 ⇒ 自然災害が、必然的に中国の政治的、経済的、社会的な行動パターンを形成するうえでも、国民的な性格を形成するうえでも、重要な要素となってきた
20085月の四川大地震で政府が見せた迅速かつ効果的な対処も、共産党がこの機をチャンスと捉えて国民の心を政府に惹きつけることに成功した一例 ⇒ 一方で、政府が抱える深刻な問題も浮き彫りにしている
多難興邦 ⇒ 災難はかえって国を復興させる

第7章        記憶、危機、外交
~ 近年のアメリカとの紛争における中国の出方を歴史的記憶を手掛かりに解釈
歴史的記憶は、国民の「深層心理」の一部として、通常は意識下に眠ったまま忘れ去られているが、危機に面したり状況が不安定になったりした時に記憶が呼び覚まされる
9501年 米中間に3回の衝突 ⇒ 台湾海峡ミサイル危機(9596)他デ、いずれも中国が危機を意図的にエスカレートさせ、アメリカの悪行に対し謝罪を求めている点は共通
単発的な事件や偶発的な事故も、歴史的記憶を通してみると、感情的な問題に発展し、外交交渉になったとしても勝つか負けるかのゼロサムゲームに一変する
中国政府の核心的な「神話」と支配の正当性は、「国民の体面」を保つことができるかどうかに著しく左右される
歴史的記憶の働きとして顕著なのは、「道しるべ」や「結束の要」となること

第8章        記憶、教科書、そして中国と日本の和解
~ 中国と日本における歴史に関する論争と、歴史教科書の採択を巡る論争のケーススタディ。共同作業によって歴史を記述することの意義に着目
2次大戦中の日中戦争は,両国の間に幾つものデリケートな歴史的象徴を残しており、いつでも「再起動」させて両国間に深刻な緊張や紛争さえも引き起こすことがある
共通の問題を解決するために協力して努力することこそ、根深い紛争によって悩まされ続けている2国間関係において、基本的な理念とすべきもの ⇒ 05年 東アジア初の各国共同執筆による歴史教科書『東アジア3国の近現代史』が、NGOにより日中間で同時出版され、3国全てで認められた歴史の共通の解釈を紹介する一方、いくつかの出来事については3国それぞれに解釈が異なるところから、歴史問題が3国の健全な関係を樹立する障壁となってきたことを教える

第9章        記憶、愛国主義、そして中国の台頭
~ 歴史と記憶というレンズを通してみると、中国の台頭、中国の狙い、中国の愛国主義がよりよく見えてくることを再確認
中国のナショナリズムは、国民的な体験と強い歴史意識に結び付き、「選民意識=神話=トラウマ・コンプレックス」が、ナショナリズムを理解する上での恰好のツール
中国のナショナリズムは、長年にわたり社会的な動揺や政情不安に際して、国民に一体感を与えるための極めて効果的な手段であり続けてきており、民族としてのアイデンティティと歴史的な領土意識に対する拘りを軸としている
世界中が中国の「台頭」を話題にする一方で、中国人たちは「復興」という表現を好んで使う
共産党も党の使命を、「共産主義の実現」から「中華民族の偉大なる復興」へと変更 ⇒ 中国共産党史上最も重大な転換であり、「復興」には富や国力とは別に重要な非物質的目的――尊敬されること――も含まれる





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