帳簿の世界史  Jacob Soll  2015.5.22.

2015.5.22. 帳簿の世界史
The Reckoning  
Financial Accountability and the Rise and Fall of Nations         2014

著者 Jacob Soll 1968年ウィスコンシン州マディソン生まれ。南カリフォルニア大学教授。歴史学と会計学を専門とし、これまでの政治歴史学者たちが見落としてきた重要な要素に注目して、近代政治や近代国家の起源を探る研究を行う。
ルイ14世の財務総監であるコルベールが近代国家を建設するためにどのような改革を行ったかをまとめた『The Information Master』を執筆した際、ルイ14世が年2回、自分の収入・支出・資産が記入された帳簿を受け取っていながらも、やがてその習慣を打ち切り、フランスを破綻させてしまったという事実を知り、「帳簿の世界史」の研究を始める
その他の著作に、マキャベリの『君主論』が編集者や出版社によってどのように改変されてきたかを研究した『Publishing the Prince』がある

訳者 村上章子 翻訳家。上智大文卒

発行日           2015.4.10. 第1刷発行
発行所           文藝春秋

未来の資産価値を現在に置き換える帳簿が生まれたとき、世界が変わった
アダム・スミス、カール・マルクス、マックス・ウェーバー……。
彼等が口を揃えて主張していた「帳簿」の力とは、一体何なのか。
これまでの歴史家が見逃して来た「帳簿の世界史」を、会計と歴史のプロフェッショナルが、初めて紐解く
なぜスペイン帝国は栄え、没落したのか。なぜフランス革命は起きたのか。なぜアメリカ独立は成功したのか。なぜ日本は急速に列強に追いつくことが出来たのか
その歴史の裏にはすべて、帳簿を駆使する会計士たちがいた

序章 ルイ16世はなぜ断頭台へ送られたのか
会計責任Accountability ⇒ 他人の財貨の管理・運用を委託されたものがその結果を報告・説明し、委託者の承認を得る責任
1661年 ルイ14世の財務総監コルベールが年2回、国の財政状況を報告したのが嚆矢だが、83年コルベールの死と共に終わる
良い会計は、悪いことが起きた時に真実を伝えてくれるが、都合が悪くなれば堪えられなくなったのだろう。死の床で国を破綻させたと告白
2008年のリーマン破綻も同じ構図で、規制当局が金融システム全体を脅かす会計慣行を見ないことにした結果で、リーマンの会計操作も公然の事実だった
財務報告の責任は問われなかったのみならず、あるべき姿やどうすれば責任が果たされるのかといった問題に関する議論もなされないままになっている
会計は、事業や国家や帝国の礎となるもの。経営者や指導者が現状を把握し、対策を立てるのに役立つ
繁栄する社会では、良い会計慣行や商業文化が根付き、それを支える健全な倫理観や文化の枠組みが存在し、会計を無視したり操作したり怠ったりしがちな人間の性癖をうまく抑えていた
本書では、この簡単な教訓がなぜ活かされてこなかったのか、その理由も探る
最初に会計システムを開発し、財政と政治の責任を明確化したのは、繁栄する商業国家で、その代表はイタリアのジェノヴァ共和国 ⇒ 1340年には大型の帳簿で複式簿記により財政が記録されていた。複式簿記発祥の地はトスカーナと北イタリア各地
資本主義と近代以降の政府には、本質的な弱点がある ⇒ 企業と政府の会計責任は、民主主義社会に於いていまだに確立されていない

第1章        帳簿はいかにして生まれたのか
ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスが、透明性の高い精密な会計を自身の政治的正統性と功績に結びつけたが、標準的な会計慣行となるまでには1700年の歳月が必要
古代メソポタミア以降単式簿記が実践されていたが、主に商売のために行われ、基本的な在庫管理に留まる
古代アテネでは、国家が会計や監査を行うようになり、会計が政治の責任と切っても切れないものとなり、会計責任を果たす仕組みが整っていた
古代ローマでは、アリストテレスが国家財政と家計の切り盛りの両方を指してオイコノミクスと呼んだが、これが経済学Economicsの起源 ⇒ 政府や家計を導くよき指針程度の意味
476年 西ローマ帝国滅亡により、国家は個人的な領土と化し、会計監査などの行われる余地は消滅 ⇒ 会計の重要性が高まったのは10世紀末からの貿易の隆盛による
1066年 ノルマン・コンクエストによりイングランドに一元化された土地管理制度が確立され、世界初の土地登記簿Domesday Book(Domesdayとは最後の審判の意)が作成された
12世紀 北イタリアを中心とする商業都市国家の誕生とともに、資本主義的な利益や複式簿記が誕生 ⇒ 共同出資が一般的であり、各出資者の持分や利益を計算する必要性があったところから発案されたもので、13世紀末には一般化
1202年 ピサの商人レオナルド・フィボナッチが算術に関する歴史的著作『算盤の書』を書き、アラビア数字と位取り計算法、アバカスをもたらす

第2章        イタリア商人の「富と罰」
教会で金貸し行が禁じられていた14世紀のイタリアでは、商人と銀行家は常に罪の意識に苛まれていたため、最後の審判を恐れるその信仰心こそが会計を発展させた
富と信心の両方を追求する中世の商人にとって、利益は悩ましい問題で、罪は善行で埋め合わせ、教会もそれを後押し、罪は会計と結び付けられ、神に対する負い目debtを計算し、人生の最後に勘定を締めるものとされた。「心の借り」を返すことが悔悛だとすれば、これもまた会計的概念の一種と言えるが、金銭の会計が心の会計と対を成しており、精神生活の重要な部分でもあった

第3章        新プラトン主義に敗れたメディチ家
会計には、事業経営を助ける一方で罠にもなり得るという二面性が備わる
メディチ家の歴史はまさにそのもの、金融の力を誇示し、会計を活用して銀行業を発展させ、文化の面でも政治の面でも圧倒的な存在感を発揮するが、会計を蔑にする誘惑に屈し、1世代のちにはほとんどすべてを失う
銀行家の息子として生まれたコジモ・デ・メディチ(16891464)は、父から受け継いだ銀行を一大国際事業に発展させヨーロッパ全体の金融を牛耳って、当時ヨーロッパ最高の富豪となる ⇒ 政敵によって死刑を宣告されるが、カネの力で乗り切り、フィレンツェに君臨
富はコジモの力の源泉だったが、その多くは金の管理がうまかったことに起因
ルネサンス期に盛んになったプラトン研究をメディチ家も後押しするが、新プラトン主義が標榜する貴族的・エリート的価値観とフィレンツェ商人の現実的・実務的価値観は次第に相容れなくなり、コジモ自身も一族が卑しい商売の世界に身を置くことを望まず、会計制度も下品で不道徳な習慣とさえ見做された
コジモの孫のロレンツォは帝王教育を受けたものの、銀行経営に必要な会計を教えられなかったため、1477年以降相次ぐ支店の破綻から、急速に勢力を減退させる

第4章        「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
1494年 複式簿記についての世界初の教科書『スムマ』発刊 ⇒ 著者パチョーリは「会計の父」と呼ばれる通り、現代の資本主義においても欠かせない基本が記載されている
1歩が資産の棚卸で、それに基づき財産目録を作成、支出と収入を毎日帳簿につけるが、帳簿は日記帳、仕訳帳、元帳からなる
ルネサンス期を代表する作家カスティリオーネが著わした『宮廷人』(1528)がヨーロッパ上流階級の模範とされ、ノンシャランス(無頓着、無関心)を提唱し、コジモやパチョーリが実践した実務的な専門知識等の商人文化は切り捨てられた
イエズス会でも、事業や金儲けに対する偏見を煽り、商人の知識を軽蔑
1530年代後半、神聖ローマ皇帝カール5世は、ハプスブルク帝国とスペインを統治、世界最強の帝王となったが、植民地支配に莫大な収入以上にコストがかかることが判ったものの、収支をきちんと扱える優秀な財務官がいなかったため、1556年退位時点では莫大な借金が残された ⇒ 息子のフェリペ2世は、史上初の実務的・官僚的支配者ではあったが、会計的な知識は無かったものの、王国の運営を支えていたのがセビリアの商人だということを知り、監査官に抜擢
にも拘らず、フェリペ2世の野心と愚行が会計改革の意欲を上回り、1588年最大の悲惨な海戦に乗り出してしまう ⇒ 大敗の理由は、艦隊総司令官に海戦の経験がなかったこと、天候や波の荒い海域、艦隊の機動性で劣っていた等
さすがのフェリペ2世も、苦境を乗り切るためには健全な会計システムが必要だと悟って改革に乗り出すが、壮途半ばでこの世を去り、システムも根付かないままに帝国は滅亡

第5章        オランダ黄金時代を作った複式簿記
東インド会社を中心とした世界貿易で途方もない富を得たオランダ。その繁栄の秘密は複式簿記にある。国の統治者が史上初めて複式簿記を学び、それを政権運営に取り入れる
会計責任を果たそうとする者は会計を習得することにまず苦労し、次にはその正当性を実証することに苦労する ⇒ オランダの黄金時代は、責任ある政府と財政を実現したが、それを維持することは一層難しいことを物語る
1567年当時のオランダは、ハプスブルク家の領地としてスペインのフェリペ2世が支配し、重税に喘いでいた ⇒ 80年戦争(15681648)を経て1581年独立宣言、1648年のウェストファリア条約により国際的に承認を得る
1609年 アムステルダム市条例により為替銀行設立、唯一の両替商として外国為替の決済を集中・円滑化
オランダは、株式取引所発祥の地でもある
オランダ総督マウリッツ(15671625)が、学生時代の恩師を財政運営に抜擢 ⇒ 数学を統治に活かすことを考え、国家の財政管理に複式簿記を推奨
17世紀の繁栄を妬んだイギリスやフランスの攻撃に遭って、1650年以降貿易・海運や植民地を巡って3回に亘る英蘭戦争、さらにフランスからも攻撃を受け、衰退に向かう

第6章        ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
ルイ14世を支えたのは会計顧問のコルベール ⇒ 財政再建に奮闘した手腕はアダム・スミスにも称賛されたが、同時に彼は会計の力で政敵を容赦なく破滅へと追い込んだ
1661年 ルイ14世親政開始(在位16431715) ⇒ 政権運営における会計の有用性を認めるが、後には責任を問う手段としての脅威にも気づいてしまう

第7章        英国首相ウォルポールの裏金工作
イギリスの財政危機を何度も救ったのがウォルポールだが、彼の権力と財産は国家財政の秘密主義なくしては得られず、21年に亘る長期政権も裏金工作によって支えられていた
17世紀のイギリスは、政府の会計改革に悪戦苦闘。立憲君主制下、議会が会計を監督する(1644年議会に会計委員会発足)ことになっていたが、財務会計に関する君主の責任の概念は発達せず ⇒ 確立するまでには150年を要する
18世紀初頭のスペイン継承戦争で英国財政は逼迫 ⇒ フランスのミシシッピ計画に倣って、1711年設立の南海株式会社が、政府に対し南米の貿易独占権の対価を、会社が自社株式と引き換えに受け取った国債で支払うというスキームだったが、計画通りの利益が上がらず破綻、財務会計の重要性と困難さを浮き彫りにした

第8章        名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
イギリス史上最も成功した陶磁器メーカーの創立者・ウェッジウッドは、勤勉な非国教徒の模範的成功者とされるが、経営に確率の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた
当時、富は信心と几帳面な会計の産物と見做されていた
イギリスの産業を支えた要素の1つは会計 ⇒ 産業の拡大とともに会計専門家の需要が高まる
チャールズ・ダーウィンは、ウェッジウッドの娘の子

第9章        フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
ルイ16世の財務長官でスイスの銀行家・ネッケルは、国家財政の秘密のベールを取り除いて国民に開示した結果、国民の不満が爆発し革命へと繋がる
3%の貴族が90%の富を所有
Accountingaccountabilityという言葉はフランスから輸入された ⇒ それだけ国家の財務会計に透明性が欠如していたからだと推測される
フランス革命は責任ある代議政治の確立には至らなかったが、財務リテラシーと会計責任の文化を政治に持ち込み、未来の会計改革への道筋を作ったことは間違いない
ネッケルの「国王への会計報告」は、国家のバランスシートによって政治を判断するという考え方を示し、近代的な公会計の第1歩を記した

第10章     会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
権力とは財布を握っていること(ハミルトン)
複式簿記を郵政会社に導入したフランクリンも、奴隷も個人帳簿に計上したジェファーソンも、皆会計の力を信じた
ネッケルの「国王への会計報告」が、アメリカ建国の父たちに与えた影響は莫大

第11章     鉄道が生んだ公認会計士
巨大鉄道の登場により、財務会計の世界は急速に複雑化 ⇒ 粉飾が横行により、その監督のために公認会計士が誕生
産業革命がもたらした様々な優位性や利便性の中でも、鉄道は最も特筆すべきもので、同時に財務会計を変え、政府のあり方まで変えた
アメリカの鉄道の急発展のために必要とされた資本をヨーロッパから調達するために会計業務の効率化が必要 ⇒ 資産、収支の管理は膨大な作業を必要としたため、誰も全体像を見渡せず、管理も不行き届き、政府も監督をせず不正が横行
ヨーロッパ各国で誕生していた公認会計士が、本国の資本家の要請を受けて1870年代にアメリカに進出 ⇒ 最初に進出したのはプライスウォーターハウス

第12章     『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
1920世紀 会計は小説や思想にどのような影響を与えたか
バルザックの小説『禁治産』(1836) ⇒ 会計は「人間の心の惨めさ」を測るのに最も適した方法である
父親が会計士だったディケンズ(181270) ⇒ 19世紀の作家の中で会計士や会計責任を誰よりも生き生きと描いた。『クリスマス・キャロル』では善意の会計士と悪意に満ちた詐欺師としての、あるいは非情な官僚としての会計士が描かれる
複式簿記の発想が『種の起原』に見られるダーウィン ⇒ 進化の過程とは自然の精緻だが暴力的なバランス・システムに他ならず、このバランスは複式簿記の世界を連想させる
近代的な生産管理方式を編み出したフレデリック・テイラーの「科学的管理法」も、その時間と労働コストの厳密な管理を重視した手法を支えるのは、月次計算に基づく詳細な原価計算 ⇒ ベツレヘム・スチールが、テイラー・システムを導入して、道具や作業の標準化により生産高を飛躍的に増やして利益を上げたことは語り草
会計を忌避したヒトラー ⇒ テイラーやフォードを称讃したが、ヒトラーにとって大事だったのはイデオロギーであって利益ではなく、大量生産を推進し労働者を機械の歯車にしようとしたが、会計責任を果たす気は毛頭なかった

第13章     大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
複雑化した会計は専門教育を受けた人でなければ扱えない。その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始。明らかな構造的矛盾の下、最悪の日を迎える
1920年代後半のアメリカでは、会計責任の欠如が一因となって大恐慌が引き起こされる
会計報告を無視した透明性の欠如した企業経営はアメリカ経済を損なうという警告にもかかわらず、多くの企業における水増ししたバランスシートが株高を呼び、明るみに出た途端に大暴落となる
その反省から会計改革の必要性が叫ばれ、各国で厳密な会計基準の導入が試みられ、公認会計士が活躍するが、戦後の経済拡大に伴い監査法人同士の競争が熾烈化し、相次ぐ不正と難解な論議で信用を失墜
新たに始めたコンサルティング業務も、監査との抱き合わせでは利益相反だと認識されるようになり、監査法人の評判を落とす
1999年には、大恐慌の教訓だったグラス=スティーガル法を撤廃
2001年末のエンロン破綻では、コンサルタントでもあったアーサー・アンダーセンの不正監査が発覚 ⇒ 監査の一部は十分まともだったが、高額の報酬を得ていたコンサルティング業務を失うのを恐れた幹部が監査の指摘を無視した
2008年のリーマン・ショックでは、エンロンの反省から成立した内部統制を義務付けたSOX法が機能せず、会計事務所は、投資家からは適切な監査を行っていないと非難され、企業や金融機関からは、リスクを恐れてCDOに低い評価をしたことが投資家の信頼を揺るがし危機に火をつけたと非難された
法律や規則が出来、金融ジャーナリズムが活発に活動したとしても、金融業界には透明性に対抗する頑強な壁がある ⇒ 事業の内容が複雑すぎ、規模が大き過ぎて監査不能

終章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている
何世紀にもわたって会計責任を確立する努力が続けられてきたにも拘らず、いまだに監査が効果的に行われず、企業や政府が責任を果たさずにいるのは、会計改革が常に頑強な抵抗に遭うとともに、特に近年のテクノロジーの発達が会計の仕事をむしろ一段と困難にしている
会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する ⇒ ルネサンス期のイタリア各都市、黄金期のオランダ、1819世紀のイギリス・アメリカ等
かつて社会は、財政に携わる人に対し、会計を社会や文化の一部と見做すように求め、帳簿に並ぶ無味乾燥な数字からでさえ、宗教的・文学的意味を読み取っていた。いつか必ず来る清算の日を恐れずに迎えるためには、こうした文化的な高い意識と意志こそを取り戻すべき


日本版特別付録 帳簿の日本史(編集部)
日本の帳簿史は律令国家の成立とともに始まる ⇒ 大化の改新で「帳簿による財政の収支を記録する文化」を中国から輸入
中央から各国に派遣された国司が、正税(しょうぜい)帳という年間の収支決算報告書を作成し朝廷に報告
帳簿に革命が起きるのは江戸時代に商人が独自の複式簿記を使い始めてから ⇒ BSPL、減価償却の概念もあり、西洋式と比べても遜色ないもの
明治時代になって西洋式の複式簿記が輸入されたが、大きな混乱はなかった
日本史においても、帳簿は歴史を動かす主役であった?????
(ほとんど説明になっていないひどい附録)



帳簿の世界史 ジェイコブ・ソール著 発明・発展の経済への影響を検証
2015/5/3付 日本経済新聞 朝刊
 古代文明から記憶に新しいリーマン・ショックまでの幅広い時代をカバーする本書は、お金のやりとりを記録する「帳簿」が、時代と経済をいかに動かしてきたかを検証している。こう書くと細かい金銭勘定の話のようにも聞こえるが、本書の中身はまったく異なる。
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 お金を第三者から借りたり、何かに使ったりする行為はひとの思考に強く影響を与え、行動を規定する。金銭貸借は一種の心理学であり、それを支配する者が時代の権力を握ってきた。金融の世界で成功をおさめようとするなら、まず「帳簿」を制することから始めなければならない。現代のグローバル金融に欧米勢が強い影響力を持っている理由は、「帳簿」を発明し、発展させてきた歴史を抜きには理解できない。
 例えば、貿易立国オランダの栄華は、複式簿記の発展と密接な関係にある。国際金融都市のニューヨークやロンドンの発展は、米英会計事務所の国際戦略と重なるところがひじょうに多い。
 そもそも、本書のような会計を切り口にした歴史書がくり返しあらわれるのも、欧米ならではの現象だ。では、日本の会計はどうか。そんな疑問に対して、編集部が日本版特別付録として「帳簿の日本史」を用意した。必読である。村井章子訳。(文芸春秋・1950円)




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