How Google Works  Eric Schmidt & Jonathan Rosenberg  2015.5.12.

2015.5.12.  How Google Works 私たちの働き方とマネジメント
How Google Works                    2014

著者 Eric Schmidt & Jonathan Rosenberg with Alan Eagle, foreword by Larry Page
Eric Schmidt プリンストン大卒(電気工学専攻)UCバークレイで修士、博士(いずれもコンピューター科学)取得。グーグル取締役会長。0111CEO。アメリカ大統領科学技術諮問委員会委員のほか、メイヨー・クリニック取締役など
Jonathan Rosenberg シカゴ大MBA。クレアモント・マッケンナ大で経済学を専攻し、優等学位で卒業、ファイ・ベータ・カッパにも選出。アップル、ナイトりっだーを経て02年グーグル入社。11年までSVPとして消費者、広告主、パートナー向けプロダクトの設計、開発、改良を指揮。担当は検索、広告、Gメール、アンドロイド、アプリ、クロームなど。現在はLarry Pageのアドバイザー
Alan Eagle ダートマス大卒(コンピューター科学専攻)、ウォートンで」MBA。オラクルなどを経て07年入社。エグゼクティブ・コミュニケーション担当

訳者 土方奈美 翻訳家。95年慶應大文卒。日本経済新聞社入社。記者から08年独立。12年モントレー国際大学院で修士(翻訳)取得。米国公認会計士、フィナンシャル・プランナー

発行日           2014.10.8.  11                 10.22. 3
発行所         日本経済新聞出版社

序文             Larry Page
グーグルでは「自律的思考」をあらゆる活動の基礎にしてきた
ウェブページをもとにランキングすることで、それまでよりも遙かに優れた検索結果が得られると気付いたのは、しばらく後の事
アンドロイドを開発したときも、オープンソースのOSを軸に携帯電話業界をまとめることなどできっこないというのが一般的な見方
グーグル・マップを始めたときも、全ての道路の写真を含む世界地図を作るという計画は不可能という見方が大勢
適切な人材と壮大な夢がそろえば、たいていの夢は実現する
テクノロジーの世界では、革命的変化が起こりやすいので、漸進的なアプローチでは時代に取り残される
本書が、ありえないことへの挑戦のきっかけになることを期待する

はじめに
フィンランド ⇒ グーグル社内におけるマイクロソフトのコードネーム
03年 対フィンランド戦略を練る ⇒ インターネットが未来の技術的プラットフォームであり、検索はその最も有益なアプリケーションの1つであると確信していただけに、いずれマイクロソフトがグーグルの事業に強い興味を持つのは時間の問題だった
最高のサービスを生み出すための戦略はシンプル。優秀なソフトウェアエンジニアをたくさん採用し、自由を与える。口先だけで人材がすべてという企業は多いが、ラリーとセルゲイは本気で実行した
半数以上はエンジニアで、常識を超えた大きな自由が与えられ、コミュニケーションを通じて全員がおおよそ同じ方向に進むようにした ⇒ エリックやジョナサンが採用されたのも、彼等のエンジニアとしての実績があったからで、マネジメント能力は二の次
インターネットの重要性と検索の力に対する強烈な信念
100個の主要プロジェクトのランキング・リストを全員が共有し、4半期に一度①状況のアップデート、②リソース配分の見直し、③ブレインストーミングを実施
3つの強力な技術トレンドが相俟って、ほとんどの業界で競争条件が根本的に変化
   インターネットによって情報が無料に、豊富に、どこでも入手できるようになった
   携帯端末やネットワークが世界中に広がり、常時接続が普及
   クラウド・コンピューティングによって無限のコンピューティング能力やストレージ、たくさんの高度なツールやアプリケーションを誰でも、安価に、利用時払いで使える仕組みが出来た
以上の結果、今の企業の成功に最も重要な要素はプロダクトの優位性になった、その理由は、①顧客の情報量が豊富な選択肢をもたらす、②新たな試みをし、失敗するコストが大幅に低下
プロダクト開発プロセスのスピードと、プロダクトの質を高めることが鍵であり、それを担うのは「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる、専門性とビジネススキルと創造力を持つ新種の知識労働者であり、実行力に優れ、単にコンセプトを考えるだけでなく、プロトタイプを創る人間

Ø  文化 自分たちのスローガンを信じる
スマート・クリエイティブが仕事を探すときに重視するのは「文化」
お互いの交流の中で真価を発揮するところから、狭い場所に詰め込むことで、創造性のマグマが湧きあがる
オフィスのカバ(Hippo=Highest-paid Person’s Opinion)は危険な存在
「イエス」の文化の醸成 ⇒ 成長企業にはカオスが蔓延し、「ダメ」を出すことで対処しようとするが、それではスマート・クリエイティブを死に追いやるに等しい
事業の成否と、そこで文化の果たした役割の関連性を明らかにする

Ø  戦略 あなたの計画は間違っている
MBAスタイルの事業計画は、必ずある重大な欠陥を孕む ⇒ 計画は常に流動的であるべきで、その根底に一定の基礎的な原理が存在することが重要
例えば、重大な問題を革新的な方法で解決するような技術的アイディアに賭ける、利益ではなく規模を最適化する、最高のプロダクトによって市場自体を拡大させる、といった内容が含まれる
検索というプロダクトの優位性の核となったのは、ウェブのリンク構造を最高の結果を導き出すロードマップとするという技術的アイディア
広告は、広告主がいくら払うかではなく、ユーザにとって情報としてどれだけ価値があるかに基づいてランキングし、ウェブページに掲載すればいい、というアイディアに基づく
プロダクト計画を立てる際重要なのは、新たな機能、プロダクト、あるいはプラットフォームの出発点となる技術的アイディアは何かということであり、技術的アイディアとは、大幅なコストダウンに繋がったり、プロダクトの機能や使い勝手を何倍も高めたりするような、新たな技術の活用法やデザインのこと
組み合わせ型イノベーションの時代 ⇒ さまざまな構成要素の入手可能性が大きく広がった時に起きることで、組み合わせ方法を変えることにより画期的な発明が生まれる
今日の重要な構成要素は、情報、ネットへの接続性、コンピューティング能力
組織の持つ技術のオタクを探し、彼等の手掛けるおもしろいモノの中にこそ、成功を掴むのに必要な技術的アイディアがある
技術的アイディアを見つけるもう1つの方法は、小さな問題の解決策に注目し、その適用範囲を広げる方法を考えること ⇒ 新しい技術は、個別具体的な問題を解決する手段として、かなり原始的な状態で誕生することが多い。ポルノを排除するセイフサーチを開発する過程で生まれた技術によって、あらゆる画像と検索語との適合性をより正確に評価できるようになった
特化すべき対象を見つけることも重要 ⇒ 成長の可能性がある分野を見つけることがプラットフォームを生み出す近道になる。検索こそ急成長するインターネット産業の中で最も重要なアプリケーションだと信じ、最高の検索サービスの実現に的を絞った
初期設定は「クローズ」ではなく「オープン」に ⇒ 通信業界が好例だが、新しく急成長を遂げる市場で競争している時は、プラットフォームをオープンにしなくても急速に成長することができる

(結論)
    問題を全く新しい方法で解決する
    その解決法を生かして急速に成長・拡大する
    成功の最大の要因はプロダクトである


Ø  人材 採用は一番大切な仕事
LAXテスト ⇒ LA空港で6時間足止めを食らったときに楽しく会話をしながら過ごせるかどうかを採用の判断基準とする
採用を全社員の担当業務に含める簡単な方法は、照会者の数や面接をした数、フィードバック・フォームを記入するまでにかかった時間、社員に採用イベントへの協力を呼びかけ、どのくらいの頻度で協力したか等の数字を合算し、パフォーマンス・レビューや昇進の参考データにする
レーズンは放置し、M&Mを放出せよ ⇒ 異動の議論では対象者が優秀な社員であることが絶対条件。ハロウィンでもらったお菓子を交換する子どもと同じで、いかにレーズンを手元に留め、M&Mを放出させるかがキー
採用の掟
l  自分より優秀で博識な人物を採用せよ。手強いと感じない人物は採用してはならない
l  プロダクトと企業文化に付加価値をもたらしそうな人物を採用せよ
l  問題について考えるだけでなく、仕事を成し遂げる人物を採用せよ
l  熱意があり、自発的で、情熱的な人物を採用せよ
l  周囲に刺激を与え、協力できる人物を採用せよ。一人でしたがる人物は不要
l  チームや会社とともに成長しそうな人物を採用せよ。興味の幅が狭い人物は不要
l  多彩でユニークな興味や才能を持っている人物を採用せよ。仕事しか能がない人物は不要
l  倫理観があり、率直に意思を伝える人物を採用せよ。駆け引きや欺瞞は論外
l  最高の候補者を見つけた場合のみ採用せよ。一切の妥協は許されない

Ø  意思決定 「コンセンサス」の本当の意味
グーグルが中国市場に参入したのは2004年半ば
5年半後の09年末、中国からハッカー攻撃を受ける
共産主義体制から逃げてきたセルゲイは、中国市場参入は中国当局の検閲体制に加担するとして反対したが、最終的にはしぶしぶ検閲規制に従うことにした。ただし、検索結果がブロックされた場合は、その事実をユーザに知らせることにした
06年初、中国内にサーバを設置、中国版サイトのサービスを開始、順調に滑り出した
上手くいきかけてきたところでのハッカー攻撃にあって、経営陣の下した結論は市場からの自発的撤退
正しい意思決定のあり方を考える上でまず理解すべきは、正しい選択をすることだけに集中していてはいけない、ということで、判断に到達するプロセス、タイミング、そして判断を実行に移す方法も、判断の内容そのものと同じくらい重要
中国政府が、検閲体制を通じて、反政府活動家のGメールを盗み見ようとしていたことが判明したため、グーグルは、中国政府の検閲体制への協力を拒否するとともに、合法的に無検閲の検索エンジンの運用可能性について、中国政府と協議する時間を取ると公表
経営陣は、敢えて中国政府の心証を害することを冒してまで、自らの主張を公にすることを決断
データに基づいて決定する ⇒ インターネットの世紀がもたらした最も重大な変化の1つは、事業のほとんどの側面を定量的に把握できるようになったことで、従来は主観的意見や事例anecdoteに基づいて意思決定したものが、今では主にデータが判断材料となった。スライドは意見を主張するために使うものではなく、データを見せるためのもの
法律問題にはカウボーイ・ルールで ⇒ アメリカ産業界ではお馴染みの、法律問題に対して過去を振り返りながらリスク回避を最優先に取り組むという姿勢(万に一つも起こらないケースを想定して免責条項を書きまくる)は、インターネットの世紀には通用しない。企業の進化が法律の変化を遙かに上回るスピードで進む現代では、全ての可能性を分析することは出来ないし必要でもない。カウボーイのように、周囲の様子を素早く確かめたらさっと先に進む

Ø  コミュニケーション とびきり高性能のルータになれ
こんにち最も成功を収めている経営者は、情報を囲い込んだりしない。リーダーシップの目的は、会社全体の情報の流れを24時間365日最適化すること
全てを共有することを自分のデフォルトにしてしまう
取締役会の報告が、イントラネット”Moma”で全社員と共有され、個々の社員の目標と主要な結果OKR ”Objectives & Key Results”ですら自ら常時更新してMomaで公開

Ø  イノベーション 原始スープを生み出せ
アンドロイドとiOSを巡るドラマの最大の見どころは、それがイノベーションに対する2つのまったく異なるアプローチの戦いでもあること
特に重要な違いは、「コントロール」に対する考え方 ⇒ アンドロイドはオープン・プラットフォームで、誰でも無償で使用できる。すべてのモノの端末をインターネットに接続し、アンドロイドで動く様にしようとしている。アップルのiOSコードは非公開であり、最高のユーザ・エクスペリエンスはすべてを厳格にコントロールするところから生まれると考える
イノベーションとは、「新たな大ブーム」を創りだすこと
グーグルの考えでは、「斬新で有用なアイディアを生み出し、実行に移すこと」であり、「斬新」には機能性だけでなく意外性も不可欠だし、「劇的に」有用であることも必要
702010のルール ⇒ 「トップ100リスト」がコアビジネス関連が70%、成功の兆しの見え始めたプロジェクトが20%、失敗のリスクは高いが成功すれば大きなリターンが見込めるプロジェクトが10%となっているのを見て、リソースの配分も同様の比率とした

Ø  おわりに 想像を超えるものを想像しよう
21世紀に入り、経済活動のハブとしての企業の立場を脅かしているのは「プラットフォーム」 ⇒ 企業と消費者の関係は一方通行だが、プラットフォームは消費者やサプライヤーと双方向の関係を築く。消費者には発言権があり、プロダクトやサービスの評価を通じてそれを行使している
World Wide Web3つの、それぞれ明確に異なるフェーズを経て発展してきた
Web 1.0 ⇒ ブラウザとHTMLとウェブサイトと称するモノを提供。ユーザはテキストを読み、小さな写真を閲覧し、初歩的な取引をすることが出来た。検索が重視
Web 2.0 ⇒ ユーザがウェブ上でモノを発表できるようになり、さらにはソーシャルウェブの台頭により、会話をし、モノを共有できるようになった




How Google Works エリック・シュミットほか著 人材引き寄せ「偉業を成す」環境作る 
日本経済新聞朝刊20141123日付
フォームの終わり
 読んでいてワクワクする本だ。企業経営のなんたるかを教える立場でグーグルに招かれたベテランが逆に若き創業者や同僚から教えられ、「一から学び直した」内容が生き生きとした文体で書かれている。
(土方奈美訳、日本経済新聞出版社・1800円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
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(土方奈美訳、日本経済新聞出版社・1800円 書籍の価格は税抜きで表記しています)
 かつて、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズはA級の人材のみでチームを構成することに腐心した。世界最高水準の製品を生み出す唯一の方法だと信じていたからだ。グーグルも同様に考え、組織的に実践している。スマート・クリエイティブと呼ぶ人材をひきつけ、偉業を成せる環境作りに時間とエネルギーをさいているのもそのためだ。スマート・クリエイティブはビジネスセンス、専門知識、クリエイティブなエネルギー、手を動かし業務を遂行しようとする姿勢を持つ人材だ。そんな人たちが働くグーグルでは驚く「事件」がいくつも起きている。
 ある金曜の午後、創業者の一人ラリー・ペイジはグーグルの検索結果と表示される広告に不満を持った。オートバイの名車の検索なのにビザ取得を支援する弁護士事務所の広告が表示されるなど散々だったのだ。彼は結果を出力しマーカーを引いた上で「この広告はムカつく!」と紙に大書し、オフィスの掲示板に張って帰った。紙を見た数人のメンバーは問題を解決するプログラムのひな型を作り上げた。担当でもないのに、週末に書き上げたのだ。プログラムの核になるアイデアはその後、数十億ドル規模の事業を生み出した。
 「すごい」と思った事例をもう一つ。グーグルでは毎週、創業者(つまり経営幹部)に何でも質問できる会議がある。質問がよいものかどうかは社員が投票で決め、よい評価を集めた質問から幹部は答えなければならない。お粗末な回答には出席者が赤い札を振って抗議できる。社員はとびきり厳しい質問を毎週、経営トップにぶつけられる。同じ仕組みを導入すべきだと考える経営者は日本企業に何人いるだろう。
 ほかにも「あなたに事業計画があれば、それが間違っているということだけは100%断言できる」といったドキリとする言葉が随所にちりばめられている。著者はシリコンバレーのルールにならい、そこで見てきた企業の栄枯盛衰の背後に動作する仕掛けを手品師のトリックを明かすごとく惜しみなく開示する。グーグルを脅かす会社をつくろうとしている者に向けたものにもなるが、一向に気にしていない。そこがまたイイ。
(神戸大学教授 小川 進)



How Google Works』について
グーグルは、この方法で成功した!
グーグル会長がビジネスの真髄を初公開。序文はグーグルCEO兼共同創業者のラリー・ペイジが執筆。

 グーグル現会長で前CEOのエリック・シュミットと、前プロダクト担当シニア・バイスプレジデントのジョナサン・ローゼンバーグは、グーグルに入社する以前から経験豊富なIT業界のトップ・マネジャーだった。だが、2人が入社したグーグルは、「他とは違ったやり方をする」ことで有名だ。これは、ビジョナリーであり、人とは反対の行動をとりがちな共同創業者2人、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの方針に沿ったものだった。
 入社してすぐにエリックとジョナサンは悟った。グーグルで成功するには、ビジネスとマネジメントの方法をすべて学び直さなければならない、と。本書では、著者2人がグーグルの成長に貢献しながら学んだ「教訓」を豊富な事例とともに語る。

 テクノロジーの進歩は消費者と企業のパワーバランスを激変させた。この環境下では、多面的な能力を持つ新種の従業員スマート・クリエイティブを惹きつけ、魅力的で優れたプロダクトを送り出す企業だけが生き残れる。戦略、企業文化、人材、意思決定、イノベーション、コミュニケーション、破壊的な変化への対応といったマネジメントの重要トピックを網羅。
 グーグルで語られる新しい経営の「格言」(コンセンサスには意見対立が必要、悪党を退治し、ディーバを守れ、10倍のスケールで考えよ、など)やグーグル社内の秘話を、驚異的なスピードで発展した社史とともに初めて明かす。
 すべてが加速化している時代にあって、ビジネスで成功する最良の方法は、スマート・クリエイティブを惹きつけ、彼らが大きな目標を達成できるような環境を与えることだ。本書は、その最良の方法をお教えする。

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