翻訳できない世界のことば  Ella Frances Sanders  2017.6.28.

2017.6.28. 翻訳できない世界のことば
All Illustrated Compendium of Untranslatable Words from Around the World
Lost in Translation              2014

著者 Ella Frances Sanders 20代のイラストレーター。様々な国に住んだことがあり、一番最近ではモロッコ、イギリス、スイスなど。フリーでスタイリッシュなイラストレーションの仕事をしながら、本を作りたいと思っている
Home Page:ellafrancessanders.com

訳者    前田まゆみ 絵本作家。神戸市生まれ。

発行日          
発行所           創元社

『ニューヨークタイムズ』、「Amazon USA」ベストセラー

この本が、読者の皆さんにとって、忘れかけていた何かを思い出すものであったり、または今まではっきりと表現したことのなかった考えや感情に言葉を与えるものであればと願っています。(著者「はじめに」より)

それぞれの言葉がまるで映画のワンシーンのように投げかけてきてくれる物語の切れ端を、読者の皆さんと共有できれば、本望です。(著者「あとがき」より)


思いの丈をこの本に添えて、大切な人に贈ってみてください
他の国のことばではそのニュアンスをうまく表現できない「翻訳できないことば」たち。
言うに言われぬ感情も、外国語の力を借りれば伝えられるかもしれません。
Ø  Forelsket=フォレルスケット(ノルウェー語) ⇒ 語れないほど幸福な恋に落ちている
Ø  Commuovere=コンムオーベレ(イタリア語) ⇒ 涙ぐむような物語にふれた時、感動して胸が熱くなる
Ø  Jayus=ジャユス(インドネシア語) ⇒ 逆に笑うしかないくらい、実は笑えないひどいジョーク
Ø  Ikutsuarpok=イクトゥアルポク(イヌイット語) ⇒ 誰か来ているのではないかと期待して、何度も何度も外に出てみること
日本語から出ているのは、
「木漏れ日」 ⇒ 木々の葉のすきまから射す日の光/まばゆくて目を閉じてしまうほどに美しいもの。緑の葉の間をすり抜けた光は、魔法のように心を揺さぶるでしょう
「ぼけっと」 ⇒ なにも特別なことを考えずに、ぼんやりと遠くを見ている時の気持ち/日本人が、何も考えないでいることに名前を付けるほど、それを大切にしているのは素敵だと思います。いつもどたばた忙しいくらしの中で、当てもなく心さまよわせるひと時は、最高の気分転換です
「ワビ・サビ」 ⇒ 生と死の自然のサイクルを受け入れ、不完全さの中にある美を見出すこと/仏教の教えがルーツにある日本のこの考え方は、不完全で未完成であるものに美を見出す感性です。うつろいと非対称性を暮らしの中に受け入れる時、私たちはつつましく、満たされた存在になり得ます
「積ん読」 ⇒ 買ってきた本を他のまだ読んでいない本と一緒に、読まずに積んでおくこと/積読のスケールは、1冊だけのこともあれば、大量の読まない蔵書になっていることもあります。玄関を出るまでに、ページを開いたことのない「大いなる遺産」の本にいつもつまずいてしまう、知的に見えるあなた。その本、日の目を見る価値があると思いますよ。





連載:天声人語
(天声人語)忖度の弊害
2017410500
 外国語に訳しにくい単語を集めた『翻訳できない世界のことば』という本があり、日本語のTSUNDOKU(積ん読)が取り上げられていた。「本を積み重ねて読んでいない後ろめたさ」と「いつかは読みたいとの気持ち」を込めて訳すのは、たしかに難題だろう▼先日の英紙フィナンシャル・タイムズの見出しには、Sontaku(忖度〈そんたく〉)の語があった。「まだ出されていない命令に、先回りして懐柔的に従うこと」と苦心して訳していた。日常であまり使わない言葉が脚光を浴びるようになったのは、森友学園問題ゆえである▼学園が格安で国有地を入手できたのは、名誉校長だった首相夫人や首相官邸の意向を役人たちが忖度したためでは、との疑いが出ている。財務省国土交通省大阪府……。二重三重の忖度のにおいがする▼忖も度も「はかる」の意味である。それが最近では、権力者の顔色をうかがい、よからぬ行為をすることを指すようになってしまったのか。議論や異論が押しやられ、「それは理屈に合わない」といった声が消えてしまうのが怖い▼「他人(たにん)心(こころ)有(あ)らば 予(われ)之(これ)を忖度(そんたく)す」とは古代中国の詩集「詩経」の一節である。他の人に悪い心があれば私はこれを吟味するという意味だと、石川忠久著『新釈漢文大系』にある。もともとは悪いたくらみを見抜くことを指したのか▼すばやく行き来するわるがしこい大兎を良犬が獲(と)らえるように、と詩は続いている。現代日本の忖度からはずいぶん遠い光景である。


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