世界一有名な数式「E=mc2」を証明する 福江純 2020.11.2.
2020.11.2. 世界一有名な数式「E=mc2」を証明する
文系編集者がわかるまで書き直した
著者 福江純 1956年生まれ。78年京大理卒。83年同大大学院(宇宙物理学専攻)を修了。現在は大阪教育大天文学研究室教授。理学博士。専門は相対論的宇宙流体力学、特にブラックホール降着円盤と宇宙ジェット現象
発行日 2020.7.30. 初版第1刷発行
発行所 日本能率協会マネジメントセンター
はじめに
本書は、世界一有名といわれる質量とエネルギーの等価性を表す数式「E=mc2」を、実際に導くため、初歩の初歩から説明したもの
以下の方針で書き進める
①
予備知識を前提としない
②
読者の目線で説明
③
知識の定着を図る
④
「E=mc2」の導出に必要な事柄をメインにする
⑤
歴史的背景も説明
序章 本書を読み解くための準備
科学を読み書きするための基礎的事項をまとめる
1. 国語(記号)の準備
科学Scienceの全ては「数学」という言葉で綴られている
近現代科学は、16~18世紀主にヨーロッパで発展し、20世紀初頭の相対性理論と量子力学の完成をもって一段落
科学的な思考という観点からは、西洋科学の源流はギリシャ時代の「自然哲学」が発祥地
ギリシャ自然哲学は、思弁のみによって自然界を理解しようとする学問だったが、実験的手法を導入したガリレオ以降その有様は大きく変わり、自然科学や物理学physicsが生まれた
本来「知識」と「智慧」とが並立し、単に知識を積み重ねるだけでは科学は進歩せず、知識を使いこなすための智恵(ママ)も不可欠
2. 数学的準備
◎
大きな数の表現 ⇒ 指数表示 13,800,000,000年=1.38x108(ママ)年
小さな数の表現 ⇒ 指数表現 1/10=10-1
◎
指数関数と対数関数 ⇒ 底(10)の肩に置いた小さな数字を指数といい、指数をⅹ、関数値をyとすると、底を10とする指数関数は y=10x と表される。指数関数の逆関数が対数関数
科学の世界で多用されるのは、自然対数の底e
◎
三角関数 ⇒ 直角三角形の三角比に基づく関数。周期関数であり、周期的な自然現象の場面では頻出する。斜辺をcとし、辺b,cに挟まれた角をシータθとすると、ピタゴラスの定理によって c2=a2+b2 となり、a,b,c いずれか2つが決まれが残りも決まり、θも一意に決まる
θと辺の比率が1対1の関係にある性質を使った関係が三角比の基本で、基本的な三角比としては、a,cの比率をθの正弦(sine)といい、b,cの比率をθの余弦(cosine)、a,bの比率をθの正接(tangent)と定義する: a/c=sinθ(正弦関数)、b/c=cosθ(余弦関数)、a/b=tanθ(正接関数)
◎
簡単な微積分 ⇒ 1変数(x)の関数(y)は、y=f(x)と表される。変数xの値が変化した時に、xを用いて表された式(関数)yの値が決まることから、xを独立変数、yを従属変数と呼ぶ。
(1) 微分は傾き ⇒ 関数の微分とは、関数の変化の度合い(変化率)を表す
(2) 積分は足し算 ⇒ 関数の積分とは、微分すればその関数になる関数の事だが、図形的にはその関数で囲まれる領域の面積を表しており、面積は微小幅を持つ短冊の足し算に他ならない
3. 物理的準備
◎
自然界に存在する事物や現象に関する量は、原理的には測定・観測が可能で、物理量と呼ばれる。数学で扱う抽象的な数や量と、自然界に実在する物理量との違いは、物理量は必ず単位・次元を持ち、物理量=数+単位という形で表現される
◎
単位の接頭辞 ⇒ SI単位系はフランスで生まれたメートル法に準拠して、1960年パリで開催された国際度量衡学会で採用された国際単位系(アメリカは採用せず)で、10の整数乗倍を表すSI接頭語はきちんと決まっている。T(テラ、1012)、G(ギガ、109)、M(メガ、106)、k(キロ、103)、h(ヘクト、102)、D/da(デカ、10)、d(デシ、10-1)、c(センチ、10―2)、m(ミリ、10-3)、μ(マイクロ、10-6)、n(ナノ、10-9)
◎
主な単位と由来など ⇒ 国際単位系SIでは、長さ(m)、質量(㎏)、時間(s)、電流(A)、温度(K)、物質量(mol)、光度(cd)の7基本単位を使う。他の物量の単位はすべて、これらの基本単位の組み合わせで表現でき、組立単位と呼ばれる
(1) 長さの単位 ⇒ 基本単位はメートル(m)。フランス語。1791年布告。地球の周囲を4万㎞として人為的に決めたが、現在の定義では、光が真空中を299,792,458分の1秒間に進む距離を1mとしている
1天文単位(au)=1.49597x1011m ⇒ 太陽と地球の平均距離
1光年(ly)=光速度x1年=9.46x1015m (auのざっと10万倍) 光の到着年数
(2) 質量の単位 ⇒ 基本単位は㎏。2019年の定義では量子論の定数であるプランク定数を定義値として、エネルギーを勘案して決定
天体の質量は、太陽の質量(「太陽質量」)を単位として測る
(3) 時間の単位 ⇒ 基本単位は秒s。原子的な指標をもとに定義。原子時の1秒は、セシウム133原子のある特定の遷移で放射される光の9192631770周期の継続時間
太陽の周りを回る地球の公転に基づいた時間単位が年(とし)で、1年=3.16x107s
(4) 力とエネルギーと光度 ⇒ 国際単位系SIでの力の単位はニュートンN、エネルギーの単位はジュールJ、放射率/光度(単位時間あたりに放射されるエネルギー)の単位はワットWで、1W=1J/s=107erg/s
天文学では、質量の時と同様に、太陽の明るさを基準にする太陽高度を使うことも多い
(5) 温度の単位 ⇒ 摂氏温度は、水の凝固点を0℃、沸点を100℃とし、その間を100等分したもので、単位は℃。科学の世界では、あらゆる揺らぎがなくなりエントロピーが0となる理想的な極限を0度とする絶対温度を使う。単位はK。絶対温度の1度のメモリは摂氏温度と同じ。換算は、K=℃+273.15
(6) 角度の「単位」 ⇒ 長さや質量のような次元をもった量ではないので、本来は単位(次元)を持たないが、慣例に従って角度の「単位」としておく。角度の測り方には、円周を360°に分割する度数法と、2πラジアンに分割する弧度法がある
度数法では「°(度)、´(分角)、”(秒角)を使って、円周を360°に分割し、1°を60’、1’を60”とする。人間の正常な目の分解能力が1’(分角)ぐらいで、視力表の視力1の隙間のある環(ランドルト環)を標準の5mから見た時、環の隙間を見込む角度が1’(分角)で、視力1というのは、1’(分角)離れたものを見分ける分解能があることを意味
◎
波動の基礎 ⇒ 空気や水などの媒質中で生じた変動が隣接する領域を揺り動かし、周期的な変動が次々と伝わる現象を一般に波とか波動と呼ぶ
波の運動に伴う変位の方向についてみると、波の進行方向と変位の方向が平行な縦波と、波の進行方向に垂直な方向に変位が起きる横波がある
波動が生じるためには、流体に変動が生じた時に、その変動を引き戻すような復元力が必要 ⇒ 音の波である音波は、圧力を復元力とする縦波であり、波が進みがら上下運動する水の波は、水にかかる重力と浮力を復元力とする並みで、波の進行方向と振動方向が直角になっている横波。地震波には、速度が少し早く初期微動を引き起こすP波と呼ばれる縦波と、大きな本震を引き起こすS波と呼ばれる横波がある
波を特徴づける量には、波長と振動数、周期、波の速さ、振幅などがある。波の山と山、谷と谷の間隔を波長とよびλで表す。同じ場所で波を観察した時、1秒間に通過する波の回数を振動数と呼びν(ニュー)で表す。山から山/谷から谷までを周期と呼びTで表す。振動数の逆数になっている。1周期で1波長進むが、それが波の速度でvで表す。ⅴ=λν
平均面から測った波の山の高さまたは谷の深さを振幅Aと呼ぶ。音波や普通の水面波など比較的弱く振幅が小さい波では、、波の性質にとって振幅はあまり関係せず、線形波と呼ばれる。振幅の大きな非線形波と呼ばれる強い波動では、波の伝わり方が大きく異なる。津波は孤立波と呼ばれる非線形波の一種で、遠距離を減衰せずに伝わる。爆発などで生じる衝撃波も非線形波の一種で、非常に大きなエネルギーを蓄えて伝播できる
4. 天文学的準備
◎
惑星記号
惑星や星座を表す記号を天文符号とか天文記号という ⇒ 惑星などの天体を表す記号、黄道十二宮などを表す記号、惑星現象を表す記号などがある
◎
星座記号
太陽の通り道である黄道に沿って、1周360°をおよそ30°の幅で分割したものが黄道12宮で、その領域の星座が黄道12星座。それぞれに動物が割り振られたので獣帯ともいい、それぞれの星座を表す記号が与えられている
第1章
時間と空間と運動
特殊相対論の主舞台である「時間」と「空間」(合わせて「時空」)について、ニュートン的な立場で整理し、あわせて座標系についてもまとめる。位置、速度、加速度についても定義し、空間内における位置や速度の変化=運動についても復習
1. 時間と空間
特殊相対論の主舞台である「時間」と「空間」について、古典的なニュートン力学で整理
2. 座標系と座標変換
「座標系」と「座標変換」について説明。空間内における物体の運動を数学的に取り扱うためには、何等かの座標系を用意しないといけない。通常は直角座標が使われるが、異なる座標系の間では、座標転換が必要
3. 速度と加速度
空間内における位置の時間変化である速度と、速度の時間変化である加速度について、時間微分として定義しておく
第2章
力と運動の法則
特殊相対論は、数学的には座標変換の一種であるが、物理的には空間内における物体や光の運動の理論。本章では、先ず力とは何かをまとめ、次いでニュートン力学における運動の法則を整理
1. 力
身の周りの力から自然界における基本力まで、比較しながら整理
2. 運動の法則
ニュートンの運動の法則について、第1法則、第2法則、第3法則それぞれについて詳述
第3章
質量とエネルギー
アインシュタインの式は、現実の物理世界に存在する実体である質量とエネルギーに関する関係式。現在においてもなお「質量とは何か」「エネルギーとは何か」について、その本質が完全に理解されているわけではない。本章では、エネルギー、そして保存則について、現在までの理解を紹介
1. 質量
質量とはそもそも何なのか
2. エネルギー
エネルギーとは何なのか
3. 保存則と不変量
物理世界の基本則である保存則についてまとめる
第4章
物理量としての時空
E=mc2証明のための基礎として、特殊相対論の基本原理と、物理量としての観測される時間・空間について考える
1. 光速度不変の原理
特殊相対論の基本原理である「光速度不変の原理」と特殊相対性原理を紹介
2. 慣性系と共動系
個々の観測者固有の時空である慣性系と、慣性系から観測した他の運動系を設定する
3. 時間の遅れ
前記の原理と舞台設定の下で、いわゆる時間の遅れを証明する
4. 空間の短縮
ローレンツ=フィッツジェラルド短縮と呼ばれる空間の短縮を導く
5. 同時の相対性
同時の相対性と呼ばれる現象について触れる
第5章
時空と速度の変換
時間と空間を一体的な時空座標として扱い、静止系と運動系の間での時空変換を導出。まず非相対論的な「ガリレイ変換」について考え、続いて特殊相対論における「ローレンツ変換」を考え、さらにそのような時空変換のもとで「速度の変換」も導く
1. ガリレオの相対性原理とガリレイ変換
非相対論的な時空変換として、ガリレイ変換を考える
2. ローレンツ変換
相対論的な時空変換であるローレンツ変換を導く
3. 速度の変換
ローレンツ変換のもとでの速度の変換について、直角座標の場合と極座標の場合の変換式を導く。後者は後の光行差の関係で必要
第6章
時空図と相対論の幾何学
時空の幾何学的な表現について紹介。空間座標を時間まで組み込んだ時空座標へと発展させ、その時空座標(時空図)の上で、様々な変換や不変量がどのように表現されるかを見る。数式で表された相対論の内容について、4次元時空における幾何学的な表現を見る
数式だけで「E=mc2」を導くことは出来るが、目に見える図としてミンコフスキー時空の幾何学を導入することで、相対論への理解が遥かに深まるだろう
1. 時空図とミンコフスキーダイアグラム
道のりと時間の経過を表す、いわゆる時空図について、通常の時空ダイアグラムと相対論におけるミンコフスキーダイアグラムを紹介
2. 時空図でのガリレイ変換とローレンツ変換
ミンコフスキーダイアグラムにおいて、ガリレイ変換がどう表されるか、またローレンツ変換がどう表現されるかを図示
3. 時空図における不変量と世界間隔
時空図の上では相対論的不変量がどのようになるか例示
4. 時空図での時間の遅れと同時の相対性
相対論的な時間の遅れや同時の相対性が時空図上でどうなるかを見る
第7章
ドップラー効果と光行差(光の変換)
光に関する変換の章。光速度で動く光そのものの運動や変換について導出。ドップラー効果と、E=mc2の導出に必要な「光行差」を説明
1. ドップラー効果
運動する光源から到来する光の波長(振動数)が変化するドップラー効果について、特殊相対論的な効果も含め導く
2. 光行差
運動する光源から到来する光の方向が変わる光行差について、極座標での速度の変換をもとに導出。これらは光の変換として基本的な性質だが、同時にE=mc2の証明にとっても有用なツール
第8章
E=mc2の証明
証明方法の基本的手法は思考実験
1. 粒子と光子のエネルギーと運動量
質量をもった物体の運動に伴うエネルギーが運動エネルギーで、質量mの物体が速度vで運動しているとき、その運動に伴う運動エネルギーEは、E=1/2 mv2で表される
質量をもった物体の運動の勢い(衝撃)を表すものが運動量で、運動量pは、p=mv
◎
光子のエネルギーと光電効果
光子のエネルギーは光子(電磁波)の振動数νに比例し、E=hν(h:プランク定数)
光電効果というのは、金属の表面に光を当てると電子が飛び出す現象で、19世紀末から知られていた
◎
光子の運動量とコンプトン効果
光子の運動量は光子の波長に反比例し、p=h/λ で表される
2. アインシュタインの式の証明
質量Mの物体が静止しており、そこに左右から同じエネルギーEをもった光子が2個飛来して、物体が2個の光子を同時に吸収する事象を、静止系と運動系から観測する状況を、思考実験する
静止系で考えた場合と、運動系で考えた場合の両者が同時に成り立つためには、両者で得られた式が同じでなければならないところから、証明が完成
使ったのは、観測者の相対性、光速度不変の原理、光行差、質量保存の法則及び運動量保存の法則だけ
Wikipedia
E = mc2(E equals m c squared)とは、エネルギー E = 質量 m × 光速度 c の2乗
という、質量とエネルギーの関係を示す等式を指す。
この式は「質量とエネルギーの等価性」とその定量関係を表す。アルベルト・アインシュタインにより、1907年に発表された。
この式は状況を限定せずに成り立つとされ、多くの場面で「『物質とエネルギーが可換』であることを意味する式」という風に解説されている。
すなわち
・物質あるいは物体と呼ばれるものが消失して相応量の熱や光が発生することがある。逆に熱や光を元に物質/物体が発生しうる。
・熱や光の量と物質の量の和(厳密に言うなら一方を他方に換算したときの和)は変化しない。
詳細は「対生成」を参照
目次
内容[編集]
特殊相対性理論は、「物理法則は、すべての慣性系で同一である」という特殊相対性原理と、「真空中の光の速度は、すべての慣性系で等しい」という光速度一定の原理を満たすことを出発点として構築され、結果として、空間3次元と時間1次元を合わせて4次元時空として捉える力学である。運動量ベクトルは、第0成分にエネルギー成分を持つ4元運動量 pμ(または p)として扱われ、運動方程式は
{\displaystyle
{\frac {d}{d\tau }}p^{\mu }=F^{\mu }}
と拡張される。4元運動量の保存則から、エネルギーは一般的に β = vc として次のように表される。
{\displaystyle
E^{2}=m_{0}^{2}c^{4}+\mathbf {p} ^{2}c^{2}=\left({\frac {m_{0}}{\sqrt {1-\beta
^{2}}}}\right)^{2}c^{4}}
ただし m0 は静止質量である。物体が運動していない場合、つまり p = 0 の場合のエネルギーを表す式は、
{\displaystyle
E=m_{0}c^{2}}
である。物体が運動している場合、相対論効果によって以下のように質量が増える。
{\displaystyle
m={\frac {m_{0}}{\sqrt {1-\beta ^{2}}}}}
したがって、物体が運動している場合にも
{\displaystyle
E=mc^{2}}
が成り立つ。
この式は、質量とエネルギーが等価であることを意味する。反応の前後で全静止質量の和が Δm だけ減るならば、それに相当する Δmc2 のエネルギーが運動、熱、あるいは位置エネルギーに転化されることになる。
なお、これは原子核反応に限ったものであるという誤解があるが、実際には原子核反応の観測により実証されたというのが正しい。質量とエネルギーが等価であることは、原子核反応に限った話ではなく、全ての場合において成り立つ。例えば、電磁相互作用の位置エネルギーに由来する化学反応では、反応の前後の質量差は無視できるほど小さい(全質量の 10−7 % 以下[注 1])が、強い相互作用の位置エネルギーに由来する原子核反応ではその効果が顕著に現れる(全質量の 0.1 - 1 % 程度)というだけの話である。水力発電のような重力の位置エネルギーに由来する場合であっても、質量とエネルギーの等価は成り立つ。
この関係式で、質量 1 kg をエネルギーに変換すると、光速度 c = 299792458 m/s であるから、次のようになる。
8.9875517873681764×1016 J と等価
2.4965421632×1010 kWh と等価
広島に投下された原子爆弾で核分裂を起こしたのは、爆弾に詰められていたウラン235(約50 kg)だが、実際に消えた質量は 0.7 g 程度だったと推測されている。一方、反物質が通常の物質と対消滅反応すればその質量が100%エネルギー変換されるため、核反応とは比較にならない莫大なエネルギーが発生する。逆に対生成で物質や反物質を得るにはそれだけの莫大なエネルギーを要する事になる。
特殊相対性理論の中でも本項の式が特に有名であるため、十分に理解されないまま使われることも多い。例えば前述の通り、反応の前後で全静止質量の和が Δm だけ減るならば、それに相当する Δmc2 のエネルギーが運動、熱、あるいは位置エネルギーに転化されると言うこと、或いはその逆を表すのがこの関係式であるが、それ以外のいかなる場合も E = mc2 であるとして特殊相対性理論を誤って解釈したり、その誤った解釈を元に特殊相対性理論は間違っていると主張されたりすることも少なくない。
質量とエネルギーの等価性は「宇宙に始まりがあるのなら、どうやって無から有が生じたのか?」という、ある意味哲学的な問題にも、ひとつの解答を与える事となった。宇宙の全ての重力の位置エネルギーを合計するとマイナスになるため、宇宙に存在する物質の質量とあわせれば、宇宙の全エネルギーはゼロになるというのが、解答である[1][注 2]。
証明[編集]
この E = mc2 と言う関係式は、アインシュタインによる公式の中で最も有名なものではあるが、経験則に基づく仮説として、長年の間厳密な証明はされないままであった。しかし、原子核の核子を構成するクォークと核子同士を結び付けるグルーオンは、それぞれ質量が全体の5%および0であるにもかかわらず、これらクォークとグルーオンの動きや相互作用によって発生するエネルギーが原子核の質量の源となるという論文が、2008年11月21日発売のアメリカの学術誌『ネイチャー』に掲載された[2][3]。このことにより、これまでは仮説だったこの関係式が、ようやく実証されたことになる[3][4]。
脚注[編集]
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注釈[編集]
^ 言い換えると10億分の1以下。
^ もちろん、これだけでは説明がつく訳ではなく、様々な理論が関わってくる。
出典[編集]
^ Hawking (1989, [要ページ番号])
^ a b “欧州物理学チーム,特殊相対性理論の「E=mc²」をついに証明”. AFPBB News (AFP通信).
(2008年11月23日) 2016年12月7日閲覧。
^ “D'où
vient la masse du proton?” (プレスリリース), CNRS, (2008年11月20日) 2016年12月7日閲覧。
参考文献[編集]
論文[編集]
Einstein, A. (September 27, 1905). “Ist die Trägheit eines Körpers von seinem
Energieinhalt abhängig? [物体の慣性はその物体の含むエネルギーに依存するであろうか]” (German) (PDF). Annalen der Physik. Ser. 4 (Weinheim: Wiley-VCH
Verlag(ドイツ語版、英語版)) 323 (13): 639–641. Bibcode: 1905AnP...323..639E. doi:10.1002/andp.19053231314. ISSN 0003-3804. LCCN 50-13519. OCLC 5854993.
S. Dürr;
Z. Fodor; J. Frison; C. Hoelbling; R. Hoffmann; S.D. Katz; S. Krieg; T. Kurth
et al. (14 July 2008). “Ab-initio Determination of Light Hadron
Masses” (PDF). Science (Washington DC: AAAS) 322 (5905): 1224-1227. arXiv:0906.3599v1. doi:10.1126/science.1163233. ISSN 0036-8075. JSTOR 20145328. LCCN 17-24346. OCLC 1644869.
真貝 寿明「質量とエネルギー 相対論の視点から」『数理科学』第41巻第12号、サイエンス社、2003年11月20日、 ISSN 0386-8257、 ASIN B00GDIKC2E、全国書誌番号:00012722。
書籍[編集]
Einstein, A.『アインシュタイン選集1―特殊相対性理論・量子論・ブラウン運動―』中村誠太郎・谷川安孝・井上健訳・編、湯川秀樹監修、共立出版、1971年3月1日。全国書誌番号:69018983。ISBN 978-4-320-03019-0。NCID BN00729724。OCLC 834568557。ASIN 4320030192。
Hawking, Stephen William『ホーキング宇宙を語る』林一訳、早川書房、1989年6月。全国書誌番号:89046292。ISBN 4-15-2034017。NCID BN03533627。OCLC 21534683。ASIN 4152034017。
関連項目[編集]
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広島市立舟入高等学校 - 占領下に建立された慰霊碑には「原爆」に代えて E = mc2 が刻まれている
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