雪夢往来 木内昇 2026.1.19.
2026.1.19. 雪夢往来 ( せつむおうらい ) 著者 木内昇 ( キウチノボリ ) 1967 年生まれ。出版社勤務を経て独立し、インタビュー誌「 Spotting 」を創刊。編集者・ライターとして活躍する一方、 2004 年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。 2008 年に刊行した『茗荷谷の猫』が話題となり、早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。 2011 年に『漂砂のうたう』で直木賞を受賞。 2013 年に刊行した『櫛挽道守』は中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞した。他の作品に『よこまち余話』『光炎の人』『球道恋々』『火影に咲く』『化物蝋燭』『万波を翔る』『占』『剛心』『かたばみ』『惣十郎浮世始末』など多数。 発行日 2024.12.15. 発行 発行所 新潮社 初出 『小説新潮』 2020 年 10 月号~ 2021 年 10 月号、同 12 月号から 2022 年 1 月号 第1章 越後国頸城郡 ( くびきごおり ) の松之山にある菱山は、決まって毎年如月に雪崩を起す。近隣の村にも地鳴りとなって響き渡るほどの大きさ。儀三治 ( ぎそうじ ) は幼い頃、白衣を着た白髪の老人が供物を手に雪崩に乗って山を滑り降りるという奇談を聞かされていた 越後国は 7 つの郡からなり、頚城は最西端、内陸には古志 ( こし ) 郡その南が魚沼郡 儀三治の生まれ育ったのは塩沢組塩沢村は魚沼郡の南端にある上州境にあり、家の前には中山道の高崎宿へと繋がる三国街道が通る。儀三治は生まれつき耳の塩梅がよくない 「斑猫(ハンミョウ)」とは、鮮やかな色彩を持つ肉食性の甲虫で、人や獲物に気づくと数メートル先へ飛んで逃げる習性から「道教え」「道しるべ」とも呼ばれ、美しい姿と俊敏な動きが特徴の昆虫...