重要証人 ウィグルの強制収容所を逃れて  Sayragul Sauytbay  2021.10.23.

 

2021.10.23. 重要証人 ウィグルの強制収容所を逃れて

Die Kronzeugin        2020

 

著者 

Sayragul Sauytbay サイラグル・サウトバイ 新疆ウィグル自治区出身のカザフ人。1976年、イリ・カザフ自治州生まれ。元医師・幼稚園園長。1711月~183月新疆の少数民族を対象とした強制収容所に連行され中国語教師として働かされる。解放直後、自身が収容者として収監されることを知って故国の隣国カザフスタンに逃れるが、不法入国の罪に問われ同国で裁判を受ける。この裁判で中国政府が「職業技能教育訓練センター」と称する再教育施設の実態と機密情報について証言、裁判は一躍世界的な関心を呼び、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、フランクフルター・アルゲマイネ、ツァイツゥングなどの主要メディアで報じられる。カザフスタン政府は亡命申請を却下、滞在許可が切れる直前の196月に国連のとりなしでスウェーデンに政治亡命。現在安住の地となったスウェーデンで夫、娘、息子の4人で暮らす。中国の強制収容所の実態については現在も積極的に発言を行い、その活動に対して20年にアメリカ国務省から国際勇気ある女性賞IWOC21年にはニュルンベルク国際人権賞が授けられた

Alexandra Cavelius アレクサンドラ・カヴェーリウス ドイツのフリー・ジャーナリスト。多数の有力誌に寄稿するほか、政治問題に関するノンフィクションを刊行して高い評価を得ている。主な著書に、ノーベル平和賞の候補に繰り返し選ばれているラビア・カーディルの半生を描いた『ウィグルの母 ラビア・カーディル自伝――中国に一番憎まれている女性』がある。本書は、サウトバイとの何度にもわたるインタビューに基づいたもの

 

訳者 秋山勝 立教大卒。日本文藝家協会会員。出版社勤務を経て翻訳の仕事に

 

発行日           2021.8.6. 第1刷発行

発行所           草思社

 

 

第1章        過去の亡霊

43歳、既婚。収容所に入る前は新疆ウィグル地区に住み5つの幼稚園を運営

自治区は古くからウィグル人が住む土地で、私達カザフ人は2番目に大きな民族集団。外にもモンゴル、キルギス、タタール人などがいる

元東トルキスタン、1949年中国が侵攻、55年に新疆ウィグル自治区成立。「新疆」とは「新たに加わった領域」の意

2016年以降、世界最大の監視国家に変貌。300万以上が1200を超す収容所に拘留されるが、誰も裁判は受けておらず、北京の指示により民族そのものを根絶する意図がある

私は収容所の職員・教師として働く

中国政府は、「職業技能教育訓練センター」と称して収容所の存在をカムフラージュする

2019年、西側の代表団がジャーナリストを伴って東トルキスタンに入ると声明を出した途端に、収容所は普通の学校に変わり、重装備の警備員は姿を消し、学校を追われた元教員が強制的に徴募され授業を始める。代表団に聞かせるため教師と生徒は全員党の用意した文章を暗記させられ、間違えた者は収容所に消えていった

スウェーデンに亡命後も、中国政府・共産党関係者からの脅迫電話は止まらないが、スウェーデン政府はじめ周囲に勇気づけられ、重要証人としてスウェーデンの外務省や欧州議会で中国による理不尽な抑圧政策の詳細を陳述し続ける

 

第2章        中国の侵略と破壊――輝く未来と生活の安定を夢見て

1976年、カザフ人の住む村に生まれる。イスラム教を信仰、半遊牧生活を送っていたが、81年頃に150世帯が天山山脈の麓に定住

1933年、東トルキスタン共和国崩壊、その帰属を巡り「グレート・ゲーム」の時代となり、中英ソが覇権を競い合う

44年、ウィグル・カザフのムスリム勢力が結集して、中国が軍閥の抗争の間隙を縫って第2次トルキスタン共和国独立を宣言するが、主席が謎の失踪を遂げ、人民解放軍に占拠され、最終的には55年ムスリムに自治が認められ、戦乱が鎮まる

6676年の文化大革命では、紅衛兵によって家畜などすべての財産を没収され、恐怖政治の亡霊が残る

80年代前半、中国人兵士の一団がやってきて要塞を作り、さらに中国人が入植し始めると村人たちから収奪し富を築き上げてゆく

89年の天安門事件でも、その後もトルキスタンの抵抗運動やウィグル人が差別と圧政に反旗を翻したが、残忍な暴力によって踏みにじられる

1991年、ソ連解体に伴い、カザフ・ソビエト社会主義共和国(現カザフスタン共和国)も独立国家共同体に移行、新疆からも国境を越えてカザフの親戚に会いに行ったが、中国政府は自国内の独立の動きを徹底的に封じ込める

199397年、町の中心部の大学の医学部に通う。まだその頃はムスリムでも学籍が取得できた。いつの間にかカザフ語は封じられ中国語に統一された

解剖の実習は、学生が自由に使える健常な肝臓や心臓が豊富にあった。江沢民が「法輪功」を邪宗と定めてからは白昼堂々と拉致されるケースが増え、国全体でも自主的な臓器提供者を遥かに超える臓器移植が行われている。2009年時点で政府が死刑執行囚人の2/3から臓器を摘出していることを認めているし、高額で取引される中国の臓器売買は闇市場の犯罪集団ではなく、中国共産党によって行われている

在学中に帰省するたびに故郷の村の風景は痛めつけられていく。大地がショベルカーで掘り起こされ、山が鉱山としてくり抜かれた。鉱物資源に恵まれた周辺地域を「漢化」していく事業が進められ入植者も急増。泉が涸れ、地元では飲み水を失う

1997年、医師の試験に合格し、中心都市の病院に就職

2017年、北京政府はイスラム教を象徴するものはすべて排除するよう先住民に命じ、排除の対象は、イスラム教のシンボルである三日月と星から故人の墓石にまで及ぶ

母親の容体が悪化、2年で病院を退職、村に帰って看病しながら小学校で中国語を教える

北京政府は公的機関で働く者には漏れなく入党を義務付けたため、01年やむなく入党

中国人が東トルキスタンに目を付けたのは、豊富な鉱物資源のほかに、労働力と綿花栽培の中心地だったからで、地元民は劣悪な環境での労働を強いられた

教員訓練所で出会った同僚のカザフ人と結婚するが、直後両親が重篤な病気で倒れ、家畜もいなくなり、さらに妹が自動車事故に遭うという不幸に見舞われる

 

第3章        口をテープでふさがれて

家畜を買って食物を栽培、市場で売って生活の足しにした

06年、中国政府は「双語教育」として母語と中国語の2言語を学ぶよう義務付け、さらに教師の8割を中国人とした

中国政府は、「1つの国民」を強調、1700万人のウィグル人と300万のカザフ人がいたにもかかわらず、人口は1100万と150万と言われ、血も涙もない同化政策を推進

小学校でもいきなり読み書きも出来ない中国語の宿題が山と出され、カザフスタンに移住しようとしてもパスポートの発給がままならなかった

間もなく自己批判の強制が始まり、大量収監の口実に使われる

ウィグル人少女のレイプ事件が暴動事件に発展、鎮圧に兵士が介入する格好の口実となった上に、鎮圧後は大量の粛清が始まり、大勢の無実のウィグル人とカザフ人が殺された

2014年、中国人の暴力的な漢化政策に対し教育を受けたカザフ人が抵抗し、ウルムチ市のカザフ人と中国軍との間に大きな衝突が勃発。中国政府は、国外の狂信者がウィグル人をたきつけて暴力行為に走らせていると説明し、圧倒的な力を誇示して鎮圧

子供は幼稚園でカザフ語で話すのを禁じられ、日中は口にテープが貼られた

公務員はパスポートを取り上げられ、国外脱出の道を断たれる

2016年、夫と子供二人がカザフスタンに脱出

 

第4章        監獄よりも劣悪な環境――世界最大の監視国家

2016年、習近平はチベット自治区党書記を東トルキスタンの自治区党書記を新たに任命

彼は7年間チベット民族の文化と生活様式の破壊を指揮した実績を積んだが、チベットの僧侶たちはガソリンを浴びて抗議の焼身自殺をしていた

公務員以外もパスポートは取り上げられ、道路には50100mごとに検問所が設けられ、公共施設には無数のビデオカメラが設置、住民は身体検査受検が義務付けられ、身体データに声のサンプルまで取られて警察に流された

突然ムスリムの公務員だけが集められ、イスレム原理主義者の脱急進化のための再教育収容所の設置が告げられる

中国当局は、ウィーチャット、電話、インターネットを介したカザフスタンと中国間の通信を遮断。SNSのアプリは全て禁止。電子機器を警察に提出させられ、スパイウェアを仕込まれる、すべての通信が検閲された

国外に親戚や友人がいる者を拘束し始め、逮捕者は倍増。次いでムスリムやイスラム教的な響きを帯びた名前をすべて中国名に変えさせる。男性は髭を剃るのを拒否しただけで7年間収容所送りに

2020年以降、東トルキスタンの国境を封鎖するとの噂を、中国政府が故意に広め、後に正式に否定する。正式に否定することによって機密情報を公表するのは中国政府の常套手段

 

第5章        完全なる支配――尋問とレイプ

2017年、突然警察に連行され、カザフに行った家族のことについて尋問。その後も7,8回連行

中国人とカザフ人を対象にした「家族になろう」というプログラムは、カザフ人が毎月8日間、中国人家族と生活を共にするというもの。体のいい召使と凌辱が待っている

 

第6章        収容所――地獄を生き延びる

2017年末、突然当局に呼び出され、再訓練センターに連行され、中国語の教師・通訳として働くことになる。囚人に比べて若干扱いは良かったが、自由のないことは同じ

6時前に起床してから午前0時の就寝まで、四六時中監視と教育、不都合があればすぐに別の再教育プログラムが待っている。0時から1時間の見張り番が追加の仕事

巨大な集会場全体に響き渡る収容者の悲鳴を聞く。どのように苛まれているかが目に浮かぶ悲鳴で、その声は私の全身の毛穴に染み込んでいった

突然「機密情報」が届けられる――北京からの指示による「中国政府の3段階計画」で、①最初の10年間は新疆において同化する意志ある者は同化させそうでないものは排除、②次の10年間は国内の同化を完了し近隣諸国を併合、③最後の20年間でヨーロッパを占領

さらに、「命令書21号」では、「収容所で死亡した者は、何の痕跡も残さず処分しなければならない」とある

中国に最も敵対する国のリストは26か国、最悪がアメリカで、第2位が日本

2018年、新たな大集団が収容所に連れてこられ、中にいた老婆が私を見てカザフ語で助けを求めてきたのを咎められて黒い部屋と言われた拷問部屋に押し込められ電気椅子に座らされる

 

第7章        「収容所で死ぬくらいなら、命がけで逃げよう」

数カ月の拘束の後釈放され、また元の幼稚園の園長を続けるよう言われたが、出勤の翌日には解任され、今度は秘密警察から3年の再教育を宣告される

警察にいたカザフ人の友人から、数日後には収容されるとの情報を貰って国外脱出を決行、国境の自由貿易地域の入場許可書を大金を払って取得、カザフスタン側の国境もなんとか潜り抜け、家族の住む町に向かい、2年ぶりの再会を果たす

すぐに中国政府からカザフスタンに対し引き渡し要求が出され、秘密警察に連行される

中国の支配に苦しむカザフ人同胞を守る活動をする団体が私の状態を見て助けに乗り出し、既に家族がカザフスタンにいるところから、強制送還の法的根拠が乏しいことがわかる

 

第8章        カザフスタン――北京政府に介入される国

州裁判所での審判が始まり、中国の収容所でどのような犯罪行為が行われているのか、勇気をもって事実を公の場で証言することに。裁判官はカザフ人女性、検察官はウィグル人

通常ロシア語が使われるが、故郷のカザフスタンに来たのだからカザフ語で証言すると主張、検事も同調して極めて例外的にカザフ語での審理が始まり、家族との面会も許可

支援団体が大規模な抗議行動を組織したこともあって、私の国外追放は困難に

問われているのはカザフスタンへの不法入国だったが、その背景にあった新疆ウィグル自治区での中国政府の全住民に対する弾圧の現状を証言し、イスラム教徒への大量虐殺の事実を暴露

裁判長は、私の釈放を求めて熱心に活動してきた海外の数々の機関を読み上げた。国連や欧州議会、各国大使などが、大統領に掛け合い影響を与えていた

裁判4日目で判決。6か月の自宅での禁足処分のみで、亡命希望者を示す一時的なカードが与えられ、自由の身となる

翌日の『ニューヨーク・タイムズ』やBBCなど世界の主要メディアが東トルキスタンの収容所生活を報じる

同時に、中国に残してきた家族が一斉に拘束され、カザフスタンの自宅も荒らされていた

その後何回も亡命申請するが却下され続け、中国の秘密警察の手が回っているのか、子供達も含めて家族への脅しや嫌がらせが続く

 

第9章        ウィルス――世界への警告

14か月後、滞在許可期限失効の3日前にスウェーデンが受け入れを表明

支援者の協力を得て、カザフスタンでの亡命申請が認められることを期待したが、独裁国家のカザフスタンは中国に大きな債務を負って身動きが取れず、願いは叶えられなかった

スウェーデンは暖かく迎え入れてくれたが、物質的には恵まれていても、精神的な孤独感は如何ともし難い。そんな状況を改善してくれたのは、スウェーデンの人々の温かい配慮

外務省から招かれ、中国の収容所の状況について声明を発表

2020年、アメリカ国務省が07年から授与する「国際勇気ある女性賞」が授与される

北京政府は安価な製品で各国の市場を圧倒し、手厚い融資を提供して世界各地に密かに足場を築きつつある、彼等の長期的な目標は、中国が独占的な地位を獲得し、新しい世界秩序を確立すること。中国政府と共産党は、長い時間をかけて世界中の大学に手を伸ばし、経済界や政界のエリート、オピニオン・リーダーたちへの影響力を強めてきた。ヨーロッパを分断するため、ポーランドやハンガリーなど東欧の右派諸国を巨額の融資で取り込み、国外に逃れた自由な考えの持ち主たちを迫害し、メディアや大学に圧力をかけ、携帯電話網の構築と管理を提唱することで、他国に中国の検閲システムを輸入させてきた

その結果、自由主義国でも、中国の収容所を批判したサッカー選手が競技から締め出されたり、広告でダライ・ラマの言葉を引用したメルセデスが北京政府への謝罪に追い込まれたり、ルフトハンザは台湾を「中国台湾」と呼ぶような児戯に等しい真似をしている。自由世界の企業や国民が、人権よりも経済的な利益を重んじる限り、私達は悪魔に魂を売り続けることになる

ドイツ政府は、他の22か国とともに、中国の収容所で行われている人権侵害を非難したが、一方、東トルキスタンで暮らす信仰上の兄弟姉妹に対して、連帯を表明したイスラム教国は1つもない。ロシア・シリア・ミヤンマーなど37か国は、中国の新疆政策を支持する共同書簡を国連人権理事会に提出。中国は融資や投資によって37か国の忠誠心を買い、彼等をますます中国に依存させるよう仕組んでいった。中国政府が約束した繁栄と豊かな生活は実現しないどころか、借金が膨らみ、中国に対して生活インフラを売り渡してきた。一国の権力者が自国の富をすべて中国に売り払ってしまえば、結局その国の人達には何も残らなくなってしまう

ドイツにとっても、中国は極めて重要な貿易相手国だが、人権を優先する先見性を持っていて、惨めで苦しい生活を送る地球上のすべての人に希望を与える

2019年以降の新型コロナ・ウィルスでも中国共産党が一挙に放った悲劇が世界中に影響をもたらしたが、それより恐ろしいのは、現在東トルキスタンで開発中の独裁国中国という心のウィルスで、猛威を振るって世界中にくまなく広がりつつあり、民主主義国家に対する独裁国家の優位性を証明しようとしている

世界全体の問題として、このウィルスを理解することが如何に重要であるか。私が願うのは、中国共産党と北京政府が脅かしているのは自国民だけでなく、地球上のすべての国の人々なのだという事実を世界の人達に気づいてもらうこと

 

あとがき  アレクサンドラ・カヴェーリウス

本書の影響は刊行直後からはっきりと表れた。サイラグルへの脅しの電話が鳴りやむことはない。彼女は勇敢な人権活動家で、ウィグル人やカザフ人などイスラム系少数民族のために平和・正義・自由を求めて戦い続けている

14年前の私の最初の著書『ウィグルの母 ラビア・カーディル自伝――中国に一番憎まれている女性』のインタビューの時も通訳が中国政府からの圧力で、重要資料を隠そうとして混乱させたが、今回も人権団体から信頼できると言われた人物を選んだにも拘らず、収容所に関する重要な情報を隠すようになった

サイラグルは、人目のないところで必死に収容所の後遺症と闘っていた。心的外傷後ストレス障碍に悩まされており、激しい動悸や恒常的な吐き気など様々な症状が現れ、彼女の消化器官は激しく損傷されていた。常に蘇ってくる過去の情景に翻弄されるまま、高鳴る動悸を抑えるように胸に手を当て、目をつむり、呻き声を上げる

インタビューを受けるたびに、あの忌まわしい記憶が蘇ってくるが、彼女がその苦しみに耐えているのは、祖国で拷問を受けている罪のない子供や女性、老人や男性の存在を世界に訴えるためであり、真相を公にすることで、言うに耐えないほどの彼等の苦難にいつの日か終わりがもたらされることを願っている

ドイツの公的機関にも中国の諜報機関がスパイを潜り込ませており、看過できる事態ではないと警鐘が鳴らされ、ドイツ外務省はホームページから台湾の国旗を削除し空白にしたり、「中国を批判する時、連邦政府は自己検閲を推奨する」とのニュースが流れたが、ドイツ人は今後、中国を批判する際には注意せよと自国の外務省が警告している

香港国家安全維持法によって、中国共産党には北京政府を批判したものを誰でも逮捕できる権限が授与された。その対象には、中国を逃れて海外で暮らす自由を訴える思想家や、中国を移動する単なる旅行者も含まれる。このような容疑での告発は通常、分離主義、もしくはテロリズムと呼ばれる

近時の中国にまつわる諸々のニュースからは、中国共産党幹部が世界に対してどのような野心を抱いているかだけでなく、ドイツのような民主主義国家においてさえ、中国政府の手がどれほど伸びているのか、その事実が明らかになってくる。これ程圧倒的な証拠が存在するにも拘らず、世界中の政治家やジャーナリスト、政策決定者の多くは、自分の目と耳で見聞きした事実を信じようとはしない。中国共産党が勢力範囲を執拗に拡大していく様子を見て見ぬ振りをしている

彼等の残虐行為を世界が黙認し続ける限り、ますます多くの罪のない人たちが命を落としていく

 

解説 真実の声は必ず世界の知るところとなる――櫻井よしこ

2021年、英国での先進7か国首脳会議で、西側諸国は結束し、私達人類が守るべき価値観を鮮やかに掲げた――中国共産党政権の価値観は断じて受け入れないという決意表明であり、とりわけ新疆ウィグル自治区における民族浄化を念頭にした中国批判で、中国は国際社会で孤立

中国市場の経済力に引きずられながらも、先進諸国は明確に中国共産党批判の旗を掲げたが、彼等は国際社会の批判に耳を傾けるかわりに、共産党政権を批判してきた香港唯一の自由メディアを廃刊に追い込む

トランプ政権が断じた「中国共産党によるウィグル・ジェノサイド」という非難は正しかった。チベット人やモンゴル人にも同様の措置が取られた

我々は、助けを求める彼等の声を聞き、すぐに行動を起こさなければならない

中国共産党は、2049年の建国100年には世界の諸民族の中で中華民族が聳え立つ世界にすると決意している。それは、自由や民主に対する大弾圧を意味する

21世紀の人類社会に生まれたこの怪物、中国共産党と習近平に、我が国はどう向き合っているか――先進7か国による共同メッセージを発信していながら、日本だけ行動が伴っていない。中国の人権弾圧に抗議する非難決議さえできていない

日本は力を持つアジアの大国。中国に最も近い国の1つである。長い交流の歴史の中で中国とは正反対の日本らしい価値観を養ってきた国である。その全てを意識して、中国共産党の悪に向き合うときだ――国家として、国民として、中国共産党非難の意思表示を鮮明にしなければならない

 

 

Wikipedia

新疆ウイグル自治区(シンチャンウイグルじちく、しんきょうウイグルじちく、ウイグル語شىنجاڭ ئۇيغۇر ئاپتونوم رايونی / Shinjang Uyghur Aptonom Rayoni中国語新疆自治区)は、中華人民共和国自治区で、中央アジアに近い北西部に位置している。省または自治区としては中国最大であり、世界で8番目に大きな国家行政区画である。160万平方キロメートル (km2)以上の広さを持ち、約2500万人の住民がいる[1]

l  概要[編集]

新疆ウイグル自治区はモンゴルロシアカザフスタンキルギスタンタジキスタンアフガニスタンパキスタンインドといった国々と国境を接しており、国境の大部分は、標高数千米の険しいカラコルム山脈崑崙山脈天山山脈が占めている。中国が統治するアクサイチン地域は、インドが領有権を主張している。また、新疆は、チベット自治区甘粛省青海省とも接している。シルクロードの最も有名なルートは、新疆ウイグル自治区の東から北西の境界までを通っている。

領土内には、テュルク系ウイグル人、カザフ人キルギス人、漢族チベット族回族タジク人、モンゴル族ロシア人シベ族など、多くの民族が暮らしている[2]。新疆には、十数個の少数民族の自治県や郡がある。古い英語の参考文献では、この地域を中国のトルキスタン[3]、東トルケスタン[4] 、東トルキスタン[5]と呼ぶことが多い。新疆は、山脈によって北のジュンガリア盆地と南のタリム盆地に分かれている。新疆の土地面積のうち、人間の居住に適しているのは約9.7%に過ぎない[6]

少なくとも2,500年の歴史を持つ新疆ウイグル自治区では、多くの人々や帝国がこの地域のすべて、または一部を支配しようと競い合ってきた。18世紀には朝の支配下に置かれ、その後、中華民国政府に取って代わられた。1949年の中国内戦以降は、中華人民共和国の一部となっている。1954年、ソビエト連邦に対する国境防衛を強化するとともに、兵士を地域に定住させることで地域経済の振興を図るため、新疆生産建設兵団 (XPCC) が設立された。1955年、新疆は省から自治区へと行政が変更された。ここ数十年、新疆では豊富な石油・鉱物資源が発見されており、現在は中国最大の天然ガス産出地となっている。1990年代から2010年代にかけて、東トルキスタン独立運動、分離独立紛争、イスラーム過激派の影響により、この地域では時折テロが発生したり、分離独立派と政府軍が衝突するなどの不安が生じている[7]。これらの内紛を受けて、中国政府はこの地域に強制収容所を設置し、イスラム教徒を思想改造しようとした[8][9][10][11][12]。これらの措置は、海外ではウイグル人大量虐殺と総称されている[13]

本来中国には時差が設定されていないが、新疆では非公式に北京時間 (UTC+8) より2時間遅れの新疆時間 (UTC+6) が使われている[14]

l  歴史[編集]

詳細は「新疆の歴史」を参照

清朝以前[編集]

古代中国から西域と呼ばれたこの地域は中央アジアや中国との政治的・経済的な繋がりを古くから有し、オアシス都市国家が繁栄し、代と代には、中国の直接支配下に置かれた時期もあった。

煬帝大業5年(609)、煬帝が自ら隋軍を指揮して吐谷渾を征服、現在の新疆南東部を実効支配し始めた。中原王朝が西域の実効支配もその時期から始めた。

唐の太宗貞観14年(640)、唐軍が高昌を占領し、西州を設置した。また可汗浮図城において庭州を設置した。同じ年、高昌で安西都護府を設置。後庫車へ遷し、安西大都護府へ転換。

唐代後期、ウイグル帝国の支配下に入り、9世紀、ウイグル帝国が瓦解したのちも、ウイグル人の残存勢力による支配が続いた。

13世紀、モンゴル帝国の勃興によりその支配下に組み込まれ、チャガタイとその子孫による支配が行われた。16世紀に至りヤルカンド・ハン国が地域を統一したが、17世紀末ジュンガルに征服された。

清朝[編集]

1755にジュンガルにおける清朝の領域はほぼ確実なものとなった。 1775以降、のジュンガル征服(清・ジュンガル戦争)にともなってその支配下に入るに至り、「ムスリムの土地」を意味するホイセ・ジェチェン (Hoise jecen; 回疆)、「新しい土地」を意味するイチェ・ジェチェン (Ice jecen; 新疆) などと清朝側から呼ばれた。

19世紀には各地で反清反乱が相継ぎ、ヤクブ・ベクの乱によって清朝の支配は崩れたが、左宗棠により再征服され、1884中国内地並の省制がひかれて新疆省となった。この時左宗棠 「他族逼処、故土新帰」と上奏したのが新疆省の名称の由来[15]

中華民国以降[編集]

辛亥革命の後、清朝の版図を引き継いだ中華民国に属しながらも、漢民族の省主席によって半独立的な領域支配が行われた。これに対して19331944の二度にわたって土着のムスリム(イスラム教徒)によって民族国家東トルキスタン共和国の建国がはかられたが、国共内戦で東トルキスタン共和国のセイプディン・エズィズィと新疆省のブルハン・シャヒディらが中国共産党に帰順したことでこの地域は中国人民解放軍が展開し、1955に新疆ウイグル自治区が設置された。

1966には自治区内に文化大革命が波及。こと文革に関しては、少数民族を多く抱える同自治区の闘争は中国の他地域と比較してある程度は抑制されていたというが、それでも一部で行なわれたモスクの破壊や紅衛兵同士の武装闘争により、混乱に拍車がかかった。

1980年代以降[編集]

文化大革命が終結し、言論統制の緩和がなされた1980年代から1990年代には、ウイグル人住民の中で、グルジャ事件など新疆ウイグル自治区における民族自治の拡大を求める動きや国外の汎トルコ主義者が独立を主張する動きも見られ、度々暴動テロが起きていた。

長らく新疆を統治していた自治区党委書記の王楽泉2009年ウイグル騒乱の暴動の責任をとらされて更迭され、経済発展と民族融和を重視する張春賢が後任に就くもテロは止まず、20144月にウルムチ駅爆発事件が起きた際は当時ウルムチを視察していた習近平総書記国家主席が「対テロ人民戦争」「厳打暴恐活動専項行動」を打ち出し[16][17][18][19][20]20145月、習近平が主宰した第二次新疆工作座談会で「社会の安定」が最優先事項として掲げられ、習近平は新疆ウイグル自治区の人々に徹底的に「中華民族」意識を植え付ける「中国化」を強調し、三毒(テロリズム分裂主義宗教極端主義)との徹底的な闘争を唱え、「生産力の発展こそあらゆる問題を解決する」という唯物論者らしい発想のもと、イスラム的トルコ的価値観ではなく、中国共産党こそ幸福を提供する存在であることを知らしめるために民生と経済の発展を掲げた[21]

2016には陳全国朱海侖中国語版)を自治区党委書記と党委副書記兼政法委員会書記にそれぞれ抜擢して新疆ウイグル再教育収容所など徹底的な管理統制が行われるようになった[22][23][24]。自治区党委書記に就任した陳全国は、自治区党委員会に「厳打攻堅会戦前方指揮部(三毒分子に徹底的な打撃を加えて攻撃防御する会戦の前線指揮部)」という名の戦時体制的司令塔を設け、インターネット文化メディアを統制し、ウイグル人カザフ人が誇る独自な文化的伝統について、あたかも存在しなかったかのように抹消する作業を進めた[21]。「厳打攻堅会戦前方指揮部」は、国家が厳格に管理している個人檔案(社会主義国特有の個人情報・思想ファイル)と公安情報、出入国情報、現実の個々人の言動、行動記録、家族関係、友人関係などをITで高度に紐付け、人工知能で評価する「一体化聯合作戦平台(プラットフォーム)」を運用し、三毒(テロリズム分裂主義宗教極端主義)分子になりうる人々を点数化しふるいにかけ、僅かでも陳全国が設定した許容範囲を超えた人々を容赦なく「職業技能教育培養訓練転化センター」と称する疆ウイグル再教育収容所に送り込み[21]、収容者に華語教育を施して「トルコ系スリムとして生まれたことを罪と認識し、身も心も中国人に生まれ変わる」よう促す「中国化」を強要、収容者を区分して一部を厳格な管理下に置いて犯罪者として刑務所に送るなどの措置がとられ、少なくない人々が拷問によって命を落とし[25]、とりわけ2017年には余りにも多くの人々が新疆ウイグル再教育収容所に連行され、混乱を極めた[25]

また、全面的に管理統制が強化され[26][27][28]、新疆ウイグル自治区はウイグル人住民がQRコードで管理され[29][30]自動車の全車両やメッカへのハッの際には追跡装置が装着され[31][32]モスクなどに張り巡らしたAI監視カメラによって人種プロファイリングで識別され[33][34][35]、様々なハイテク顔認証虹彩指紋DNA[36][37][38]声紋歩容解析など一挙手一投足を監視される「世界でも類のない警察国家[39]「完全監視社会の実験場」[40]が構築されたと欧米メディアや人権団体は批判した[36][41]

l  地理[編集]

東トルキスタン#地理」および「新疆ウイグル自治区#地理」も参照

世界遺産新疆天山

ポベーダ山

新疆ウイグル自治区の面積165平方キロメートル (km2) は中華人民共和国の省・自治区の中で最大であり、中国全土の約1/6を占める(日本の約4.5倍)。ただし、面積の約4分の1は砂漠が占めており、これは中国の砂漠総面積の約3分の2に相当する。

中国の最西部に位置しており、東部から南部にかけて、それぞれ甘粛省青海省チベット自治区と省界を接している。また、インドパキスタンアフガニスタンタジキスタンキルギスカザフスタンロシア連邦モンゴル国8カ国と国境を接し、国境線の総延長は約5,700キロメートル (km) に達する。国境を接する国の数は、中国の行政区分で最大である。また、ユーラシア大陸到達不能極に位置する。

テンリ・タグ山脈を背骨とし、北のアルタイ山脈モンゴル国境)の間にジュンガル盆地、南のクンルン山脈崑崙山脈とも。チベット自治区との境)の間にタリム盆地が広がる。

ほぼ中央に、ウイグル語で天の山を意味するテンリ・タグتەڭرىتاغ Tengri tagh)という山脈があり[ 1]、漢名ではこれに由来して天山山脈という。テンリ・タグ山脈の最高峰であるポベーダ山キルギスの国境に位置し、標高は7,439mである。

天山山脈は中央アジアと東アジアの自然国境とされ、カラコルム山脈は西南アジアと東アジアの自然国境とされる。カラコルム山脈は急峻な山々が峰を連ね、パキスタン国境にあるK2は、海抜 8,611メートル (m) に達するエベレストに次ぐ世界最高峰である。

1931811日、新疆ウイグル自治区北部でマグニチュード8地震が発生。地震研究のための貴重な資料として、当時の地震断層や地形の変化がそのままの状態で残されている。2007419日、断層の保護作業が終了した。

l  教育[編集]

大学[編集]

新疆大学 - 211重点大学

石河子大学 - 211重点大学

新疆師範大学

新疆医科大学

新疆農業大学

新疆財経大学

少数民族に対する言語政策[編集]

世界では国際人権規約にて少数民族が独自の言語を使う権利は「少数民族の文化宗教、言語を『否定されない権利』」と明記して保障されているが、習近平政権は少数民族による分離独立運動への警戒から統制と標準語(普通話)教育を強めている。それにより中華民族としての意識を高め、中国共産党支配をさらに強固にしようとしているとされる[42]

その行為はアメリカ政府によりジェノサイド(集団殺害)と認定された[43]ウイグル族を収容している収容施設では、共産党自治区の治安部トップによる「中国標準語への矯正学習を最優先せよ」という指示のもと少数民族に対する再教育洗脳が行われているとの指摘がある[44]

一方、ウイグル語と標準語(北京語)が両方大事で必要であると考えているウイグル族は全体の93.5%を占め、ウイグル語のみ使用希望の人は5%に留まるという調査研究もある[45]。中国側はウイグル語の日常使用や教育を特別制限しておらず、ドルと違い人民元にすらウイグル語が印刷されていると反論している[46][47]

住民[編集]

民族分布図

  ウイグル人  8.3百万人    45

  漢族            7.5               40

  カザフ人       1.2               6.7

ホータンの日曜バザール

総人口は約1900万人で、3分の2漢族以外の少数民族である。自治区内の住民はウイグル人、漢族、カザフ人回族キルギス人オイラト族(カルムイク族)(民族区分ではモンゴル族)などの様々な民族で構成される。また、カザフ人、キルギス人、タジク人ウズベク人など、隣接する旧ソ連領中央アジア諸国と国境を跨って居住する民族も少なくない。

202168、新疆ウイグル自治区で生まれる少数民族の子どもの数が、今後20年間で当初予測より260万~450万人下回る見通しだとする報告書が中央アジア研究の専門誌で発表された[48]。報告書は、当局が不妊手術などで出産を妨げる計画を実施していたとも指摘した[48]

漢族の大量入植[編集]

自治区の北部・東部を中心に居住する漢族は、1954に設立された新疆生産建設兵団を中心に、1950年代以降に入植した住民が大半を占め、急速にその数を増やしている。中国政府の公表する人口統計には、軍人の数が含まれていない[要出典]ことから、実際の人口比では、漢族の人口はウイグル人を上回っていると推測されている[?]2003年の兵団総人口は257.9万人である[49]

1990年時点で新疆ウイグル自治区の総数が1499万人のうち、漢族が565万人[50]1995年には、総人口1661万人のうち漢族が632万人と、5年間で漢族人口は1割強にあたる67万人も増加している[50]2000年には、漢族人口は約749万人となっており[51]5年間で117万人も増加しており、10年間で184万人の漢族が新疆ウイグル自治区において増加している。2010年には、約842万人に到った[52]

漢族が大多数の地域[編集]

ウルムチ市

カラマイ市

クムル市

昌吉回族自治州

ボルタラ・モンゴル自治州

バインゴリン・モンゴル自治州

タルバガタイ地区

石河子市

l  経済[編集]

ウルムチの中信銀行ビル(中央)

第一次産業としては、小麦綿花テンサイブドウハミウリヒツジ・イリなどが主要な生産物となっている。特にこの地域で生産される新疆綿といわれる綿は、エジプト綿(ギザ綿)、スーピマ綿と並んで世界三大高級コットンと呼ばれ、繊維が長く光沢があり高級品とされており、日米欧に輸出され高級シャツ、高級シーツなどに利用される。 なお、2021アメリカ合衆国は自治区内で強制労働が行われている可能性があるとして新疆産の綿の輸入を停止した[53]。これを原料に用いたUNIQLO (ファーストリテイリング)の衣料品が、米国で輸入差し止めとなる事例も起きた[54]

また、中国四大宝石の中で最高とされる和田玉ホータン市で産出される。この他、石油と天然ガスなどのエネルギー資源産業をはじめ、鉄鋼・化学・機械・毛織物・皮革工業が発達している。主要な工業地域として、烏魯木斉・克拉瑪依・石河子(シーホーツ)・伊寧(イーニン)・喀什(カシュガル)が挙げられる。

エネルギー資源の影響で内陸部の割には2002から2013にかけて新疆の平均成長率は15%を超え[55]、特に中国最大級の油田があるカラマイは2008には一人当たりのGDPが中国本土で最も高い都市となった[56]

省都のウルムチは200万人を超える人口規模で中央アジア最大の都市タシュケントに匹敵し[57]、中国北西部および中央アジアで最も高いビル[58]である中信銀行大廈英語版)(旧・中天広場)などの高層ビルで街並みは沿岸部の大都市のように近代化されている[59][60]

l  資源[編集]

新疆は石油天然ガスの埋蔵量が豊富で、1980年代後半から探査が本格的に開始された。198811月以降、タリム盆地で未開発の油田としては世界最大級の油田群が発見された[61]。これまでに38カ所の油田、天然ガス田が発見されている。新疆の油田としては塔里木(タリム)油田準噶爾(ジュンガル)油田吐哈(トゥハ)油田3大油田とされ、独山子(トゥーシャンツー)、烏魯木斉(ウルムチ)、克拉瑪依(カラマイ)、庫車(クチャ)、塔里木の5大精油工場で原油精製も行われている。

可採埋蔵量は100億バレル以上とされ[61]、確認埋蔵量は原油で60億トン、天然ガス8兆立方メートルとされているが、油田地帯がばらばらで地質構造も極めて複雑であることから、ブレは大きいものと考えられている。

新疆の石油と天然ガスの埋蔵量は、それぞれ中国全体の埋蔵量の28%33%を占めており、今日では油田開発が新疆の経済発展の中心となっている。特に、西部大開発政策開始以降は、パイプライン敷設や送電線建設などが活発化している。これには、中国国内最大の油田であった黒竜江省大慶油田の生産量が近年では減少してきたために、新疆の油田の重要性が相対的に増していることも関連している。

2008年には新疆最大級の油田があるカラマイが一人当たりのGDPが中国本土で最も高い都市となった[62]

l  交通[編集]

経済発展は、新疆に高速道路高速鉄道など交通網の整備をもたらし、烏魯木斉などを拠点とした道路が新疆のほとんど全ての郷・鎮を結び、更には青海省西蔵自治区カザフスタンパキスタンとも道路で結ばれるまでになった。

l  鉄道[編集]

1962には蘭州と烏魯木斉を結ぶ鉄道の蘭新線が開通し、1990には阿拉山口への延伸によってカザフスタンの鉄道に接続されたことで、中国各省と中央アジアを結ぶ鉄道の大動脈が通ることとなった。また、1999にはコルラ-カシュガル間の南疆線も完成し、自治区最西端すなわち中国最西端までの鉄道が開通した。

l  航空[編集]

更には、面積が広大なことから航空への依存度が高まり、烏魯木斉の空港を中心として十数の自治区内の主要地を結ぶ航空網が整備されていった。その為、今日の烏魯木斉空港は、北京上海広州の空港とともに、中国5大空港の一つに数えられる程の拠点空港となっている。また西アジアアフリカヨーロッパとの国際線が発着することから、中国西北地域の玄関口としての役割をはたしている。

l  道路[編集]

道路は、新疆北部ではG312国道G217国道G216国道G7 & G30高速道路3014高速道路(G3014 Kuytun–Altay Expressway)、3015高速道路(G3015 Kuytun–Tacheng Expressway)などが利用できる。新疆南部でもG314国道G218国道G315国道タクラマカン砂漠公路G3012高速道路(G3012 Turpan–Hotan Expressway)などが整備されて、以前よりは便利さが増した。

l  環境問題[編集]

砂漠化[編集]

黄砂のもととなる、タクラマカン砂漠の砂嵐を捉えた衛星画像 (PD NASA)

新疆ウイグル自治区には、タクラマカン砂漠があるが、近年、過放牧によって草原が荒れて、砂漠化が進行している[63]。その理由は、タリム盆地周縁のオアシス人口の急激な人口増加によるとされる[63]。漢族の急激な入植による人口増加が主な原因とされる[63]

タクラマカン砂漠やゴビ砂漠(中国北部 内モンゴル・甘粛・寧夏・陝西)、黄土高原などにおける砂漠などは、黄砂の飛翔原でもあり、黄砂は日本を含む東アジアの広い範囲に被害を及ぼしている。

l  核実験場[編集]

中国の核実験」および「東トルキスタン#中国による核実験」も参照

新疆ウイグル自治区ではロプノール核実験場の付近を中心に、1964年から1996年まで46回の中国による核実験が行われており、放射能汚染による地域住民の健康状態や、農作物への被害が指摘されている。

l  ウイグルの独立運動[編集]

詳細は「東トルキスタン独立運動」を参照

世界ウイグル会議日本・東アジア全権代表を務めていたトゥール・ムハメットによると、中華人民共和国のウイグル人は、下等市民あるいは人間以下とみなされ、市民同士はトラブルを怖れて接触したがらないという[64]

201310月末には、ウイグル人がガソリンを積んだ自動車で北京の天安門に突入し自爆するテロ事件が起こった(天安門広場自動車突入事件)。

中国側は世界ウイグル会議こそウイグル分裂主義者で、具体的な例を提示しデマや暴力犯罪事件の黒幕であると反論している[65]

2009年のウイグル騒乱[編集]

詳細は「2009年ウイグル騒乱」を参照

2009にはウイグル人の暴動が発生、暴徒以外に多くの一般市民が巻き込まれた。武装警察の介入もあって、世界ウイグル会議によると死者三千人、中国当局によると死者156人となる惨事となった[66][67][要検証 – ノート] 主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)に参加するためにイタリアを訪問していた胡錦濤(中国共産党総書記)が「新疆ウイグル自治区の情勢」を理由にサミットをキャンセルして三日後に急遽帰国するにまでに至った[68]。それ以降、治安向上目的の「ウイグル族を監視するウイグル族」も増えたとの報告がある[69]

l  「ジェノサイド」認定[編集]

詳細は「ウイグル人大量虐殺」および「新疆ウイグル再教育収容所」を参照

20211月、アメリカ政府は、中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族弾圧を、国際条約上の「民族大量虐殺」である「ジェノサイド」であり、かつ「人道に対する罪」に認定したと発表[70][71][72]。これに対し、軍事評論家の田岡俊次中国外務省華春瑩報道局長は懐疑的な声を上げている[73][74]。一方、中国政治が専門の平野聡東京大学大学院法学政治学研究科教授は、『ニューヨーク・タイムズ』が201911月にリークした新疆秘密文書、現実に伝えられる報道や画像、当事者の証言、中国の正式な国家統計である『中国統計年鑑』の数字などから、新疆ウイグル自治区でジェノサイドがおこなわれているのは明らかと述べている[25]

20212月、カナダの下院[75]オランダの議会[76]はジェノサイドと認定する決議を可決した。20214月にイギリスの下院はジェノサイドと認定する決議を可決した[77]20215月、リトアニア共和国議会もジェノサイドと認定する決議を可決した[78]

日本はジェノサイド認定に慎重で[79]、国連においては「中国擁護派」が多数である[80][81]

2021622に開かれた国連人権理事会で、オーストラリアイギリスフランドイツ日本アメリカなど40カ国超が、新疆ウイグル自治区の人権状況について「深刻な懸念を抱いている」との共同声明を発表し、国連人権高等弁務官ミシェル・バチェレの新疆ウイグル自治区訪問と調査を受け入れるよう中国に要求した[82][83]。声明は「信頼できる報告では、新疆で100万人超が恣意的に拘束され、ウイグル族やその他少数民族に偏った監視が広がり、基本的な自由やウイグル文化への制限を示している」として、拷問強制不妊手術性的暴行や子供を親から引き離すなどの報告もあるとし、さらに「国家安全維持法下での香港の基本的自由悪化とチベットでの人権状況を引き続き深く懸念している」とも指摘した[82][83]

台湾蔡英文総統は『文藝春秋20219月号のインタビューで、「民主主義自由人権は普遍的価値です。私共は北京当局に、香港ウイグルの人々への弾圧をやめるように呼び掛けていきます。日本も含めた民主主義陣営は、民主主義の価値を守るために今こそ団結すべきです」と述べた[84]

 

 

 

コメント

このブログの人気の投稿

近代数寄者の茶会記  谷晃  2021.5.1.

新 東京いい店やれる店  ホイチョイ・プロダクションズ  2013.5.26.

自由学園物語  羽仁進  2021.5.21.