古くて素敵なクラシック・レコードたち  村上春樹  2021.11.6.

 

2021.11.6. 古くて素敵なクラシック・レコードたち

 

著者 村上春樹

 

発行日           2021.6.25. 第1刷発行

発行所           文藝春秋

 

 

l  なぜアナログ・レコードなのか?

レコードを集めるのが趣味で60年近くレコード屋に通っている

ジャズが中心だが、クラシックも昔から好き

LPコレクションのうち、ジャズが7割、クラシックが2割、ロック・ポピュラーが1

クラシックの蒐集は、行き当たりばったりが多く、統一性はない

フルトヴェングラーやトスカニーニ、カラヤン、ベームは少なく、ビーチャム、ストコフスキー、ミトロプーロス、ボールト、マルケヴィッチ、フリッチャイ、マゼールが多い

ジャケット・デザインに拘る

古いLPレコードにはそれにしかないオーラのようなものがこもっていて、じんわりと癒してくれる

 

1.   ストラヴィンスキー 《ペトルーシュカ》

1949(モノラル)1958(ステレオ) アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団

1980年 アバド指揮 ロンドン響

1979年 メーター指揮 ニューヨーク・フィル

1973年 ラインスドルフ指揮 ニュー・フィルハーモニア管弦楽団

アンセルメはストラヴィンスキーの大の友人で、多くの曲の初演を受け持ったが、後年仲違いして口もきかなくなった

 

2.   シューマン 《交響曲第2番 ハ長調、作品61

シューマンの4交響曲の中では一番目立たないが、特に2楽章が面白い

5060年代のアメリカのオーケストラは、戦火を逃れてヨーロッパから移住してきた腕利きの演奏家たちが集まっているので、極めて質が高い

初演がライプツィヒ・ゲヴァントハウスの演奏会なので、同楽団の演奏は「本場物」

 

3.   モーツァルト 《ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K503

50年代のバレンボイムのピアノが、気品ある瑞々しさが漂い素晴らしい

ペライアは、天才や鬼才ではないが、あくまで豊かな中庸を目指す「外れ」のない演奏家

 

4.   ラフマニノフ 《パガニーニの主題による狂詩曲 作品43

 

5.   ショパン 《バラード第3番 変イ長調 作品47

ポーランド生まれのルービンシュタインには、「ショパンとはこういうものだ」という演奏理念が、リズムからソノリティ(音の響き方)まで、DNAみたいに身体に内蔵されている

 

6.   フォーレ 《レクイエム 作品48

フォーレの直弟子であるフランスの高名な作曲家・指揮者のナディア・ブーランジェ女史の師へ捧げた心のこもった演奏は圧巻

 

7.   ハチャトゥリアン 《ヴァイオリン協奏曲 ニ短調》

作曲者からこの曲を献呈されたオイストラフは1940年に弾き振りで初演。作曲には彼も技術的な面で力を貸している

 

8.   モーツァルト 《交響曲第41番 ジュピター ハ長調 K551

「ベームの指揮だけはどうしてもわからなかった。あんなに小さの棒の振り方で、あれほどのオーケストラが大きく動く」とは小澤征爾のベーム評

 

9.   リヒアルト・シュトラウス 《交響詩 ドン・キホーテ 作品35

チェロの名手フルニエの演奏がいい

 

10. メンデルスゾーン 《ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

ハイフェッツとミュンシュ/ボストンの組んだ盤は名盤の誉れ高い

 

11. グローフェ 《グランド・キャニオン組曲》

グローフェは他にも《ナイアガラ》とか《デス・ヴァレー》とか、様々な描写音楽を作曲

ガーシュウィンの《ラプソディ・イン・ブルー》のオーケストレーションも担当

 

12. ベートーヴェン 《ヴァイオリン・ソナタ第9番 クロイツェル イ長調 作品47

 

13. ベートーヴェン 《ヴァイオリン・ソナタ第5番  ヘ長調 作品24

 

14. ヴォーン・ウィリアムス 《タリスの主題による幻想曲》

オーマンディ/フィラデルフィアの音色の美しさは抜群

バルビローリの演奏は、優美でたおやか、派手な演出を排し、深く音符を読み込んでいる響きがある。情緒は存分にあるが、それを正しく鎮静させる節度があり、まるでジャケットに使われているターナーの水彩画を見ているよう。ヴォーン・ウィリアムスに信頼された指揮者で、彼の多くの作品を初演

 

15. ヨーゼフ・ハイドン 《ピアノ・ソナタ第48番、ハ長調ほか》

宮沢明子の演奏は、他のピアニストとはハイドンの音楽に対するアプローチが全く違っている。当時のフォルテピアノのために書かれたことをしっかり意識して、そのサウンドを現代ピアノの世界に実に巧妙に、終始ノンレガートで移し替えている。1960年代に「古楽器演奏」に近似した試みで、グールドの遥か先を行っている

 

16. ヨーゼフ・ハイドン 《交響曲第94番 驚愕 ト長調》

 

17. ブラームス 《間奏曲集 作品116119

ブラームスの最晩年の傑作

 

18. ショスタコーヴィチ 《ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 作品35

ショスタコーヴィチ 《ピアノ協奏曲第2番 へ長調 作品102

アルゲリッチがハイルブロン・ヴュルテンベルク室内管弦楽団と訓で演奏した1番は素晴らしい。カーネギーホールでのクルト・マズア/NYフィルとの共演も見事。素敵な年齢の重ね方をしているピアニスト

 

19. シェーンベルク 《浄められた夜 作品4 オーケストラ版》

 

20. シェーンベルク 《浄められた夜 作品4 弦楽六重奏版》

21. ベートーヴェン 《ピアノ三重奏曲第7番 大公 変ロ長調 作品97

22. ドビュッシー 《前奏曲集 第1巻》

23. ベートーヴェン 《七重奏曲 変ホ長調 作品20

24. バルトーク 《弦楽四重奏曲第4番》

25. チャイコフスキー 《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

26. ロッシーニ 歌劇《泥棒かささぎ》序曲

27. ラヴェル 《弦楽四重奏曲 へ長調》

28. プーランク 《グローリア》

プーランクは最初はお洒落なパリジャン、若き才人として社交界に名を馳せたが、年齢を重ねるにつれ派手な生活とは距離を置いてカソリック信仰に深く傾倒するようになり、その作風も目に見えて変化

最晩年に書いた、ソプラノ独唱と合唱団と管弦楽のための宗教音楽

晩年の作品はほとんどすべてプレートルの指揮で初演

 

29. ブラームス 《交響曲第3番 へ長調 作品90

30. ブラームス 《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

31. ベートーヴェン 《交響曲第5番 運命 ハ短調 作品67

32. ベートーヴェン 《交響曲第6番 田園 へ長調 作品68

33. バルトーク 《中国の不思議な役人 作品19

34. ヘンデル 《水上の音楽》

35. マーラー 《交響曲第1番 ニ長調》

36. ストラヴィンスキー 《火の鳥組曲》

37. シューマン 《謝肉祭 作品9

38. ラフマニノフ 《ピアノ協奏曲第4番 ト短調 作品40

39. ヴィヴァルディ 《ヴィオラ・ダモーレのための協奏曲集他》

40. ベートーヴェン 《弦楽四重奏曲第14番 嬰ハ短調 作品131

41. ベートーヴェン 《ピアノ協奏曲第1番 ハ長調 作品15

42. ブロッホ 《シェロモ チェロと管弦楽のためのヘブライ狂詩曲》

43. ラロ 《スペイン交響曲 ニ短調 作品21

44. モーツァルト 《クラリネット協奏曲 イ長調 K622

45. バルトーク 《ピアノ協奏曲第1番》

46. シューマン 《ピアノ五重奏曲 変ホ長調》

47. リスト 《ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調》

48. メンデルスゾーン 《交響曲第3番 スコットランド イ短調 作品56

49. ショスタコーヴィチ 《交響曲第5番 ニ短調 作品47

50. リヒアルト・シュトラウス 《四つの最後の歌》

51. シューベルト 《ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960(遺作)

52. リムスキー=コルサコフ 《交響組曲 シェエラザード 作品35

53. モーツァルト 《ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K478

遠山慶子が1982年にウィーンで、ウィーン弦楽四重奏団のメンバーを得て吹き込んだが、「ウィーン風味」が強く優雅にこなれた演奏で、とても雰囲気がいい

 

54. クライスラー 《小品集》

55. ラフマニノフ 《交響曲第2番 ホ短調 作品27

56. J.S.バッハ 《2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043

57. ストラヴィンスキー 《兵士の物語》

58. デ・ファリア 《スペインの庭の夜》

59. モーツァルト 《弦楽五重奏曲第4番 ト短調 K516

60. バルトーク 《管弦楽のための協奏曲》

61. J.S.バッハ 《管弦楽組曲第2番 ロ短調 BWV1067

62. プロコフィエフ 《組曲 キージェ中尉 作品60

63. モーツァルト 《ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K466

64. シベリウス 《交響曲第5番 変ホ長調 作品82

65. ドビュッシー 《海》

66. モーツァルト 《交響曲第38番 プラハ ニ長調 K504

67. ダンディ 《フランスの山人の歌による交響曲 ト長調 作品25

68. J.S.バッハ 《2台の鍵盤楽器のための協奏曲第2番 ハ長調 BWV1061

69. シューベルト 《弦楽五重奏曲 ハ長調 D956

70. チャイコフスキー 《交響曲第6番 悲愴 ロ短調 作品74

71. グリーグ 《ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ短調 作品45

72. リヒアルト・シュトラウス 《ドン・ファン 作品20

73. オルフ 《世俗カンタータ カルミナ・ブラーナ

74. ブラームス 《ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83

75. J.S.バッハ 《ブランデンブルク協奏曲第4番 ト長調 BWV1049

76. リスト 《交響詩 前奏曲

77. フランク 《ヴァイオリン・ソナタ イ長調》

78. ヨハン・シュトラウス 《歌劇 ジプシー男爵

79. マーラー 《交響曲第4番 ト長調》

80. チャイコフスキー 《ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

81. シューマン 《チェロ協奏曲 イ短調 作品129

82. ブラームス 《ピアノ三重奏曲第1番 ロ短調 作品8

83. シベリウス 《交響詩 ポヒョラの娘 作品49

84. マーラー 《亡き子を偲ぶ歌》

85. ドリーブ 《舞踏組曲 コッペリア

86. J.S.バッハ 《音楽の捧げ物 BWV1079

87. チャイコフスキー 《幻想序曲 ロメオとジュリエット

88. プロコフィエフ 《スキタイ組曲 作品20

89. モーツァルト 《弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K421

90. ベルク 《弦楽四重奏のための抒情組曲

91. バルトーク 《ヴィオラ協奏曲(遺作)

92. ブラームス 《ピアノ五重奏曲 ヘ短調 作品34

93. シューベルト 《さすらい人幻想曲 ハ長調 作品15 D760

94. ビゼー 《歌劇 真珠採り

95. モーツァルト 《ホルン協奏曲第3番 変ホ長調 K447

96. ベートーヴェン 《ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 作品111

97.    トマス・ビーチャムの素敵な世界

英国人に愛された指揮者、主に英国人に愛好される音楽を演奏。自分のスタイルを持ち、頑固ではあるが心優しく懐は広い。富豪の息子で、私費を投じて自前の優秀なオーケストラ(ロイヤル・フィルハーモニー)を持ち、悠々自適、好きな音楽を好きなように演奏し、サーの称号を受けた

小品を集めた《ロリポップ》も愛すべきアルバムの1つ。ロリポップとは、アンコール向きの軽いクラシック曲のこと

 

98.    ジョン・オグドンの個性的な生涯

1962年のチャイコフスキー・コンクールでアシュケナージと1位を分け合って、熱い注目を浴びた。熱い作曲家でもあったが、73年精神の病を発症、肥満と糖尿病にも悩まされ、遺伝による統合失調症とも躁鬱病ともいわれるが、そのため後年は精神の安定を欠いた奇矯な演奏が多くなった。89年に51で死去

 

99.    マルケヴィッチの穴

多作の人。191283

16歳からディアギレフ・バレエ団に所属し、舞踏音楽の仕事をしていただけあって、《ロシア・バレエ曲集》の演奏も見事

 

100.      若き日の小澤征爾

1970年、RCAからシカゴ交響楽団を振って《運命》と《未完成》をレコーディングする機会を与えられた

 

 

 

 

 

 

 

 

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