人生を狂わす名著50 三宅香帆 2024.12.1.
2024.12.1. 人生を狂わす名著50
著者 三宅香帆(京都天狼院) 作家・書評家。1994年高知県生まれ。京大大学院人間・環境学研究科在学中。その一方、開店以来書店業界にディープインパクトを与え続けている天狼院書店(京都天狼院)のオープニングスタッフとして採用され、現在も働いている。2016年、天狼院書店のウェブサイトに掲載した記事「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。本好きのSNSの間でその選書センスと書評が大反響を呼び、書籍化に至る。大学院での研究領域は国文学で、テーマは「万葉集における歌物語の萌芽」。一語一語を解釈して精読することによって歌や物語をちゃんと読めるようになることが現在の目標。卒業後は博士課程進学予定。ブックオフに開店と同時に入り浸って不審な目で見られる小学生だったが、今や深夜に本屋をうろついて不審がられる日々。ちなみに人の本棚フェチ。
発行日 2017.10.1.. 第1刷発行
発行所 ライツ社 (「14歳の世渡り術」シリーズ)
2024年、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』にて、「第2回書店員が選ぶノンフィクション大賞2024」を受賞し、「第17回オリコン年間本ランキング2024」の新書部門においても年間1位を記録したニュースを見て興味
『24-11 (萌えすぎて)絶対忘れない! 妄想古文』参照
まえがきにかえて――人生が狂うってどういうこと?
私にとって、読書は戦い。人生を賭けて戦っている。幼少から読書が一番の現実逃避方法だった。現実逃避で本を読んでいたのに、いつの間にか、読んだ本によって「現実」そのものを変えられてしまっている
最初に現実と本が交差したのは村上春樹の『アフターダーク』を読んだとき。「何かを本当に知りたいと思ったら、人はそれに応じた代価を支払わなくてはならない」ことを知る
本はいつも、「ここまでくれば、こんな世界を見られるよ」と教えてくれるが、そこまで現実世界で辿り着くのはきついし、それなりの苦労と時間が必要
もっと大きな、遠くを見させてくれる存在として、「本」に触れていけたら、これからの人生を一緒に戦ってくれるような本を見つけたら、これ以上の幸せはない
title1/50 『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
立派で完璧な人生vs笑えて許せる人生―人生の「笑い飛ばし方」がわからなくなったあなたへ
世界で最も面白いラブ・コメディ
《人生を狂わせるこの一言》 「われわれは何のために生きているのかね? 隣人に笑われたり、逆に彼らを笑ったり、それが人生じゃないのかね?」
古典と呼ばれる作品は、いかに人間が立派でないか、立派になることが出来ないのか、を教えてくれるから古典たり得る。だから古典を読んだ人は、いかに人間が立派でないかを知るから、知らない人よりちょっとほかの人に優しくなることが出来る
title2/50 『フラニーとズーイ』J . D . サリンジャー
世間から引き込もるvs世間と戦う―世に溢れかえる承認欲求にうんざりしているあなたへ
止まらない自己愛や承認欲求との距離の取り方を教えてくれる。アメリカ大学生の青春文学
自己愛や虚栄心や承認欲求の匂いに敏感なのは、同族嫌悪ゆえ。他人にイライラしているようで、その実は自分のエゴの匂いにうんざりしている
《人生を狂わせるこの一言》 もし君がその「システム」に戦いを挑むなら、君は育ちのよい知性のある娘として、相手を撃たなくちゃいけない。なぜなら敵はそこにいるからだ
title3/50 『眠り(『TVピープル』所収)』村上春樹
暗いものには蓋!vs暗いものには読書!―村上春樹をまだ読んでいないあなたへ
世界の村上文学の傑作短篇
title4/50 『図書館戦争』有川浩
本=現実逃避の手段vs本=甘やかさずに背中を押してくれる存在―新しい仕事や新生活を始めた「新人」さんへ
「組織としての正義」と「矛盾に葛藤しながら戦う主人公」。読むたびに励まされ、背筋の伸びる最高のエンタメ小説
《人生を狂わせるこの一言》 お膳立てされたキレイな舞台で戦えるのはお話の中の正義の味方だけ。現実じゃ誰も露払いなんかしてくれない。泥被る覚悟がないなら正義の味方なんてやめちゃえば?
title5/50 『オリガ・モリソヴナの反語法』米原万里
教科書に記された歴史vs小説で描かれる歴史―「語られない歴史」が好きなあなたへ
「歴史」と「文学」の間にある傑作
《人生を狂わせるこの一言》 夢を糧に、私たちは生きながらえていた
小説という媒体に力があるとしたら、時代とか歴史とか大きなものに取りこぼされがちな、1人1人を救うことじゃないのかなぁ
title6/50 『スティル・ライフ』池澤夏樹
都会の忙しさvs自然のチューニング―都会とか現代とか、忙しさにちょっと疲れたあなたへ
透明感ってこういうことか。精神的な何かのチューニングをするために、「文章」で「自然」と出会うことの出来る物語。芥川賞受賞作
title7/50 『人間の大地』サン= テグジュペリ
日常の幸せvs憧れへ向かう幸せ―手の届きそうにない何かに出会ったことがあるあなたへ
あなたの人生を狂わすほどの「憧れ」に出会う1冊。命より大事な何かに取り憑かれてしまった人が見た景色とは
《人生を狂わせるこの一言》 手に届かないところにある共通の目的によって同胞と結ばれたとき、僕らははじめて胸いっぱいに呼吸することが出来る
title8/50 『グレート・ギャツビー』スコット・フィッツジェラルド
スマートな晩年vs向こう見ずな青春―この世のロマンチストな男の人全員へ
憧れは手にしたとたん消えてしまう。それでも・・・・・。全世界の男のロマンを結晶させたアメリカ文学史の輝く華麗なる1冊
《人生を狂わせるこの一言》 でもまだ大丈夫。明日はもっと速く走ろう。両腕をもっと先まで差し出そう。・・・・・そうすればある晴れた朝に――
title9/50 『愛という病』中村うさぎ
愛したいvs愛されたい―「女という性」がよくわからなくなってきたあなたへ
ホスト狂い、整形、デリヘル嬢・・・・女という動物の欲望の謎を中村うさぎの壮絶な実体験から知ることができる1冊
「女の病」とは、畢竟、ナルシシズムの病。女のナルシシズムは、他者の愛によってしか満たされない。それは女が自分を「他者の欲望の対象」として捉える生き物だから。女は他者の欲望を求めることによって自己を確立し、同時に、他者を無化するモンスターなのだ
《人生を狂わせるこの一言》 女たちが「あたしのこと愛してる?」と確認したがるのは、別に男に捨てられる事を心配しているのではない。「愛されている」という「関係性の中での自己確認」ができないと、オキシトシンの分泌が止まり、相手の男に対する愛情も消え失せてしまうからだ
title10/50 『眠れる美女』川端康成
常識的フェチシズムvs狂気的フェチシズム―自分の変態度をグレードアップしたいあなたへ
日本屈指の変態作家。ノーベル賞作家の描く美少女の官能っぷりは最高
《人生を狂わせるこの一言》 いや、おもちゃではなく、そういう老人たちにとっては、命そのものなのかもしれない。こんなのが安心して触れられる命なのかもしれない
title11/50 『月と六ペンス』サマセット・モーム
芸術は人生を豊かにするvs芸術は人生を狂わせる―小説家や画家に頭が上がらないと思っているあなたへ
絵に取り憑かれた画家の一生を通して、「芸術」の魔力を描いた1冊
美を理解するには、芸術家と同じ様に魂を傷つけ、世界の混沌を見つめなくてはならない
title12/50
『イメージを読む』若桑みどり
絵は感性で見るものvs絵は知識で読むもの―旅行に行っても美術館をちっとも楽しめないあなたへ
絵は見るだけはなく、読めるもの、と教えてくれる美術史入門
《人生を狂わせるこの一言》 芸術にいちばん似ているのは人間です
title13/50
『やさしい訴え』小川洋子
芸術vs恋愛―静かに感情の波に飲み込まれたいあなたへ
小説独特の「艶」を知る。静謐で美しい恋愛小説
title14/50
『美しい星』三島由紀夫
美は善vs美は呪い―本気の美しさを見たいあなたへ
究極の人間賛歌。これだけ自分の思想や美学を「本気で」信じている人なんて三島以外いない
title15/50 『死の棘』島尾敏雄
結婚という夢物語vs夫婦愛というサスペンス―結婚前(後)に夫婦の真髄を知りたいあなたへ
元祖メンヘラ(精神を病んでいる人)女性小説、妻がひたすら病んでいる夫婦文学
title16/50 『ヴィヨンの妻』太宰治
女はやさしいvs女はこわい―太宰治の言葉に殺されたい人へ
日本文学史上最高にキャッチ―な「太宰の殺し文句」で、男のクズさと女の冷たさを楽しむ短篇小説
《人生を狂わせるこの一言》 人非人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ
title17/50 『悪童日記』アゴタ・クリストフ
子どもは弱くて純粋vs子どもはしたたかで残酷―残酷でタフな世界を生きる小さいあなたへ
たった2人で世界を生きた、この世で一番残酷でクールな双子の物語
title18/50 『そして五人がいなくなる』はやみねかおる
本を読まない人生vs本を読む人生―「本」のおもしろさをまだ知らない子どもたちへ
子どもたちを「本好き」という夢の世界へ狂わせ続ける、名探偵夢水清志郎事件シリーズ
title19/50 『クローディアの秘密』E . L . カニグズバーグ
「危険」は嫌vsだけど「知りたい」―冒険じゃない冒険を求めている、自称子どもたちへ
家出先が「メトロポリタン美術館」。大人が読んでも面白い、素敵で都会的な秘密の家出物語
title20/50 『ぼくは勉強ができない』山田詠美
学校の勉強vs人生の勉強―カッコわるい大人にはなりたくないあなたへ
不良じゃなくても、優等生じゃなくても、そのどちらでもない自分でも、社会で「自由」でいられる方法を教えてくれる青春小説
title21/50 『おとなの進路教室。』山田ズーニー
「誰かの想い」に沿った選択vs「自分の想い」に沿った選択―大人になっても、「これから」に迷っているあなたへ
選択、就職、進学・・・・悩んだ時「自分の意志に逆らわない勇気」をくれる1冊
《人生を狂わせるこの一言》 有利でもなく、不利でもなく、意志に忠実な選択こそが、自分の人生を作っていくんだと私は思う
title22/50 『初心者のための「文学」』大塚英志
読まず嫌いの「文学」vs読んでみた「文学」―教科書に載っている文学作品って何がおもしろいの? と思うあなたへ
「読みかた」を教えてくれる、文学のおもしろ取扱説明書
title23/50 『妊娠小説』斎藤美奈子
文学は高尚な教養vs文学は笑えるエンタメ―新しい読書ジャンルを開拓したいあなたへ
文学の読み方が変わる、文学批評本
《人生を狂わせるこの一言》 日本の近現代文学には、「病気小説」や「貧乏小説」と並んで「妊娠小説」という伝統的ジャンルがある。「望まぬ妊娠」と「驚く主人公(男)」という場面が散見
title24/50 『人間の建設』小林秀雄・岡潔
わかりやすさvsむずかしさ―「難しい話」に背伸びしてみたいあなたへ
教養とは何か知りたい人、ぜひ
《人生を狂わせるこの一言》 つまりやさしいことはつまらぬ、むずかしいことが面白いということが、だれにでもある。むずかしいことを知ろうとしたとき、人生は少しづつ音を立てて変ってゆく。それはラクじゃないけど、けっこう楽しいことだと思う
title25/50 『時間の比較社会学』真木悠介
どうせ死ぬ!vsだけど生きる!―生きるとか死ぬとかってけっこう虚しいよなぁと思う人へ
時間を相対化するという挑戦から、誰もが抱える「どうせ死ぬんだから意味ないじゃん」という虚しさに対抗した労作
《人生を狂わせるこの一言》 われわれが、現時充足的(コンサマトリー)な時の充実を生きているときを振り返ってみると、それは必ず、具体的な他者や自然との交響の中で、絶対化された「自我」の牢獄が溶解しているときだ
title26/50 『コミュニケーション不全症候群』中島梓
まともに生きるvsヘンタイとして生きる―社会に適合するのってむずかしいと思うあなたへ
「90年代」以降の少年少女の生き様を書き下ろした評論。自分を傷つける方法と、楽にする方法を同時に学べる1冊
title27/50 『枠組み外しの旅「個性化」が変える福祉社会』竹端寛
勉強なんて意味がないvs勉強したら何かが変わる― どうせ変わりっこない、なんてほんとは思いたくないあなたへ
「しゃーない」って諦めてしまうところをきちんと「越えて」いく元気が出る学術書
《人生を狂わせるこの一言》 社会を変えようとする前に、問題の一部は自分自身であることに気づき、まず自分を変えることからこそ、「自由」に至る回路が開かれる
結局、「勉強すること」がいちばん自由になれる方法なんだということに気づく
title28/50 『燃えよ剣』司馬遼太郎
「結果」のカッコよさvs「姿勢」のカッコよさ―理想の「生き様」や「美学」を探している青少年たちへ!
title29/50 『堕落論』坂口安吾
高潔vs堕落―「まともさ」や「綺麗事」に違和感を覚えるあなたへ
すぐに「堕ちて」しまう人間の性を、じゃあどうするって本
《人生を狂わせるこの一言》 堕落ということの驚くべき平凡さや平凡な当然さに比べると、あの凄まじい偉大な破壊の愛情や運命に従順な人間達の美しさも、泡沫のような虚しい幻影にすぎないという気持がする
title30/50 『アウトサイダー』コリン・ウィルソン
退屈な日常vs退屈からの脱却―人生に意味なんてないのでは……と絶望し始めたあなたへ
どうしたら人は「日常の退屈」に負けずに生きられるのか? そんな疑問に文学を通して答える、とにかく死ぬほど面白い本
title31/50 『ものぐさ精神分析』岸田秀
正気vs狂気―社会の幻想がつまらなく思えてきたあなたへ
夢とか自己実現とか、そういう「まやかし」に惑わされないために読みたい1冊。歴史的名言に出会ってください
《人生を狂わせるこの一言》 自己嫌悪の強い人というのは、自分の悪いところを客観的に見つめる良心的な人間であると自分では思いがちだけれども、実際には自分を客観的に見られない偽善者である。自分を安心させるために自己嫌悪しているに過ぎない
title32/50 『夜中の薔薇』向田邦子
やかましい言葉vs美しい沈黙―「言い過ぎてしまう自分」がいつも恥ずかしいあなたへ
名脚本家による名エッセイ。古いのに新しい、優しいのに厳しい、黙っているのに声が聴こえてくる1冊。黙ることが美しさなのだ、と教えてくれた1冊。黙るからこそ、何かを香らせることができる
title33/50 『東京を生きる』雨宮まみ
街の欲望vs私だけの欲望―東京は自分の居場所だと思いたい、思えないあなたへ
地方右出身者である作者が「東京」への欲望を語る1冊。「東京怖い」の正体が詰まっている
《人生を狂わせるこの一言》 ほんとうに満たされることを、もしかしたら自分は知らないのかもしれない、知らないからこんなに求めてしまうのかもしれない、と不安になる
title34/50 『すてきなひとりぼっち』谷川俊太郎
ひとりはさびしいvsけど、すてき―詩の世界に触れてみたいって思い始めたあなたへ
谷川のベストアルバム。私たちがふだん使っている言葉と同じ言葉なのに、どうしてこんなふうに扱えるのだろう
title35/50 『チョコレート語訳 みだれ髪』俵万智、与謝野晶子
言葉は誤解なく伝わればそれでよろしいvs言葉には手触りってものがあるのよ―日本語のおもしろさを知りたいあなたへ
与謝野晶子を現代語訳。明日から自分の口からこぼれる言葉を大切に選びたくなる1冊
「みだれ髪を京の島田にかへし朝ふしてゐませの君ゆりおこす」 与謝野晶子
「朝シャンにブローした髪を見せたくて寝ぼけまなこの君ゆりおこす」 俵万智
title36/50 『ぼおるぺん古事記―1.天地創造、2.出雲繁栄、3.天孫降臨』こうの史代
日本の神話っていまいちよく分からん。Vs日本の神話ってマンガだとこんなに面白いの!?―日本の神話をいつか読んでみたいと思っていたあなたへ
台詞や文章はすべて「原文」の書下ろし文で、絵だけで文を読まずとも分かる
title37/50 『百日紅』杉浦日向子
どや顔vsさりげなさ―今まで読んだことのない漫画を読んでみたいあなたへ
浮世絵風の絵に注目。江戸の街を舞台に、幻想と日常を映し出す美しさの価値観が変わる1冊。SNSやLINEによって個人のネタとして消費されていく「さりげなさ」を再認識
title38/50
『窮鼠はチーズの夢を見る』『俎上の鯉は二度跳ねる』水城せとな
恋はめんどくさいからしたくないvsでもやっぱり恋してしまう―大人になってから恋を「してしまった」あなたへ
少女漫画の世界
title39/50
『二日月(山岸凉子スペシャルセレクションVIII)』山岸凉子
つまらない真実vs面白い嘘―少女漫画の深淵を覗きたいあなたへ
title40/50
『イグアナの娘』萩尾望都
母娘の愛情vs母娘の憎悪―消せないコンプレックスを持つ女へ
title41/50
『氷点』三浦綾子
人間は正しいvs人間は間違える―「愛」って何か、ずっと知りたかったあなたへ
「一生、家族を殺した犯人を憎まずに生きられるか」というよくあるテーマ。だけど、これ以上掘り下げた作品はない
《人生を狂わせるこの一言》 この罪ある自分であるという事実に耐えて生きて行く時にこそ、ほんとうの生き方がわかるのだという気もする
title42/50
『約束された場所で』村上春樹
他人のいる「こちら側」vs他人のいない「あちら側」―日本の、いや「私たち」の闇について知りたいあなたへ
村上のオウム真理教信者へのインタビュー集。「彼ら」と「自分」の「違いのなさ」に衝撃を受ける1冊
title43/50
『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ
世界の軽さvs世界の重さ―恋愛で「重すぎる」「軽すぎる」自分に嫌気がさしたあなたへ
人生に求めるのは軽さか? 重さか? 「プラハの春」を舞台にした哲学的恋愛小説
title44/50
『春にして君を離れ』アガサ・クリスティー
正しい幸せvs正しくない人生―自分の「間違い」を認めることが苦手なあなたへ
メアリ・ウェストマコットという別名を使って書いた「ミステリじゃない」小説。正しさは人を傷つけえる、ということを描いた名作。「他人の欲求に耳を傾けられない、自分の正しさしか認められない」人間は多いが、その自分の「正しさ」を点検する姿勢(知性?)が足りなかった
title45/50 『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ
世間の「善」vs自らの「善」―本当は、自分に正直に生きていきたいあなたへ
ニューヨーク、恋心、まるで猫みたいな美女、イノセンスの思い出をめぐる、きらきらと切ない小説
《人生を狂わせるこの一言》 不正直な心を持つくらいなら、癌を抱え込んだ方がまだまし。だから信心深いとか、そういうことじゃないんだ。もっと実際的なもの、癌はあなたを殺すかもしれないけれど、もう一方のやつ(不正直な心を持つこと)はあなたを間違いなく殺すのよ
title46/50 『光の帝国―常野物語』恩田陸
恐怖vs郷愁―「善き物語」に触れたいあなたへ
目を向けると心が荒むことばっかりで、こういう「善き人々」が存在すると信じさせてくれるだけでも価値あるよなって思う連作短編集
title47/50 『なんて素敵にジャパネスク』氷室冴子
少女は弱いvs女の子は強い―本を読んで、とにかく元気になりたいあなたへ
少女小説の原点であり、永遠に女の子の味方。ラノベの開祖みたいなもの。傑作平安時代ラブ・コメディ!
title48/50 『恋する伊勢物語』俵万智
時間vs言葉―古典をもっとおもしろく読みたいあなたへ
恋愛パターン詰込み集。今流行っている総ての恋愛物語の原型
title49/50 『こころ』夏目漱石
自由vs孤独―自分って実はめっちゃワガママな人間なのでは……と思い始めたあなたへ
日本文学史上もっとも読者を狂わせる、人間の孤独の冷たさを完璧に綴った傑作
《人生を狂わせるこの一言》 自由と独立と己とに充ちた現代に生れた我々は、その犠牲としてみんなこの淋しさを味わわなくてはならないでしょう
結局、人は孤独に気付くから、その淋しさに耐えられないから、本を読む。せめて誰かと何かを共有したくて、せめてその淋しさで誰かとつながりたくて
title50/50 『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ
生きるってすばらしいvs生きるってかなしい―この世でいちばん切ない小説を読みたいあなたへ
今までの最高傑作! 今の時代、「善」とされない方向へ傾きます
登場人物たちは、常に自分の身体をすり減らしながら、自分の命の「残り時間」を意識する
「死にたくない」と叫ぶ誰かに、ぎゅっと寄り添う人がいるだけでそこにあたたかい何かが生れる。寄り添ってくれる人のことを、イシグロは丁寧に描いてくれる
《人生を狂わせるこの一言》 木の枝ではためいているビニールシートと、柵という海岸線に打ち上げられているごみのことを考えました。半ば目を閉じ、この場所こそ、子供の頃から失いつづけてきたすべてのものの打ち上げられる場所、と想像しました
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書籍の内容紹介
作家 有川 浩 推薦!
作品の芯を射貫かれた。
予断のない読み筋が清々しく、ありがたい。
人生狂わせちゃったみたいで、ごめんなさい。
「読者の秋」にぴったり!
知らない本が知れる。知っている本は、もっとおもしろくなる!
著者は23歳。現役の京大院生。
文学研究をするかたわら、京都天狼院で書店員として働く文学マニアの女の子。
この本は、『京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」 と思う本ベスト20 を選んでみた。 《リーディング・ハイ》』というタイトルで「天狼院書店」のウェブサイトに掲載され、2016年、年間はてなブックマーク数ランキングで第2位となり、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ記事をもとに書かれたブックガイドです。
著者の三宅香帆さんは言います。
「実際リストをつくってみると、やっぱり「読んだ後、明確に自分の見ている世界が変わった本」のリストになったなぁ、と思います。
「狂う」って、「世界の規範から外れる」ことだと思うのですが、どうしても社会や世界に流されることのできなくなる本たちを選んでみました。」
外国文学から日本文学、漫画、人文書まで、人生を狂わされる本を50冊選書。
その一つひとつに確かな紹介文が書かれています。
加えて「文学研究」の視点で、50冊それぞれに「その次」に読みたい本を3冊ずつ紹介。
本書には合計200冊の名著が紹介されています。
全国の書店員が絶賛!
書評というより物語を読んでいるようだ。
書評の概念が変わった一冊。
彼女だから書ける書評。みんなこういう風に書いてくれればいいのに。
分かりやすい独自の言葉で書いてくれているのがいい。
とにかく文体が面白かった。みんなぜひ読んで!
—未来屋書店岡山店 櫻井恭子
こんなに先が気になる「本の本」は初めて読みました。
あらすじのチラ見せがうますぎです。
—ジュンク堂書店明石店 村中友希
こんなに私小説みたいな書評は初めて。友達と本の話をした後みたいな読後感。
知人を家に招くたび、本棚で岩波の白を目立たせる自分は死ねばいいと思いました。
本なんて無くっても死にはしないけど、この人はきっと死んじゃう。
「本を読む意義」なんてものがあるとしたら、きっとこの本みたいなことだと思う。
世界が理系で回っていても、文系に生まれて良かった!
—(株)トーハン
谷口尚
なるほど、私が「好きなことを仕事にしてみても良いかな」と書店員になることを選んだのは、本に人生を狂わされたからなのか…と思いました。
家に帰ったら今まで読んだ本を読み返して「人生を狂わすこの一言」を見つけてみたいです。
本好きによる本好きのための本。
きっとこれを読んだら、また本が好きになる。
—大垣書店神戸ハーバーランドUmie店 杉村舞子
京都天狼院 ホームページ
あの、書店スタッフとしてこんなこと言うのもどうかと思うんですけど、ぶっちゃけ、本読むのってめんどくさくないですか??
借りるのでないかぎり、ネットやテレビみたいに無料じゃないし。眠たいときに読んでると寝ちゃうし。肩こりも酷くなるし。(これは私だけ?)
だけど、読む。読んじゃうんですよね。
私は、本を読むのがめんどくさいけど大好きです。
なんでかというと、今まで本に、たくさん励まされてたくさん教えられてきたから。生きててよかったって思うくらい、死ぬほどおもしろい本に出会ってきたから。
読むことで人生をつくってきたんだと思うから。
そこで、今回は、これを読んだらあなたの人生を狂わせてしまうかもしれない……! と思うほど、衝撃的でおもしろい本を選んでみました。
『人生を狂わす名著50』という大仰なタイトルになってますが、大げさでもなんでもなく、私はこの50冊に対して「まじ名作、ほんとに名作、こんな名作ばっかり続けて読んだら絶対人生狂う」と真剣に思っています。
本を読んで、あなたの人生、狂わせてみませんか?
***
完全版【京大院生が選んだ、「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う名著ベスト50】
**
実際リストを作ってみると、やっぱり「読んだ後、明確に自分の見てる世界が変わった本」のリストになったなぁ、と思います。
「狂う」って、「世界の規範から外れる」ことだと思うのですが、どうしても社会や世界に流されることのできなくなる本たちを選んでみました。
リストに収めきれず、もっと影響受けた本は別にあるのですが、それはまた別の機会に。
現在23歳の小娘である私がつくったリストですが、これから先、たとえば46歳になってどういうリストになるのかなぁ、と今から楽しみでなりませんね。
これだから本を読むのはやめられないのでしょう。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
どうか『人生を狂わす名著50』を通して、あなたに、一冊でも多くの、素敵な本との出会いがありますように。
***
【おまけ】
書籍発売記念(?)。著者である三宅の本棚を公開します!
私の本棚見たい人なんておるんかいなとツッコミつつ、「きっと見たい人いっぱいいますよ!」という担当編集者さんのお言葉に甘えて……。
しかし私も人の本棚見るの大好きなので(※人の本棚フェチ)、どうか皆さんにも楽しんで頂けたらな~と思います。
趣味が合う方がいらっしゃいましたら、ぜひご一報ください! 本の話しましょう!!(笑)
それではじゃんじゃかじゃん、こちらが三宅の本棚全貌だっ。
本は基本的にがんがん売る派なので、残ってる本は選抜勝ち抜いてきた組です。意外と少ない? いかがでしょう。
本が溜まってきたら「売る・売らない会議」をひとりで開催します。いる・いらない、って選り分けるの楽しい。
ていうか全体的に雑然としてますね。もうちょっと整理してから写真撮ればよかった。
「本ってどこに何があるか分からなくならない?」って聞かれるのですが、基本的に棚ごとにテーマがあるので、どこに何があるか大体分かります。こちらの棚は、マイ・バイブル棚。『人生を狂わす50冊』でもご紹介してる本が多いです。
真ん中の大きい棚は、表・裏二段編成になってます(というか本が増えて二段にせざるを得なくなった……)。見えづらいですが、我が家には瀬戸内寂聴訳の源氏物語が全巻あります。どや。下鴨の古本市で手に入れたの!
私のイギリス棚(と呼んでいる)の守り神。名前はベルカちゃん。なぜならこの子を購入したその日に読んでいた本が『ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男、文藝春秋社)だったから。
本棚を見た人にたいてい笑われる。「はたらきたい。」→「「働きたくない」というあなたへ」という華麗な就活をめぐるタイトル攻防。そこから「大人はどうして働くの?」→「やさぐれるには、まだ早い!」→「おとなの進路教室。」と禅問答が始まるのですよ。
家に来た人に笑われるその2。本棚とテレビの隙間も本棚活用。こじはるの写真集と『バッタを倒しにアフリカへ』(前野ウルド浩太郎、光文社)が並んでるとこが気に入ってます。古橋先生(※有名な国文学研究者)の本がバッタに潰されてるのだけ、ちょっと気の毒。
さらにおまけ。研究室の机の上。研究関係はほぼ研究室の本棚に置いております。ささやかな公私の区別。どことなく薄暗いのは照明のせいだと信じたい……!
***
完全に私の趣味満載でしたが、大丈夫ですか、ついてきてますか!!
もし面白い本趣味が合いそうな本がありましたら、ぜひ教えてくださいね~っ。京都天狼院でお待ちしております!
それでは本日発売の『人生を狂わす名著50』、どうぞよろしくお願い申し上げます!!!
☆cakesで▼京大院生が選んだ「人生を狂わす」名著50連載中!
☆更新情報はTwitterアカウント@m3_mykからフォローして頂けると嬉しいです。
2017年9月29日に、本を出版します!
9月22日から、全国の天狼院書店にて先行販売!!
詳しくはこちらから。
WEB天狼院の記事「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」から生まれた、全200冊の本を紹介する書評本です!
読むと本屋に行きたくなる、本が読みたくなる、読書の秋にぴったりな本になってます。
本の詳細はライツ社のホームページでご覧下さいませ!
天狼院書店「東京天狼院」
〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
東京天狼院への行き方詳細はこちら
天狼院書店「福岡天狼院」
〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
天狼院書店「京都天狼院」2017.1.27 OPEN
〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
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