超感動の人体  Newton/竹村洋典  2024.8.1.

 Newton』特集

 

『超感動の人体 健康のしくみが分かる』 20247月号

監修: 竹村洋典 (東京女子医大総合診療・総合内科学分野教授、三重大学名誉教授)

 

1.  血液と心臓――血液は、たった1分で全身を一周する

血管の総延長は10万㎞

心臓は筋肉の塊。特に下部の「心室」は分厚い筋肉でできている。血液量は体重60㎏で約5リットル程度。1日約10万回伸縮を繰り返す

心臓の拍動は「自律神経」によって調整され、拍動の命令は心臓内部の「洞房(どうぼう)結節」が行う。「ドクンドクン」という心臓の音は、心臓内の弁の閉じる音で、逆流を防ぐ

心臓がドキドキするのは、「交感神経」という自律神経が働くため。交感神経から「ノルアドレナリン」という神経伝達物質が放出されるため、心臓の鼓動が早まりドキドキする。好みの音楽などを聴いて落ち着くと、「副交感神経」が働き、「アセチルコリン」という神経伝達物質が放出されて、心臓の鼓動がゆっくりになる

「冷え性」の人は、体温が低いわけではない。熱は血液と共に全身に運ばれたり、筋肉が収縮することで発生し、自律神経によって調節され、体温は一定に保たれる。運動不足などで体内の熱が足りないと、体の中の温度を保つように、手足の血管を収縮させて、手足の先から熱が逃げるのを防ぐ。そのため、手足に供給される熱も減り、冷えを感じる

 

2.  肺――せきこむときに上体を起こすと楽なのは、肺に筋肉がないから

肺には筋肉がないので、周囲の筋肉の動きで、風船のように柔らかい肺を膨らませている

腹式呼吸は、お腹を膨らませる呼吸で、主に肺の下にある横隔膜を上下させることで肺を膨らませる。胸式呼吸は胸を上下させ、肋骨の間にある肋間筋を主に使い肺を膨らませている

横隔膜は厚さ25㎜の薄いドーム状の筋肉。肺や心臓と腹腔(腹の空間)の間にあり、3つの穴がいていて、動脈や静脈、食道が通る。薄い膜だが呼吸に不可欠な筋肉。哺乳類は皆同じようにあり、牛や豚の横隔膜は「ハラミ」として知られる

息を吸うと横隔膜が収縮して下がり、息を吐くと筋肉が緩んで元に戻り肺から空気が出ていく。その間10㎝ほど上下する。風邪で咳をするとき、横たわると呼吸がつらく、上体を起こすと楽に呼吸ができるようになるのは、腹の中の臓器からの圧迫が減り横隔膜が下がることで、胸の空間が広がり楽に肺を膨らませることができるようになるから

肋間筋は、肋骨と肋骨の間にある薄い3層の筋肉。息を吸うと、外側の肋間筋(外肋間筋)が収縮して肋骨が引き上げられ、胸(胸郭)が広がる。内側の肋間筋(内肋間筋)が収縮すると肋骨が引き下げられて胸が狭まり、肺から空気が出ていく

歳を取ると息切れや息苦しさを感じるのは、横隔膜や肋間筋などの筋肉が衰えることと関係。加齢によって肺自体の機能が弱まることも原因

横隔膜の厚さや大きさは個人差があり、運動や腹式呼吸によって鍛えることができる

過呼吸(過換気症候群)は、何回も呼吸することでCO2が減り過ぎてしまい、血液がアルカリ性に傾くことで引き起こされる。ゆっくりと深呼吸することで治る

しゃっくりは、横隔膜が痙攣して縮み、喉の声門が急に閉じて音が出る現象。原因は不明。急にたくさん食べると胃が膨らんで横隔膜を刺激したり、横隔膜を調整する神経が刺激されることでも発生

 

3.  鼻腔と副鼻腔――顔にある巨大な空間「副鼻腔」が肺を守る

口から喉までの空間が「口腔」鼻の奥に広がるトンネル状の「鼻腔」には、におい物質を感じる「嗅(きゅう)細胞」があり、巧妙な形によって空気の流れを整える。両者とも外からの異物から体を守る機能を持つ。唾液に含まれる「抗体」は細菌やウィルスが粘膜に感染するのを防ぎ、鼻腔にある線毛はほこりや微生物を排出

鼻腔の周りには副鼻腔と呼ばれる空間が広がる。4つに分かれ、目の上が「前頭洞」、鼻の横が「篩骨洞(しこつどう)」、鼻の奥深くが「蝶形骨洞」、頬にあるのが「上顎洞(じょうがくどう)」。左右にあるので両側合わせると8つの空間。鼻腔同様線毛のある粘膜でおおわれ、異物の排除や空気の加湿を行って肺を守る。声を反響させて発声を助けたり、物理的な衝撃からクッションのように顔の内部を守る。鼻腔粘膜の感染が副鼻腔にも広がることがあり、鼻腔と副鼻腔を繋ぐ穴が塞がれ感染によって生じた膿などの分泌物が鼻腔に排出されずに、慢性的な炎症を起こし、炎症が3カ月以上続くと慢性副鼻腔炎(蓄膿症)といわれる

目の上にも広がっているので、副鼻腔炎が頭痛の原因にもなる

唾液を分泌する「唾液腺」は顎から頬にかけて幅広く存在。おたふく風邪(流行性耳下腺炎)で頬が腫れるのは、耳近くの唾液腺「耳下腺」に炎症が起きるため。おたふく風邪の原因となるムンプスウィルスは外の唾液腺(舌下腺、顎下腺)にも感染し、顎が腫れたり、耳の奥にある「蝸牛」に広がると難聴を引き起こす

黄色の鼻水(鼻汁)は、鼻の粘膜の細胞や、身体を守る為に戦った免疫細胞の死骸によるもの

花粉症などのアレルギー性鼻炎の場合、鼻水は透明。異物排除の防御反応として透明な粘液を出しているから

 

4.  食道と胃――ストレスで食道の筋肉がゆるむと胃液が逆流する

飲み込んだ食べ物は、重力と食道の筋肉の蠕動運動によって胃へ送られる。食道は直径2㎝、長さ2030㎝。食べ物が通る時だけ筒状に広がる。入口、気管支の分岐する辺り、胃に繋がる手前の3か所にくびれがあり、食べ物を咀嚼しないとつかえる

胃の容量は1.5リットル。毎食ごとに500mlの胃液が分泌され、「ペプシン」という酵素によって食べ物中の蛋白質を分解。どろどろの状態で小腸へと送る。高い酸性(pH2)の胃酸(塩酸)から胃を守るために、胃は粘液で覆われているが、食道はそうではないので、胃酸が逆流すると食道は傷つく。逆流防止のために胃の入口は「噴門括約筋」によって閉じられているが、強いストレスがかかると、自律神経が乱れ、筋肉がゆるんで閉まらなくなる。逆流すると食道が爛れ、胸焼けや胸の痛み、喉の違和感や咳といった、逆流性食道炎の症状が現れる

胃には、固形物は36時間、液体は10分留まり、アルコールや一部の薬は吸収。糖分は胃に留まるので、ジュースを飲むとすぐお腹がいっぱいになるが、アルコールでは一杯にならない

逆流性食道炎を抑えるために、食後ガムを噛んで唾液の分泌量を増やし食道の洗浄を行う

腹が鳴るのは、胃の中にある空気のせいで、出口の幽門から十二指腸に押し出されるときに音を出す。空腹時には空気が多く溜まるので、空腹時に鳴りやすい

 

5.  十二指腸、膵臓と胆嚢

胃から続く十二指腸は、指の幅12本分(25)の長さで、胃の背中側にある膵臓に沿ってC字のように曲がった形で固定されている。十二指腸、胆嚢、膵臓は接して混み合っているが、それが消化にとっても重要なのは、十二指腸には「膵液」と「胆液」という2つの消化液が放出される出口があるから

膵臓から膵管を通って十二指腸に放出される膵液は、体内で最も強力な消化液。含まれる酵素のうち「リパーゼ」は脂質を、「トリプシン」は蛋白質を、「アミラーゼ」は糖質を分解。いずれも膵臓から十二指腸に出て活性化するが、アルコールの過剰摂取や胆石が出来ると、膵液が膵臓の中で活性化することがあり、急性膵炎が起こる

膵臓は、軟らかいため腹部への強打によって損傷しやすい。膵管が損傷すると膵液が腹の中に漏れ出て周囲の臓器や腹膜を損傷するので、即刻の対応が必要

膵臓には、ランゲルハンス島という細胞の塊がいくつも存在し、インスリンやグルカゴンというホルモンを分泌。インスリンは血液中の糖の量(血糖値)が上がると分泌され、グルカゴンは血糖値が下がり過ぎると肝臓などに糖を出すよう働きかける。血中の糖の量を一定に保ち、体内の細胞のエネルギー源の供給を調整

胆嚢からは、肝臓で作られた胆汁が十二指腸へ放出される。胆汁は一日1リットル作られ、脂質の消化・吸収に関わる「胆汁酸」や、古い赤血球を分解してできた黄色い色素「ビリルビン」などの不要物が含まれる。コレステロールやビリルビン、リン脂質などの不要物がうまく排出されないと胆石の原因になる。脂質の多い食事を続けるとコレステロールが石化して胆石になる。便が黄色/茶色なのはビリルビンが含まれるからで、肝臓の機能が落ち、体内にビリルビンが過剰になると、皮膚や目に沈着し、黄変する黄疸が生じる

 

6.  小腸――過酷すぎる環境のため、小腸の細胞は数日しか生きられない

直径3㎝、長さ6m。十二指腸、空腸、回腸からなり、十二指腸で一気に消化の進んだ食べ物から、空腸では栄養の吸収が始まる。回腸と空腸はほぼ同じ形状と働き。口側の2/5を空腸、肛門側の3/5を回腸と呼ぶ。小腸の管の中には300万個の「絨毛(じゅうもう)」と呼ばれるひだがあり、1つの絨毛には5000個の栄養吸収細胞がある。絨毛に張り巡らされた毛細血管やリンパ管を通じて、アミノ酸や糖は血管に、脂質はリンパ管に吸収され肝臓へと送られる

1日に摂取する水分は約1.5リットル、そこに唾液や胃液、膵液、胆汁などが消化管に放出され、消化管の水分は10リットルほどになり、その多くを小腸で吸収

回腸(小腸)と盲腸(大腸)の境には「回盲弁」があり、小腸の消化物の逆流を防ぐ

小腸は、異物から体を守る免疫細胞の基地。体内に存在する免疫細胞の50%が集結。小腸の上皮細胞(表面)は、外から入ってきた危険な異物に晒されているので、皮膚と同じ様に絶えず作り変えられていて、11000万個の細胞が作られ、死んでいく(細胞の寿命は12)。新陳代謝のサイクルが早いのは、感染防御のためと考えられている。胃腸がウィルスに感染しても新陳代謝の速さから、細胞がすぐに再生され元に戻るのも早い

空腸や回腸内の、ドーム状の「パイエル板」には多くの免疫細胞が集結。パイエル板の表面には「M細胞」という特殊な細胞があり、細菌やウィルスなどの異物を取りこんで、「マクロファージ」や「樹状細胞」といった免疫細胞にその情報を伝え、その情報はさらにT細胞やB細胞といったリンパ球に伝わる。B細胞は病原体を排除する「抗体」を作り、抗体は腸管内で病原体に結合し、排除する

小腸や大腸には、およそ1000種類、100兆個もの細菌が生息。うち小腸に1割、残りが大腸にある。腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分かれ、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌は免疫力の向上にも深く関わる。善玉菌は、酢酸や酪酸、プロピオン酸といった「短鎖脂肪酸」を作り、短鎖脂肪酸は免疫細胞を刺激し、免疫システムの調整役である制御性T細胞を増やし、アレルギーなどを抑える。善玉菌を増やすにはヨーグルト、食物繊維が有効

 

7.  大腸と肛門――大腸の蛇腹状の形は水分を吸収するため。腸の形の差は体質として現われる

大腸は、くびれとふくらみがある蛇腹状の形。長さ約1.5m、直径58㎝。盲腸、結腸、直腸からなり、結腸の蛇腹に便をため、水分を吸収しやすくしている。盲腸も本来は消化機能を持っていたが、人の進化の過程で退化し、虫垂として残る。虫垂は57㎝の細い器官

蛇腹の大きさや長さ、管の太さや長さには個人差があり、体質の差として現れる

大腸の内肛門に繋がる直腸は、長さ20㎝で便を貯めておく役割

肛門は精密。意志でコントロールできる「随意筋」と、意志に無関係に調節される「不随意菌」があり、両者が協調して働く。センサーとしても機能し、固体か液体か気体かを判別

虫垂は不要な器官とされたが、虫垂には免疫細胞が多く集まっていて、「IgA」という抗体を作って腸内の炎症を抑えることが判明。虫垂を切除すると炎症性の腸疾患に罹りやすくなる

 

8.  肝臓――70%切除しても1年で元に戻る。肝臓の驚異的な再生能力

最も大きい臓器。重さ1㎏以上。栄養を加工し毒を分解する「化学工場」、栄養を貯蔵する「流通基地」。1分間に1リットルもの血液が流れ込み、うち80%が門脈から。消化管で吸収された栄養素や薬剤は、門脈を通ってまず肝臓に運ばれ、加工されて、肝静脈から心臓へ向かい、全身へと運ばれる。残り20%は肝動脈から流入。肝動脈からは酸素が多く含まれた血液が供給され、肝臓の活動を支える

肝臓は、腸管から侵入した細菌やウィルスの影響を受けやすく、腸管から血液を受け取るため、消化器のがんの転移先は肝臓が多い

肝臓ではゴミ処理も行うが、能力を超えると排泄がうまくいかず、血管に溢れてしまうと「黄疸」になる。アルコールやタバコのニコチンの無害化も行う

他の臓器との違いは、再生能力の高さ。肝臓の2/3を切除しても1年で元に戻るが、再生機能が破綻したり、肝細胞の中に脂肪がたまって「脂肪肝」になると炎症して肝炎となる

肝臓では、アルコールをアルコール脱水素酵素ADHでアセトアルデヒドに分解。アセトアルデヒドは毒性が強く、頭痛や吐き気を惹起し2日酔いのもとになる。さらにアルデヒド脱水素酵素2ALDH2で無害な酢酸へと分解。ALDH2の働きが弱いとアルデヒドの影響が残る

座薬がよく効くのは、肝臓での処理をほとんど受けないためで、少量でも高い効果を発揮

 

9.  骨――上半身全体の重さがかかる中、複雑な動きを可能にする「腰椎」

腰椎は、臼状の骨で、骨盤から上に5つ連なる

腰椎の背中側にある「脊柱管」には「馬尾神経」という末梢神経が通り、「坐骨神経」へと繋がる

腰椎の障碍で馬尾神経が圧迫されると、腰痛の他に頻尿などの膀胱障碍、便秘などの直腸の障碍が見られる

急に起きる強い腰痛を「ぎっくり腰」という。症状の通称で、原因は様々

骨折した部分は、隙間を作っておいた方が、隙間にかかる圧力が刺激となって、骨の再生が活発になるので、早く治る

上半身を回す回旋運動は「腰を回す」と表現されるが、腰椎は5度程度しか回旋できず、実際は胸を回転させている。胸椎は35度ほど回る

 

10.   腎臓と膀胱――沈黙の臓器「腎臓」は少しの機能低下でも寿命を縮めてしまう

腰より少し上の背中側にあるのが腎臓。左右1つづつあり、縦10㎝ほどのそら豆の形

腎臓の上に乗った小さな臓器が「副腎」で、23㎝ほどの大きさ。腎臓と一緒に「腎筋膜」という硬い膜におおわれているが、それぞれの働きに関連はない

腎臓は、11700リットルの血液を濾過し、老廃物などを約11.5リットルの尿にして排泄し、血液の成分を調整

副腎は、ホルモンを分泌して臓器の働きを調整する

腎臓は、「糸球体」というフィルターで血液を濾過し、余分な水分や塩分、老廃物などを尿として排泄することにより、体内のカリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムの濃度を一定に保つ。これらのミネラルは、神経の伝達や筋肉の収縮に深く関わる

腎臓は移動しやすい臓器で、最大5㎝は動く。それ以上下がると「遊走腎」という病気

尿は、尿管を通って膀胱に貯められる。尿に含まれる老廃物が結晶化して大きくなると尿管を塞ぎ、尿管結石となる。膀胱は厚さ1㎝の筋肉でできた袋だが、尿が溜まると3㎜まで薄くなり、250mlほど溜まると尿意を感じる。最大600800mlは溜まる

膀胱に細菌が入ると炎症を起こす膀胱炎は、女性に多い。女性の尿道は46㎝と短く、尿道口と肛門が近いので大腸菌などが入りやすい。男性の尿道は1628㎝と長いため、詰まる危険性が高く、尿路結石が女性より多い

副腎は、皮質と髄質の2層構造で、外側の皮質は血糖値を上げる「コルチゾール」や血圧を上げる「アルドステロン」、性ホルモンの「アンドロゲン」を分泌し、内側の髄質は心拍数や血圧を上げる「アドレナリン」を分泌

 

11.   筋肉――肩甲骨周りの筋肉は動かしにくい。姿勢の悪さが不調の原因になる

肩甲骨は肋骨の上に乗っているだけなので、可動範囲が広い。その動きは17種類も付着する筋肉によって支えられるため、関節によって固定された骨に比べると支えが弱く、筋肉に大きな負担がかかって疲労も溜まりやすい。筋肉の「コリ」は「硬結(こうけつ)」といい、筋繊維が持続的に収縮した部分のこと。一度しこりが出来ると、筋繊維が伸びにくくなり、血液やリンパ液などの循環も滞り、酸素の供給にも悪影響を及ぼし、末梢神経や筋組織が傷つくと、痛みを引き起こす「プラジキニン」や「プロスタグランジン」などが放出され、さらに血管や筋肉収縮に繋がり、悪循環を引き起こす

前鋸筋(ぜんきょきん)――肩甲骨の内側の縁と肋骨の18番目を繋ぐ鋸状の筋肉で、手を前に出したり、上部へ手を伸ばしたりするときに働く

肩甲挙筋――頸椎の横突起と肩甲骨の上部の縁に繋がる筋肉で、肩をすくませた時や重い荷物を運ぶ時に働く。肩こりの原因にもなる筋肉

小菱形筋(しょうりょうけいきん)――背骨の突起((きょく)突起)と肩甲骨の上部の縁に繋がる筋肉。大菱形筋と同じ働き

大菱形筋――背骨の刺突起と肩甲骨の内側縁に繋がる筋肉で、引き寄せる動作の時や胸を張った姿勢を維持する時などに働く。姿勢の悪さで固まりやすい筋肉

僧帽筋――首から背中を広くおおう平たい筋肉で表層にある。肩甲骨の位置を安定させる役割。文字を書く時などにも働き、肩こりの原因となる

前記筋肉の収縮を緩めるストレッチは、「肩甲骨はがし」と呼ばれ、整骨院などで行われる

筋肉は、インナーマッスルとアウターマッスルに分類。大菱形筋、小菱形筋などはインナーマッスルで体の深い部分にあって、関節の動きの補助や姿勢の保持に関わる。僧帽筋などのアウターマッスルは、動作を行う時に大きな力を発揮。マッサージでほぐすことができる筋肉のほとんどが、アウターマッスル

 

12.   リンパ――急に走ると左脇腹が痛くなるのは、脾臓が縮んで血液を押し出すから

脾臓は、左脇腹にある、こぶし大の臓器で、「血液の貯蔵庫」。急に走ると体内に血液が必要となるため脾臓が血液を絞り出そうと縮むので痛みを感じる

脾臓は免疫システムにも重要な役割を果たす「リンパ器官」でもある。リンパ球が集まった「リンパ小節」があり、体内に侵入した異物の情報に従って、「抗体」が作られる

血液中の水分が細胞間に滲み出たものを組織液といい、組織液を血管に戻すのがリンパ管で、血管同様体内に張り巡らされている。リンパ管にはところどころリンパ節と呼ばれるふくらみがあり、リンパ液を濾過して、侵入した細菌やウィルスといった異物を排除。リンパ節には異物を食べるマクロファージや、感染細胞を破壊するNK細胞(ナチュラルキラー細胞)など、たくさんのリンパ球が集まる。リンパ節が腫れるたり痛むのは、病原体と戦っているから

心臓の上にある胸腺も免疫システムにとって重要な器官。免疫細胞の司令塔になるT細胞のうち、自己に反応してしまうT細胞を除去して、自己に反応しない成熟したT細胞だけを残す

体のむくみは、体内に水分がたまった状態。筋肉を動かさないと血液の流れが悪くなり、水分が停滞してむくむ。リンパ液が滞るリンパ浮腫もある。炎症が原因の場合もある

リンパマッサージは浅いリンパ管には効果的だが、深いところにある太いリンパ管の流れの改善には運動がお勧め

 

13.   神経――肘をぶつけると手に電気が走る。神経の圧迫が手足のしびれをもたらす

多くの太い神経は体表から離れた深いところを通るが、人体の構造上表面に近いところを通る神経は、しばしば圧迫による痺れの原因となる。肘近くの尺骨神経もその1

神経細胞は、細長い細胞なので、途中が圧迫されると細胞が障碍されて、誤情報が伝わる

サタデーナイト/ハネムーン症候群は、上腕の外側にある橈骨(とうこつ)神経(感覚神経と運動神経)の障碍が原因であり、正座による痺れは、神経の圧迫によって血流が悪くなり、神経に栄養や酸素が供給されなくなるのが原因。ひどくなると痛みを感じることもある

痺れは、神経の圧迫の他にも、感覚器から感覚神経、脊髄、大脳に至る感覚の伝導経路のどこかに障碍が起きることでも発生。糖尿病やアルコール摂取などの内科的原因もあり、脳から遠い両手足に左右対称に症状が出ることが多く、温めると楽になるのが特徴

痛みの伝達は、感覚神経以外に自律神経を介しても起きる。自律神経は、自分の意志ではコントロールできない神経で、身体の調子を整えるために働く。胃腸などには感覚神経が走っていないので、胃腸の痛みは自律神経によってもたらされる。虫垂炎では、初めへその辺りに痛みが走るのは自律神経によって伝わる痛みで、その後炎症が腹膜に及ぶと痛みが右下に移り激痛となる。消化管をおおう腹膜には感覚神経が走るので、痛みの部位がわかるので、患者の痛みを聞くだけで医者は炎症が腹膜にまで拡散したことがわかる

 

14.   脳――脳の「しわ」の数は頭の良し悪しには関係がない

大型の哺乳類の大脳にはしわがあるが小型にはない。ヒトの脳のしわの数は皆ほとんど同じ

脳のしわは、「大脳皮質」にある凸凹で、隆起した部分が「脳回」、溝の部分が「脳溝」。凸凹によって脳の面積を稼ぐ。しわは神経細胞同士が連結する際に、離れた領域間を繋ぐ神経同士の物理的な力によって生まれる。領域間の連結は胎児期に起き、皆同じように連結される

しわの個人差(しわの折り畳まれ方の差異)が、個人の特性となって現れるという研究者もいるが、しわと機能の関係はまだはっきりとはわかっていない

大脳は、右脳と左脳に分かれ、右脳は左半身の運動の指令を、左脳は右半身の指令を出す

言語活動をつかさどる「言語脳」は、右利きの人は左脳にあるが、左利きの人のうち5080%は右脳にある。利き手によって脳の役割が異なる理由は未解明

小脳の重さは脳全体の10%ほど。大脳は約140億個の神経細胞からなるが、小脳には約1000億個が集中。筋肉を細かく調整して姿勢を保ったり、運動の記憶に関わったりする

脳と脊髄を繋ぐのが「延髄」で、呼吸などを調整

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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