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陥穽 陸奥宗光の青春  辻原登  2024.11.27.

  2024.11.27.  陥穽 陸奥宗光の青春   著者 辻原登  1945 年和歌山県生まれ。 90 年「村の名前」で芥川賞、 99 年『翔べ麒麟』で読売文学賞。『遊動亭円木』『許されざる者』『闇の奥』『韃靼の馬』『冬の旅』など著作多数。近刊に『卍どもえ』『隠し女小春』。 2016 年、恩賜賞・日本芸術院賞。 22 年、文化功労者   発行日            2024.7.17.  第 1 刷 発行所            日本経済新聞出版   日本経済新聞朝刊連載  2023.3.1. ~ 2024.1.31.( 全 326 回 )     序 外務省には陸奥の銅像が 2 つある 1 つは本省玄関横に立つ 5m の立像、 1966 年に陸奥没後 70 年を記念して建立 もう 1 つは胸像、相模原の外務省研修所玄関ホールに設置。 1907 年陸奥の 10 周忌に旧本省玄関に設けられ、「帝都 10 大銅像」とされ名所だったが、軍需金属供出で撤去。その際将来の再建を期して頭部を切断し疎開。旧像の制作者は藤田文蔵 ( 美校教授 ) 、戦後の新像は山本豊市 ( 藝大教授 ) 。マイヨールの日本人唯一の直弟子。秘匿の頭部は、山本によって補修が加えられ胸像となった 三国干渉の後持病の肺疾が悪化して病床に伏した陸奥は、執念で外相在任中の外交記録を『蹇蹇録』に残し、翌年 (1897) 死去。在職中は「カミソリ大臣」の異名、死後は「日本外交の父」 私の関心は、彼の前半生。そのクライマックスは、「明治政府転覆計画」への加担と挫折 この時点で、彼は政府の立法府である元老院幹事・副議長 ( 仮 ) の地位にあり、陰謀を秘めて憲法の試案作りに、外国人法律顧問と共に取り組んでいた。西南戦争勃発の危機と混乱に乗じて、土佐立志社の急進グループが大久保暗殺を含む藩閥政権打倒を画策。陸奥も参謀役として参加、出身地の和歌山で育てた精兵を率い合流を目指す 陸奥は事件発覚から...

〈序文〉の戦略  松尾大  2024.11.17.

  2024.11.17.   〈序文〉の戦略 文学作品をめぐる攻防   著者 松尾大 ( ひろし )   1949 年 三重県生まれ。 美学 研究者、 翻訳家 。 東京藝術大学 名誉教授。文学修士( 東京大学 )。専門は美学・ 西洋古典学 。芸術学、特に美学の分野において論文発表や翻訳を行っており、美学が成立する根拠を多角的に問い直している。 県立四日市高 、 78 年東大文卒。 同 大学院人文科学研究科 博士 課程 (美学芸術学専攻) 単位取得退学 。 成城大学 文芸学部芸術学科助教授。 東北大学文学部 美学・西洋美術史教授。東京藝術大学美術学部教授。現名誉教授   発行日            2024.2.13.  第 1 刷発行         発行所            講談社  ( 講談社選書メチエ )   裏表紙 書物の冒頭に置かれた〈序文〉は、ただの添えものではありません。 文学作品であれ、学術的な書類であれ、 著者が非難や攻撃や異議申し立てを受けることは今もあります。 それに対して沈黙を貫く人もいますが、 次の著作で反論したり、あるいは言い訳したりする著者もいます。 その戦いの場として使われる〈序文〉には、 読者に気づかれないように武器が仕込まれているものです。 修辞学の第一人者が文学を中心にした古今の作品を渉猟し、 〈序文〉に仕掛けられた多様な作戦を紹介する、 これまでなかったユニークなレトリック案内     序 論 文学作品の公表が様々な告発、非難、攻撃、異議を招く(と想定される)ことはしばしばある。その場合、著者は沈黙をまもることも出来る 弁明、正当化、謝罪、説明を表明する著者も少なくない。そういう言語行為をする場合は、攻撃の的であるテクストの周辺に配備されたテクスト ( =パラテクスト ) であり、要人の周辺に配置されるボディ...