日本語常識ドリル300問 漢字編 朝日新聞出版編 2013.6.6.
2013.6.6. らくらくマスター 日本語常識ドリル300問 漢字編
編者 朝日新聞出版
発行日 2010.6.30. 第1刷発行
発行所 朝日新聞出版
初出 2007.9.朝日新聞社より刊行された『日本語常識ドリル600問』のうち、パート1~パート3を漢字偏としてまとめたもの
パート1. 漢字誤記
Ø 縮小 ⇒ 大きさを縮めること、対義語は「拡大」
Ø 機嫌 ⇒ もとは仏教語で世間の人が嫌うこと。「気嫌」という言葉はない
Ø 気休め ⇒ 安心のことだが「気安め」とは書かない
Ø 安否 ⇒ 安らかなこととそうでないことの意。「是非」とは異なる
Ø 脂汗 ⇒ 人体から出るあぶらは「脂」
Ø 固有 ⇒ 「固」は元々の意、「個有」とは言わない
Ø 半ば ⇒ 半分の意
Ø 黙読 ⇒ 「目読」ではない
Ø 向学心 ⇒ 「好学」は学問を好むことで「好学の士」とは言うが「好学心」とは言わない
Ø 応対 ⇒ 来るものに答える意の「応」と、面と向かって答えるの意の「対」の組合わせ、「応待」ではない
Ø 泥仕合 ⇒ 勝負を決めるのが「試合」で、双方泥まみれになってやりあうのは「仕(為)合」
Ø 実態調査 ⇒ 実際の状態を調査すること。「実体」は事物の内容や本体のこと
Ø 転機 ⇒ 「期」は定められた時や一定の時を言い、「機」は時の中でも特別の時
Ø 不始末 ⇒ 「始末」は片付けるの意。「仕末」とは書かない
Ø 日陰者 ⇒ 「日陰」は「日向」の対語。「日影」は日の光や日差しを言う
Ø 憮然 ⇒ 落胆、失望の様子を言う。「撫」は「なでる」で誤字
Ø 違和感 ⇒ 「違和」は心や体の調和を失うこと。「異和」という言葉はない
Ø 不承不承 ⇒ 「不承知」と同じ意の「不承」を重ねた語。「不請不請」とも書く。「不精」は少しのことを億劫がる様子を言い「無精」とも書くが、「不精不精」と重ねることはない
Ø 歳時記 ⇒ 俳句の季語を書いたもの。1年中の行事や風物など順を追って列挙した書物のことも言い、「歳事記」とも書く
Ø 切羽詰まる ⇒ 「切羽」とは刀の鍔の柄と鞘に接する部分の両面につけて刀身が抜け落ちないようにするための薄い金具。これが詰まると刀が抜き差しならない状態になる。「切端」ではない
Ø 気後れ ⇒ 「後れる」は人の後から行く、人の下位になることを言う。「遅れる」ではない
Ø 転嫁 ⇒ 「嫁する」は罪や責任を押し付ける意。「転化」は他の状態に変わること
Ø 徐々に ⇒ ゆっくり行くの意の「徐」を重ねた副詞。「徐に」は「おもむろに」と読む
Ø 野点 ⇒ 野外で茶を立(た)てること。「野立て」は貴人が野外で休むこと
Ø 歓心を買う ⇒ 「歓心」は嬉しく思う気持ち、それを「買う」というのは、嬉しいと思われるように努めたり機嫌を取ったりすること
Ø 遅蒔きながら ⇒ 「おそまき」は農作物の種を、普通の時期より遅れて蒔くこと
Ø 持論 ⇒ 自分が予てから持っている意見で、「自論」という語はない
Ø 意思表示 ⇒ 「意思」も「意志」も同じだが、「意志」にはより積極的に成し遂げようとする心の意味合いがあり、「意志表示」とは言わない
Ø 端的 ⇒ 本来の漢語には、明白に、思っていた通りの意があり、簡単の「単」ではない
Ø 鈴生り ⇒ 神楽鈴の形が枝一杯に実を付けた果樹の枝に似ていることに由来。音とは無関係
Ø 書き入れ時 ⇒ 「売上などを帳面に書き入れるのに忙しい時期」に由来。「掻き入れ」ではない
Ø あくどい ⇒ 「あく」は「灰汁」の意で渋味やえぐみのこと。「悪」の意はない
Ø 善後策 ⇒ 「後のために善いようにする」ことで、「前後」とは無関係
Ø 気概 ⇒ 「概」は「おおよそ、おもむき」の意で、何事にも挫けずやり遂げようとする強い意志。「慨」は嘆くこと
Ø 撤回 ⇒ 「徹」にも「撤」と同じ「取り除く」の意はあるが、現代国語では「撤回」が正しいとされる
Ø 億劫 ⇒ 仏教語の「億劫(おっこう)」に由来。極めて長い時間を言う「劫」が「億」倍もある、つまり「無限の時間」の意
パート2. 漢字誤読
Ø 上戸(じょうご) ⇒ 「下戸」の対義語。「笑い上戸」とも使われる
Ø 逃げ果せる(にげおおせる) ⇒ 「果せる」は動詞の連用形について、「すっかり…する、成し遂げる」の意を表す語
Ø 庫裏/庫裡(くり) ⇒ 「倉庫」の「庫」だが、この場合は呉音で読む。「裏/裡」は「内側」の意
Ø 施策(しさく) ⇒ 「施すべき策」の意。「施主」「施療」との読み方もあるが、この語の場合は「し」
Ø 九十九(つづら)折り ⇒ 「つくも」とも読むが、道の形が木の周りをぐるぐると巻いているつる草、葛に似ていることから「つづら」が正しい。「葛折り」とも書く
Ø 斯界(しかい) ⇒ 「斯」は「この」の意、漢文で「斯道」と言えば「この道」で学問や技芸の道のこと。音は「し」だけ
Ø 還俗(げんぞく) ⇒ 「還」は元に戻る、帰るの意。「生還」は漢音で読むが、ここでは呉音で読む
Ø 陶冶(とうや) ⇒ 元は陶器を作ったり(陶)、金属を鋳たりすること(冶)で、転じて人を作り育てることを言い、人格を養う場合も使う。「冶」の音は「や」だけ
Ø 手(た)折る ⇒ 「手」を「た」と読むのは、他に「手挟む」「手向ける」「手綱」「手弱女」など
Ø 香具師(やし) ⇒ 「香具(こうぐ)」は、匂袋や香を焚く道具。露店で香具を売ることが多かった
Ø 盤石(ばんじゃく) ⇒ 「ばんせき」と読んだり、「磐石」とも書く
Ø 似非(えせ) ⇒ 「似而(て)非なるもの」を言い、まやかし物の意を表す接頭語
Ø 完遂(かんすい) ⇒ 「遂」は漢音で「すい」、呉音で「ずい」。「遂(つい)に」が訓読みなので間違えやすい。「未遂」と同じ
Ø 我執(がしゅう) ⇒ 元は仏教の言葉で、自我を永遠に変わらないものと誤って考えることを言う。「執」は拘るの意で、「執事」「執念」の両方があるが、ここでは「しゅう」
Ø 荷役(にやく) ⇒ 「役」は漢音で「えき」、呉音で「やく」と読み、「雑役」のように後ろに付くと「えき」と読む語が多いがこの語は「やく」
Ø 追従(ついしょう)笑い ⇒ 「人にこびへつらう」意で、「ついじゅう」は人の言動のままに従うこと
Ø 権高(けんだか) ⇒ 日本製の漢語で重箱読み。人を見下したような横柄な言動を形容して言う。「見高」とも書く
Ø 未曾有(みぞう) ⇒ 漢文では「未だ曾て有らず」と訓読
Ø 幕間(まくあい) ⇒ 「山間」と同様、例外的な読み
Ø 遵守(じゅんしゅ) ⇒ 「遵」は従う、法に則るの意。本来の音は「しゅん」。「順守」とも書く
Ø 書き下(お)ろし文 ⇒ 新たに書くこと。「読む下し文」とも言う。「書き下(くだ)し文」は漢文を訓読して日本語の語順に書き改めた文
Ø 分別(ふんべつ)顔 ⇒ 「ふんべつ」は「物の道理をわきまえること」。「ぶんべつ」は「別々に分けること」
Ø 好事(こうず)家 ⇒ 変わったことに強い興味を持つ人、風流な人。「こうじ」と読むと喜ばしいことの意
Ø 存亡の秋(とき) ⇒ 諸葛孔明の言葉。「秋」は大切な時の意で季節とは無関係。「多事の秋」は重大事件の多い時節のこと
Ø 四阿(あずまや) ⇒ 四方に柱を立てて屋根を葺き下ろしただけの小さな建物。「阿」は柱、軒のこと。「東屋」とも書く
パート3. 言葉誤用
Ø 気が置けない ⇒ 気を使う必要がない、遠慮がいらないの意。「気を許せない」と混同しがち
Ø 顎が落ちる ⇒ 美味しい時の表現。笑う時は「外れる」。「顎が干上がる」は生計が立たなくなること
Ø 揚(挙)げ句の果て ⇒ 「揚げ句」とは元は連歌などの最後の七・七の句を言い、「発句」に対する言葉。そこから「終わり」「結果」の意が生じ、それを強めたのが「揚げ句の果て」で、良くない結果に終わった場合に使うことが多い
Ø 白熱した試合、実力が伯仲する ⇒ 「伯」は長兄、「仲」は次兄の意で、年齢差がそれほどないことからの言葉で、優劣の差がないことを「伯仲」という
Ø 押しも押されもせぬ大横綱 ⇒ 実力があって堂々としていること。「押すに押されぬ」との混同が多い
Ø 唖然として ⇒ あきれて言葉も出ない様子
Ø あわや ⇒ もう少しでそうなりそうな状況を言い、本来はよくないことが起こる寸前の意
Ø 三日と上げずに通う ⇒ 間を置かず、ひっきりなしにということ。「上げる」は「仕事を上げる」のように「終わりにする、仕上げる」の意。「三日を空けず」も意味は同じだが慣用句としては「上げず」が正解
Ø 春秋に富む ⇒ 年が若くて将来性があり、希望に満ちていること。年老いた人には「春秋高し」と言う
Ø 行き付けの飲み屋、掛り付けの医者 ⇒ 何度も行って馴染んでも、行き先によって表現が違う
Ø お先棒を担ぐ ⇒ 「先棒」とは駕籠かきの前の人。悪いことをする場合に使う
Ø 教え子 ⇒ 教えた側から言う言葉。「先生の教え子です」とは言わない
Ø 暮れなずむ ⇒ 日が暮れそうでなかなか暮れないでいること。「なずむ」は「泥む」と書いて物事が進まない、滞るという意
Ø 青田買い ⇒ 田圃を青い穂のうちに買うことから、卒業前の人材を確保する意に使われる。肥料などにするため未成熟のうちに刈るのを「青田刈り」と言い、同じ意とするものもある
Ø (AはBの)敵ではない ⇒ 到底かなわないことで、Bが強い
Ø (小説の)さわり ⇒ 「触り」と書き、義太夫節の聞かせどころのこと
Ø 流れに掉さす ⇒ 流れに従って棹をさして下るように、うまくやっていくこと。草枕の「情に掉させば流される」も同じ意。「水を差す」と混同しないこと
Ø エレベーターが「故障中」は誤用 ⇒ 「…中」は人間が主体である場合に使われる
Ø 指折りの ⇒ 優れている場合に使う。「有数の」「有名な」は悪いことにも使う
Ø 筆が立つ ⇒ 文章がうまいという意味。字がうまいのは「達筆」
Ø 薄紙を剥ぐように(病状が回復) ⇒ 少しづつ着実にという喩。「薄皮の剥けたよう」とは色白できめ細かい肌をした女性を形容する言葉
Ø 「おざなり」はいい加減だが一応はやり、「なおざり」はいい加減でしかも放っておく
Ø 役不足 ⇒ 与えられた地位や役目が実力以上に軽いこと。へりくだって言う場合は「力不足」
Ø 悲喜こもごも ⇒ 喜びと悲しみを(1人の人間が)交互に味わうこと
Ø いぎたない ⇒ 「寝穢い」と書き、なかなか目を覚まさない、寝相が悪いなどの意。寝ることに関して言う語であり、「いじきたない」とは違う
日本語常識ドリル300問 漢字編 [編]朝日新聞出版
[掲載]2010年7月25日 朝日新聞
「せっぱん」は〈折半〉か〈切半〉か、「役務」は〈やくむ〉か〈えきむ〉か、「凡例」は〈ぼんれい〉か〈はんれい〉かなど、Q&A方式で掲載。コンパクトな解説も役立つ。
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