ニュースが消える日  堂場瞬一  2026.7.22.

 2026.7.22. ニュースが消える日

 

著者 堂場瞬一 1963年茨城県生まれ。2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで作品を発表し続けている。著書にシリーズ「日本の警察」「支援課」「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」のほか、近著『闇をわたる セレブ・ケース』『綱を引く』『ポップ・フィクション』『ルーマーズ 俗』など多数 Wikipedia参照

 

発行日            2025.7.28. 1刷発行

発行所            講談社

 

第1章         

全国紙東日新聞で紙面を作る整理記者の戸倉は、基本的に「硬派」の編集担当で、5年前に前﨑日報という地域紙の編集長になる

曽祖父が創業し、父親が経営する印刷会社の子会社が前崎日報。老齢の編集長が辞めたのを機に、父親に戻ってくるよう説得された。東京から新幹線で1時間、25万都市で1万部を発行

平和な町で、深夜に市長が自宅前で襲われる。いきなり私道で市長の車に真横から車をぶつけてきた。市長に怪我はなかったが、運転していた私設秘書が骨折の大怪我

 

第2章         

何も手掛かりのないままに捜査も行き詰まり。取材も手ごたえなし

戸倉は、地元密着の緩い地域紙にも硬派の記事が必要だとして、市長襲撃事件を機に硬派の記事を伸ばして紙面の改革を図ろうとする

 

 

第3章         

1週間後に市長の2度目の襲撃事件発生。今回はバイクで歩いている市長に突っ込んできた当て逃げ

市長は革新派。議会は過半数を保守派が占める。前回の選挙は倍以上の大差で現市長が当選、対抗の保守派は選挙で体調を崩し、その後間もなく死去。保守派を応援していたのが地元の建設業者の平野組。同社には政治担当がいて会長の甥が警察に事情聴取される

 

 

第4章         

さらにSNS上で、市長への襲撃予告が載る

犯人は夜の高速道路で市長車に体当たりしてきて、市長車は横転、市長は骨折

車を運転していた平野組の甥っ子が逮捕され、前崎日報は全国紙・県紙を出し抜いて記事を書く

 

第5章         

市長はSNSで、言論の自由のためにこれからも発信を続けると宣言

父の印刷業の経営も厳しく、そろそろ限界だといい、新聞の編集をやってほしいと頼んでおきながらいつやめてもいいと息子に言う。ニュースを取材して記事にする作業は必要だが、その記事を載せるのは紙の新聞である必要はない

平野の持っていた市長の行動予定を示す暗号めいたメモは、戸倉の前の編集長だった那須が市の広報に問い合わせて作成したものだったことが判明。那須は選挙で敗退して死去した候補と盟友で、市長が選挙戦で相手を誹謗中傷するやり方が許せなかった

平野組も、新しい市長になってからは工事受注がストップし恨みに思っていた

戸倉は自ら那須の犯行加担を突き止めながら、特ダネとして書くことはせず、前任の編集長が犯罪に加担していたことで、責任を取って前崎日報の休刊を決める

新聞の前途は厳しく、いずれはこの日が来ることは予想されていたのでいいタイミングでもあった

 

 

 

講談社 ホームページ

「俺たちは、面白いから記事を書くわけじゃないですよ。伝える必要があるから記事にするんです」

大手全国紙の整理記者を辞め、実家の印刷所が発行する「地域紙」編集長になった戸倉大介。

部数1万部、編集部員3人、週3回発行、全4ページ。人口25万人の平和な地方都市に事件は少なく、行政発表や街ネタが中心の、刺激に乏しい紙面だ。

そんな中、SNSを駆使する若き市長が自宅前で何者かに襲撃された。これはテロか? 

その事件が、戸倉の記者魂に火を付けた。

人手も拡散力も速報性もない。それでも、地元で起きたこの事件の真相を誰よりも深く、正確に報道してやる。

裏を取れないことは書かない。特定の人物の主張だけで記事にしない。引用だけのこたつ記事は載せない。

元新聞記者の著者が報道の矜持を問う長編小説

 

 

 

(書評)『ニュースが消える日』 堂場瞬一〈著〉

2025927日 朝日新聞

 記者が積み重ねる「対話」の効用

 新聞は今や斜陽と称しても過言ではない。正直言って面白くない。しかし新聞は明治この方、日本の近代を表象してきた。そんな新聞と報道を、今の時代に真正面から位置づけようとしたのが本書である。社会小説、警察小説で活躍してきた著者は、新聞の危機が声高に叫ばれるまさに今の新聞報道をテーマに据えた。

 新聞記者出身の作家だからこそ、新聞界のあり方をフィクション化して描く筆運びにうならされる。しかも主人公を花形の「全国紙」の政治部や社会部ではなく整理部出身とし、その彼が東京から新幹線で1時間半ほどの実家に戻り、「地域紙」の編集長になるのだ。

 さらに書き下ろしの形を取ることによって、連載形式にありがちなダブりやしつこさを排し、スピード感あふれる展開となっている。記者は事件の真実に迫るために、いやでも同じ業界の記者とかけっこしながら、警察や官庁のこれは、という人間に仕掛け、仕掛けられ、記者としての腕を磨いていく。事実に迫るため人と会い、拒絶やはぐらかしの対話を繰り返す。そこでの対話はオーラル・ヒストリーの正反対をいき、言葉にならぬカンとツボを押さえるための動作の繰り返しだ。

 したがって、話のきっかけをつかむための小道具の設定が重要になる。たばこ、酒、コーヒーなどを出し合い、飲み合いながら話の糸を引く。取材対象との距離をとりながらのエピソードの重層的展開も見事だ。

 新聞界がほかの電子媒体やユーチューブに侵食されるとき、果たしてこの対話のシーンは残るのだろうか。いや、厳しかろう。かくて衰退し、廃業に追い込まれる新聞界の大勢の流れを肯定しつつも、著者はこうしたシーンを含め、人間くさいドラマの効用を失うまいと懸命である。市長襲撃事件の具体的な記述が、最近の日本政治の動向をきちんと押さえている。さて、著者の次なる一冊も期待したいものだ。

 (評・御厨貴 東京大学名誉教授・政治学)

     *

 『ニュースが消える日』 堂場瞬一〈著〉 講談社 2310円

     *

 どうば・しゅんいち 63年生まれ。作家。『8年』で小説すばる新人賞。「ラストライン」シリーズ、『闇をわたる』など。

 

 

 

Wikipedia

堂場 瞬一(どうば しゅんいち、1963521 -)は、日本小説家。主に、スポーツ小説、警察小説の分野で活躍する。本名は山野辺一也[1][2]

経歴

茨城県出身[3]茨城県立下妻第一高等学校青山学院大学国際政治経済学部卒業[4]。高校時代はラグビー部の主将[5]

1986読売新聞東京本社に入社。社会部記者やパソコン雑誌編集者を務めるかたわら小説を執筆し、2000に『8』で第13小説すばる新人賞を受賞[6]。同作はスポーツ小説であったが、第2作『雪虫』が警察小説という全く方向性の違うテーマだったため、周囲を驚かせた(『雪虫』解説より)。2012末、読売新聞退社[7][8]

2015、『警察回りの夏』で第36吉川英治文学新人賞候補。201510月に上梓する『Killers』が100冊目の著書であることを記念し、90冊目となる201412月の『ルール』から、出版社を横断した「堂場瞬一の100冊・カウントダウンプロジェクト」がウェブ上で行われた[9]

人物

新聞記者出身ということもありかなりの速筆で、1ヶ月で1050枚の原稿を書いたこともある[1]

作品

シリーズ作品

  • 刑事・鳴沢了シリーズ(全10+番外編 4作目からは文庫書き下ろしで刊行)
  • 真崎薫シリーズ(神奈川県警元刑事私立探偵)
  • 汐灘サーガ(「汐灘」という架空の地方都市を舞台としたシリーズ)
    • 長き雨の烙印(200711 中央公論新社 / 201011 中公文庫 / 20255 中公文庫【新装版】)
  • 警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ(文庫書き下ろしで刊行 10巻)
    • 蝕罪(20092 中公文庫)
  • 警視庁追跡捜査係2作目以降文庫書き下ろしで刊行、以下続刊予定)
  • アナザーフェイス(『親子の肖像』以外は文庫書下ろし、全9+番外編)
  • 捜査一課・澤村慶司
  • 探偵・濱崎シリーズ
  • 「捜査」シリーズ
  • 刑事の挑戦・一之瀬拓真(文庫書き下ろしで刊行、以下続刊予定)
    • ルーキー(20143 中公文庫)
  • 警視庁犯罪被害者支援課(文庫書き下ろしで刊行、以下続刊予定)
  • メディア三部作
    • 警察(サツ)回りの夏(20149 集英社 / 20175 集英社文庫)
  • ラストライン
    • ラストライン(201811 文春文庫) - 週刊文春』連載
  • 昭和の刑事シリーズ
    • 焦土の刑事(20187 講談社 / 20224 集英社文庫)
  • ボーダーズシリーズ
    • ボーダーズ(202112 集英社文庫)
  • 警視庁総合支援課シリーズ
    • 聖刻(20218 講談社)
  • 平成の刑事シリーズ
    • 鷹の系譜(20226 講談社 / 20264 講談社文庫)

シリーズ外の作品

スポーツ小説

野球

陸上競技

  • キング(20033 実業之日本社 / 20157 実業之日本社文庫、〈マラソン〉)

ラグビー

ミステリ・警察・社会派小説

寄稿など

  • 早実vs.駒大苫小牧 甲子園を熱狂させた決勝再試合、その舞台裏(中村計・木村修一著、朝日文庫 20147月)- 文庫解説を担当

映像化作品

テレビドラマ

テレビ東京BSジャパン

テレビ朝日

フジテレビ

 

 

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