フェイスブック 若き天才の野望 David Kirkpatric 2025.2.5.
2025.2.5. フェイスブック 若き天才の野望
5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生れた
The
Facebook Effect 2010
著者
David
Kirkpatric フォーチュン誌で長年にわたりインターネットおよびテクノロジー担当編集主任を務める。同誌では、アップル、IBM、インテル、マイクロソフト、サンをはじめとする数多くのテクノロジー企業に関する特集記事を執筆した。2001年に「フォーチュン・ブレーンストーム会議」を創設し、また最近では、人間のあらゆる活動のための技術革新をテーマに「テコノミー会議」を立ち上げた
訳者
滑川海彦 千葉県生まれ。東京大学法学部卒。東京都庁勤務を経てフリー。IT分野の評論と翻訳を手がける。ITニュースブログ「TechCrunch Japan」翻訳チーム
高橋信夫 東京都生まれ。学習院大学理学部卒。コンピューター会社勤務を経て、2006年から翻訳、執筆業。TechCrunch Japan翻訳チーム。東京農業大学非常勤講師。仮説実験授業研究会会員
解説
小林弘人 インフォバーン代表男取締役CEO。東大大学院情報学環 教育部非常勤講師。「ワイアード」「ギズモード・ジャパン」等紙と、ウェブの両分野で多くの媒体を立ち上げる。著名人ブログやソーシャルメディア・プロモーション等の先駆として活躍中
発行日 2011.1.17. 第1版第1刷発行 2011.1.27. 第3刷発行
発行所 日経BP
『25-01
facebook 世界最大のSNSでビル・ゲイツに迫る男』
『25-02 フェイスブックの失墜』参照
登場人物
l マーク・ザッカーバーグ
l ダスティン・モスコヴィッツ: ハーバード大でルームメイト、共同創立者
l クリス・ヒューズ: ハーバード大でルームメイト、共同創立者。後に退社して08年大統領選でオバマ陣営のオンライン戦略チームに参加
l エドゥアルド・サヴェリン: マークの親友。フェイスブック創業時に資金提供。ブラジルの裕福な実業家の息子。後にザッカーバーグ」を訴える
l タイラー/キャメロン・ウィンクルボス: 一卵性双子の超エリート兄弟。女子との出会いを提供するウェブサイトを考案
l プリシラ・チャン: ハーバード大出身のザッカーバーグのガールフレンド
l ショーン・パーカー: 音楽配信会社「ナップスター」、データ管理サービスの「プラソ」共同創業者。フェイスブック初代社長
l アーロン・シッティング: プログラマー、デザイナナー。金髪のサーファー・タイプ
l アダム・ダンジェロ: エクセター高の同級生。プログラミングの天才。フェイスブックのトップ・エンジニの1人
l オーウェン・バン・ナッタ: アマゾンから転職。フェイスブックCOO。後マイスペースのCEO
l ピーター・シール: ネット決済の「ペイパル」共同創業者。フェイスブックに出資・取締役
l リード・ホフマン: 「リンクトイン」創立者。エンジェル投資家
l ジム・ブライヤー: アクセル・パートナーズ共同経営者。フェイスブック取締役
l ケビン・エフルシー: ジム・ブライヤーの部下。フェイスブック担当
l ドン・グレアム: ワシントンポストCEO。ザッカーバーグが尊敬する経営者
l マット・コーラー: リード・ホフマンの右腕。フェイスブックのコンシリエーレ(顧問)で活躍
l シェリル・サンドバーグ: FacebookのCOO。元グーグル
プロローグ
初めてザッカーバーグに会った時の言葉は、「我々の会社はガスや水道と同様の公益事業」「会社を経営したいわけじゃない。ビジネスは自分の考える目標を達成するための手段に過ぎない」。その後も、遠大なビジョンを持ったビジネスリーダーにしか語れないような内容ばかりだった
自身のプロフィールにも、「オープンさ、物事を変革すること、作り上げること、革命、情報の流れ、ミニマリズム、無用なことに対する欲望を排除すること」に関心があると書く
インターネット最大の写真共有サイト
現実世界での知り合いとの交流を深め、スムーズにするためのツールになることを意図しているのが、他の似た様なソーシャルメディアとの根本的な相違点で、そのことがフェイスブックの運営に特有の困難さを持ち込んできた
従来のインターネットビジネスとは範疇を異にする。第1に、建前だけでなく現実の運用としても、実在する個人のアイデンティティに基づいたネットワークであり、従来の匿名性に対し、実名主義をとる。重要な判断基準は、その人の友達リストで、それによって信頼性が判断される
アメリカの高校・大学では、学生間の交流を助けるために新入生の顔写真を載せた「フェイスブック」と呼ばれるアルバムを作る習慣があるが、ハーバード大がオンラインのフェイスブックを作ろうとしないことに対するザッカーバーグの反逆として活動が始まる
第1章
すべての始まり
2003年9月、最初に開発したのが「コースマッチ」という、誰がどの講義を取っているかを知らせ、講義の選択を助けるサービス。翌月には「フェイスマッシュ」をリリース。キャンパスで誰が一番「ホット」な人間かを決めるもの。学生がオリエンテーションに参加したときの顔写真のデジタル情報を入手して2人づつ掲載して優劣を決めていくもので、テストとして何人かの友人にメールしたところ、瞬間的に拡散してザッカーバーグのパソコンはトラフィックの殺到ですぐにフリーズ
ザッカーバーグは大学の査問委員会に召喚され謹慎とカウンセラーとの面談を課されるが、彼は高校時代にすでに「シナプス」という、ユーザーが再生する音楽をモニターして好みを推定し似た様な楽曲を推薦するソフトを書いて、マイクロソフトが100万ドルをオファーする程だった
様々なソーシャルネットワークが、デートサイトとして開発され始めていた
多くの大学で学生たちが大学当局に写真入りのオンライン学生名簿の作成を要求
2004年2月4日、ザッカーバーグは借りたサーバーへのリンクをクリックし、ザ・フェイスブックをスタートさせる。たちまちバイラル(口コミ)」の爆発が始まる
参加資格は、Harvad.eduのメールアドレスの保有と実名登録
学内誌『クリムゾン』に載った特徴を捉えた論評として、「性欲以外にも原始的な欲求が渦巻いている――帰属欲求、虚栄、少なからぬ覗きの欲望」。加えて競争意識、友達の数を競う場となり、月末には全学生の3/4が登録。2月25日にはコロンビア大、翌日にはスタンフォード大、29日にはイェール大に拡大。それぞれの大学には独自のソーシャルネットワークがあったが、学生たちの要求を満足させるものではなかった
ハーバードには社会的地位を巡る非常に烈しい競争が隠れている。これが初期のフェイスブックに有利な条件になった。「ザ・フェイスブック」の本質は、「自分はいかに重要な人物であるか」を世界に向って訴えかけるためのパフォーマンスの舞台となった
第2章
パロアルト
5月には34校に拡大、ユーザーは10万に近い。広告収入も入り始める。広告で最初に成功したのはマスターカード。既定のバナー広告しか認められなかったが、最初の1日で、4カ月のキャンペーン期間で予想していた応募数の2倍の応募があった
ザッカーバーグは夏の間だけの積もりでパロアルトに家を借りて仕事をするが、その時隣にいたのがショーン・パーカー
シリコンバレーでは、ソーシャルネットワーク・サービスこそ次世代のインターネットの中心になると確信する企業トップが増えていて、パーカーもその1人。2003年の秋、シリコンバレーのベンチャーキャピタルは、フレンドスター、リンクトイン、スポーク、トライブの4社を有望企業として合計36百万ドルを投資。パーカーは2カ月前にザッカーバーグに会いに来て、投資家たちに紹介しようと申し出ていた
ザッカーバーグは、憧れのナップスターの創業者だったパーカーを社長に誘い入れる
エクセター高校の同級生で優秀なプログラマーのアダム・ダンジェロも加わる
夏の終りには、ウィンクルボス兄弟からアイディアを盗んだとの訴訟を起こされる
第3章
フェイスブック以前
ソーシャルネットワークというコンセプトは新しいものではなく、フェイスブックはソーシャルネットワークというアイディアの40年間の進化の相続人の1人に過ぎない
現代的な意味でのソーシャルネットワーク・サービスが登場するのは1997年。ニューヨークで創立されたsixdegrees.comで、実名をベースとする画期的なサービス。自分の知り合いを6人以上介すると世界中の人と間接的な知り合いになれるという仮説に基づく
ネットワークが真のソーシャルネットワークであるための際立った特徴は以下の3点;
①
ユーザーがプロフィールを作成し、公開ないし限定公開できる
②
交流を望む相手のリストを作成、管理できる
③
サービス内で自他の作成した交流相手のリストを閲覧できる
1999年に350万人の登録ユーザーを獲得し、大企業に125百万ドルで買収されたが、翌年ドットコム・バブルの破裂の余波で閉鎖。バブルが過ぎ去ると、新たなソーシャルネットワークがいくつも立ち上がって来た。その代表格がジョナサン・エイブラムズの「フレンドスター」(03年リリース)で、リード・ホフマンとマーク・ピンカスがエンジェルとして投資する一方、ホフマンはビジネス用に「リンクトイン」をスタートさせ、ピンカスは特定のトピックをテーマにしてグループを作る「トライブ・ネット」を立ち上げ
2003年夏、sixdegree.comの新しい所有者が、ソーシャルネットワークに関する特許をオークションにかける。特許は極めて広範囲で、ソーシャルネットワークを以下のように定義。「データベースを利用してメンバーのアカウントを設定し、維持管理し、メンバーがメールで知人をそのネットワークに参加するよう勧誘できる。若しその知人が勧誘に対して友達になることを承諾した場合、システムは双方向のコミュニケーションを可能にする」
このプロセスはまさにソーシャルネットワークの機能の心臓部だったため、ホフマンとピンカスは70万ドルで落札に成功
トム・アンダーソンはロサンゼルスで、「フレンドスター」のクローン「マイスペース」を立ち上げ、匿名性を売り物にしたルースな参加条件が受けて爆発的にメンバーを拡大
「ハーバード・コネクション(後のコネクトU)」は、ハーバード大のウィンクルボス兄弟たちが開発した主としてパーティーとデートのためのサイトで、ザッカーバーグにプログラム開発を頼んできたが、ザッカーバーグは暫く付き合っただけで内容に失望し、自分のアイディアに集中して成功したため、ザッカーバーグを訴える。08年和解となり、ザッカーバーグは20百万ドルのキャッシュと10百万ドル相当のフェイスブックの株式を払う
第4章
2004年、秋
開始半年でユーザー数が20万に達し、サーバーがパンク状態に
ザッカーバーグは、フェイスブックを大学以外に拡大したときの将来に一抹の不安を感じていたこともあったのか、そのためのリスクヘッジもあって、独自に開発したピアツーピア(P2P)方式で他のメンバーとファイルを共有する「ワイヤーホグ」にものめり込む
パーカーは、サーバー増設のための資金をホフマンに相談、パイパルマフィアのピ-ター・シールに紹介される。シールは、フェイスブックのユーザーが急速に膨張、しかも80%ものユーザーがその後も毎日使い続けるという、習慣性の強いインターネットサービスに感銘を受け、50万ドルを貸し出し取締役に就任。会社の価値を490万ドルと見做し、年末までに登録ユーザーが150万人になった場合は10.2%の出資に転換されるという条件付き。条件は満たされなかったが株式に転換し、09年には半分を売却している
夏の家は追い出され、新たにロスアルトスに家を借りる
パーカーの紹介で、ウェスタン・テクノロジー・インベストメントWTIからも30万ドル同条件で受け入れ
ホフマンの右腕だったマット・コーラーをスカウト。フェイスブックの驚異的な成長ぶりに感銘を受けたコーラーは、ザッカーバーグのコンシリエーレ(顧問)になることを決意
第5章
投資家
ザッカーバーグは、ヒューズの友人の紹介で、ワシントン・ポストのドン・グレアムCEOに面談、すぐにその魅力に惹かれたグレアムは投資を決断したが、同時にこの時受けた強い印象が、グレアムのその後のポスト紙のビジネスをウェブ化の努力の契機にもなった
フェイスブックが投資受け入れを検討し始めたという噂が広まって、投資申し出が殺到
バイアコムから75百万ドルで100%買収の申し出。ワシントン・ポストからは株式10%に対し6百万ドルの出資するとしたが、取締役の席を要求して交渉難航。アクセル・パートナーズのジム・ブライアーも企業価値を80百万ドルと提示
最終的にアクセルとの間で、企業価値98百万、15%の株式に対し12.7百万ドル(ママ)を投資、ブライアーが取締役になることで合意。異例の高額の企業価値で、グーグルの最初の大型資金調達時の75百万ドルを上回る。創業者3人(ザッカーバーグ、モスコヴィッツ、パーカー)には各100万ドルのボーナスが支払われた
第6章
本物の企業へ
マット・コーラーは、マッキンゼーでコンサルタントを務め、リンクトインではホフマンの右腕としてスタートアップに関わって来た。今やフェイスブックは、きちんとした企業として組織作りが必須となり、コーラーにお鉢が回る
マイク・アンドリーセンはシリコンバレーで最も尊敬されている起業家・革新者の1人。ネットスケープの共同創業者でエンジェル投資家。ザッカーバーグはピーター・シールの紹介でアンドリーセンに会い、感銘を受けて、、本格的なCEOになるべく、プログラムを書くことから足を洗う
「マイスペース」がフェイスブック買収の可能性を打診してきたが、その直後、マードック率いるニューズ・コーポレーションが508百万ドルで買収
自分たちの作っているデータベースに蓄積されていくユーザー情報は多様な目的のために利用できる独自の資産だということが次第に認識されるようになった。実名制に基づく確実な身元情報とその個人に結び付いた膨大な情報が組み合わさって、ザ・フェイスブックにはそれ以前のインターネットサービスでは不可能だったユーザーに対する深い洞察を提供することが出来た。データを解析するアルゴリズムも開発され、ターゲット広告に利用できるユニークなデータの宝庫だが、広告は依然として単純なバナー広告だけだった
新しいユーザーが加わるごとにあるネットワークの効用が増すならば、そのネットワークには「ネットワーク効果」があると言われるが、ザ・フェイスブックがその「ネットワーク効果」を発揮し始める
2005年夏の大きな変化は、①サイトのデザインのやり直しと、②facebook.comというドメイン名の取得。②は既に登録済みで20万ドルで買収。社名から”ザ”を外す
パーカーは休暇中にサーファー仲間と派手にパーティーをやっているところを警官にコカイン所持容疑で逮捕、起訴は免れたが、ブライヤーはパーカーに辞任を迫り、パーカーは受け入れて会社を去るが、後任の取締役任命権をザッカーバーグに譲り、ザッカーバーグは自らを加えて5票中3票を維持し、個人商店を維持することが出来た
第7章
2005年、秋
2005年秋大学再開時には学部生の85%がフェイスブックに登録、うち60%が毎日ログイン。ザッカーバーグは新たな層への拡大を企図。最初のターゲットは高校生だが、身元確認が必須のため、全米37千の学校別にネットワークを作成し、フェイスブック・メンバーの大学生の紹介で加入する、大学生とは別個のサービスとしてスタート
大学の対象を180校に倍増するが、月間運営コスト150万に対し収入はまだ広告ネットワーク経由の低価格なバナー広告だけで100万程度と、大幅な赤字
写真の共有サービスがインターネットで普及しつつあり、タグ付けして検索可能にするのが人気。ザッカーバーグにはワイヤーホグがあったが、ほとんど使われず失敗に終わっていたこともあって、フェイスブックに写真共有機能の追加を考える。被写体の人物の名前をタグ付けできるようにし、解像度を下げて大量の写真をアップロードできるようにした
ユーザーはすぐに飛びついて、「自分がタグ付けされた写真の数」を競うようになり、インターネットで最も人気のある写真サイトになる
ソーシャルグラフとは、フェイスブック内でユーザーが友だちを増やしていくにつれて形成される網の目のような関係を意味し、写真、友だち、ソーシャルグラフによって大量の情報とその情報の前後関係がユーザーに提供され、さらには強い仲間意識が育まれる
ソーシャルグラフの利用がほかの活動でも同様に有効ではないかというところから、写真以外の他のアプリケーションの取り込みの可能性が考えられ、さらにはインターネットのソーシャル化へと構想が発展していく。そのためのプログラマー採用が急務
第8章
CEOの試練
会社の急膨張で、社内に軋みが走り、ザッカーバーグもようやく社内のコミュニケーションの再構築の必要性を痛感、そのためには自分がCEOとしての教育を受ける必要があることを認識
バイアコムは買収を諦めず、15億ドルを提示するが、7億は今後の業績次第とあって交渉は難航。その間フェイスブックは、4月にラウンドC(3回目)の資金調達を行い、2,750万ドルを調達、会社評価額は5億ドル
フェイスブックが次に拡大しようとしたマーケットは職場で、「ワーク・ネットワーク」と名付けた新しいサービスを会社ごとに広げようとしたが失敗
8月にはマイスペースがグーグルとの3年間に及ぶ9億ドルの提携契約を発表。マイスペース内の検索をグーグルが実行し、検索連動広告を表示するという内容。マイスペースがフェイスブックに恩恵をもたらすのは今回が2度目。最初はマードックによる買収の時で、企業価値が急上昇。今回はフェイスブックが広告媒体として金鉱だと気づかせる効果をもたらし、マイスペースでグーグルに後れを取ったマイクロソフトがそれ以上の提携条件を提示してきて、フェイスブックを高度に利益の上がる事業に変身させる。マイクロソフトからの広告料は2006年には20百万ドルを超え、翌年には1億ドルをもたらす
第9章
2006年
フェイスブックで次に開発された新しいサービスは、ニュースフィード。友だちのサイトの中で一番気になる情報を順に画面に表示するもの
ソーシャルネットワーク・サービスを持たないヤフーがフェイスブックの買収に関心を示し、10億ドルを提示。ブライヤーは絶好の売り時と主張したが、ザッカーバーグは却下
ニュースフィードは不評。公開される自分の情報をユーザーがある程度制御できる新しいプライバシー機能を追加すると、ユーザーのページビューが飛躍的に増大。サービスの方向としては正しかったことが証明された。さらに、ニュースフィードは、人と人との間で情報が交換される方法に重要な変化をもたらす。今までは情報を特定の人に向けて発信したが、ニュースフィードでは、情報を掲載すれば、誰に送るべきかは過去に相手が何に興味を持ったかに基づいてフェイスブックが特定して届ける。自分のページを見ている情報の受け手たちは、この新しい自動化された形のコミュニケーションによって、同時に多くの人たちと最小限の労力で連絡を取り合うことが出来るようになった
9月には次の新たなサービスとしてオープン登録制とアドレス帳移行ツールもスタート。ユーザーが主要なメールサービスのアドレス帳からフェイスブックに入っているかどうかがわかるソフトで、未加入であればメールを送って登録するよう招待できる仕組み。新規登録が1日2万から5万に一気に膨らむ一方、既存のメンバーからの反発も起こらず
第10章
プライバシー
自分自身をどこまで世間に見せるべきか、これはフェイスブックが我々に突き付けた重要な課題。人は様々な側面を持つが、ザッカーバーグはアイデンティティは1つだと強調。現代社会の透明性が異なるアイデンティティを持つことを許さないと考え、オープンで透明な世界では、人々が社会的規範を尊重し、責任ある行動をするようになるというのがザッカーバーグの持論であり、オープン性の高いところまで人々を持っていくことに挑戦
フェイスブックは開設当初から、ユーザーの個人情報公開について数多くの制御機能を提供してきたが、人々が自分のデータを隠すことへの関心を急速に失いつつあるという確信もあり、フェイスブックの設計は、より多くの情報を開示する方向に進み続けた
外部の専門家たちは、膨大な個人情報がフェイスブックによって管理されていることに疑問を呈する。フェイスブックで起きた多くの出来事によって、過去の醜聞が暴露されたり、人格を傷つけられたり、求職者が不採用になったりしている。フェイスブックとティーンエージャーとの関わりは、大人たちにとってほぼ例外なく悩ましい
第11章
プラットフォーム
ザッカーバーグは当初から、フェイスブックをプラットフォーム化したかった。誰でもソフトウェアを展開できる場所にするのが夢
2006年秋、プラットフォーム化がスタートし、フェイスブックが一般ユーザーに開放
第12章
150億ドル
一般ユーザーへの開放で、海外でも爆発的に成長
海外広告契約の話が本格化し、新たな資金調達が必要となる
新たな資金調達ラウンドDでの企業価値は150億ドルになり、マイクロソフトは1.6%を240百万、香港の李嘉誠が0.4%60百万ドル出資
2008年3月、新たにCOOとして、グーグルのシェリル・サンドバーグをスカウト。サマーズがクリントン政権の財務長官を務めた時の首席補佐官。ワシントン・ポストのグレアムは、2000年に彼女が財務省を辞めた時に雇おうとした数多い人間の1人だったが、今回のフェイスブック入りの仲立ちをする
第13章
金を稼ぐ
フェイスブックの社会的成功を継続性のある収益事業に変えるのが新たなCOOの責務
シェリルは、グーグルの広告事業を仕切ってきた経験から、フェイスブックを広告大国へと変える
グーグルは、ユーザーが欲しいと既に決めているものを探す手助けをするのに対し、フェイスブックは、ユーザーは何が欲しいかを決める手助けをする。グーグルのアドワーズ検索広告は「要求を満たす」のに対し、フェイスブックは要求を生み出す(要求生成型広告)
「エンゲージメント広告」と呼ばれる、ユーザーのホームページに現れる広告主から送られてきた比較的地味なメッセージで、ユーザーにページ内で何らかの行動を起こすよう促す
間もなく、スポンサー付き記事にとって代わり、フェイスブックはこれらの広告1000ビューにつき最低5ドルを徴収
ザッカーバーグの設立チームはチリジリになるが、個人的な交流は続く
マット・コーラーは、ベンチマーク・キャピタルに転身
アダム・ダンジェロは、クオラという自分の会社を立ち上げ
モスコヴィッツも、自身のソフトウェア会社アサナを立ち上げ
サンドバーグによって、フェイスブックのビジネスは広告ということになったが、ザッカーバーグは相変わらず、フェイスブックのユーザー数を伸ばすことの方が収益化よりも重要だと頻繁に口にする
2008年の世界不況の際も、フェイスブックの成長は続き、2009年には米国のインターネット広告がソーシャルネットワークへと移行(広告全体の23%)する中、ネット広告全体の14%を獲得し、推定では前年比100%の成長率を示す
第14章
フェイスブックと世界
2009年3月、ニールセンの発表では、全世界のインターネットユーザーがソーシャルネットワークに費やした時間が、初めてメールに費やした時間を上回る。フェイスブックに費やされた時間は、年間566%伸び、205億分に達する
サードパーティーが何でも好きなアプリケーションを作って載せられる、というフェイスブックのプラットフォーム戦略も海外進出に大きく貢献
ザッカーバーグの価値観はアメリカ的言論の自由を反映している。フェイスブックはそうした価値を世界中に持ち込み、その結果プラスとマイナス両方の効果が現れている。米国では言論に一定の透明性と自由があることを人々が当然のこととしているが、これが他の一部の文化にとっては大きな抵抗を呼び起こすこともある。ユーザーがフェイスブックの自由を濫用したときにどう扱うべきか、世界中の政府が苦闘している。サウジでは複数の男と友だちになっていることを発見した父親が娘を殺した
中国ではフェイスブックは、天安門虐殺20周年の2009年以来、政府によって完全に遮断され、クローンの「シャオネイ(校内網)」が08年に大躍進。現在は「レンレン(人人网)」(「誰でもみんな」の意)に改称
2009年5月、ロシアのフェイスブッククローンのVコンタクテの主要株主のデジタル・スカイ・テクノロジーがフェイスブックの企業価値100億ドルを前提に株主となる
第15章
世界の仕組みを変える
「贈与経済」とは、誰かに何かを供出すると、お返しに何かをくれる、文化全体がこの相互贈与の枠組みの上で成り立つ社会・経済のこと。ザッカーバーグは、全体がオープンになって誰もがすぐに自分の意見を言えるようになれば、経済はもっと贈与経済のように機能し始め、より透明な世界は、より良く統治された世界やより公正な世界を作ると主張
「贈り物」とは、自分のアイディアを提供し、自分を批判に晒すことによって他人のためとなること。様々な有益な表現について、ユーザーはその貢献に応じたお返しを受ける。通常は友だちの間での相互貢献という形をとるが、一種の連鎖反応によって見知らぬ人々の間にも貢献の輪が広がっていくことも珍しくない
フェイスブックは今、世界中の不満を抱く人々がその不平、行動、そして抗議運動を持ち込める場所の先駆けとなる。それがうまく機能している理由は、そのバイラルなコミュニケーションツールにより、大量の人数が問題の存在を知り、すぐに参加できることにある
第16章
フェイスブックの進化
2008年の終り、ザッカーバーグはユーザーの情報交換をさらに加速させるための一連の変更作業を開始。念頭にあったのは、最もホットなIT企業となった広域発信プラットフォームのツイッターで、プラットフォームへの基本的変更として「フェイスブック・コネクト」を公開。ウェブのどのサイトにもフェイスブックアカウントを使ってログインできるようになるため、サイト内での行動をすべてフェイスブックに取り込むことが出来る
2009年、フェイスブックは約50百万ドルでフレンドフィードを買収し、機能縮小版のサービス「フェイスブック・ライト」をスタートさせる
第17章
未来へ
誰がユーザーの情報を制御するのか。透明性を一層高めることを必然とする信念の一方で、ザッカーバーグは当然そこから導かれる問題を懸念している
一方の雄がグーグルで、主として現在進行中の物事を追跡することで情報を収集する。ウェブを這い廻って情報を搔き集め、自分たちのシステムに持ち帰り、みんながウェブのどこへ行くかを追跡することで人の興味に関するプロフィールを作る
その対極にあるのがフェイスブック。全員とは共有したくないもの、クローリング(這い廻ること)やインデックスされたくないものもある。情報を自ら制御できるようにする必要がある。フェイスブックは我々の全てのデータを持っていて、ザッカーバーグは情報略奪者から人々を守ることに情熱を傾けているが、彼のこの善意を永遠に受けられるという保証はない
2010年初の調査では、米国の全インターネット利用時間の11.6%がフェイスブック上で費やされ、グーグルは4.1%だった
ザッカーバーグは、フェイスブックがインターネットでも社会においても、必ず善良な力であり続けるようにするという強い意志を公言。彼のビジョンは、いかにして個人に力を与えるかというところに行き着く。フェイスブックが出来る一番大切なこととは、人々がより効率よくコミュニケーションを取り、誰もがますます多くの情報に囲まれていく、そんな世界を力強く生きて行くためのツールを与えることであり、それによって、企業や政府など大きな組織に個人が圧倒されないように力を貸すこと
フェイスブックは驚くほど効率的で質の高い普遍的持続性を実現している
当初考え、維持されてきたフェイスブックのコンセプトは、現実世界で知っている人たちと交流するためのサービスで、収益構造を作る必要に迫られ、商業ページを採用したことで、個人間のつながりという文化とマーケティングの文化が併存することになった。さらにツイッターの躍進で、フェイスブックはその自己規定を拡大し、友だち以外の誰とでも交流するサービスになる。制約の少ない数多くのサービスの機能を加えたことが本当に意味があるのか、信頼に基づくシステムが、真のオープンなシステムに進化できるのか
ザッカーバーグは、人々の最も繊細なデータを保護することの重要性についても、ある信念を持っている。もとはと言えば、友だちと連絡を取り合うために入会した何億人もの人たちの熱意を維持していくことが、引き続き彼に課せられた挑戦である
解説 シリコンバレーで聖者になるのは大変だ
フェイスブックによる様々なエフェクト
①
クチコミ・エフェクト
実名主義を基軸に、インターネットを媒介としたユーザー体験を変えた
原題の「フェイスブック・エフェクト」とは、信頼できる人的ネットワークが引き起こす効果のこと。友人同士のクチコミによる情報の拡散が絆を高める
一方で、実名主義により、プライバシーに関する問題が常について回る
②
広告エフェクト
行動ターゲティングのプラットフォームとして、全世界規模でシェアを抑えつつある
エフェクトはなぜ起きたか
①
リアルタイムウェブ化――情報をタイムラグなく配信し、検索可能にすること
②
オーププラットフォーム化――インターネットで利用しているサービスをフェイスブック上に統合できる
③
ターゲティング広告――広告を見せる相手を細かく選んで出稿できる
若くして起業するということ
ジョブズ、ゲイツ、ザッカーバーグ
日経BOOK
PLUS
■26歳の天才、マーク・ザッカーバーグの実像
フェイスブックの若き天才CEO(最高経営責任者)、マーク・ザッカーバーグ。彼が掲げる「フェイスブックで世界をもっとオープンな場所にする!」という揺るぎないビジョンと魅力に、ハーバード大の仲間やシリコンバレーの起業家、ベンチャーキャピタル、大企業の経営者たちが次々と吸い寄せられる。プログラマーはザッカーバーグとともに徹夜でサービスをつくり、ナップスター創業者のション・パーカーは入社し、マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOやヤフーはどうにかして買収しようと、躍起になる。提示される買収金額は8億ドル、10億ドル、20 億ドル、150億ドル…と飛躍的に増えたが、それでもザッカーバーグはフェイスブックを売らなかった。本書では、26歳の天才CEOの成功と苦悩、そして野望を生き生きと描き出す。
■グーグルを脅かす巨大サービス「facebook」の威力
フェイスブックのユーザー数は5億人を超え、毎月5%と驚異的なスピードで成長している。すでに世界中で、個人や企業、政治家のコミュニケーションツールとして、企業のプロモーションツールとして、駆使されている。ユーザーはフェイスブックに夢中になり、平均で毎日1時間弱も利用している。世界各国の事例とともに、ソーシャルネットワークの雄、ネットの巨人グーグルを脅かす存在と言われるフェイスブックの威力を紹介する。
■ベテランジャーナリストの徹底取材による至極のノンフィクション
著者は、フォーチュン誌のIT分野を専門とするベテラン記者だったが、本書執筆のためにフリーに転身。マスコミ嫌いであるマーク・ザッカーバーグから絶対的な信頼を得て、独占取材から得たザッカーバーグ生の声を紹介する。ザッカーバーグやフェイスブック社員のほか、大学時代の友人やベンチャーキャピタリスト、有名経営者など広い範囲にも綿密に取材して記した至極のノンフィクション。
ファンページ http://www.facebook.com/fbYabou
紀伊國屋書店 ホームページ
内容説明
ユーザー数が5億人を超え、会社の時価総額が2兆円を超え、グーグルを驚かす存在となった巨人、フェイスブック。同社を率いるマスコミ嫌いのCEO、マーク・ザッカーバーグからの信頼を勝ち得た元フォーチューン誌のベテラン記者が、徹底取材からフェイスブックの真実を初めて明かす。
「フェイスブック 若き天才の野望」書評 社会を変える情報交換システム
評者: 辻篤子 / 朝⽇新聞掲載:2011年01月23日
フェイスブック若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた著者:デビッド・カークパトリック出版社:日経BP社ジャンル:経営・ビジネス
ISBN:
9784822248376
発売⽇:
サイズ:
19cm/525p
フェイスブック 若き天才の野望 [著]デビッド・カークパトリック
マーク・ザッカーバーグ、26歳。チュニジアの政権崩壊でも大きな役割を果たし、注目を集めるインターネット上の世界最大の交流サイト、「フェイスブック」の創設者である。昨年末には、米タイム誌の「今年の人」にも選ばれた。
本書は、彼が2004年2月に米ハーバード大学の寮の一室で始めてから、瞬く間に6億人に迫る利用者を獲得するまでの急成長ぶりをたどっている。
同社を描き、ゴールデングローブ賞に輝いた映画「ソーシャル・ネットワーク」とは、趣を異にする。創作を交え、アイデアの盗用で彼を訴えた同窓生らとの対立を軸にした映画に対し、本書は、本人を含む徹底取材をうたう。もっとも、3ページに及ぶ取材先リストに先の同窓生は含まれず、本人に近い立場で書かれたことは否めない。
それを差し引いても、「少々世間知らずかもしれないが、怖いもの知らずで負けず嫌いで、大胆で生意気でもある」20歳そこそこの青年が、マイクロソフトやグーグル、そしてワシントン・ポスト紙まで、トップと堂々と渡り合いながら歩んできた足跡は、一読の価値がある。若い才能を生かす米国社会のダイナミズムを感じさせる。
フェイスブックは実名を最大の特徴とする。今や地球上の約10人に1人が、実名で仕事から趣味まで個人的な情報を交換する場がネット空間に生まれ、意見の集約や、ビジネスにも不可欠の手段となっている。
その事実に驚くが、それが社会をどう変えていくのか。本書のもう一つの読みどころだ。
「より透明な世界はより公正な世界をつくる」というのがザッカーバーグの信念だという。しかし、膨大な個人情報がどこでどう管理されるのか、不安はつきまとう。一歩間違えば、監視社会にもなりかねない。
日本は、ネットは匿名で、フェイスブックが広がっていない数少ない国の一つだという。
実名でつながった広大な海に浮かんだ匿名の島であり続けるのか。それが日本に何をもたらすのか。社会のありようとも絡む重い問いが胸に残る。
評・辻篤子(本社論説委員)
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滑川海彦ほか訳、日経BP社・1890円/David Kirkpatrick フォーチュン誌記者をへてフリー。
フェイスブック 若き天才の野望5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた
価格 |
1,980円(税込) |
ISBN |
9784822248376 |
発行日 |
2011年01月17日 |
著者名 |
デビッド・カークパトリック
著 |
発行元 |
日経BP |
ページ数 |
544ページ |
判型 |
四六判、ソフトカバー |
内容紹介
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■26歳の天才、マーク・ザッカーバーグの実像
フェイスブックの若き天才CEO(最高経営責任者)、マーク・ザッカーバーグ。彼が掲げる「フェイスブックで世界をもっとオープンな場所にする!」という揺るぎないビジョンと魅力に、ハーバード大の仲間やシリコンバレーの起業家、ベンチャーキャピタル、大企業の経営者たちが次々と吸い寄せられる。プログラマーはザッカーバーグとともに徹夜でサービスをつくり、ナップスター創業者のション・パーカーは入社し、マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOやヤフーはどうにかして買収しようと、躍起になる。提示される買収金額は8億ドル、10億ドル、20億ドル、150億ドル…と飛躍的に増えたが、それでもザッカーバーグはフェイスブックを売らなかった。本書では、26歳の天才CEOの成功と苦悩、そして野望を生き生きと描き出す。
■グーグルを脅かす巨大サービス「facebook」の威力
フェイスブックのユーザー数は5億人を超え、毎月5%と驚異的なスピードで成長している。すでに世界中で、個人や企業、政治家のコミュニケーションツールとして、企業のプロモーションツールとして、駆使されている。ユーザーはフェイスブックに夢中になり、平均で毎日1時間弱も利用している。世界各国の事例とともに、ソーシャルネットワークの雄、ネットの巨人グーグルを脅かす存在と言われるフェイスブックの威力を紹介する。
■ベテランジャーナリストの徹底取材による至極のノンフィクション
著者は、フォーチュン誌のIT分野を専門とするベテラン記者だったが、本書執筆のためにフリーに転身。マスコミ嫌いであるマーク・ザッカーバーグから絶対的な信頼を得て、独占取材から得たザッカーバーグ生の声を紹介する。ザッカーバーグやフェイスブック社員のほか、大学時代の友人やベンチャーキャピタリスト、有名経営者など広い範囲にも綿密に取材して記した至極のノンフィクション。
Wikipedia
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