彰義隊、敗れて末のたいこもち 目時美穂 2024.4.25.
2024.4.25. 彰義隊、敗れて末のたいこもち 明治の名物幇間、松廼家露八の生涯 著者 目時美穂 1978 年静岡県生まれ。 03 年明治大学文学部フランス文学専攻修士取得、 09 年同博士後期課程単位取得満期退学。専攻研究のかたわら明治時代の文化風習、文学等に興味を持つ。在学中、古書情報誌『彷書月刊』へ。 2010 年の休刊号まで編集に携わる。著書に『油うる日々 ─ 明治の文人戸川残花の生き方』(芸術新聞社、 2015 年)、『たたかう講談師 ─ 二代目松林伯円の幕末・明治』(文学通信、 2021 年) 発行日 2023.11.10. 第 1 版第 1 刷発行 発行所 文学通信 序 ふたつの魂 明治維新、徳川の家臣の生活は一変、零落する者もいれば新しい時代で意義ある人生を送り得た者もいた。世の権力とは無縁の場で、世間にもまれながらおのれの生をまっとうするという、市井に生きた明治の群像の中の 1 人、松廼家露八の生涯を語る 松廼家露八、吉原遊郭の幇間、もとは幕臣ともいえる武士。天保 4 年 (1833) 生まれ。本名土肥庄次郎頼富。土肥家は徳川御三家の 1 つ、一橋家の家臣、家格も目見 ( めみえ ) 以上だが、若いころ放蕩の末廃嫡。 36 歳で彰義隊に加わるが敗れ、残りの人生を幇間として過ごす 1932 年、岡本綺堂が露八をモデルに野井長次郎こと梅の家五八を主人公とした『東京の昔話』をいう芝居台本を書き、同年歌舞妓座初演。主演は左団次。 71 年再演、岸井良衛演出 吉川英治も『松のや露八』を書き、 34 年『サンデー』に連載、 59 年明治座で矢田弥八脚色、前進座により公演、 66 年には勘三郎が、 74 年には平岩弓枝脚・演出で森繫劇団により再演 81 年には原作を離れたほぼオリジナル脚本で三木のり平・水谷八重子の『露...