プロトコールとは何か 寺西千代子 2026.2.23.
2026.2.23. プロトコールとは何か 世界に通用する公式マナー
著者 寺西千代子 1968年津田塾大学卒業、同年に外務省入省。外務省儀典官室に10年あまり在籍し、国賓・公賓の訪日接遇を担当する。米国、英国、イタリア、カナダ、フィンランド、国連代表部、バチカンなどの在外公館勤務を経て、2009年に外務省を定年退職。現在は、日本マナー・プロトコール協会理事。外務省研修所などで講義を行なっている。著書に『国際ビジネスのためのプロトコール』『国際儀礼の基礎知識』がある。
発行日 2016.11.20. 第1刷発行
発行所 文藝春秋 (文春新書)
敬子さんの中学に同級生
プロローグ プロトコールとは何か
国家間で守るべき公のエチケット。語源はギリシャ語
儀典長は外務省の局長クラスで、「大使」の称号が付与される
相互主義の原則――格やレベルを相手側と合わせる
臨機応変の対応、現地の慣行の尊重
元首のための礼砲は21発。地位とともに数は減るが、奇数
プロトコールの本命は、「守ること」ではなく、「双方が睦まじく付き合う」ことにある
第一章
プロトコールの専門家を目指して
l 就職先は外務省
中級試験で外務省入省。現在は旧中級職と語学専門職が合体して「専門職」
l 入省直後の仕事はお茶くみと掃除
最初の配属先は、経済局商務室で万博準備室へ出向。最初の仕事は書類の整理
2年後アメリカへ半年間の語学研修
l 初めての在外公館勤務はニューヨーク
語学研修の後、ニューヨーク総領事館副領事となり、広報文化担当
l 秘書業務とプロトコール・オフィサー
キャサリン・ギブズという秘書学校で基礎を学ぶ
l お礼状は紋切り型でも、とにかく早く出す
感謝の気持ちが高まっている時の一筆は、推敲を重ね、スープがすっかり冷めたことに届くお礼状より、遥かに相手の心に響く
l 儀典官室への配属
‘73年、本省に戻り国連局社会課配属。女性、児童、麻薬、人権など担当
自ら希望して儀典官室へ異動
l 儀典官室とは何をするところ?
大臣官房に所属。現在は儀典官室、儀典賓客室、儀典外国訪問室の3室に分割
l 外務省と宮内庁の担当区分
国賓・公賓の接遇は宮内庁の式部職が担当。外務省からの出向や兼務が多い
l 儀典官室でどんな仕事をしていたのか
国賓・公賓の訪日準備、国家レベルの冠婚葬祭、在京外交団対象の外交行事
l プロトコールを学びはじめて
友田二郎著『エチケットとプロトコール』(‘64、のち『国際儀礼とエチケット』と改題)
l プロトコールの体系的研究が存在しない理由
①西洋文明を背景に、②西欧諸国の絶対王政下で洗練された礼儀作法、③国家間の外交上の必要性から生まれた規則、故に、宮廷社会では高い価値があったが、市民生活での価値は低かったため、系統的な研究は存在しない
l きわめて簡潔なプロトコール通史
中世に聖職者がラテン語で人々に説いたのが始まり
l 日本にプロトコールを導入した井上馨外務卿
'71年の岩倉使節団以降、明治政府のとった欧化政策により日本にもヨーロッパの慣習が浸透。井上馨外務卿が書いたマナーブックが、プロトコール導入の原型
l 鹿鳴館以前に日本で開かれた社交大パーティ
1881年、日本で初めての本格的な晩餐会、夜会開催。東京府知事主催。800人招待。会場は浜離宮内の延遼館。2020東京オリンピックで再建が予定されたが延期
第二章
国賓・公賓をお迎えするということ
l プロトコールを究めたい
'79年、大平首相の訪中に随行員として加わり、プロトコールの実際を学ぶ
l ロンドンで研修させてください!
'80年、在英大使館配属。二等書記官で大使秘書から秘書の仕事を学ぶ
l 英国で出会ったプロトコールの権威
バッキンガム宮殿の儀典担当部門に乗り込み、、国賓を迎える時の接遇準備などを宮務官から聞き出す
l 世紀のロイヤル・ウェディング
皇太子ご夫妻が出席され、プロトコールの現場を直に学ぶ
l 英国から帰国し、再び儀典官室へ
'81年末、本省儀典官室異動。国公賓訪日準備を担当
l 訪日希望は長い順番待ち
年間平均約10件に制限。国賓は3,4件
l 国賓と公賓、その違いは?
公式訪問は、日本側が滞在費用すべてを負担
国公賓(元首、王族、首相など)は、日本との友好親善関係の増進を図ることが目的
公式実務訪問賓客、外務省賓客(閣僚、国際機関の長)は、交渉の推進などに役立てる
国賓は、国王、大統領、国家主席など。迎賓館利用、天皇との会見がある。10年に1度
公賓は、王族や行政府の長。天皇との引見。10年以内に再訪された場合
l 「ご会見」と「ご引見」の違い
国賓の場合は「ご会見」、公賓の場合は「ご引見」を使うが英語は同じ
Receive
in Imperial Audience
l 招待はどのように決定するのか
外務省の国公賓会議で決定
l 閣議決定するまでは口外禁止
国賓は閣議決定、公賓は閣議了解が必要
l 招待状ではなく口頭で
外務省儀典長が在京大使の来訪を求め、口頭で招待を伝える
公式随員は、国賓の場合で最大8名程度
l 華やかなりし外交行事は今?
省略されるようになった行事には、外交団接見、答礼晩餐などがある
l どうしても銀ブラしたい、ヘリで一気に飛びたい
公式行事以外の日程で苦労するのが、国内官憲と相手国との意見調整
l 宗教がらみの視察先
母国では「キリスト教徒の大統領がなぜ異教の神を拝むのか?」、日本では「我が国の宗教施設を訪れるのに、神仏を拝まないのは失礼」との批判が起こる
l 戦没者慰霊、どこを訪れるべきか
慰霊のための視察先にも同様の問題がある
l 伝統芸能鑑賞の舞台裏
配偶者プログラムに多く組み込まれる
l 土砂降りの「流鏑馬」、イケメンの雲水
レーガンを迎えた時の明治神宮での流鏑馬は雨風の中。リー・クァン・ユー首相夫人を総持寺に案内した時には、雲水が英語で精進料理を説明
l 訪日の見せ場づくり
米国大統領夫妻訪日の際は夫人の動静を追う同行記者団も多く、マスコミ対策の報道官が同行、「見せ場づくり」のための日本側への要望が厳しい
l 1対1のアテンドによる心配り
相手に応じて接伴員を任命
l どんな相手の心にも響くのは
日本のおもてなしが世界に冠たるものであるゆえんは、両陛下のお心配りにある
第三章
プロトコール実践篇
l 機側(きそく)でのお出迎え
国公賓の場合は、首席接伴員が機内に入り先導、政府代表が機側で出迎え
国賓の場合、陛下が最初にお迎えするのは迎賓館での歓迎行事
l 車列をめぐる日米バトル
l 時間の正確さに拘る日本人
l 接伴要領は必携品
随員決定後、最初に取り掛かるのが接伴要領の作成。名簿や日程、呼び方、肩書等の確認
l 小渕総理の葬儀で外交団が失笑
式次第の翻訳などでは混乱も。外交団に呼びかける際、Diplomatic Corpsを「コープス」と発音して失笑を買う。正しくは「コア」で、「コープスcorpse」では「死体」の意
l 要人の通訳は外務省エリート
l パーティの招待状はいつまでに発送するのか
正式な招待状は3週間前、遅くとも10日前までに発送するのが理想的
l たかが席次、されど昔は決闘騒ぎまで
儀典の仕事は「席次」に始まって「席次」に終わる
日本には公式席次order
of precedenceの制度がないので、官民が混ざった場での順序を決めるのは難しい。大使の場合は着任順
l テーブル・プランの作り方
l 公式晩餐会State Dinner/State Banquet(宮中晩餐)はなぜフランス料理なのか
導入当時フランス料理が全盛だった
l 米・英・仏は習近平主席をどんな料理でもてなしたか
英国は自国産の食材でフランス料理、米国は自国流への拘り
l メニューに関する注意事項
賓客の好みをより重視したメニュー
l 料理の翻訳は難しい
無理に英訳しようとすると、英語になった表現は彼らのイメージで受け取られてしまう
l 和食をめぐる思わぬトラブル
醤油が白いドレスに飛んで慌てた
l 食卓の飾りつけ
l レシービング・ラインでのご挨拶
l 間違えると厄介なVIPの敬称
l お客様を寛がせるホストのふるまい
l 乾杯はタイミングよく、スピーチは簡潔に
l ファーストネームで呼ぶ間柄
公式晩餐会のスピーチでは、少なくとも冒頭の呼びかけは肩書とすべき
l 招かれざる客にどう対応するか
本来の招待客の顔を潰さない心遣いが必要。ドタキャンの場合は穴埋め要員stop gapを決めておく
l 誰もが気になるドレス・コード
l 第一礼装は「燕尾服white tie」
相手国に確認する
l 「ブラック・タイ」別名タキシード
l 夜には着用しないモーニング・コート
l ラウンジ・スーツLounge suitとは、平服のこと
l 女性の服装規定は何でもあり
時間的に昼と夜程度の区別で、何でもありの時代
l 民族衣装は万能選手
l ダイアナ妃のティアラ事件
主人側とお客様側の服装に均衡がとれていることが大切。ダイアナ妃の場合、第一礼装を締めくくるアクセサリーであるティアラをつけるか否かが関心の的になり、ロイヤルブルーのイブニング・ドレスにティアラをつけて登場、皇族方もティアラをつけた。正確にはサファイアとダイヤをちりばめたヘッドバンド
l ナンシー・レーガンさんと帽子
女性の帽子は随意。男性は部屋の中で帽子と手袋はとるもの
l 記憶に残るエレガントな喪服姿
東南アジアでは、未亡人が他の男性に染まらないシンボルとして白を着る習慣がある
もっとも記憶に残る喪服は、東郷文彦大使の葬儀での奥様の腰までの黒いベールと黒のロングスカート姿
l 麻生太郎氏に学ぶ靴下のマナー
足を組んだ時肌が見えない長い靴下を履くのが礼儀
l ポケットに手を入れたままはマナー違反?
チャールズ皇太子はしばしばポケットに手を入れたままで応対している
l 悩ましい贈り物選び
l 総理からの贈り物
l 国公賓のお買い物事情
l 質疑応答より
握手や飲食の時は手袋は外すのが原則だが、屋外ではつけたままのケースも
l なぜあの人が! と驚かれるセレブのふるまい
須賀敦子の文章に、ある種の人々には「世間では許与されないことも公然と許され、まかり通っていることを目の当たりにして、大げさに言えば、ヨーロッパ社会の厚み、といったものをひしひしと感じた」というのがある
名門の家系や突出した経歴の持ち主には「マナー・フリー」の特権免除がある
第四章
ビジネスパーソンのためのプロトコール
l ビジネスに役立つプロトコール
l まず「ミニマム10」を考える
プロトコール上配慮しなければならない項目を10程度選び、それぞれの項目について基本的な注意事項を10づつ列挙するやり方で優先度を判断
l 外国から大切な賓客を招く
出迎え――誰が、どこで、どのように、車、通訳
l 外国人を招いてパーティを開く
エピローグ '16年伊勢志摩サミットをプロトコールの視点から観る
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「プロトコール」とは国際儀礼のこと。人と人との間で守るべきエチケットやマナーがあるように、国家間で守るべきエチケットのことを指す。
儀典官室に十年あまり在籍し、国賓・公賓の接遇や昭和天皇の大喪の礼、今上天皇の即位の礼を裏方で支えた外務省きってのプロフェッショナルが思い出と共に綴る、プロトコール入門書。
チャールズ皇太子とダイアナ妃、歴代アメリカ大統領、趙紫陽、胡耀邦といった中国要人など数々のセレブリティ訪日の舞台裏を描きつつ、国家としての「おもてなし」がどのように行われるのか、一般人の知りえない世界を紹介する。また、外国人に恥ずかしくない招待状の書き方、パーティや会議、レストランでの席次の決め方、車にお客様を乗せるときのマナー、パーティのメニューの決め方や知っておきたいドレスコードなど、グローバルに通用するマナーの基本を説く。
前著『国際儀礼の基礎知識』を外務省出身の佐藤優氏が「ビジネスパーソンの必読書」と絶賛し、話題を呼んだ。
本の話
- 2016.11.22
最近話題のプロトコールとマナー、どこが違うのか
『世界に通用する公式マナー プロトコールとは何か』 (寺西千代子 著)
ジャンル
: #ノンフィクション
フィリピンのドゥテルテ大統領訪日のニュースでは、さかんに「プロトコール違反」という言葉を使っていたけれど、プロトコールとは一体何? 東京五輪を控え、日本人も知っておきたい公式マナーについて、元外務省儀典官室の寺西千代子さんに聞きました。
――最近、「プロトコール」という言葉をよく耳にします。どういう意味なのでしょうか?
寺西 人と人とのお付き合いでエチケットやマナーを意識するように、国と国との付き合いでもマナーが必要です。そのような国家間で守るべきマナーのことを「プロトコール」と呼んでいます。日本語では通常「国際儀礼」と訳しています。
――寺西さんは外務省儀典官室で10年あまり勤務されていたそうですが、儀典官室というのはどういう仕事をするところですか?
寺西 外国からの要人や日本に駐在している外交団のお世話を中心に、外交上の儀礼を担当する部署です。英語では「プロトコール・オフィス」と呼んでいます。
私が担当した仕事の中心は、日本に来られる国賓、公賓の方々の接待を準備することでした。
――ダイアナ妃や大統領夫人時代のヒラリー・クリントン、カーター、レーガンといった歴代の米国大統領、英国のサッチャー首相や中国の胡耀邦総書記など、世界のセレブたちのおもてなしを手伝われたのですね。
寺西 中でも鮮明な思い出の一つは、ダイアナ妃です。宮中晩餐会にティアラを着けて出席されるかどうかが最後までわかりませんでした。プロトコールというのは相互主義なので、ゲストがティアラを着けるのであれば、他の方たちも合わせることが望ましい。宿泊されていた赤坂・迎賓館の玄関にティアラを着けてお出ましになられた姿を目撃し、すぐに宮内庁に通報しました。
――当時(1986年)はダイアナ・フィーバーと騒がれましたね。
寺西 私の印象に残っているダイアナさんは、はにかみやの少女のような方でした。チャールズ皇太子が迎賓館のお庭で独りスケッチをされている間、ダイアナ妃が側近と二人だけで館内に持ち込まれた見本からお土産品を選んでいた、あどけない姿を思い出します。
――男性で印象に残っていらっしゃる方はどなたですか?
寺西 今回米国大統領選でヒラリーさんを支えていた、クリントン元大統領がその一人です。小渕総理の葬儀に参列されたのですが、周囲への細やかな思いやりの反面、強いオーラで圧倒されました。後に「不適切な行為」が糾弾された時、あの優しい人柄が裏目に出たのでは? と同情したほどです。
他には、英国勤務から帰国して最初に手掛けたイタリアのペルティーニ大統領訪日のことが一番印象に残っています。
――その後、外交官としてイタリアとバチカンにも勤務され、イタリアとのご縁が深いようですね。
寺西 そうですね、イタリア人といえば、チャランポランというイメージがあるかもしれませんが、プロトコールの面では敬服することがいくつもあります。やはり各地に散在した都市国家等がそれぞれ長い歴史を育んできた国なので、古くから洗練されたマナーとこれに関する本があり、ベネチアやフィレンツェのしきたりはフランスを始め欧州の中央集権国家に伝えられ、欧米のプロトコールの基本に貢献したのです。
私などはプロトコール上わからないことがあると、いつもイタリアの儀典担当の外交官に助け舟を求めました。彼はベネチアの名門貴族の末裔で、夏場はもっぱら白いリネンのスーツ姿。銀座を歩いていると、すれ違う女性たちが振り返るほどの超イケメンでした。でも、皮肉屋で、ずいぶん辛らつな、しかし的確な日本(人)批判を聞かされたものです。
――外交官にはハンサムな方が多いのですか?
寺西 そうとも限りません(笑)。日本の外交官でも、私の知っている要人通訳をつとめた外交官には、超エリートで語学力抜群のイケメンがいましたね。前事務次官の斎木昭隆さんや駐英大使の鶴岡公二さんの若い頃は、外務省でも女性たちの憧れの的でした。
――本の中には、実際にビジネスの場でも使えるマナーのヒントがたくさんあります。その中でも、寺西さんが最も重要だとお考えになっていることは何ですか?
(1)価値観の違いや多様性を理解すること(2)国際ニュースやネットの画像をプロトコールの問題意識を持って観察すること(3)語学力(4)広い教養でしょうか。といっても(3)と(4)は、常に自分自身に言い聞かせていますが、いまだに達成できていないことです。
寺西千代子(てらにし・ちよこ)
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