潜入ルポamazon帝国 横田増生 2020.6.3.
2020.6.3. 潜入ルポamazon帝国
著者 横田増生 1965年福岡県生まれ。関学卒後予備校教師を経て、アイオワ大ジャーナリズム学部で修士号を取得。93年帰国後、物流業界誌『輸送経済』の記者、編集長を務める。99年よりフリーランスとして活躍。主な著書に『仁義なき宅配』『評伝 ナンシー関』
発行日 2019.9.22. 初版第1刷発行
発行所 小学館
『18-09 アマゾンと物流大戦争』参照
はじめに
顧客を獲得する3つの柱 ⇒ 低価格、豊富な品揃え、迅速に届く
最初にアマゾンに注目したのは05年『潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影』を書いた時
ニューヨークタイムズ紙のコラムニスト、「最も秘密主義のテクノロジー企業」
第1章 15年ぶり2度目の巨大倉庫潜入~私が2度目に潜入したのは、日本国内で最大の小田原物流センター。「東京ドーム4個分」というセンターの中には、アルバイトの働きぶりを見張る仕組みが張り巡らされている
トヨタの工場が「絶望工場」たり得たのは、当時はまだそこに”希望”があったからで、工員でも大企業の社員なら一生家族を養っていけるという希望があったからだろうが、アマゾンにはそんな希望さえ求めることは難しい。この”希望”の有無こそが、トヨタとアマゾンを隔てる決定的な違い
小田原物流センター(フルフィルメントセンター)は国内10数カ所あるうちの1つ。国内総床面積70万㎡、売上15,180億円(15年で30倍以上)。小売業者ランキング5位
人材派遣会社が孫請け迄3層になって必要人材を派遣する ⇒ 通常で1000人ほど、繁忙期には倍増するアルバイトの管理を総て下請けに丸投げ
PTG=Percentage to Goal ⇒ 決められた時間内に商品のピッキングをする率。目標85%。1回に100件ほどの注文のリストを渡され、リストに表示された在庫場所に従って、工場内の指定された棚から該当商品を選び出す
6時間45分の作業で20.24km歩く(公称10km)
第2章
アマゾンで働く社員の告発~小田原センターでは、稼働から5年で5人のアルバイトがセンター内で死亡。報道されることはなく、事故は葬り去られてきた。亡くなる直前のアルバイトたちの様子を、遺族に訊く
正社員が、週刊誌の情報提供サイトに会社を告発するメッセージを送ったのを見て取材
アルバイトの59歳の女性がくも膜下出血で倒れ、搬送先の病院で死亡。社内ルールでアマゾンの社員に報告が上がるまで時間がかかり、それから救急車が呼ばれたので間に合わず。センター内での情報開示はなし
翌月には男性アルバイト(50)が解離性大動脈瘤破裂で死去
更に、勤務状況不良を理由とした不当解雇が横行
ホワイトカラーにも過酷な労働環境がある ⇒ 達成不可能な目標を立てさせ、達成できないと自主退職を迫る。15年の『ニューヨーク・タイムズ』の調査報道によって暴露
第3章
宅配ドライバーは2度ベルを鳴らす~ヤマト運輸による多額の未払いサービス残業代が発覚した17年以降、アマゾンは配送戦略を変えざるを得なくなった。ヤマトや「デリバリープロバイダ」と呼ばれる中小業者の助手席に乗り、ドライバーの話を聞く
アマゾンの集配を最初請け負ったのは日本通運(@300円)、それを佐川が低価格(@270円)で奪い、放り出したところをヤマトが助ける(@280円→460円)
ベゾスは、ヤマトの買収には興味なく、代わりにデリバリープロバイダと呼ぶ中小宅配業者を繋ぎ合わせたネットワークを作って、ヤマトが撤退した穴を埋める戦略を検討
第4章
ヨーロッパを徘徊するアマゾンという妖怪~イギリスとフランス、ドイツを回り、アマゾンに対峙するヨーロッパについて尋ねて回る
17年、アマゾンの第2本社の立ち上げにまつわる狂想(ママ)曲 ⇒ カナダ、メキシコを含む200以上の都市の中からニューヨーク市とワシントンDC近郊のアーリントンに決まるが、ニューヨークは破格の招致優遇策に議会が反発して断念
イギリスは、ジャーナリストによる潜入ルポの先進国
いずれの国でも物流センターでのアルバイトの労働環境は劣悪で、次々に身体や精神を病んでいく。ストも頻発するが、会社は労働組合を認めず
第5章
ジェフ・ベゾス あまりにも果てなき野望~裸一貫からアマゾンを立ち上げ、世界一の富豪となったベゾスはどういう人物か。どんな原理原則でベゾスは動いているのか。ベゾス自身の言葉からその人物像に迫る
93~94年、ウェブ上でやり取りされるデータ量が2000倍以上に増えている統計数字を見たベゾスは過去1年のウェブの成長率を2300%と見積もり、何か行動を起こさなければいけないと思い、95年にネット上で書籍販売を開始
プリンストンでコンピュータ・サイエンスを専攻、86年卒業後は金融テレコミュニケーションのスタートアップに始まり90年ウォールストリートの資産運用会社に勤務
最初の起業は94年11月、ネット書店。リアル店との違いはランキングとカスタマーレビューで、96年には在庫に対する考え方を変え、積極的に物流センターに投資
00~01年のITバブル崩壊で倒産の危機に瀕したが、リストラ断行により乗り切る
02年頃から取り扱い商品の多様化に踏み切り、100ドル以上の購入の配送料を無料化
プラットフォーマーとしての第1歩は00年、トイザらスとの10年契約で、ウェブサイトと物流センターを他社に使わせる代わりに手数料を取るというものだったが、04年には他社の玩具も仕入れたとしてトイザらスに提訴され、敗訴している
競争相手はネットオークションサイトのeBay
02年、マーケットプレイス開始 ⇒ 外部業者がアマゾンのサイトで商品を並べて販売、アマゾンは外部業者から手数料を取り、一番儲けるというからくり。エブリシング・ストアと呼ばれるようになるのは、この外部業者に拠るところが大きい。FBA=Fulfillment By Amazonという在庫管理・配送まで請け負うサービスも開始
05年、アマゾンプライム開始 ⇒ 配送手数料無料を軸にした顧客囲い込み
3つめのはしらがAWSというクラウド事業。現在独走状態 ⇒ ネット上で仮想サーバーなどを提供するサービス
その他、長期的な視点を持った投資を積極化 ⇒ 社内では実店舗の「アマゾン・ブックス」、無人コンビニの「アマゾン・ゴー」、ファッション部門やネット通販で高評価の商品だけを扱う「アマゾン・4スター」、社外でも自動運転のシステム開発を手掛ける「オーロラ社」、電気自動車ベンチャーの「リヴィアン社」など
第6章
わが憎しみのマーケットプレイス~アマゾンの主力事業の1つだが、出品者たちはどのような気持ちで商売をしているのか。そこには利用者にはうかがい知れないアマゾンとの愛憎物語があった
個人で文具類を中心に10点ほどの商品をアマゾンと楽天、Yahoo!に出品して年間70百万円売り上げる業者。独自のブランドをアマゾンに認めさせれば、”相乗り”されずに値崩れを防げる。アマゾンのFBAを利用すると手数料は販売額の50%近くなる
ECモールの月間アクセス数は19年4月で、アマゾン520百万件、楽天が365百万、Yahoo!
が79百万
出品に対して特許権侵害や偽造、模造など不審な懸念を持たれると、アマゾンからアカウント閉鎖の通告が来て、ほぼ一方的に閉鎖処分に逢い、出品者にとっては泣き寝入り状態で、復活の機会はない ⇒ 特許権者からのクレームもさることながら、出品者の言い分より、消費者の意見により耳を傾けるのがアマゾンの企業理念
レビューの付いた商品ページは出品者にとって貴重な財産。レビューがなければ売れない
出品者の多くはアマゾンに生殺与奪権を握られ、唯一ブレーキをかけるのが公正取引委員会で、これまで3度アマゾンに立ち入り調査を実施 ⇒ 優越的地位の乱用の阻止
02年のマーケットプレイスの立ち上げと共に、ブックオフでせどり(安く買う)して、アマゾンで高く売る人が一気に増える ⇒ “せどらー”と呼ばれ、結構な鞘抜きの商売になる
第7章
フェイクレビューは止まらない~グレーな裏技を使って自らの商売を有利に進めようとする出品者と、対価を得てそれに加担するレビューアーたちがいる
フェイクレビュー(ステマレビュー)とは、アマゾンに5つ星のレビューを書くことを条件に、商品をただで手に入れることで、「0円仕入れ」と呼び、転売して利益を得る ⇒ 事前に出品者からの了解を取って商品を購入し、5つ星をつけてレビューを書いた後で、購入金額を全額返金してもらう
ネット上の口コミ情報を信用する人は過半数あり、参考にするサイトとしては1位の「価格・ドット・コム」に次いで、アマゾンのカスタマーレビューが2位
フェイスブックにいくつものグループがあって、登録するとレビューの声がかかってくる
フェイクレビューは、アマゾンの規約違反で、該当するレビューが見つかると削除されるほか、金銭授受が露見すれば、その利用者は買い物は出来るが、書き込みはできない状態になる。商品ページでいい位置に載せてもらうためにはレビューが重要だが、レビューが付く可能性は平均すると総取引件数の3%程度
第8章
AWSはAIアナウンサーの夢を見るか~アマゾンの利益の大部分をたたき出すAWS事業。日本でも数多くの企業が導入。知らない間に、新聞の見出しばかりか、記事までもAWSを使ったAIが書き、ラジオのニュースまで読み上げる
朝日新聞は、過去30年に書かれデータベースとして保存している900万本の見出しと記事をAWS上で、ディープラーニングのアプリを使って新聞作業の効率化を検討中 ⇒ 自動校正、見出しの自動作成、自動要約などに加え、記者の書いた生原稿とデスクが校正した後の掲載原稿を一対として学習させることによって記者の書いた原稿が自動的に掲載原稿に校正される自動校正エンジンの開発も手掛ける
新情報サイトの立ち上げや、ウェブエンド(ウェブサービスをホスティングするサーバーのセットアップや、サーバー上で動作する処理など)などは、独自で立ち上げる場合に比べて、コスト的にも時間的にも圧倒的に利便性が高い
日経でも17年初から、決算サマリーなどはAI記者に書かせている ⇒ 1社あたり2分で記事が完成。決算発表から2分後の配信が可能。APなどでは14年から開始
AWSサービスはアメリカでは06年から、日本では10年に開始。もともと社内にある膨大な顧客データと購買データを分析・活用して角度の高い需要予測をするため仮想サーバーが作られ、その余力を外部に販売したのがきっかけ
クラウドサービスの最大の利点の1つは、時々の需要に合わせて要領を自由に拡大・縮小できるscalableにある
マイクロソフトに比べても最低4年は先行している点と、システム業界では料金の値下げをしないという慣行を破って何回となく値下げを行ってきたこと、更にはAWS上で様々なアプリを開発してユーザーに提供していることがアマゾン独走の背景
第9章
ベゾスの完全租税回避マニュアル~法人税や米国内の売上税を支払わないよう死力を尽くすアマゾン。それはベゾスが創業前から温めてきた企業成長の”秘策”だったが、その姿勢は各国政府と摩擦を起こしてきた
日本で唯一納税した年が14年。2社の売上899億に対し法人税が10.5億。本社の年次報告書では日本の売上は79億ドルとなっている ⇒ 本社と日本法人の関係はコミッショネア契約で、本社が日本国内で行う物流業務などの補助的な業務を日本法人が代行することに対し、本社が手数料を払うという構図。手数料率を売上の10%とすれば辻褄が合うが、厄介なのは国際企業にとって決算数字の付替えは自在に行えるという点
創業の地をシアトルに決めた動機が税金対策にあったことはベゾス自身が認めているように、爾来租税回避はアマゾンの最大の関心事 ⇒ ネット通販では地方税である売上税は本社のある州の住民だけにかけられるので、人口の少ない州に本社を置くことが必要
09年、日本では物流センターを恒久的施設と見做して法人税追徴を決定するが、14年の納税額から推察すると、租税条約に基づく二重課税回避により、アマゾンが実利を取ったことがわかる。更に合同会社に組織変更し、決算公告の義務も回避
消費税については、消費者の所在地基準となっているため、支払っている
12年、イギリス議会でアマゾンの租税回避が問題化、本命は赤字のスターバックスで、アマゾンとグーグルは道連れだったが、一番不誠実な対応をしたのがアマゾン。この時の議論がベースとなって後に国際的大企業を対象に売上高の一定割合を法人税として徴収するデジタル課税が19年のフランス、20年のイギリスを始めとして、欧州各国で実現の動き加速
ヨーロッパに於けるアマゾンの活動は、無形資産をルクセンブルクの持株会社に移管し、各国の現地法人が莫大な使用料を払うという形で利益操作が行われる
米国内では、売上税については、最初に動いたのがニューヨーク州で、裁判所は州内にいる多数のアフィリエイトの存在を恒久的施設と認定し課税を承認、最終的には17年以降全州(売上税の無いアラスカ、デラウェア、モンタナ、ニューハンプシャー、オレゴンを除く)で納税を開始
アメリカやイギリスでは、アマゾンの従業員が、低所得者に配布される食料割引チケットの受給者になっているのは、十分な給与が支払われていないからだとして、チケット相当額をアマゾンに課税する動きが具体化、更にはベゾスの給与が高すぎるのと批判の高まりもあって、時給の大幅アップが実行された
連邦税である法人税について、17,8の両年アマゾンは納税ゼロ ⇒ トランプが17年末に署名した企業向けの大型減税や税控除の恩恵を享受しているばかりでなく、政府から投資税額控除等の名目で還付金も受領
アメリカの大統領選の争点の1つにGAFAの分割が議論されている
第10章 “デス・バイ・アマゾン”の第一犠牲者~日本上陸以来、出版界で生長を続けてきたが、日本最大の”書店”となったアマゾンは、取次や出版社を巻き込んで、自社の利益の最大化を図ろうとする。果たしてアマゾンの利益は、利用者の利益に直結するのか
“アマゾン・エフェクト/デス・バイ・アマゾン” ⇒ アマゾンの急成長によって同業他社が駆逐される現象
日本では出版業界が最も深刻な影響を受ける ⇒ 取次を中抜きした直取引への移行。業界の総売上が1/2以下に縮小する中で独走。取次が相次いで倒産。出版社が直に応じない場合も、勝手に別ルートで調達してポイントまで付けて販売し、嫌がらせをする
16年開始の書籍の読み放題サービス「キンドル・アンリミテッド」では、月額980円で和書12万冊、洋書120万冊を対象とし、数百社が参加したが、人気の高い本を中心に、アマゾンが一方的に配信対象から除外。ロイヤリティを受け取れなくなった出版社がアマゾンを提訴して係争中。アクセス数によって支払総額から、各出版社に印税が分配されるが、大元の支払総額がいくらか公表されていない。印税が正しく払われているかどうかを確認する手段が出版社側にも取次業者にもない不可解な状態
おわりに
次々に改善されるサービスや、相次いで打ち出される新サービスの、余りの心地よさに利用者は我を忘れ、ともすれば思考停止に陥りそうになる
消費者はアマゾンに全幅の信頼を寄せ、また依存していいのか。マーケットプレイスの出品者や直取引に踏み切った出版社が、アマゾンの集客力や販売力に抗し難く吸い寄せられ、アマゾンの敷いた路線の上を歩き始めると手のひら返しに逢い痛い目を見た話のように、消費者がしっぺ返しを受けることはないのか
便利さを享受するためにアマゾンを重宝する間にも、シャッター通りに拍車がかかる
アマゾンプライムも値上げされ、値上げが厭なら会員をやめればいいという意見もあるが、じっくり時間をかけて利用者をアマゾン中毒にして抜け出せなくしてくのがアマゾン商法であり、そうした依存体質に陥って大丈夫なのか
勝ち組企業という分かり易い表の顔だけでなく、ベゾスという経営者の人間像、労働者や組合活動を敵視する経営実態、税金の義務から死力を尽くして逃れようとする企業体質、ある市場でマウントポジションを取ったら取引企業をギリギリと締め上げていく弱肉強食的な気質、決算公告の義務を平気で無視する秘密主義――。そうした全体像から、アマゾンという企業を消費者として冷静に再評価することが今、求められている
(書評)『潜入ルポamazon帝国』 横田増生〈著〉
2019.11.9. 朝日
15年前にアマゾン潜入記を書いた著者が、再び同社の物流センターに労働者として潜り込む。端末の指示に従って商品取り出しを繰り返し、一日2万5千歩。そこには巨大化し、あらゆる商品を売る企業に変貌(へんぼう)したアマゾンの姿があった。
ただ本書において潜入は入り口だ。作業中の死亡事故の様子を社員や遺族から聞き出し、配送トラックに同乗。さらに出品事業者やフェイクレビューの書き手など幅広い当事者を訪ね歩く。拡散気味にも思えるが、それだけアマゾンが社会の様々な面に影響を与えていることの表れだろう。
死亡事故をめぐる著者の質問に対し、アマゾンの広報は、具体的な回答を差し控えるといった「木で鼻を括(くく)ったような」対応しかしなかったという。
この9月に、11万件もの利用者の住所や注文履歴などを別の利用者に誤表示した際も、アマゾンの対外説明はほとんど内容がなかった。こうした企業体質を見ても本書の価値は高い。
石川尚文(本社論説委員)
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『潜入ルポamazon帝国』 横田増生〈著〉 小学館 1870円
Wikipedia
2019年現在、Amazon.comがアメリカ国外でサイトを運営している国はイギリス、フランス、ドイツ、カナダ、日本、中国、イタリア、スペイン、ブラジル、インド、メキシコ、オーストラリア、オランダ、トルコ、アラブ首長国連邦の15か国である。
Amazonの設立は、創業者ジェフ・ベゾスが「後悔の最小化フレームワーク」と呼ぶ、ベゾス自身の考え方の結果としてもたらされた。つまり、ベゾスが起業を決意したのは当時のインターネット・バブルにすぐに加わらないことで未来に生じる後悔を避けるためだった。
1994年、30歳のベゾスはウォール街のヘッジファンド「D. E. Shaw & Co.(英語版)」のシニア・バイス・プレジデントを退職し、ワシントン州シアトルに転居した。シアトルでベゾスは、のちにAmazon.comとなる企業のための事業計画に取り組んだ。
1994年7月5日、ベゾスは「Cadabra,
Inc.」という名の会社をワシントン州の法人として登記した。数か月後、ある弁護士が「Cadabra」を「cadaver(死体)」と聞き間違えた出来事を受けて、ベゾスは社名を「Amazon.com, Inc.」に変更した。ベゾスは1994年9月に「relentless.com」というURLを購入しており、自身のオンラインストアを「Relentless」と名付けることも一時考えたが、友人から「Relentless(情け容赦ない)」という言葉の響きは少々不穏であると指摘されたこともあり思いとどまった。現在もrelentless.comのドメインはベゾスによって所有されており、アクセスした際にはamazon.comへリダイレクトされる。
ベゾスは、社名を「Cadabra, Inc.」から変更するにあたって、辞書を引いて言葉を探した。ベゾスが「アマゾン」という単語を選び出したのは、それが「エキゾチックで変わった」場所であり、自身のインターネット事業のイメージに合致していたためだった。加えて、アルファベット順に並べられた場合に一番上に現れる「A」から始まる名称が好ましいという事情もあった。さらに、アマゾン川は世界最大の河川であり、ベゾスの計画もまた、自らのオンラインストアを世界最大の商店にすることだった。
電子商取引の年間成長率を2,300パーセントと予測する、あるインターネットの将来についてのレポートを読んだあと、ベゾスはオンラインで販売できる20種類の商品のリストを作った。次にベゾスは、このリストからもっとも有望と思われる5種類の商品を絞り込んだ。それらの商品は、コンパクトディスク、コンピュータハードウェア、コンピュータソフトウェア、ビデオ、そして書籍だった。最終的に、文学への大きな世界的需要、書籍は低価格であること、膨大なタイトルが出版されていることなどを考慮し、ベゾスは自身の事業をオンライン書店とすることを決めた。Amazon創業の地は、ベゾスが借りていたワシントン州ベルビューの自宅ガレージとされている。
1995年7月、Amazon.comはオンライン書店としてのサービスを開始した。
Amazon.comで最初に売れた本はダグラス・ホフスタッターの著作『Fluid
Concepts and Creative Analogies: Computer Models of the Fundamental Mechanisms
of Thought(英語版)』だった。サービス開始後の最初の2か月で、Amazonはアメリカの50の州すべてと、世界の45か国以上で書籍を売り上げた。最初の2か月におけるAmazonの週間売上は、最高で2万米ドルだった。ベゾスによれば、ブリック・アンド・モルタルの書店は最大規模のものでも15万種類の本しか販売できないが、オンラインの書店では既刊の書籍すべてを取り扱うことも可能だった。
1995年10月、Amazonは一般に向けた自社の告知を行った。1996年6月、Amazonはデラウェア州の法人として再登記された。1997年5月15日、Amazon.comはNASDAQに上場(ティッカーシンボルはAMZN)し、1株あたりの価格18.00米ドルで新規株式公開した(1990年代末に行われた3回の株式分割の結果、1株1.50米ドルとなった)。
Amazonは他社に先駆けてブランドを構築することを重要視していた。ベゾスは1997年、ある取材に対して「我々のビジネスモデルに他社がコピーできないような特色はない。だが、考えてみれば、マクドナルドのビジネスモデルも他社にコピーされたが、それでもマクドナルドは数十億ドル規模の企業になることができた。その大きな要因はブランドネームだ。そして、インターネット上ではブランドネームが現実世界よりも大きな意味を持つんだ」と述べた。
1997年5月12日、米国の大手書店バーンズ・アンド・ノーブルがAmazonを提訴した。バーンズ・アンド・ノーブルの訴えは、Amazonは自社を「世界最大の書店」であると主張するが、Amazonは「実際には書店などではなく、書籍のブローカーである」ため、そのような主張は虚偽であるという内容だった。この訴訟は示談で解決し、Amazonは引き続き「世界最大の書店」と主張することとなった。1998年10月16日、ウォルマートがAmazonを相手に訴訟を起こし、Amazonが複数の元ウォルマート重役を雇い入れることで、ウォルマートの企業秘密を盗んだと主張した。この訴訟も示談という形で解決したが、Amazonは元ウォルマート社員に対する人事異動および業務制限の実施を強いられた。
Amazonが創業時に掲げたビジネスモデルは独創的なものだった。ベゾスは、開業当初の4 - 5年間では利益を挙げることはできないと予測していた。Amazonの株主は「ゆっくり」な成長速度に対して、もっと速く採算性を確保しなければ株主の投資を正当化することはできず、長期的には生き残ることすらできないだろうと不満を漏らした。21世紀初頭のITバブル崩壊は多くのIT企業を倒産に追い込んだが、Amazonは生き残り、IT不況を乗り越えて電子商取引における大手企業となった。2001年第4四半期、Amazonは開業以来初めて利益を計上した。10億米ドル以上の収益に対し、利益は500万米ドルとささやかなものだった(一株利益は1セント)が、黒字への転換はベゾスの型破りなビジネスモデルが成功できることを示した。
2011年、Amazonはアメリカでフルタイム従業員を3万人雇用していた。2016年末の時点で、アメリカにおける従業員は18万人、全世界のフルタイムおよびパートタイム従業員は30万6,800人となっていた。
本社のあるシアトルはボーイングの企業城下町として知られていたが、2018年現在では市内オフィスの20パーセントをAmazonが使用しており、同社による経済効果の累計が4兆円を超えるなど、アマゾンの企業城下町となりつつある。
時期不明、Cadabra.comからAmazon.comに改名される。
1995年7月16日、アマゾンの正式サービスを開始。
1999年9月、米特許商標庁でワンクリック(1-Click)特許が認められる。
1999年12月、バーンズ&ノーブルズの精算システム「エキスプレスレーン」をワンクリック特許の侵害で訴える。
1999年12月、ジェフ・ベゾス、タイム誌の「今年の人」になる。さまざまな企業に出資したり、買収したりして機能を追加。
2000年11月1日、日本語サイトAmazon.co.jp「本」のストアをオープン。
2001年4月、NTT DoCoMo iモードアクセスサービスをスタート。
2001年5月、Amazonアソシエイト・プログラムサービスをスタート。
2001年6月13日、「音楽」「DVD」「ビデオ」のストアを同時オープン。
2001年8月、Ezwebアクセスサービスを公式サイトとしてスタート。
2001年10月、アマゾンに立ち読み機能を追加。「ソフトウェア」と「TVゲーム」のストアをオープン。
2001年10月、「代金引換」による支払いスタート。
2002年9月、「マイストア」オープン。
2002年11月6日、「Amazonマーケットプレイス」オープン。
2003年11月5日、「ホーム&キッチン」ストアをオープン。
2003年12月、「ボーダーフォンライブ!」向け公式サイトをオープン。
2004年10月12日、「おもちゃ&ホビー」ストアをオープン。
2004年11月、ケータイサービスをリニューアル。「Amazonスキャンサーチ」を追加した新ケータイサービス「Amazonモバイル」提供開始。
2005年11月17日、「スポーツ」ストアをオープン。
2006年5月、米特許商標庁がワンクリック特許の再審査を命じる。
2006年6月、出版社やメーカーの商品を委託販売する「Amazon
e託販売サービス」を開始。
2006年8月3日、「ヘルス&ビューティー」ストアをオープン。
2006年10月、Amazonショッピングカードをコンビニエンスストアにて販売開始。「お急ぎ便」の提供開始。
2007年3月29日、「時計」ストアをオープン。「スポーツ」ストアの店名を「スポーツ&アウトドア」ストアに変更。
2007年4月24日、「マーチャント@amazon.co.jp」を開始。
2007年6月、「ベビー&マタニティ」ストアをオープン。初の会員制プログラム「Amazonプライム」を開始。
2007年8月28日、丸善とAmazon.co.jpによる共同ブランドストア「丸善オンラインストア」を開始。
2007年10月、物流センター「アマゾン八千代FC(フルフィルメントセンター)」を開業。
2008年5月29日、「コスメ」ストアをオープン。
2008年7月1日、「コンビニ受取」サービスを開始。
2008年8月28日、iPhone/iPod touch向け専用サイトをオープン。
2008年10月15日、「食料&飲料」ストアをオープン。
2008年11月27日、靴とバッグ専門の新たなWebサイト「Javari.jp」をオープン。
2009年5月27日、「文房具・オフィス用品」ストアをオープン。
2009年 6月22日、Amazonギフト券をコンビニエンスストアにて販売開始。
2009年7月21日、靴とバッグ専門サイト「Javari.jp」からキッズ&ベビーカテゴリーがオープン。
2009年10月、「当日お急ぎ便」の提供開始。物流センター「アマゾン堺FC(フルフィラメントセンター)」を開業。「カー&バイク用品」ストアをオープン。
2009年11月5日、「Amazonフラストレーション・フリー・パッケージ(FFP)」の導入を開始。プライベートブランド「Amazonベーシック」製品の提供を開始。
2009年11月、靴のネット販売大手「ザッポス(Zappos.com)」を買収。
2010年4月27日「楽器」ストアをオープン。
2010年6月3日、初のiPhone/iPod touch向けアプリ「AmazonモバイルiPhoneアプリ」をApple
appにて提供開始。
2010年6月8日、「Javari.jp」、携帯向けサイト「Javari.jpモバイル」をオープン。
2010年6月17日、「Amazon Vine(ヴァイン)先取りプログラム」をオープン。
2010年7月、「AmazonマーケットプレイスWebサービス」の提供を開始。物流センター「川越FC(フルフィルメントセンター)」を開業。
2010年8月2日、「お届け日時指定便」の提供を開始。
2010年9月、「著者ページ」提供を開始。服&ファッション小物ストアにおける取り扱いブランドを拡張。「Amazon定期おトク便」を開始。
2010年9月30日、「ペット用品」ストアをオープン。
2010年10月、Kindleストアで著者が直接電子書籍を販売すれば、70パーセントと条件のいい印税を支払う仕組みを提案。
2010年11月1日、「無料配信サービス」を開始。
2010年11月2日、「Nipponストア」をオープン。物流センター「大東FC(フルフィルメントセンター)」を開業。
2011年3月、個人向けのクラウドサービス「クラウドドライブ(Cloud Drive)」を開始。
2012年10月25日、日本向けのKindleストアが開設。
Amazonでは、独自の物流拠点(フルフィルメントセンター:FC)をアメリカ、ドイツ、イギリス、中国、日本などにおいて整備している。
増加する貨物量に対応するためAmazon
Prime Air計画をスタートした。顧客までの配送をマルチコプターで行うドローン宅配便と、自社専用の貨物機『Amazon
One』(767-300)による専用便(運行はアトラス航空へなどへ委託)が柱となる[52]。
l 商品の管理方法
物流拠点において書籍はジャンルや出版社といったカテゴリで分けずに配置する方法で管理し、分類する手間を省いている[53]。書籍を棚入するときには、書籍につけられたバーコードと棚のバーコードを読み取ってホストコンピュータに登録する。そして、書籍を取りにいくときにはホストコンピュータから携帯端末へと情報を送り、どこにあるかを把握する。
労働者の待遇
Amazon.com
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URL
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使用言語
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アラビア語
英語
フランス語
ドイツ語
スペイン語
イタリア語
中国語
日本語
ポルトガル語
オランダ語
トルコ語
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タイプ
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運営者
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Amazon.com
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設立日
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1995年
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現状
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運営中
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プログラミング言語
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Amazonがサイトを運営している国
大陸
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国
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開始
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アメリカ
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ブラジル
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2012年12月
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カナダ
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2002年6月
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メキシコ
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2013年8月
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アメリカ
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1995年7月
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アジア
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中国
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2004年9月
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インド
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2013年6月
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日本
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2000年11月
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シンガポール
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2017年7月
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トルコ
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Amazonの経営的特徴は、「顧客中心主義」「発明中心主義」「長期的視野」を掲げ事業を行っていることである[63][64]。ジェフ・ベゾスは、アメリカ国内で最大規模の書店は最大で20万点の書籍を扱っているが、インターネット書店であれば何倍もの種類の商品を扱うことが可能と期待し、設立当初の4 - 5年の期間は利益が十分に上がらないことを戦略として予測したことが特徴的である。
一般の小売業と異なり「当社は、売上高や利益を最大化することではなく、フリーキャッシュフローを最大化することを目的にしている」と株主宛へのAnnualReportに記し、通期決算で赤字決算となることもある。1997年のナスダック上場以来、株主に対し配当を配ったことがなく、2014年時点で17年連続で無配を継続していることに対し株主が拍手喝采している株式会社的企業といえる[65]。
日本企業は「Amazonは日本に対し法人税を納めておらず、またダンピング販売をしているために競争環境の違いが大きく、設備投資などができない[66][67]」、日本の電子書籍販売事業者は「アマゾンの販売する電子書籍には消費税がかからず不公平[68]」と批判する。
2000年に制定されたAmazonのロゴは、"amazon.com"(amazon部はボールド体)の黒いサンセリフの文字に、aからzに向かって下向きの弧を描くオレンジ色の矢印が重ねられたもの。この矢印は、"from A to Z" (AからZまで)、つまりAmazonで何でも揃うという意味と、顧客の満足を表す笑顔とを同時に表現したものである[73]。
問屋商法
2009年7月、「本社機能の一部が日本にある」として東京国税局から140億円前後の追徴課税処分をされたことが報じられた。アマゾン側は「米国に納税している」と主張し日本とアメリカとの2国間協議を申請。アマゾンジャパンも「課税は不適切」とし[74]、日本での納税義務はないという立場である。
2010年9月、日米相互協議の結果、課税処分は大幅に減額され、国税庁は銀行供託金の大部分を解放した[75]。しかし、Amazonの法人税については、依然としてフランス、ドイツ、日本(2006年から2009年)、ルクセンブルク、イギリスなどによって査察が進行中、または行われる可能性が指摘されている[75]。
2019年12月、Amazon.comは現在の外国法人が契約主体では事業展開上の制約が多く、日本事業を拡大するためには適切に納税する方が得策との判断から、日本国内での販売額を現地法人(Amazon.co.jp)の売上高に計上する方針に転換。2017年と2018年分の法人税計300億円を納付したことが報じられた[76]。
アマゾン税
Amazonの最大の特徴は強力なレコメンデーション機能にある。現在のところAmazonはレコメンデーションの実用レベルの最先端を走っているという見方が支配的であり、技術の向上にも余念がない。実際、近い将来には顧客の宗教や思想まで含めて営業活動に反映させることが可能となるといわれる。技術的にはすでに開発済みで、米国で特許を申請している[79]。また、パーソナライゼーション技術の解説記事においても、Amazon.comはひとつの成功例として語られることが多い。一方、レコメンデーション自体は個人の趣味嗜好、場合によっては思想信条、性的な関心といったきわめてクローズドな情報を収集する過程を含む。このためプライバシーの観点からの問題提起が出されることも多い。
Amazon.comのレコメンデーション機能は、A9といわれるエンジンによって行われている。この場合のレコメンデーション機能とは、過去の購入履歴などから顧客一人ひとりの趣味や読書傾向を探り出し、それに合致すると思われる商品をメール、ホームページ上で重点的に推奨する機能のことである。たとえばAmazon.co.jpの「トップページ」や「おすすめ商品」では、そのユーザーが過去に購入、閲覧した商品と似た属性を持つ商品のリストが自動的に提示されるが、それはレコメンデーション機能の一部である。シリーズ物の漫画などの購入をレコメンドする場合にはちょうど新刊が出たころに推奨し、似たような傾向の作品をも推薦する。以上の意味で、Amazonのレコメンデーション機能は協調フィルタリングに分類されると考えてよいだろう。
Amazon.co.jpの機能はAmazon.comにおいても装備されている。Amazon.co.jp、Amazon.comのポータルサイトのユーザーインターフェースは、言語を除きほとんど同じであるため、以降は動作の説明を要する場合には、Amazon.co.jpのポータルサイトの操作方法に準拠して説明する。
Amazon Standard Item Number の略。Wikipediaの一部の記事にも使われているASINコードは、10桁のアルファベットと数字により構成されるAmazon.comの商品識別番号である[80][81] 。原則としてひとつの商品に対してひとつのカタログ(商品詳細ページ)・ASINが登録される。Amazon.comとAmazon.co.jpで同じ商品を扱っている場合は、同一のASINコードになる。2006年12月まで、書籍のASINコードはISBNのコードと同一であった。2007年1月以降、ISBN規格の変更にともない、以前10桁であったISBNの桁数が13桁へ変更された。しかし、現在のところASINコードの桁数は10桁で変更はないため、両者の間で齟齬が生じている。
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ユーザーは商品に対して星5つを満点として評価をすることができる(これを「レビュー」と呼ぶ)。また、レビューの読者は投稿されたレビューが参考になったかどうか、「はい」か「いいえ」の票を入れることで評価できる。Amazon.comでは、Amazon
Vineの対象商品などを除き、発売前の商品に購入者レビューを書き込むことはできない。かつてAmazon.co.jpでは発売以前にレビューを書き込み評価点数までつけることができた[82]。このため発売前に思い込みや期待値を書いた購入者レビューが多数含まれてしまい、購入後に実物を触って評価した適切な購入者レビューを埋没させていた。
Amazon.co.jpでは、最低でも1回はそのアカウントを使用してAmazon.co.jpにて商品購入をしていないと、購入者レビューを書き込むことができない。しかし、一度でもAmazon.co.jpで買い物したアカウントを使用すれば、レビューを書き込む商品をAmazon.co.jpから購入していなくとも購入者レビューを書き込めてしまう。米法人のAmazon.comではアカウントを作成すれば誰でも情報の投稿ができるシステムを採用している。
Amazonはアフィリエイトサービスと呼ばれる、店子を開設するサービスを提供している。そのサービスは、SOAPプロトコルによる高度なサービスをはじめとし、単なるXSLTテンプレートファイルを置くだけで店子を開設することのできるXSLTエンジンも提供している。店子は売り上げによって報酬を受け取ることができる。このサービスはさまざまなサイトで利用されている。
Amazonは、趣味や嗜好に関する情報を過度に集め、仕様上、個人情報が簡単に公開できてしまう傾向があることを指摘し、注意を喚起する議論があった[83]。米国Amazonは、子どもの個人情報を親の許諾なく収集していることで消費者団体から苦情を寄せられた経緯がある[84]。また、「ほしい物リスト(Wish
List)」が「子どもと性犯罪者の接触機会を高める」という指摘が従来からあった[85]。なお、Amazonは「ウィッシュリストは、ユーザーが欲しいものを公開するシステムであり、欲しいものが一致した場合物々交換が行われることがあるが、アマゾン上ではない取引のためアマゾンは関与しない」としている。2008年、Amazon.co.jpでも「ほしい物リスト」の仕様による情報の漏洩が話題となった[86]。詳細は「Amazon.co.jpの項の「ほしい物リストとプライバシーの問題」の節」を参照。
Amazonはサインイン(ログイン)しなくとも、ブラウザに保存されているクッキーを元にアクセスした者を特定して、過去の購買履歴や評価した内容を元に「お薦め」の商品をトップページに提示するため、サインアウト(ログアウト)しなければ、アクセスに使用したブラウザ・ソフトを立ち上げた人間はだれでもサインアウトしなかった人の読書傾向や購買傾向を知ることができる。とりわけ書籍の購入リストはその者の思想・良心の自由を侵害するおそれが大きいため問題となる。
マーケットプレイスで購入した場合、出品者に住所や氏名などが開示される仕様である。
Amazonでは、電子書籍端末および電子書籍関連サービス「Kindle」を展開している。
Amazon.comは2004年に設立した社内研究施設のLab126において、電子ブックリーダーの研究・開発を開始した。端末と電子書籍サービスのブランド名はグラフィックデザイナーのMichael Patrick Cronanによって「灯をともす」を意味する「Kindle」と名付けられた。
2007年11月19日にアメリカ国内限定でKindle
First Generationが発売された。この端末は4階調グレースケール表示に対応した6インチ電子インクディスプレイとキーボードを有し、250MBの内部メモリとSDカードスロットを備えていた。発売後数時間で完売し、翌年4月まで在庫なしのままだった。2009年2月23日には読み上げ機能を加え内部メモリを増強したKindle 2が発売された。これ以降のKindle端末ではSDカードスロットは省かれている。同年10月19日には国際版が発売され日本でも販売された。現行の電子インク端末は2012年10月1日に発売が開始されたKindle Paperwhiteである。
電子インク端末のラインとは別に、タッチパネルに対応する7インチ・カラーLCDディスプレイを有するKindle
Fireはアメリカで2011年11月15日に発売された。OSはAndroidを元に独自に開発したものを搭載し、ネットブラウジングなどタブレット端末としての機能も備えている。2012年09月6日に第二世代Kindle
Fireが、2012年9月14日には7インチHDディスプレイディスプレイを持つKindle
Fire HDが、2012年11月16日にはさらに8.9インチ版Kindle Fire HDが発売された。
Amazonはアマゾン ウェブサービス(AWS)として、Amazon S3などのいわゆるクラウドコンピューティングサービスを提供しており、年々サービス規模を拡大している。本サービスを提供するためのデータセンターは米国(US EastおよびUS West1, US West2)、欧州(アイルランド)、アジア・パシフィック(シンガポール、東京[88])、南米(ブラジル)に置かれている。また米国の政府エージェント専用のGov Cloudも提供している。
2011年3月22日、Android向けのアプリケーションを提供するAmazon Appstoreがオープンした。アプリには有料と無料のものがあるが、「free app of the day」という形で、通常は有料のアプリを日替わりで無料提供するサービスも行っている。ただし、無料アプリを入手する場合でもAmazon.comの顧客アカウントが必要である[注 1]。
購入はAndroid搭載の携帯機器にAmazon Appstoreアプリをインストールしてから行う[89]。あらかじめパソコンからアクセスしてアプリを購入しておいてから、携帯機器で再アクセスしてダウンロードすることも可能である。
パソコンでAmazon.comにログインしてAmazon Appstoreでアプリを閲覧すると、すでに別のアプリをダウンロードしたことがある顧客であれば、同じ携帯機器で使用可能かどうかが表示される。また、パソコン上でのTest Drive(お試しプレイ)が可能なアプリもある[注 2]。一方、(3Gや4Gではなく)Wi-Fi接続しなければダウンロードできないアプリもある。
Amazon ビデオはインターネットのビデオ・オン・デマンドサービスである。ドラマや映画などのライブラリーのレンタルおよび購入に加え、プライム会員は指定されたライブラリー作品を無料無制限で視聴できる。プライム会員だけが視聴できる作品もある。作品の自社制作や独占配信も行っており、それらの作品群には「Amazon ORIGINAL」のブランドが冠される。2015年、自社制作作品の『Transparent(トランスペアレント)』がゴールデングローブ賞の最優秀シリーズ賞を受賞し、ストリーミングサービス作品としては初めての受賞となった。
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