日本の国際報道はウソだらけ 島田洋一/飯山陽 2024.9.25.
2024.9.25. 日本の国際報道はウソだらけ
著者
l 島田洋一 1957年大阪府生まれ。国際政治研究者。福井県立大学名誉教授。京都大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了後、京大法学部助手、文部省教科書調査官を経て、2003年、福井県立大学教授。23年より現職。拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長、国家基本問題研究所企画委員。ニコ生「島田洋一チャンネル」やYouTube「島田名誉教授チャンネル」で国内政治とアメリカの最新情報と情勢分析などを随時更新中
l 飯山陽(あかり) 1976年東京生まれ。イスラム思想研究者。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。上智大学文学部史学科卒。東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野博士課程単位取得退学。博士(文学)。『ニューズウィーク日本版』、産経新聞などで連載中。XやYouTube「飯山陽のいかりちゃんねる」、noteでイスラム世界の最新情報と情勢分析などを随時更新中
発行日 2024.2.9. 第1刷発行 2024.4.6. 第4刷発行
発行所 かや書房
今村君紹介、24.3.衆院東京15区補選に日本保守党(百田尚樹代表)推薦で立候補、落選
カバー袖裏
イスラム過激派テロ組織ハマスがイスラエルにテロ攻撃した報道で、くっきりと浮かび上がった日本における国際報道の偏向ぶり。勉強しない政治家と左翼の「専門家」を重用するメディアにより、日本の国益が損なわれ、我々の生活が脅かされる!
はじめに (島田洋一)
飯山は、アメリカならまさに保守本流の最先端を行く稀有の論客。日本の中東学会では異端扱いで完全に干されている
私も、アメリカ政治に関してマスコミ各局の上層部やスポンサー企業にとっては「危なくて出せない」存在
こうした日本の学会やマスコミの欺瞞的あり方や、具体的な国際問題及び報道の実態に即して忌憚なく論じ合った
第1章
日本の中東報道と政府対応は、あまりにも頓珍漢
l ハマスのテロへの日本政府の対応は異常かつ不適切
2023年10月、イスラム過激派テロ組織ハマスがガザ地区から出撃、イスラエル人1400名を虐殺。日本政府は、ガザに足場を持たない腐敗したパレスチナ自治政府に100億円の追加資金提供を約束する一方、イスラエルに対しては人道的観点から戦闘の休止を要請
日本政府の対応は、他のG6諸国と比べて初動も遅く、ハマスの攻撃をテロと非難するのも丸1日静観。G6諸国は当初からイスラエルの自衛権行使を支持すると明言したが、日本だけは事態の鎮静化を優先し、イスラエルに自制を迫る
G7議長国でありながら、日本政府の実が共同声明に加わらず。他の6か国は自国民を拉致されているが日本はされていないというのがその理由だが、北朝鮮の日本人拉致に関し、自国民が被害に遭っていなくとも救出に協力してほしいと他国に求めたのと明らかに矛盾
l 日本の国会議員たちは中東に関して何も知らない
アメリカは、共和党はイスラエル全面支援、戦争がハマスの背後にいるイラン相手まで拡大した場合でもイスラエルを支持すると明言、民主党の大勢も自制を求めつつもイスラエル支持が基本。バイデンは2015年オバマが極めて宥和的で抜け穴だらけの「イラン核合意」を主導した際の副大統領で、判断力に欠けた頼りない人物
国連憲章は第51条で「加盟国に対して武力攻撃が発生した場合、個別的及び集団的自衛権を発動できる」と明記、攻撃の主体に関しては何ら限定していない
イスラエルは、北にヒズボラ、東にシリア、南にハマスと、いずれもイランから資金と武器供与を受けている敵に囲まれている。敵の目的はイスラエルの殲滅にあり、イスラエルは常に軍備を強化し、敵の攻撃に応じるべく技術開発を続けている
l 日本政府は現実を理解せずにパレスチナに金を配っている
日本は現在イランから石油を買っていないにもかかわらず、「伝統的な友好国」として扱う
アメリカでは、共和党が’15年の「イラン核合意」を「事実上の核兵器開発容認合意」だとして全員が反対、民主党でも造反が出て大統領権限の行政協定の形を取らざるを得なくなった
世界で最も残虐なテロ組織は「イスラム国」だが、ハマスはそれ以上。さらには各国からガザ地区に向けられた支援金を横領し、安全な周辺国で大富豪の暮らしをしている
日本はこれまでパレスチナ問題に関して、2国家解決を支持するという立場を表明、30年間に23億ドルもの資金援助をしているが、自治政府内には深刻な汚職があり、加えてテロを促進する仕組みも内包、イスラエル軍に殺されても殉教者として扱われる。日本の支援金の半分は国連のパレスチナ難民救済事業機関UNRWAに支払われるが、同機関が腐敗とテロの温床であり、日本政府にその認識はない
l アラブ諸国がいかにハマスを嫌っているかを日本人は知らない
エジプトはハマスをテロ組織指定。ハマスはエジプトのイスラム過激派テロ組織ムスリム同胞団のガザ支部であり、ハマスは便衣兵(一般市民と同じ私服・民族服などを着用し民間人に偽装して、各種敵対行為をする軍人のこと)なので、難民と区別がつかず、安易には受け入れられない
周辺国もエジプトと同様で、パレスチナをルーツに持つ人たちですら、難民の受け入れは拒否
l 岸田外交は、無知が生んだ「全方位嫌われ外交」だ
イスラエルとパレスチナの2国家併存案が1993年のオスロ合意以来、基本枠組みとされる
日本では、ガザ地区とヨルダン川西岸をパレスチナの独立国家とし、他はイスラエル領という認識だが、ガザは2006年イスラエル軍が完全撤退した後、ハマスが住民を「人間の盾」としてテロの根拠地にしている。ヨルダン川西岸にはイスラエル人が入植していて様相が異なる
現実には、パレスチナ人を抑圧し、蹂躙しているのはハマスであり、両国の土地の問題でハマスのテロを正当化してはならない
安倍外交は、イランの友好国としてトランプとイランの間を取り持とうとしたが、2019年安倍のイラン訪問中にイラン革命防衛隊によって日本のタンカーが攻撃を受け、能天気な外交のツケを払わされた
「バランス外交」と言って中立を装い、バランスが目的化した結果、全方位に嫌われているのが岸田外交であり、いずれからも舐められバカにされている
l テロ組織に対して、話し合いなどは無意味だ
イスラエルもアメリカも、無法者は力で排除するという強力なメッセージを敵対国に送っている。中東で自由民主制が定着しているのはイスラエル位で、パレスチナ自治政府もこの20年間選挙はなく、腐敗を象徴している
l 第5次中東戦争の可能性は限りなく低い
トランプ時代、アメリカがエルサレムを首都と認め、大使館も商都テルアビブから移したが、目立った混乱は起きないどころか、トランプ政権の仲介によって「アブラハム合意」とよばれるバーレーンやUAEなどの湾岸諸国とイスラエルの国交正常化が実現
日本の外務省には、1973年のオイルショック時代の中東認識が残る
50年前のアラブ諸国にとってイスラエルは完全な敵だが、今の敵はイラン。核武装してアラブ諸国を打倒しイスラム革命を輸出しようとしている。そしてハマスはイランの手下であり、両者はアラブ諸国を体制ごと転覆させ、全てをイスラム体制で塗り固めることを目標としている
l 日本のメディアは「イスラエルの朝日新聞」の引用ばかり
イランは、ハマスを隠蓑にして、サウジとイスラエルの国交正常化を阻止しようとしたが、ハマスの残虐なテロに却って正常化を早め、’23年中国の仲介で国交正常化を実現
アメリカのエスタブリッシュメントも基本的には事なかれ主義がデフォルトの姿勢。メディアの大部分は民主党の応援団なので、イランに宥和的
l 日本のメディアも学者もおそらく、世界で一番偏向している
日本のマスコミが国際問題専門家と持て囃す人々の情報源は、国務省とか、リベラルメディアとかに相当偏っている。「中東専門家」の代表格である東大先端科学技術センター教授の池内恵(さとし)は、岸田政権の中東政策を擁護。さらに、「正当性の窓」という概念によってイスラエルのパレスチナ人大量虐殺を正当化する。池内が尊敬する放送大名誉教授の高橋和夫はイラン大好き「専門家」の代表格。当然イランの子分であるハマスもアルカイダも好きとなり、イデオロギー的偏向が強いため、日本の中東報道が偏向しているのは当然
アメリカでもう1つ問題なのは大学、特にリベラル派主導の名門大学で、イスラエルこそ虐殺者という言説がキャンパスに横溢し、大学当局もそれを放置。議会証言で、行動に移さない限り容認と発言し辞任の事態へ。アメリカの大学の社会科学系は、左翼の教員が非常に多い
l 合理的でない反権力には社会正義病がある
フーコーなどフランスの知識人が提唱した「社会の全ては権力構造で成り立っている」という理論に基づくと、強者・権力者は常に悪人であり、それを倒すことはすべて「正義」となる
弱者は強者を倒すためならば何をやっても許されるという「社会正義」論が生まれ、西側諸国でそれが暴走している。LGBTイデオロギーやBlack Lives Matterの過激化もその一種
第2章
バイデン政権はアメリカと世界に何をもたらしたのか
l バイデン政権の失政が中東の混乱を招いた
バイデン政権の最大の失政の1つが脱炭素原理主義。石油産業を地球に害をなす悪と規定、米国内にハラスメント的な規制を課すと同時に、国際的な新規採掘投資も鈍らせた。気候変動こそが安全保障上最大の脅威とし、問題解決に当っては中国もパートナーだという姿勢に転じ、中国への宥和策を取り、その意向に配慮する局面が増大
サウジはバイデン政権を信用しなくなり、国際的に石油の安定供給が崩れ、ガソリン価格が急騰。中間選挙を控えたバイデンが慌ててサウジに供給増加を懇願したが無視された
バイデン政権のイラン宥和政策も論外。トランプ時代、中国はアメリカによる第三国制裁を懼れて、イランから一切石油を買わなかったが、バイデン政権になって気兼ねなく買い始め、その資金がハマスやヒズボラにテロ資金として提供されている
今や国際反社勢力は、皆バイデンを舐め切っている
中東情勢悪化の背景にもバイデンの失策がある。その代表がフーシというイエメンの武装勢力のテロ組織指定解除。イランに阿ったサイン以外のなにものでもない
l トランプには、口先だけではない抑止力があった
シリアのアサド政権が一般人殺戮のために化学兵器を使用した疑いが濃厚になったとき、トランプはシリアにミサイルを撃ち込み、アサド政権に対し「レッドラインを越えた」と警告、その後の抑止力として機能したが、バイデン政権にはこれがない。対中国政策でも、最先端テクノロジー規制を加速度的に強め、アメリカ経済より制裁発動を優先させると行動で示した
l ここのまま甘い状態だと経済難民が日本に集まってくる
不法移民対策もバイデン政権の途方もない失政
日本の「リベラル」なメディアは、日本の権力の象徴として入管を位置付け、入管を批判する道具としてクルド人を利用、メディアがクルド人擁護を続ける間に、川口市にクルド人が集住し問題を起こしている。アメリカでもトルコのクルド人は難民認定しない
アメリカの左翼は無責任な国境開放論、共和党主流派にも経済界の移民歓迎論に寄り添いがち。日本でも移民への危機感が希薄で、特に経済界は外国人を低賃金労働力とのみ考えがち
l 移民により、途上国が先進国を植民地化している
難民については欧米でも無制限な受け入れ策から、適宜送還という政策に転換しつつあるのに、日本では受け入れようというのは異様
きれいごとをいう先進国のリベラルが移民受け入れ策を後押しする背景には、かつて植民地支配をしてきたことに対する贖罪意識があり、政界やマスコミを牛耳っている
l 日本の言論環境では、真実を言うと干されてしまう
中東諸国では、トランプ政権加担が一般的。オバマの対イラン宥和策以降、「アラブの春」が起こったが、実際は国家転覆、経済困難、内戦突入、テロ跋扈など混乱を助長したのみ
日本では、トランプを評価する論文を書くと学会から排除されるが、非左翼的な研究者の受け皿として、アメリカの保守系シンクタンクのようなものが必要
l トルコは中東でトップに立つためにテロ組織を擁護している
エルドアン大統領はアメリカの保守派からハマスの擁護者と見做され評判が悪い
エルドアンは選挙で選ばれているが、実質は独裁者。トルコは建国以来、世俗主義を旨としてきたが、国民の大半はイスラムで、大統領を支持。帝国主義的な野心を持って軍事的拡張政策を実践。人権侵害も著しく、日本は伝統的な親日国と見做すが、トルコは親日ではなく親中
第3章
LGBT法があるのは日本だけ
l 「LGBT方がないのはG7の中で日本だけ」は噓
'23年のLGBT理解増進法は、欧米の失敗の猿真似に走る日本政治状況の典型
アメリカでも共和党の反対で法案成立の見込みはない。定義が曖昧で逆差別を招き兼ねない
l 自民党の政治家も保守派言論人もファクトを知らない
アメリカでは上院が定数の3/5にあたる60人が同意しないと採決に入れないため、民主・共和が拮抗した状態では、野党の一部の賛成がないと法案は成立しない
l しっかりとした保守的な議論をする学者は生き残れない
イスラム教の規定する「平和」は全世界のイスラム化であり、「平和」と言っても人によって考え方が違う
l アメリカ民主党の言いなりになって転んだのは悪手
岸田外交は場当たり的で、諸外国からは不信の目で見られる
アメリカの保守派は「イスラエルのハマス壊滅作戦を揺るぎなく支持すべき」が基本スタンス
日本程論理が一辺倒に偏っている国はない
l 全く主体性がないまま、政策を進める危うさ
戦略的に考えているのではなく、いろいろ言われないように金だけ出しておこうという発想
l 人権理事会は、ないほうがいい
日本ではいまだに国連信仰が根強いが、拒否権によって国連は機能不全が運命づけられた組織である上、近年は中国の買収工作に屈する加盟国が増えている
人権理事会も今や、人権侵害国家がお互いの人権侵害を庇い合うための組織に成り下がっている。ユネスコにしてもパレスチナ問題では反イスラエルに偏り過ぎでトランプは脱退
l アメリカの保守派は常識の立場に還っている
アメリカの保守派では「常識に還ろう」が合言葉
フロリダでは、’23年に性別は出生時の生物学的特徴によって定まると規定した州法制定
どこかで線引きせざるを得ない
l LGBT法も移民問題も、左派の社会正義論
行きすぎたLGBTへの配慮や移民・難民の受け入れ推進は、欧米の社会を混乱させ、治安を悪化させたが、日本は周回遅れで同じことをやろうとしている
日本でも‘23年紛争避難民などを「準難民」と認定して受け入れる制度施行。移民についても「移民制度はとらない」と公言しながら、実際は「特定技能2号」という資格で移民受け入れを推進
第4章
新・悪の枢軸に日本は何も対処できていない
l 日本は核を持つことに関して、議論すらできていない
核の脅しに対しては自前の核抑止力を持ってそれを抑えるのが常識だが、日本の政界、マスコミでは、独自核抑止力の保持は考えることすら許されないという思考停止状態が続く
イスラエルは、1973年の第4次中東戦争で存亡の危機に立たされた際、核武装方針を固め、不退転の決意と読み取ったニクソン政権は、核実験を控えるという条件で独自核保有を黙認
イギリスはサッチャーの時代に、「自らの手は汚さず、しかしアメリカの核の傘は歓迎するという姿勢は、何ら道義的ではなく、イギリスの安全に資するものでもない」との基本姿勢を明示
日本は、非核3原則を堅持しながら、アメリカの核兵器に全面的に依存。偽善的かつ無責任
l イラン、ハマスを支援しているのは、日本の敵国
イランやハマスを支援しているのは、中露北朝鮮などすべて日本の隣国
イスラエルは、自国の核保有をはっきりさせない戦略を取り、イランの核開発については、諜報機関を動員し秘密作戦で潰しにかかっている。兵器開発と徴兵制により国を挙げての自前の安全保障体制構築に努めているが、日本では国民にそういう意識が浸透していない
l 日本のメディアはタブーに触れようとしない
'07年、シリアがイランや北朝鮮の支援で秘密裏に核拡散条約に違反した原子炉建設に着手した際、イスラエルは「アラブ世界の反発」を危惧してアメリカに攻撃を要請したが動かないのを見て自ら空爆作戦を実行し未然に防いだ。日本有事の際の参考にすべき教訓
日本の政治家は、自分で分からない問題について、その分野の「権威」に頼り切ることが多く、そうすると情報源がNHKや朝日新聞になって、リベラルメディアが呼ぶ専門家は左翼ばかり
l 日本はイランの体制をまるで理解していない
イランでは、フラッシュモブ的に反政府デモが行われるが、徹底した弾圧で活動は下火
女性がヒジャブの着用強制に反発して抗議に立ち上がったのは、反体制・反政府が目的だが、日本にそういうメッセージは伝わっていない
l 抑止力とは、やってきたら、やり返すこと
トランプ政権は、初めて最先端テクノロジーの本格的禁輸に踏み込み、FBIや司法省に中国シフトを敷かせ、米国内の知財窃取スパイ網に対する法執行も格段に強化したが、バイデンは逆行しており、日本は自前で反撃し、抑止力を確保すべき。反撃力がなければ抑止にならない
トランプ時代、日本の防衛省のコンピュータ・システムが中国にハッキングされていると警告してきたのはアメリカで、共同対処の申し出を謝絶しているが、アメリカの申し出の背景は、日本に提供した情報がそのまま中国に漏洩してしまうことにあった
第5章
国民の意識が変わってきた今こそ「核抑止」の議論と準備を
l 「唯一の被爆国だから、核兵器を持ってはいけない」の矛盾
第2次大戦末期、日本が核報復能力を持っていたら、原爆投下はなかったというのは分かりやすい意見
安倍政権末期に、核共有(ニュークリア・シェアリング)を示唆するところまでは踏み込んだが、それは運搬手段に関して同盟国も責任を分担するという意味で、核のボタンはあくまでアメリカ大統領が握る
l 日本は現実の環境に照らした議論をせよ
‘08年、ブッシュ政権が主導して、核兵器拡散条約NPT非加盟のインドの「例外化」が決まり、原子力民生協力ネットワークに参加することが決まる。日本の例外化もあり得る話
l 日本のメディアはタブーに触れようとしない
各共有を含むアメリカの拡大核抑止力活用と日本独自の核抑止力保有を重層的に捉えて同時並行で進めればいい。イギリスも両方を追求
日本は憲法上核は持てるが、政策として持たない、というのが政府の一貫した見解
l 度重なる日本船へのテロによりバランス外交の間違いは実証されている
岸田政権のとるバランス外交というと聞こえはいいが、四方八方から殴られ、蹴られ、倒されながら、その都度起き上がってはカネを払うだけの存在
l イランの機嫌を取っても、何の意味もない
政治家の不勉強と、「専門家」と外務省の馴れ合いが、日本の中東外交を旧態依然としたものにしてきた。イランとの関係を踏まえ、アメリカが主導する「海洋安全保障イニシアティブ」にも入っていないが、米軍と距離を取ったフリをしても、現実には日米安保に依存
政治的な主導権を発揮する人がいないため、中東外交が特定の外務省の人や国際政治学者とかの利権の温床として温存されている
l 大勢に逆らうと、学会に居残れない
東大法学部の国際政治学講座の初代担当教授は坂本義和で非武装中立論者で、今でもその系譜が受け継がれ、国際政治の現実が見えていない。東大を出てハーバードのケネディ・スクール(行政大学院)留学が一目置かれ、茂木敏充・林芳正・上川陽子らが出世しているが、ケネディ・スクールは民主党系政治家・官僚の養成学校であり、左翼の牙城というのは常識
l アメリカでは保守派がしっかりしている州の人口が増えている
アメリカでは、メディアや大学の左傾化が進む一方で、一般人や州のレベルでは揺り戻しが起きている。フロリダ州では知事と議会が組んで本格保守政策を進め、経済でも減税・規制改革による活性化を基本理念として進めた結果人口が増え、左傾化傾向を深めるニューヨークを凌駕
l 日本の政治家は左翼の本当の怖さを理解していない
ブラックライブズマターはマルクス主義を掲げていたころは泡沫団体だったが、「警察対黒人」を前面に出して「人種偏見と闘うNGO」という看板を掲げて以来、巨額の資金を集めて来た
共産主義や労働者の団結などを掲げても資金は集まらないが、反差別や環境問題などを掲げると、大量の資金が集まる。ただ、組織としての会計は不透明だし、組織の批判はタブー
第6章
国連と学会が機能しないのはなぜか
l 日本の国連常任理事国入りは出来るはずがない
‘17年、国連総会で核兵器禁止条約採択(50か国の批准を経て21年発効。国連事務次長・軍縮担当上級代表の中満泉氏の尽力による)。日本は、「アメリカの核の傘に頼りながら、核抑止論を否定するのは自己矛盾で国益を損なう」として条約に署名せず
日本は常任理事国入りを目指して外交活動を展開しているが、常任理事国となるためには常任理事5か国を含む2/3の承認による国連憲章の改正が必要で、現実味に乏しい
国連次席大使だった北岡伸一が多額の税金を使って働きかけたが全くの無駄遣いに終わる
l 国際法に関して語る人間は、国際法の基本を知らない
国際法とは、様々な条約や国際合意、国際慣習などの雑多な総体であり、条約でいえば締結国だけしか拘束しない。国際海洋法条約も、アメリカは上院の承認が得られず批准していない
l 日本は世界中からバカにされ、たかられている
中国とロシアが拒否権を持つ国連に軸足を置く外交は筋違い。中露のいないG7やAPECなどの枠組みの活性化に資源を集中投入すべき
l 大勢に逆らうと、学会に居残れない
「民主党・メディア複合体」と言われるように、進歩派的政策の実現を目的としてジャーナリズムの世界を目指す者が多く、記者職を踏み台に、ホワイトハウスや各省庁の報道官になって箔をつけ、メディア産業に復帰するケースが多い
日本の中東研究学会では、パレスチナが正しいというスタンスを取らないと学会に残れない
l 対案、別の選択肢がないのが日本の弱さ
日本のシンクタンクは、官庁や企業の子会社に類するものが多く、財務省との癒着も問題で、日本の外交や国際研究が停滞する原因
日本では特定の問題について、1つの見方、主張、方策しかない、ということがよくある。しかし対案がない、別の選択肢がないというのは、民主主義国家としての「弱さ」そのもの
朝日新聞デジタル 2024年5月7日
日本保守党の候補に投票したのはどんな人? 衆院東京15区補選
4月28日に投開票された衆院東京15区補欠選挙では、政治団体「日本保守党」の飯山陽氏が、9候補のうち4位に入りました。小池百合子都知事が擁立した乙武洋匡氏の得票を上回る戦いぶりでした。飯山氏に一票を投じたのは、どのような人たちなのか。朝日新聞社が同日実施した出口調査から分析してみました。
日本保守党は、昨年秋に結成。作家の百田尚樹氏が代表、河村たかし名古屋市長が共同代表を務めています。X(旧ツイッター)公式アカウントのフォロワー数は自民党などを上回る33万超となっています。
今回は国政選挙初挑戦。飯山氏は2万4264票、得票率にして14.21%を獲得しました。当選した立憲の酒井菜摘氏は元区議で昨年12月の区長選で次点、2位の無所属の須藤元気氏は元有名格闘家で、選挙直前まで参院議員を務めていました。3位の維新の金沢結衣氏は2021年10月の総選挙でも立候補し、この時も3位。5位の無所属の乙武氏は、ベストセラー「五体不満足」で知られ、22年7月の参院選にも立候補しています。激戦とも混戦とも言われるなか、初陣で4位に食い込んだ飯山氏は28日夜、「思ったより多くの支持をいただき、多くの票を入れていただいた」と話しています。
朝日新聞社の出口調査で、飯山氏に投票したと答えた人の内訳をみると、男女比はちょうど50%ずつでした。逆に男女差が大きかったのは、男性が56%を占めた須藤氏や金沢氏、女性が60%だった参政党の吉川里奈氏でした。
年代別にみても、飯山氏は80歳以上からの得票が少ないことを除けば、ほぼ満遍なく支持を得ています。対照的なのは吉川氏で、18~29歳以外では支持を伸ばせませんでした。
支持政党別にみると、飯山氏に投票した人のうち、自民支持層が21%を占めました。須藤氏の23%、乙武氏の22%、金沢氏の21%とほぼ同様の割合です。
飯山氏に投票した人の中で、立憲や維新支持層は1%しかいませんでしたが、国民民主党の支持層は5%、参政支持層は3%いました。17%を占めた「その他の政党」支持層には、日本保守党を支持する人たちが含まれていると思われます。無党派層が44%を占めたのも特徴的で、須藤氏の52%より比率が少ないのですが、乙武氏の40%、酒井氏の31%などを上回っています。
また、飯山氏に投票した人で、岸田文雄内閣を「支持する」と答えた人は27%で、「支持しない」人は71%でした。小池知事の支持層は33%で、不支持層は65%。アンチ岸田、アンチ小池が多数派でした。
酒井氏もアンチ岸田が78%、須藤氏や吉川氏も68%、金沢氏も61%を占めましたが、アンチ小池も多数派だったのは、酒井氏の55%だけでした。対照的だったのは乙武氏で、内閣支持層が57%、都知事支持層が76%を占めました。
自民支持層を取り込みながらアンチ岸田に期待され、アンチ小池にも好感を持たれ、無党派層に浸透する、そしてもちろんリベラルではなく保守――。今回の補選を通じてそんなイメージが浮かびました。来たる総選挙で議席獲得はあるのでしょうか。(君島浩)
Wikipedia
飯山 陽(1976年〈昭和51年〉2月7日 -
)は、日本のイスラム思想研究者の女性、アラビア語通訳、YouTuber、政治活動家。麗澤大学国際問題研究センター客員教授。専門はイスラム法学・イスラム教に関わる世界情勢の調査・分析など。
略歴
1976年 東京都内で生まれる。
1994年 筑波大学附属高等学校卒業。
1998年 上智大学文学部史学科卒業。
2000年 東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。
2000年から2001年まで、文部省派遣留学生としてモロッコに留学。
2006年 東京大学大学院人文社会系研究科アジア文化研究専攻イスラム学専門分野単位取得満期退学。
2006年から2011年にかけて東京女子大学、上智大学、東海大学、明治学院大学、千葉大学で非常勤講師となる。
2009年 東京大学より博士 (文学)を授与される。
2011年から2015年までエジプト(カイロ)に滞在。フジテレビのカイロ支局員となる。
2011年から2020年まで上智大学アジア文化研究所客員所員。
2022年度から麗澤大学国際問題研究センター客員教授。
2022年11月17日、YouTube上で『飯山陽のいかりちゃんねる』を開設する。
2024年3月5日、同年4月の衆議院東京15区補欠選挙にて日本保守党公認で立候補したものの、結果として落選するが4位での健闘であった。ネットでの知名度はあったが、同区に地盤・血縁はなく、事実上全くの無名の新人での出発であった。選挙運動活動中つばさの党の妨害活動に遭い不眠・耳鳴りに悩まされることとなり、5月2日療養のため衆議院東京15区支部長を退任すると発表した。
2024年5月15日、自身のYouTubeチャンネルで同年7月に行われる予定の2024年東京都知事選挙への出馬への興味をほのめかしたが「適当に言っている」とあくまでも個人の〝思いつき〟と断りながらも、都知事選挑戦への意欲をみせた。
2024年9月11日、自身のTwitterアカウントで東京大学の池内恵教授に名誉毀損で訴えられ、1100万円を支払うよう請求された旨を告白。裁判費用のカンパ(飯山の個人口座への振り込み)を支持者に訴えかけた。
批判
東京大学イスラム学研究室の松山洋平(東京大学大学院人文社会系研究科准教授)は、飯山の著書のうち、特に『イスラム教の論理』について、「本書は、イスラム教徒──特に「過激派」──の思想・行動とイスラム教の本来的教義との連関をイスラム法の論理に依拠して論じようとしている。このこと自体は、法学や神学への言及なしに「過激派」とイスラム教の教義の(無)関係性を説明しようと試みるその他の一般書と一線を画す、 極めて正当な方針と言える」と一定の評価を与える一方で、「イスラム法学の諸理論について基本的理解を欠いている」、「著者の(イスラム教以外の宗教を含む)宗教全般についての先入観と無理解...これが、本書がイスラム教の特殊性を無用に強調する背景にある」、「本書は全体にわたって種々の問題が散見される。そのため、イスラム法学の知識、 クルアーン解釈(tafsīr)の知識、昨今の「過激派」と「穏健派」の解釈の異同についての知識等を備えたうえで注意深く読まなければ、イスラム教についての誤った理解をもたらす可能性が高いと言わざるを得ない」と批判している。
主張
自身への批判に対して飯山は、自分を批判する方々はイスラム学の学会の主流(池内恵東京大学教授等)であるが「ハマスはテロ組織ではない」説を唱える人々であり、「ハマスはテロ組織である」という自分とは見解が対立する方々である、と主張している。
飯山陽が中東イスラム学界から孤立していることについて、自身のnote「山内翔太の「飯山陽は反イスラム」というデマ」で「飯山陽以外のイスラム教の専門家は、イスラム教を絶賛するばかりです。飯山陽を消し去れば、イスラム教やイスラム教徒移民の問題を客観的に論じ、日本社会に及ぼす影響について警鐘を鳴らす人間はいなくなります。」と述べている。
著作
単著
『イスラム教の論理』新潮社〈新潮新書 752〉、2018年2月20日。[注釈 1][注釈 2]
『イスラム2.0 SNSが変えた1400年の宗教観』河出書房新社〈河出新書-013〉、2019年11月26日。
『イスラム教再考 18億人が信仰する世界宗教の実相』扶桑社〈扶桑社新書 370〉、2021年3月1日。[注釈 3]
『エジプトの空の下 わたしが見た「ふたつの革命」』晶文社、2021年11月25日。
『中東問題再考』扶桑社〈扶桑社新書 427〉、2022年5月1日。[注釈 4]
『愚か者! ―あっち系の懲りない面々―』ワック〈WAC BUNKO B-382〉、2023年6月24日。
『ハマス・パレスチナ・イスラエル-ーメディアが隠す事実』扶桑社〈扶桑社新書〉、2023年12月21日。
『卑怯者! ―あっち系の懲りない面々―』ワック〈WAC BUNKO B-405〉、2024年6月23日。
『「いい人」の本性』
(Hanada新書 002) 新書 – 2024年8月2日。[24]
共著
中田考、飯山陽『イスラームの論理と倫理』晶文社、2020年10月5日。
高山 正之、飯山陽『騙されないための中東入門』ビジネス社、2023年2月1日。
島田洋一、飯山陽『日本の国際報道はウソだらけ』かや書房、2024年1月30日。
博士論文
飯山 陽『イスラームにおける「法の目的」 マスラハ概念の理論と実践』東京大学、2009年11月26日。- 論文審査の結果の要旨 (PDF)
記事
飯山 陽「Ch.-Eデュフルク著(芝修身・芝紘子訳)『イスラーム治下のヨーロッパ――衝突と共存の歴史』」『イスラム世界』第53号、日本イスラム協会、1999年7月、132-137頁、doi:10.11501/4411916。
飯山 陽、泉沢 久美子「〔イスラーム関係〕最新主要欧文論文」『イスラム世界』第53号、日本イスラム協会、1999年7月、198-207頁
飯山 陽「中世マグリブ社会の反ユダヤ暴動とファトワーに関する一考察――トゥワートの事例より」『イスラム世界』第56号、日本イスラム協会、2001年3月、1-17頁
飯山 陽「目的論的解釈への道 カラーフィーの法理論にみるマスラハ概念より」(PDF)『オリエント』第46巻第2号、日本オリエント学会、2003年、1-17頁
飯山 陽「ジュワイニーからガザーリーへ マスラハ概念定式化への道程」(PDF)『オリエント』第47巻第2号、日本オリエント学会、2004年、102-119頁
飯山 陽「フルーウは実定法か? ジュワイニーおよびカラーフィーのシャリーア論を介したフルーウ概念再考」(PDF)『日本中東学会年報』第20巻第2号、日本中東学会、2005年3月31日、197-220頁
飯山 陽「ムウタズィラ派法理論にみる公益あるいは公共善概念の萌芽――アブー・アルフサイン・アルバスリーの法理論より」『東洋学報 東洋文庫和文紀要』第87巻第4号、東洋文庫、2006年3月、562-536頁
飯山陽「統治者と被統治者の間 :
モサラベ追放令(五二〇/一一二六)にみるイスラーム法学者の位置(上智大学史学会第五十五回大会部会研究発表要旨)」『上智史學』第51巻、上智大学、2006年11月、231-233頁
飯山 陽「マスラハ理論展開史におけるガザーリーの功績再考――『マンフール』『シファーウ』『ムスタスファー』の比較より」(PDF)『オリエント』第50巻第2号、日本オリエント学会、2007年、141-160頁
飯山 陽「イスラーム社会を映し出す史料としてのファトワー」『歴史と地理』通号 616、山川出版社、2008年8月、26-33頁。
出演
真相深入り!虎ノ門ニュース[25](DHCテレビ → 虎ノ門テレビ)
百田尚樹・有本香のニュース生放送あさ8時![26](インターネット配信)
注釈
注釈1.
政治学者の苅部直は書評で、イスラム教の研究者の多くが「イスラーム」という呼称を使っているのに、本書の著者があえて「イスラム教」という言葉を使って論じていることを指摘し、「それは、イスラム教が特権的なすぐれた宗教であるかのように語る態度に対する、深い疑念の表われなのだろう」と述べた上で
(前略)重大な問題は、研究者の独りよがりな発言の調子が、イスラム教そのものと堅く結びついている点である。唯一神をひたすら讃(たた)えるべき存在として人間をとらえ、イスラム法による統治を全世界に広めるべく戦うことを、絶対的な正義と見なす。それは「穏健」なイスラム教徒も、アルカイダや「イスラム国」のような過激派も、広く共有する思想にほかならない。
と解説し、「こうした本書の指摘は、専門家の手になるものだけに、衝撃力をもっている」と評価した。
注釈2.
名古屋外国語大学外国語学部講師(2018年当時)の松山洋平は『イスラム教の論理』の書評において、第一の問題点は「著者がイスラム法学の諸理論について正確な理解を欠いている」ことであり、第二の問題点は「著者の(イスラム教以外の宗教を含む)宗教全般についての先入観と無理解である。これが,本書がイスラム教の特殊性を無用に強調する背景にある」と指摘した。そして、結論として
本書は全体にわたって種々の問題が散見される。そのため,イスラム法学の知識,クルアーン解釈(tafsīr)の知識,昨今の「過激派」と「穏健派」の解釈の異同についての知識等を備えたうえで注意深く読まなければ,イスラム教についての誤った理解をもたらす可能性が高いと言わざるを得ない。
と批判した。
注釈3.
社会学者の橋爪大三郎は書評で、異論を封じることは「学問に必須の多様性が失われる」ことであり「それでは元も子もない」と述べた上で
著者飯山氏は本当に勇気がある。ギョーカイ全体を敵に回している。さまざまな不都合を覚悟したろう。(中略)でもまず異論がのべられることが重要だ。
と解説した。
注釈4.
政治学者の岩田温は書評で、イスラム国(IS)が台頭したときに日本で「腑に落ちる」論考がみつからず希望を失いかけた際に、「彗星の如く現れたのが本書著者の飯山陽氏だった」と紹介し、「本書では、日本で中東問題を論ずる専門家が厳しく批判される」と解説して、具体的な例としてイランでは「おしん」や日本のアニメが人気が高いことを理由にして「親日国」だと紹介されることが多いにもかかわらず、日本のタンカーが攻撃されたことを取り上げている。そして、書評の最後で
他ならぬ「専門家」によって中東問題の事実が隠される。彼らが隠蔽しようとするイスラム諸国の不都合な真実を伝えるのが本書である。本書を不快に感じる人々も存在するだろう。しかし、我々は気づくべきだ。虚偽ではなく、真実からしか真の他者理解は生まれない。
と解説した。
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