世界の特殊部隊  Mike Ryan  2022.5.9.

 

2022.5.9. ヴィジュアル版 世界の特殊部隊 戦術・歴史・戦略・武器

The Encyclopedia of the World’s Special Forces: Tactics, History, Strategy,

Weapons  2003

 

著者

Mike Ryan イギリス予備軍の陸軍将校。防衛アナリストとしてテレビ出演多数

Chris Mann 『SS-ナチ親衛隊』などの著書あり

Alexander Stilwell 『SAS隊員養成マニュアル』の著者

 

訳者 小林朋則 翻訳家。筑波大人文学類卒

 

発行日           2004.2.25. 第1

発行所           原書房

 

序文  アメリカ空軍特殊作戦軍団 マイク・マッキンニー少佐

特殊部隊は、軍事史の中で特異な位置。通常の軍事理論の周縁で活動するため、任務の詳細は明らかにされないことが多く、その秘密主義のために、戦局に与える影響を誤解されてきた。特殊部隊の投入が目の覚めるような戦略的効果をあげた例は枚挙にいとまがない。ウガンダのエンテベのハイジャック事件でのイスラエル部隊(1976)、タイのソンタイでのアメリカ軍部隊(1970)、ベルギーのエベン・エマエル出のドイツ軍部隊(1940)、フランスのサンナゼールでのイギリス部隊(1942)などなど

アフガニスタンでの多国籍軍による「不朽の自由」作戦でも、優れた技能を持つプロの兵士に多種多様な能力が求められることがわかるが、その成功の主な理由は、訓練と全く同じように行動できたからで、斬新な「スマート兵器」と見做すこともできる

世界各国の特殊部隊の兵士に共通してみられる特徴は、独特な戦闘に徹底的に打ち込むのだという強烈な意識にある。隊員は全て志願者であり、軍隊組織が弱体化している時代では特に重要なことであり、ハイレベルな専門技術、専門知識の習得に全身全霊で打ち込み、この職を使命だと心得る考え方にこそ、特殊部隊の兵士を際立たせている要因がある

グリーン・ベレーやSASなど、いくつもの技能をマスターしなくてはならない部隊もあれば、対テロ任務など特定の分野を重点的に扱う部隊もあるが、何れもその道では最高のプロで、隊員たちの生きる世界は、命を懸けた真剣勝負の場であり、隊員11人は失敗したらどうなるかをよく理解している

 

国名

陸の特殊部隊

対革命戦

海の特殊部隊

空の特殊部隊

特殊部隊の訓練

日本

特殊部隊SAT

SAT

アメリカ

特殊作戦軍団USSOCOM

デルタ・フォース

ネイビー・シールズSEAL

82空挺師団

デルタ・フォース

 

陸軍〃 USASOC

11任務部隊

SBS/SDVチーム

101空挺師団(航空強襲)スクリーミング・イーグル

 

 

75レンジャー連隊

 

海兵隊偵察部隊

160特殊作戦航空連隊SOAR

 

 

グリーン・ベレー

 

 

 

 

イギリス

特殊空挺部隊SAS

SAS

SBS

16航空強襲旅団AAB

SAS

 

特殊舟艇隊SBS

SO19小火器班(ロンドン警視庁)

 

パスファインダー小隊

 

 

 

 

 

パラシュート連隊

 

 

 

 

 

空軍第47飛行隊(特殊部隊飛行班)

 

ドイツ

コマンドー特殊部隊KSK

 

戦闘水泳中隊KSK

KSK

 

9国境警備隊GSG-9

GSG-9

 

 

 

フランス

外人部隊

GIGN

海軍歩兵コマンドー軍団COFUSCO

11空挺師団

 

特殊作戦軍団COS

国家憲兵隊空挺介入部隊EPIGN

コマンドー・ユベール

空軍第10空挺コマンドー部隊

 

 

独立特殊グループGSA

国家警察特別介入中隊RAID

近接戦闘部隊GCMC

 

 

 

国家憲兵隊介入部隊GIGN

 

水中作戦介入分遣隊DINOPS

 

 

イタリア

特殊介入部隊GIS

GIS

水中工作・襲撃コマンドー部隊(テセオ・テセイ)COMSUBIN

フォルゴーレ空挺旅団

 

 

治安作戦中央部隊NOCS

 

 

 

カナダ

2統合任務部隊JTF-2

JTF-2

イスラエル

サイェレット・ゴラニ

サイェレット・ゴラニ

シャイェテット13

5707部隊

 

サイェレット・マトカル

サイェレット・マトカル

 

シャルダグ(5101部隊)

 

 

サイェレット・ツァンハニン

カエサレア

 

パラシュート偵察サイェレット

 

ロシア

スペツナズ

アルファ・グループ

スペツナズ

空挺部隊VDV

 

 

ベータ・グループ

 

 

 

中国

6特殊戦グループ

特殊作戦部隊

 

8特殊戦グループ

 

 

 

 

 

12特殊戦SF分遣隊

 

 

 

 

韓国

707特殊任務大隊

警察特攻隊KNP868

海兵隊

 

 

 

SEAL

 

 

 

 

²  陸の特殊部隊

アメリカ――USSOCOMが統括。USASOCはその陸軍部門で、管轄下の精鋭部隊に特殊部隊グループと第75レンジャー連隊があり、前者の中でベトナム戦で名を上げたのがグリーン・ベレー。レンジャー連隊はアメリカ陸軍でも最も由緒ある連隊

特殊部隊がアメリカの歴史に登場したのは17世紀で、不正規戦に備えたレンジャー部隊を創設したのが始まり

2次大戦ではアメリカ戦略事務局OSSが設けられ、不正規戦を統括。その限界を補うためにさらに1950年代初頭第10特殊部隊グループ編成。ケネディの時代に誕生したのがグリーン・ベレー

1980年の「イーグル・クロー」作戦失敗の教訓から発足したのが陸海空軍の特殊作戦部隊を統合したUSSOCOM

75レンジャー部隊は、世界屈指の軽歩兵部隊で、USASOCの中核をなす。1754年仏軍・先住民軍相手の戦争のために創設。ジョージア州フォート・ベニングが本拠。3個大隊2300名。最重要特殊作戦任務は直接行動DAで、強力な陸軍の支援の下、他の部隊より優先的に展開される

グリーン・ベレーの主任務は不正規戦・外国国内防衛・特殊偵察・直接行動などにより、アメリカの国策目標の達成を支援すること。12人の作戦分遣隊Aチームで構成。Aチーム5個をBチームがまとめ、将校6名と兵士18名で構成。Aチーム12個で1個中隊。5個中隊で1個大隊。3個大隊で1個の特殊部隊グループを構成。現在7グループあり、うち3個が現役、2個が州兵、2個が予備役

 

イギリス――SASは、世界でも屈指の優秀な特殊部隊。1941年対独欺瞞計画の一環として創設された特殊空挺旅団L分遣隊が起源。1980年在英イラン大使館に突入してテロリスト6人中5人を射殺して人質を救出し脚光を浴びる。正規軍1個連隊(22SAS連帯)と予備役の国防義勇団TA2個連隊(21SASアーティスツ・ライフル連隊と第23SAS連隊)からなり、これに通信隊が加わるだけの意外に小規模。特殊訓練を受けた隊員は700名が4つのセイバー(戦闘)中隊に分かれる

 

イスラエル――無敵の強さを誇り、国内テロ組織と常に戦闘状態にある。起源は1930年代で、アラブ人侵入者と対ゲリラ戦を実施したのが最初。アラブの侵入作戦に対抗するために、多数の特殊部隊を結成。サイェレットは偵察中隊の意、6チーム編成で、各チームには将校と兵士5人。最も有名なのが1959年結成のゴラニで、翌年のシリア戦争や第3次中東戦争では高い戦闘能力で大活躍

‘60年代後半に結成されたのがマトカル(通称第269部隊)で、1972年テルアビブ空港でのサベナ航空機のハイジャック事件で活躍

ツァンハニンは、1976年のエンテベ空港での襲撃事件で103年の人質を解放

 

イタリア――1978年、ヨーロッパ各国による対テロ特殊部隊創設に合わせて結成。隊員100名。出動回数が多い部隊。1997年のヴェネツィアの鐘楼占拠事件で、テレビ視聴者数百万人の見守る中でテロリストを排除

 

カナダ――1993年創設。非公表。最大の敵は軍拡路線に反対する政治家

 

韓国――1972年、ミュンヘン五輪でのテロ事件を契機に、陸軍特殊戦司令部内に創設。6個中隊からなり、うち4個は支援、2個が対テロ作戦を実施

 

ドイツ――1995年、ルワンダ内戦でドイツ国民11名が拘束され自力で救出できなかった反省から結成。主任務は、ドイツ国民が海外の紛争で生命の危険に晒された場合に保護・救出すること。最大規模1000名を目指す

 

日本――1990年代前半にテロ事件頻発を受けて1996年結成。警察部隊。'95年のサリン事件で活躍。全10隊を7都道府県に1隊づつ配置。20名で1部隊を構成

 

フランス――外人部隊は1831年結成。当初は北アフリカ植民地支配の支援。1962年までアルジェリアに本部を置いたが、独立後はコルシカ島に移転。外国人傭兵と仏国籍所有者が大多数を占め、仏人将校が指揮。2度の世界大戦とインドシナ戦闘に参加して名を上げたが、1954年ディエンビエンフー防衛線では圧倒的に不利な中で、降伏命令が出るまで戦闘を続けた。仏軍特殊部隊の傘下にはないが、世界各地で特殊作戦に投入。1991年の対イラク戦では砂漠戦に関する専門技能を認められ絶賛

 

ロシア――スペツナズはトシア語で「特殊任務」の意。破壊工作と偵察に長じるが、本来の目的はソ連主力部隊が西ヨーロッパに攻勢をかけるための準備工作にあったが、ソ連崩壊後は米のデルタ・フォースや英のSASと同じ活動に従事

 

²  対革命戦

1972年のミュンヘン五輪でのイスラエル選手虐殺事件では、各国とも対テロ技能の不備が露見。その対策として登場したのが対革命戦CRW専門の部隊。救出作戦の失敗を受け、ドイツは第9国境警備隊GSG-9を創設

世界中の無数存在する過激派グループは、敵意を欧米に向け、その価値観をも攻撃しようとしていた

 

アメリカ――1977年結成のデルタ・フォースは世界最高の訓練と装備を誇る対テロ部隊。英SASに刺激されて企図されたが、ベトナム戦の失敗続きに創設が遅れた。ノースカロライナのフォート・ブラッグに本拠を置き、800名の隊員を擁す。近くにはグリーン・ベレーや空挺部隊もいる。当初の目的は海外での人質救出が専門で、最初の活動は「イーグル・クロー」作戦で1980年の在イラン米大使館の人質解放。9.11を契機に創設された第11任務部隊は、アメリカの対テロ特殊部隊活動を統括、デルタ・フォースとシールズの隊員で構成

 

²  海の特殊部隊

現代的な意味での海洋特殊戦は、第1次大戦でイタリア海軍の小型高速攻撃艇と戦闘潜水員が、オ-ストリア=ハンガリー海軍の港に予想外の攻撃を仕掛けたことに始まる。イタリアは第2次大戦でも同様の戦闘手法を用い、英独が注目して、戦闘終結時にはフロッグマンと呼ばれる潜水工作員が小型潜水艇などを使って戦艦や商船を襲う海上襲撃などの海戦テクニックを駆使した

代表的な部隊が米SEALsや英SBS、イスラエルのシャイェレット13、ロシア海軍スペツナズなど

 

アメリカ――海軍の特殊部隊がNAVY SEALsであり、それを支援するのがSBSSDVチーム。海兵隊にも独自の精鋭部隊として海兵隊偵察部隊を擁す。NAVY SEALs、特殊舟艇中隊SBSSEALs隊員輸送艇チームSDVとも、今後の紛争での主流を特殊作戦能力と確信したケネディの命令で結成。現在2000名が所属するが、通常は8名以下の小隊で活動。起源は太平洋戦争での島嶼戦での苦戦の経験から1942年発足した海軍戦闘潜水部隊NCDUで、ノルマンディ作戦にも参加

 

イギリス――海兵隊所属。前身は第2次大戦で結成された無数の小規模特殊作戦部隊。特に海兵隊のブーム・パトロール分遣隊の活躍は有名。戦後一旦解体され、’48年海兵隊小規模襲撃ウィングとして復活。’50年に現在の形として発足。250名規模

 

²  空の特殊部隊

独伊露では1930年代に、英米では第2次大戦初期に発達

 

アメリカ――第82空挺師団は本拠をフォート・ブラッグに置き、3個空挺旅団で構成。目標地域に空から侵入して、主力部隊と交代するまで占拠することを任務とする。第101空挺師団「スクリーミング・イーグル」は特殊部隊ではないが、ケンタッキーに本拠を置く世界唯一の航空強襲師団で、支援部隊をも含めると45千を超える兵力を擁す。第160特殊作戦航空連隊「ナイト・ストーカーズ」は、1980年の「イーグル・クロー」作戦の失敗の教訓から、陸軍独自で編成した特殊作戦用の航空連隊。空軍特殊作戦軍団AFSOCUSSOCOM傘下で1990年設立、約1万名の兵士が配属され、うち22%は海外駐屯

 

²  特殊部隊の訓練

 

 

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