数学をいかに教えるか 志村五郎 2014.12.12.
2014.12.12. 数学をいかに教えるか
著者 志村五郎 1930年生まれ。府立四中(昭和21年卒)。東大理学部数学科卒。57年フランス留学。99年までプリンストン大教授、現在同大名誉教授
発行日 2014.8.10. 第1刷発行
発行所 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
「ちくま学芸文庫」のために書き下ろされたもの
日米両国で長年教えてきた著者が日本の教育を斬る。掛け算の順序、悪い証明と間違えやすい公式のことから、外国語の教え方まで。文庫オリジナル書き下ろし第4巻
0.
外国語、特に英語、の教え方
「読み書きは出来るが会話ができない」というのは間違い。「読み書き」も出来ない
Decorative artとは、絵画、彫刻、建築を除いた家具、食器、絨毯、藍掛け、花瓶、タイル、ドアのノッカーなど美術品と見做せるものの総称
表裏は日本語だと「おもて」と「うら」だが、漢文では「外側」の「内側」であり、「裏」は「なか」である。コインの場合、英語ではhead & tailで、誰かの頭部の像がある方が日本語の「おもて」だが、tailが「うら」とは奇妙
1.
いかに教えたか
2.
ゆとり教育から勲章まで
落ちこぼれは不可避 ⇒ 学ぶ気のない人もいれば、どう教えても出来ない人がいる
普通の教育技術というのは、やりたい者だけを相手にする
教育というものは、その対象になる人々のレベルによってやり方を変えなければならない。レベルが均一でない公立学校で教えるならば、教える事柄はともかく教えなくてはならない。全部がついてくることなど目標にしてはならない
創造性を養成することができるなどと思わない方がよい。ほとんど生まれつきのもので、教育の仕方などではどうにもならないもの。創造性を重視する環境を作るぐらいは出来る
私の世代の友人はほとんど全て天皇や天皇制が嫌い。天皇はいまだかつて戦争責任について国民に謝罪をしていない。敗戦6か月前でも「もう1戦」と言っており、戦争を引き延ばした罪は重い
3.
掛け算の順序
1950年代に、「乗数」「被乗数」という言葉を発明して「掛け算の順序」という愚劣なことを言い出した ⇒ 「単に2つの数の積」という概念だけの話
4.
昔の教科書から初めて思いつく話
日本から欧米に行ってうまく馴染めた人とそうでない人がある。すぐ思いつくのが岡倉天心で、ボストンにいていろいろ英文の著作をした。『茶の本』はその1つ。一方、和辻哲郎はドイツに馴染めず、予定より早く帰国して、留学前の『古寺巡礼』の続きに回帰してしまったのは、悪いとも言えないが何とも物足りない
5.
部分積分とその発展
6.
悪い証明と間違え易い公式
7.
リーマンゼータ関数
の値

8.
L-関数の値
9.
Euler数とEuler多項式
10. 『数学で何が重要か』の訂正と類対論について
数学をいかに教えるか 志村五郎著 ナンセンスな教育を斬る
日本経済新聞夕刊2014年8月20日
(ちくま学芸文庫・950円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)
われわれ科学関係者の間でよく話題になるのが、小学校の算数で教わる掛け算の「順序」。算数のテストで3×4を4×3と書いて先生からバツをもらう子供が後を絶たないというのだ。
掛け算の順番は替えてもいいのか、それとも文章に沿う(?)順序でないといけないのか。
実は、これほど結論がはっきりしている問題も珍しい。数学の演算としての掛け算は「交換」できる。つまり、3×4でも4×3でもかまわないのである。数学の計算には「交換できない」ものもある。交換できる掛け算を「交換できない」かのように教えることは、ナンセンス以外の何物でもない。
本書の第3章「掛け算の順序」には次のように書いてある。
「1950年代に一部の教育家が『乗数』と『被乗数』という言葉を発明して『掛け算の順序』という愚劣なことを言い出したのが始まりらしい」
いやはや、困ったものである。
この本は、数学の難しい話も扱っているが、英語や入院の話など、エッセイとして楽しく読むことができる。子供をもつ親御さんと小学校の先生方に、是非とも読んでもらいたい。
★★★★★
(サイエンス作家 竹内薫)
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