「血脈」と私 佐藤愛子 2026.6.6.
2026.6.6. 「血脈」と私
著者 佐藤愛子
発行日 2005.1.15. 第1刷発行
発行所 文藝春秋
I.
「血脈」を語る 2001.5. 世田谷文学館「佐藤愛子展」記念講演『自作を語る』
25の時から小説を書こうと思い始め、同人雑誌の『文藝首都』で習作したが、相手にされなかったが、相手に見る目がないと思っていた。この楽天性が佐藤家に続いている
「血脈」は本当に悲惨な話だが、読むに堪えないという風にならなかったのは、登場人物がみんな楽天家だったから
最初にお金になったのはユーモア少女小説。川上宗薫と一緒に書いていたが、人気薄
ユーモア小説を書くことは生きるための力杖。生活の中から自然に出てきた
l ユーモアの話
ユーモアの元は、弘前・津軽の血があること
祖父は微禄の津軽藩士。維新後も武士の気概を持ち続け、存在そのものがユーモア
佐藤家の悲劇は、父の浮気から始まる
l 一族を理解するために
「血脈」を書いたのは、厄介な一族を理解するためだったが、理解するということは結果として愛することなのだということが、今になって分かる
最初は1人称で書いたがうまくいかず、それぞれの登場人物になり切って書くことにした
l 自分のために書いた
書いたおかげで「はらから」を愛することができるようになった
l 父から伝わった血
初めて自伝『愛子』を描いたとき、室生犀星から手紙が来て、「小説を書くことは、親を討ち、兄弟姉妹を討ち、友を討ち、己を討つことです」とあり、ずぅーっと心に残った
詩人の吉田一穂からは、「女になんか小説は書けん。何でかというと、女はいつも自分を正しいと思っているから」とも言われた
加藤武雄は、天才だと言って褒めてくれた
この3人のお陰で今日まで書き続けることができた
II.
「血脈」の完成
l “かく生きてかく死んだ”佐藤家の人びと 聞き手・豊田健次(文藝春秋社友)
『オール讀物』2001年5月号
全体小説のように、1人1人の登場人物の視点に寄り添う形で書いてある
母の鎮魂のために書いた気もする
l 「荒ぶる血」への鎮魂歌 長部日出雄・佐藤愛子 対談
『サンデー毎日』2001年4月8日号
連載は正味11年
65歳になって書き始め、人間が抱える矛盾が許せるようになって書いたことがよかった
人間を書くということは、その人間を理解すること
l ライフワーク「血脈」の歳月 大村彦次郎(元『小説現代』編集長)・佐藤愛子 対談
『本の話』2001年2月号
人間というものに興味があって、佐藤家の1人1人が本来持っている要素の面白さに引きずられながら書いた
III. 「血脈」アルバム
IV. 「血脈」の周辺
l 教訓なし 『文藝春秋』2000年7月号
父親から教えられたことはこれといってない
一度だけ、「儲かったとか損したなどというものじゃない」と叱られたのが一度だけ
ハチローと私は父に溺愛された。父と相性がよかったのだろう
私が勝手に父から吸収したものがたくさんある。金ピカを好まず、男のおしゃれを見ると嗤いたくなり、粗食を好む
「人は負けると分かっていても闘わねばならぬ時がある」という言葉を父は日記によって私に遺した。「敵に後ろを見せるとは卑怯なり」という言葉も子供のころからよく聞いた
しかし、父が私に望んだことは、「穏和な家庭婦人」だった
父が望んだことは何一つ私の中に染みていない。父の感情に任せた片言隻句が私を作った
l 満身創痍の幸福 『文藝春秋臨時増刊』2001年9月号
私は自分の来し方を人に語るとき、「不幸」「悲劇」「厄災」などと言わずに「波瀾」という
「不幸」とか「可哀そう」という言葉が嫌い。「なんでェ・・・・」の方がぴったりくる。「可哀そう」では、言葉と実感の間に隙間があって、親身な気持ちが感じられない
幸福について論じるとしたら、私は「楽天」ということを第一に置きたい
父から不屈の闘志を、母からいささかの理性を貰ったお陰で「生き抜いた」という満足感がある。満身創痍ながら私は幸福である
l 有難くまた面映ゆく 菊池寛賞を受賞して 『新刊ニュース』2000年2月号
単行本として発行されていないうちの受賞なので、作品が評価されたのではなく、12年という年月を倦まずたゆまず書き続けたことへの犒(ねぎらい)だと思っている
古い日記を繰ってみると随所に、「血脈、難渋す」の一行がある。しかし、今の私には、来る日も来る日もわが佐藤家一族の者たちが、情念に負けてゆく姿を追い捕らえることで充実していたという思いがあるだけ。苦しんだ記憶はなくなっている
V.
「血脈」と私 あとがき
自分の単行本が本屋の店頭に並んでいるのを見るのが気恥ずかしい
豪胆を装う小心者なので、小心者や直ぐヤククソになる
作品は作家の反吐(へど)。吐くことに意味があるのだから、吐くだけでいい、そう思うことにした。「血脈」は私のおそらく最後の大反吐
VI. 資料
l 洽六(佐藤紅緑)
最初の妻・ハル――長女・喜美子、長男・八郎(サトウハチロー)、次男・節(たかし、チャカ、妻・カズ子)、三男・弥(わたる、妻ユキ)、四男・久(ひさし、キュウ)
2番目の妻・シナ(三笠万里子)――長男・六郎、長女・早苗、次女・愛子
妾・真田いね――長男・幸男、次男・与四男(大垣肇)
l サトウハチロー
最初の妻・くみ子――長女・ユリヤ(夫・三沢利政、長男・国枝、長女・旗子)、次女・鳩子(夫・佐藤赳夫、長女・園子)、長男・忠(妻・富美子、長男・恵、妻・洋子)
2番目の妻・るり子――長男・四郎(妻・鈴枝、娘2人)、次男・五郎(妻・典子、長男・俊郎、妾・土屋由子、子4人)
3番目の妻・蘭子
l 早苗
夫・村木雄介――長女・陽子、長男・逸郎(妻・美和子)
l 愛子
最初の夫・守田悟――長男・剄介、長女・素子
2番目の夫・佐々誠二(田畑麦彦)――長女・響子
文藝春秋 BOOKS
破天荒な佐藤家一族を描く大河小説『血脈』を振り返り、作品世界の紹介と関連エッセイや対談を収録。当時の貴重な写真も多数掲載
担当編集者より
高い理想を目指しつつ、自らの情熱に翻弄されて生きた父・佐藤紅緑。センチメンタルでエゴイストの詩人の兄・サトウハチロー。世の規範から脱線して波瀾の日々を送りつつも魅力あふれる一族の情熱と葛藤を、資料と共にたどる一冊。小説『血脈』執筆にまつわる講演や対談・エッセイの他、貴重な写真、年表や系図なども満載。
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