実践 自分で調べる技術 宮内泰介他 2023.2.21.
2023.2.21. 実践 自分で調べる技術
著者
宮内泰介 北海道大学大学院文学研究院教授。博士(社会学)。専門は環境社会学。環境社会学会元会長。NPO法人さっぽろ自由学校「遊」共同代表。著書:『歩く、見る、聞く人びとの自然再生』、『かつお節と日本人』(共著)(以上、岩波新書)、『震災と地域再生』(共編著、法政大学出版局)、『グループディスカッションで学ぶ社会学トレーニング』(三省堂)、『なぜ環境保全はうまくいかないのか』(編著、新泉社)ほか。
上田昌文(あきふみ)
NPO法人市民科学研究室代表理事。大学では生物学を専攻。2003-06年科学技術社会論学会の理事。2005-07年東京大学「科学技術インタープリター養成プログラム」特任教員。2010-18年に恵泉女学園大学において「市民と環境政策」を担当。2013-19年高木仁三郎市民科学基金・選考委員。著書:『原子力と原発きほんのき』(クレヨンハウス・ブックレット)、『エンハンスメント論争』(共編、社会評論社)ほか。
発行日 2020.10.20. 第1刷発行
発行所 岩波書店 (岩波新書)
本書は、2004年に出版した『自分で調べる技術――市民のための調査入門』の全面改訂版
岩波書店 ホームページ
本の見つけ方。ネット検索の極意。現場で調査。値を測定。そして人の声を聴く。専門家でないからこそできる「調査のデザイン」により、これらを縦横無尽に組み立てながら、統計や分析で調べていく方法を具体的に解説。ロングセラー『自分で調べる技術』に科学的な視点を加えて新たに書き下ろす。「知的生産の技術」への一歩。
第1章 調べるということ
1 調べよう
l 世界は複雑
l 調べて解決への道を考える
l 調べることはむずかしくない
ちゃんと調べる
2 調べることで、何をめざすのか
l 何をめざす調査か
社会が抱えている問題、より安心して暮らせる社会を目指す、そのための「調査」が本書で想定されているもの
l 市民による調査はなぜ有効か
専門家の調査と違って、市民による調査は自分たちの生活にとって必要なことを見出し、具体的な解決策を目指す。調査する人と問題を解決しようとする人が同じという特徴
l 水俣病の経験
胎児性水俣病の存在は、専門家の間では毒物が胎盤を通って子供に移ることはないとして疑われていたが、母親の直感の方が正しかった
l 専門家の知識も利用する
専門家の提示する「知」を、市民の側からもう一度組み立て直し、私たち自身の「知」を作り出すのが市民にとっての「調査」
l 調査をデザインする
複数の調査手法の組み合わせ――統計調査、質問紙調査、測定(以上が量的調査)、文献・資料調査、聞き取り調査、観察(以上が質的調査)
l 困難を克服し、実践へ
【練習問題1】自分が暮らす町の子育て支援の課題について、調査し、報告する
第2章 文献や資料を調べる
1 文献・資料調査とは
l 多様な「調べ方」と文献・資料調査
文献や資料を「批判的に」読むことが大切
l 紙媒体かネットか
l 本か論文か
2 雑誌記事・論文を調べる
l 国会図書館サーチ https://iss.ndl.go.jp/
l 国会図書館から雑誌記事・論文のコピーをとりよせる――国会図書館に登録
l J-STAGEで論文PDFを手に入れる――各学会情報が公開されているサイト
l 学術機関リポジトリデータベースIRDB
l 雑誌記事・論文を図書館で探す
【練習問題2】子供の貧困に関する諸外国の政策情報の収集
【練習問題3】マンションの生活騒音の実態と対策の調査情報の収集
3 本を探す
l 本は探しにくい?
l 国会図書館サーチ
l CiNii Books――国内の大学にある本を網羅的に調べる
l 本の中身から調べる――Google
Books https://books.google.co.jp/
l 図書館で本を探す方法
l 公立図書館を調べる――カーリル どこの図書館にあるかを調査
l 司書にたずねてみる
l 実際に国会図書館に行ってみる
l 専門図書館もある
l 大切な本の「奥付」――後で出典を調べる際に必要
l ネット書店とネット古書店――東京都古書籍商業協組運営のサイト「日本の古本屋」
4 新聞記事を調べる
l 情報の宝庫、新聞記事を生かす――情報源と発信の意図に注意
l 新聞記事データベースの活用――G-Search https://db.g-search.or.jp/
l 地方紙の魅力
l 業界紙が役に立つ
5 統計を調べる
l 統計の探し方
l 私たちにとっての統計
l 政府統計の読み方
l 政府統計の総合窓口e-Stat
https://www.e-stat.go.jp/を使ってみる
l 政府統計以外の統計
【練習問題4】日本の独居老人数
【練習問題5】日本の空家数
6 資料を探す
l 図書館にない資料とは
l 行政の資料――電子政府の総合窓口e-Gav https://www.e-gov.go.jp/
l その他の文字資料
l ネット上の情報
7 書かれていることは真実か
第3章 フィールドワークをする
1 なぜフィールドワークが必要か――現場に出かけ、見て、話を聞くことで実際の姿に迫る
l 知りたい情報は書かれていない
l 自分たちの認識を問う
2 フィールドワークの多面的な意義
l 考え方の枠組みが壊れる――フィールドワークによって得た新しい知見に基づいてフレームを修正し、さらに調査を続けることが重要
l 学びの場としての機能
l フィールドワークの技法は複合的
l 調査のプランを立ててみる
【練習問題6】A市の抱える農業問題を知りたい
3 誰に聞くのか?
l 行政の人に聞く
l 話す側の「フレーム」を意識する
l テーマのキーパーソンを探す
l 何人に聞けばよいのか
4 聞き取りの基本
l 相手に合わせたアプローチ
l 1~2時間が標準
l もっと具体的に――聞き取りの基本は、①具体的なことを聞く、②受容的に聞く、③フレキシブルに聞く
l 受容的に聞く――相手の言うことを受け入れる
l フレキシブルに聞く
5 メモと録音
l どんなメモ帳を使うか
l 考えながらメモを取る
l メモをまとめる
l 録音する
l ICレコーダーやスマホの録音アプリ
l 文字起こし
l 文字起こしの方法(1)音声データをまるごと起こす
l 文字起こしの方法(2)丸めながら起こす
l 文字起こしの方法(3)内容のみを起こす
6 聞いた話は正しいのか?
l 一次情報vs二次情報――情報源との距離
l 相互作用としての聞き取り――どういう状況の下で聞いた話か、相手の「話」をどう解釈すればいいのか、常に注意を払う必要
【練習問題7】ある人の話を聞いて、それが他人に伝わるような文章にまとめる
【練習問題8】
7 観察する
l 聞くだけがフィールドワークでない
l 体験のなかで気づく
l 観察したことをノートに書いてみる
8 アンケート調査
l アンケート調査は量的調査
l 無意味なアンケートはしない
9 調査倫理
l 宮本常一(民俗学者)「調査地被害」(1972)――調査は相手に迷惑をかける行為だということを認識しておく必要がある
l 調査は特権ではない
l お礼状を送る
第4章 リスクを調べる
1 なぜ自分でリスクを調べるのか
l リスクにさらされている私たち
l 生活者の視点が大事
l 現状をよりよくするために
2 課題設定と文献調査
l 課題を設定してみる――調査を始めるときに最も重要なのは、何を明らかにしたいのか、その目的を明確にすること
l 過去の文献を調べる
l 図書館を利用する
l 文献検索サイトを利用する
l PubMed https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/――米国国立医学図書館提供のサイト
l Bibgraph――医師向け医学論文検索ポータルサイト
l Google Scholar――学術論文データベース
l 専門論文の読み解き方――総説論文(レビュー論文)の拾い読み
l 勉強したことがない分野の「勉強」法
l 英語文献を読む技術
l 最新の学問動向のフォロー
l 専門家にたずねる
l テレビのドキュメンタリー番組を利用する
【練習問題9】
3 自分で測定する
l 測定の前のフィールドワーク
l どのような計測がなされているかを知る
l 計測器を知り、手に入れるために
l 計測器を適切に使う
l 測定値の扱いに注意する
l 正確度と精度
l 有効数字、較正
4 統計データを利用する
l 統計を活用する
【練習問題10】
5 リスクを推し量る――統計学、そして疫学の考え方
l データの特徴をつかみ、「違い」のあるなしを判別する――統計学の考え方
l リスクの大きさを計算し原因を特定する――疫学の考え方
l コホート研究と症例対照研究――「コホート」とは調査のために一定期間追跡される集団のこと
l 二つのグループの比較、交絡因子――調べたい暴露因子以外の影響をどう排除しておくかが重要で、原因と結果の両方に影響を与えている可能性がある因子を「交絡因子」と呼ぶ
l ハザード比とリスク比
l 95%信頼区間とP値――2つのグループに明らかな差があるかどうかを統計学的に示す値がP値
第5章 データ整理からアウトプットへ
1 フォルダによる整理
l フォルダとインデックス
l すぐに見返せるように
l 電子データはどう整理するか――KWIC Finderが一度に文字検索してくれるので便利
l 紙の資料を電子データ化する
l クラウドストレージを利用する
2 表やカードにしてデータと対話する
l データと対話する
l 数値データをグラフや表にする
l 文字データを表にする
l 文字データをクロス表にしてみる
l カードにする
l ある語りからの四枚のカード
l キーワード化
【練習問題11】
3 KJ法によって体系化する
l KJ法とは何か――小さな紙片に短い文やキーワードを書き、それを並べ直して、グループ化を進め、そこから分析を加えていくやり方
l 実際にやってみる
l 別の整理をしてみる
l IdeaFragment2――KJ法をPC上で行うソフト
l 座標軸で考える
【練習問題12】
4 アウトプットする
l 論文という基本形式
l アウトラインをつくる
l 出典を示す
l 論文はどこで発表するのか
l プレゼンテーション
l 説得力を増す方法
5 共同で調べる
l 研究資金はどうするのか
l 一人ではなく、自分「たち」で調べるメリット
あとがき
著者の2人は、大学在学中に「自主講座」という市民運動団体の活動に参加。同講座は、公害反対運動の旗手だった宇井純(1932~2006)が、東大での公開自主講座から始めた運動体で、2人は「反公害輸出通報センター」に所属。宇井が希望を見出したのが、住民自身による科学
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