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終戦と近衛上奏文  新谷卓  2025.7.5.

  2025.7.5.  増補新版 終戦と近衛上奏文 アジア・太平洋戦争と共産主義陰謀説   著者 新谷卓 ( あらやたかし )  立教大学非常勤講師。明治大学大学院博士後期課程修了、博士(政治学)。主な著書に、『冷戦とイデオロギー  1945 ~ 47 』ほか   発行日            2025.1.20.  初版第 1 刷発行 発行所            彩流社     序 章 l   近衛上奏文とは 1945.2.14. 近衛文麿が天皇に上奏したいわゆる「近衛上奏文」は驚くべき内容だった 大東亜戦争に導いたのは、国際共産主義者であり、国体を揺るがすのは敗戦ではなく共産主義革命。英米は国体の変更までは考えておらず、一刻も早く英米との戦争終結を模索すべき。この一味を一掃し、軍部の建て直しの実行こそが共産革命より日本を救う前提、先決条件 「近衛上奏文」が公になったのは、占領下の ’48 年 8 月。政治評論家岩淵辰雄が『世界文化』に発表。 GHQ も親米・反ソの宣伝になるものと黙認 世間では相手にされず、真偽に関して真剣に検討する価値がないものと見做されたが、当時幅広く流布していた見方であることがわかって来た。皇道派の真崎兄弟にしても、共産主義の魔の手が日本の中枢に入り込み、革命を起こそうとしているという認識を持っていて、その罠にかかって逮捕されたといい、釈放後は同調する仲間が周囲に集まって来た。吉田茂も、首相になった戦後も一貫してこの見方をしていた これまで、アジア太平洋戦争を考えるうえで見落としてきたのは、日本の為政者の中に、この戦争が共産主義者の陰謀であると信じていた者が少なからず存在し、重要な局面において彼らが影響を及ぼしたということ 「近衛上奏文」が近衛の単なる妄想とされた理由は、①国内の共産党は壊滅していた、②総本山コミンテルンもスターリンの覇権主義の道具と化し大粛清が始まっていた、③内外のかかる状況下で日本の中枢の一部が「アカ」に...